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しおりを挟むトルシア国ーーー国の一辺を海に面し漁業が盛んだ。ガルド国と似た気候に海から吹く風も強く冬みたいな季節の時は海の強い風で国はそこそこ寒いがそれを除けば比較的過ごしやすい国である。ガルド国との間に広大な森が有り、天然資源も豊富で生息する野生の動物で狩りを行い、その肉を売り捌く事も出来る。
世界中から高価な建材やインテリアが国の中心に有る王城周辺に集まり、観光客の目を楽しませている。王城はモスクさながらの華麗さが御伽話にあるお城みたいで周辺は観光地になっている。
港には豪華な船が浮かび夜にはライトアップされ、幻想的な一番の見所で、此処で告白すれば成功するというジンクスもある。
教育の水準も高く、国民の識字率も高い。国の外交や政策も良好みたいで治安も良く響也から見たら、ガルド国も国力が有り強国に見えたが、此処はそれを上回り最早天国みたいな所だった。
話を聞くと二人のお店は首都から外れた郊外の森の近くに有り、パン屋さんを開いているらしい。それで森に食材を取りに行ったのだ。森から出れた俺は二人に着いて行く事にした。助けて貰ってそのままさようならは出来ない。恩返しがしたい。でも直ぐには思いつかず着いて行って考える事にした。
「上を見て」
ヘレンさんに言われ頭上を見る。快晴の空だ。雲一つ無い。でも目を凝らして見て見ると空に何か薄い膜の様な物が見える。初めて見る。全然分からない。なんだろうこれ?
「これは何ですか?」
「これは魔物から国を守っている防御魔法で、上だけじゃなく国全体を覆っているの。空は可視化されているから分かりやすいわね。凄いでしょう?これが有るから魔物は入って来れないの」
「ふぇえ何ですかそれ。そういう事も出来るんですか?凄すぎる。こんな強大な魔法誰が掛けているのですか?」
「国お抱えの魔術師団よ。精鋭なの。王城に居るのよ」
魔法の規模がデカくて頭は混乱している。こういう事が出来るから聖女が居なくても大丈夫なんだ。と言う事はこの規模を莉央は一人でやろうとしているのか?無茶な。だから歴代最高の魔力を持っているとみんな驚いていたのか。やっと分かった。これじゃあ俺は莉央に勝てない。つい怖気付いてしまう。
そうこうしている内に着いたらしい。こぢんまりとしていて可愛いお店だ。二人の温かさを感じる。良いなこういうお店好きだ。自然に囲まれて静かな雰囲気だ。
「さぁさぁ入って。疲れたでしょう。うちのパンで良かったら腹ごしらえしましょう」
ヘレンさんが俺を手招きして呼んでいる。恥ずかしいと思いながら疲れている体と空腹で好意に甘える事にした。
店の中に入るとパンの良い匂いがする。こぢんまりとした室内の棚にパンが並べられていて色とりどりの見た目にテンションが上がる。惣菜パンや菓子パン、見た事の無い独特なパンなんでもあった。
(うわー美味しそう)
子供の頃の様にワクワクする。ウキウキしている俺を二人は優しい目で見ていた。ヘレンさんは棚からパンを三人分見繕って店内のテーブルに置き飲み物を取りに奥の厨房に消えて行った。
「座ってちょっと待っていてね」
「はい」
ヨハネスさんに促されいそいそと座る。やがて三人分の飲み物を持ってヘレンさんが戻って来た。
「お待たせ~どうぞ」
飲み物を置いて差し出してくれた。
「さぁどうぞ食べて」
「はい。いただきます」
目の前に有る惣菜パンを食べてみる。うわぁあ美味しい。肉とキノコをホワイトソースで仕上げ上からチーズを乗せ焼き、それが溶けてめちゃくちゃ美味しい。幸せ過ぎて涙が出てくる。
気付かない内に本当に涙が出ていたみたいで俺を見て二人がオロオロしていた。
「大丈夫?美味しく無かった?」
「いえ、とっても美味しいです。ガルド国から離れて安心して、美味しい物食べたらホッとして涙が出て来たんです」
「辛かったわね。もう大丈夫よ。いっぱい食べてね」
「はい」
美味しく無い訳無い。心から安心して食べたのも久しぶりだ。此処には莉央も居ない。警戒しなくていい。好意で食べさせてもらったけど、これはれっきりとした無銭飲食だ。お金は払わなくっちゃ。けれどお金の持ち合わせが無い。無理矢理国を追い出されたから。そうだこうすれば良いのかな?二人が納得するか分からないけど。
「凄く美味しかったです。ありがとうございます。私には今パンの代金のお金を持っていません。タダで食べさせてもらう訳にはいきません。お二人が納得するか分かりませんが、私をこのお店で働かせてくれませんか?」
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