俺の居場所を探して

夜野

文字の大きさ
上 下
8 / 15

8

しおりを挟む
  


「この国の婚姻についてお尋ねしたいです。私が居た世界の国は異性同士で結婚してまだ同姓婚は承認されていません。魔法が無いので男性は子供を産む事も出来ません。この国はそれが認められているのですね?」

 
 王子は目を瞬かせると面白いという表情をして響也に笑いかけた。


「そうなんだね、国の特徴が違うんだね。なんて事ないんだよ。昔女性の出生率が極端に低くなって国の存続が危ぶまれた事があって、時の偉い人達が考えて男も生殖させようという苦肉の策なんだよ」

となんて事もない様に笑う。

 そうなんだ。てっきり異性同士に男を巻き込んでの痴情の絡れとか、スキャンダルがあったのかなと思ったんだ。ゴシップとしてはそっちの方が面白そうだけど。

と考えている響也の顔を王子が覗き込む。気づいてハッとして目線を上げると碧い目と視線が合った。

 
 「で、殿下。近いです」
 「君も気になる人がいるの?」


 は、はぁああ? 何を言っているんだこの人は。
 

「同性婚に捉われているみたいだから。誰か気になる人が出来たのかなと思ったんだ」

 
 なんで王子が俺の事気にするんだ?そして何この空気感。何考えているんだ?今自分達二人だけど誰かに見つかって変に誤解されたらまずい。俺は王子を離す事にした。


「いないですし、気になったのはこの国が何でこれで成りたっているのかなと思いまして。それより殿下ちょっと離れて下さい。近いです。誰かに見られたらまずいです」
「私は君と話しをしているだけだよ。何か見られたらまずい事があるのかな?」
「こんな距離感で近くにいたら俺が咎められてしまいます。それに殿下は多忙な方。俺が引き留め過ぎていますから。早く戻られた方が宜しいです」

 
王子には莉央もいるし、本当は決められた婚約者がいるのだ。俺にかまって俺がどやされたら嫌だ。


「分かっているよ。ただ君がどんな反応するのかと思って興味が出たんだ」

と意地悪そうにクスクス笑っている。この野郎。ぶっ叩いてやりたい!



「だからね、一回キスしてみても良い?君はどういう風な感触かなと思って。ね?」


 まさかそう言われると思わず目が点になる。何言っているんだ。意味が分からない。興味持った子は味見してみたいって?冗談じゃない。俺莉央と婚約者に殺される。



「何言っているんですか冗談じゃ…ん」

 
言い終わらないうちに本棚に背を押し付けられキスされている。へ?嘘だろ。
あり得ないシチュエーションと王子からされている事、男同士だという事、色々な事で俺は固まってしまった。
固まってしまった俺を良い事に王子は好き勝手に唇で遊びだした。
最初は確かめる様に触れていたのを舌を使って唇をこじ開け俺の舌を捕まえお互いを絡め取る。


「んっ、...んんっ」


暫くそうやってお互い口付けし合っていた。
漸く気が済んだのか王子は唇を離し俺の濡れた唇を指で拭うと満足そうに響也を見て微笑んだ。
はぁはぁ気が済んだのか。気まぐれに付き合っていたらこっちの身が持たない。


俺は王子の体を離しはぁはぁ息を吐いて睨みつける。


「気が済みましたか?もうこんな事はやめてください」
「ちょっとのつもりだったのだが、君の反応が可愛くて止められなかったよ。なかなか良かったよ」


悪びれる事もなくさらっと笑顔で言う。


「じゃあまたね」


俺の頬に軽くキスをして手を振って部屋を出て行った。

俺は床にへたり込むと呆気に取られて出て行ったドアを眺めていた。

そして思ったのは莉央に見つかったらどうしようと言う事だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

ヒロインの兄は悪役令嬢推し

西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

ある意味王道ですが何か?

ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。 さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。 だって庶民は逞しいので。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

処理中です...