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しおりを挟む「この国の婚姻についてお尋ねしたいです。私が居た世界の国は異性同士で結婚してまだ同姓婚は承認されていません。魔法が無いので男性は子供を産む事も出来ません。この国はそれが認められているのですね?」
王子は目を瞬かせると面白いという表情をして響也に笑いかけた。
「そうなんだね、国の特徴が違うんだね。なんて事ないんだよ。昔女性の出生率が極端に低くなって国の存続が危ぶまれた事があって、時の偉い人達が考えて男も生殖させようという苦肉の策なんだよ」
となんて事もない様に笑う。
そうなんだ。てっきり異性同士に男を巻き込んでの痴情の絡れとか、スキャンダルがあったのかなと思ったんだ。ゴシップとしてはそっちの方が面白そうだけど。
と考えている響也の顔を王子が覗き込む。気づいてハッとして目線を上げると碧い目と視線が合った。
「で、殿下。近いです」
「君も気になる人がいるの?」
は、はぁああ? 何を言っているんだこの人は。
「同性婚に捉われているみたいだから。誰か気になる人が出来たのかなと思ったんだ」
なんで王子が俺の事気にするんだ?そして何この空気感。何考えているんだ?今自分達二人だけど誰かに見つかって変に誤解されたらまずい。俺は王子を離す事にした。
「いないですし、気になったのはこの国が何でこれで成りたっているのかなと思いまして。それより殿下ちょっと離れて下さい。近いです。誰かに見られたらまずいです」
「私は君と話しをしているだけだよ。何か見られたらまずい事があるのかな?」
「こんな距離感で近くにいたら俺が咎められてしまいます。それに殿下は多忙な方。俺が引き留め過ぎていますから。早く戻られた方が宜しいです」
王子には莉央もいるし、本当は決められた婚約者がいるのだ。俺にかまって俺がどやされたら嫌だ。
「分かっているよ。ただ君がどんな反応するのかと思って興味が出たんだ」
と意地悪そうにクスクス笑っている。この野郎。ぶっ叩いてやりたい!
「だからね、一回キスしてみても良い?君はどういう風な感触かなと思って。ね?」
まさかそう言われると思わず目が点になる。何言っているんだ。意味が分からない。興味持った子は味見してみたいって?冗談じゃない。俺莉央と婚約者に殺される。
「何言っているんですか冗談じゃ…ん」
言い終わらないうちに本棚に背を押し付けられキスされている。へ?嘘だろ。
あり得ないシチュエーションと王子からされている事、男同士だという事、色々な事で俺は固まってしまった。
固まってしまった俺を良い事に王子は好き勝手に唇で遊びだした。
最初は確かめる様に触れていたのを舌を使って唇をこじ開け俺の舌を捕まえお互いを絡め取る。
「んっ、...んんっ」
暫くそうやってお互い口付けし合っていた。
漸く気が済んだのか王子は唇を離し俺の濡れた唇を指で拭うと満足そうに響也を見て微笑んだ。
はぁはぁ気が済んだのか。気まぐれに付き合っていたらこっちの身が持たない。
俺は王子の体を離しはぁはぁ息を吐いて睨みつける。
「気が済みましたか?もうこんな事はやめてください」
「ちょっとのつもりだったのだが、君の反応が可愛くて止められなかったよ。なかなか良かったよ」
悪びれる事もなくさらっと笑顔で言う。
「じゃあまたね」
俺の頬に軽くキスをして手を振って部屋を出て行った。
俺は床にへたり込むと呆気に取られて出て行ったドアを眺めていた。
そして思ったのは莉央に見つかったらどうしようと言う事だった。
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