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しおりを挟む「えっ。此処で働きたい?君の言い分も分かるよ。でもね私達は君を助けたかったんだ。うーんどうしようか」
「あなた私は良いわ。響也君を此処に置いても。ずっと一緒に入れるしね。子供が自立してから寂しかったの」
「お前が良いのであれば私は構わないよ。響也君大変だと思うけど此処で働いてくれるかい?」
「本当に良いんですか?ありがとうございます!!」
俺は立ち上がり長い間頭を下げた。まさか置いてもらえると思わなかったから。嬉しい。一人でなんて生きて行けない。そんな俺を見て二人は慌てて制した。
「頭を上げてくれ。分かった。君の立場は厳しい事も一人で生きていく事も。今までの環境と違い慣れない事も沢山あるかも知れない。それでも此処に来てくれるのかい?」
「こちらが無理を押してお願いしているのです。むしろ私が関わる事でお二人を危険な事に巻き込むかも知れませし、巻き込む事で何があるかわかりません。その時は私に構わず自分の身を第一に考えて下さい」
「何も無いに越した事は無いが。そこまで言うのなら分かった。だが私達の仕事も楽じゃ無いぞ。朝は早いし、雑用も力仕事もある。やって行けるかね?」
「はい。頑張ります!!」
「嬉しいわ~。賑やかになるし、力仕事もしてくれるし!!」
やった~と言う風にヘレンさんが喜んでいる。二人の役に立てるのなら良かった。思い返してみて異世界生活は思ったのと違ったけど、此処まで生き残れたんだからこの先もどうにかなると安堵した俺だった。
所変わって此処はガルド国。王城の奥の奥に有るその中でも要人にしか立ち入れない区域の部屋の自室で莉央は護衛騎士から兄に就いての報告を受けていた。一点物の艶の有る調度品の机で魔法に関する資料から視線を上げ表情を隠し静かに耳を傾けている。聞き終わり小さく溜め息を吐いた。
「ご苦労様です。下がって下さい」
「はっ」
騎士の礼をして部屋を後にする。下がったドアを見つめ莉央は受けた報告を反芻した。王子のしでかした戯れを口実に己の権限を使い、陛下に嘆願して兄を国外追放に処してもらった。あの兄は自分の駒使いにするつもりだったが、王子のちょっかいで些か狂ってしまった。地味な兄に手を出すとは思わず、カッとなって処罰を言い渡していた。
奴隷でも良かったが、家族の情けで国外追放を選んでしまった。奴隷よりもまだ運が良ければ生き残れるだろう。小林家で一緒に居て十八年。今完全に自分達は離れた。色々思い出もあったが、過去の事だ。そう割り切れる自分は薄情なのかも知れない。兄も負けず劣らずしぶとい所が有るから這い上がって来るだろう。その時が楽しみだ。
この国は早急に守りを固めなければ今は手薄の状態だ。屈強な騎士や兵士が対応しているが、脆い所を突かれて魔物が襲って来たら国民が犠牲になる。私情に流されて疎かにしてしまって、この国に何か有ればこの身を差し出しただけでは償えない。
己の責任の重大さに改めて気を引き締めた莉央だった。
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