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3巻

3-3

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 つまりこのダンジョンは、数千年前に建造されたってこと?
 じゃあ左右にある本も、その時代に書かれた書物なのか。それなら、貴重な情報源になるかもしれない。
 しばらくして、ユノが本から顔を上げた。

「うむ。これは本というより、日記じゃな」
「日記?」

 僕が聞き返すと、ユノは頷く。

「ほとんど読めんが日付が書いてある。タイトルもないようじゃし、おそらくそうじゃろう」

 この部屋にあるということは、ダンジョンを建造した人物の日記だろう。一体どんな内容なのか気になった。
 劣化が激しいので、このままでは読めないけど、持ち帰って復元することになった。



 3 王女様との約束


 ダンジョン探索から帰還した僕らは、さっそく入手した物品の調査を開始した。大量にあった財宝は、今後の資金源として活用する予定だ。
 王国の庇護下を離れた今、自分たちの力で街を運営する資金を集めなくてはならない。
 今のところ自給自足は成立しているものの、この状況が今後何十年と持続するとは限らないのだ。何事も準備が大切だからね。
 とまあ、現状をつらつらと話していると、呆れたような言葉が返ってくる。

「調子の良いことばっかり言っちゃって……それもこれも私のおかげなんだから、ちゃんと感謝してちょうだい」
「感謝はしてますよ。レミリア王女」
「言葉じゃなくて行動で示してほしいわね」

 この日は偶々たまたま、レミリア王女が僕の街を訪れていた。ウェストニカ王国国王の娘であるレミリア王女とは、王都にいる頃からの付き合いだ。グレーテル家の長男――つまり僕の兄上であるユリウス・グレーテルに彼女は恋心を抱いていて、僕はその恋路の協力をしていた。
 この街はもう王国の外なのに気軽に来たりして大丈夫なのかと思ったけど、どうやらお忍びらしい。ただ、何か用があったのではなく、暇だったから様子を見に来たそうだ。

「王国との貿易権……王女様の協力がなければ得られませんでしたよ」

 王国を脱した際、王女様から国王に直接お願いし、今後も貿易をしてくれるように取り計らってもらった。

「本当にそうよ。まあでも、あなたがお父様を適度におどしてたから、そんなに苦労しなかったわ」
「適度にって……あれはちょっとやりすぎましたよ」

 亜人の解放と王国からの独立を国王に告げた日。僕は変換魔法を盾に国王に迫り、交渉をなかば強要したのだ。
 しかし、王女様は涼しい顔をしている。

「別に良いのではなくて? あれくらいしなきゃ、お父様を動かせなかったわ」
「そうですかねぇ」

 そうだとしても、力で脅すなんて方法は良くない。未だに反省しているし、もっと良い方法があったのではとも思う。何より僕の気分が最悪だった。

「だけど、どうして協力してくれたんです?」

 僕が尋ねると、王女様は僕の目を見つめた。

「どういう意味かしら?」
「いやほら、僕ってもう王国民じゃないですし、グレーテル家との縁も切れているんですよ?」

 そう、僕は王国を離れる際に、実家のグレーテル家から追放された。国王にたてついたのだから、当たり前だ。
 だから以前のように、兄上と王女様を近づけるための協力がほぼできなくなった。
 彼女が僕に協力してくれるのは、兄上ともっと仲良くなりたいからで、それ以外はどうでもいいはずだった。少なくとも、僕の知っている王女様はそういう人だ。

「今の僕に協力しても、そこまでの見返りは期待できないと思うんですが」
「あなたねぇ……自分で言っていて悲しくならないの?」

 呆れたように言う王女様。しかし、僕は否定できない。

「はぁ……まあ確かに私とあなたの関係から考えれば、あなたとご実家の縁が切れた時点で、こっちも縁を切るべきだったかもしれないわね」

 僕もそう思っている。だから、彼女がこうして協力してくれている事実に驚いている。
 そんな僕に王女様は呆れながら、そして昔を懐かしむように話す。

「だけどね。何だかんだ言っても、私たちって長い付き合いでしょ?」
「まあそれなりに」
「私にとっての最優先はユリウス様だけど、あなたとこうして話すのも嫌いじゃないのよ。私の本性を知っていて、気兼ねなく話せる人なんて、あなたくらいしかいないわ」

 そんな風に思っていたのか。
 僕は彼女を、自分の目的以外には無頓着むとんちゃくで、周りなんてどうだって良いと思っているのだと考えていた。だけど、どうやらその認識は改めないといけないらしい。
 王女様は恥ずかしそうにモジモジしながら、僕に何かを言おうとしている。

「だから、その……勝手にだけどあなたのこと、友人だと思っていたわ」

 僕はその言葉にとても驚いたが、同時にとても嬉しく感じた。

「王女様……それなら僕もそう思って良いですか?」
「――えぇ、仕方ないから特別に許してあげる」

 王女様は、今まで見せたことのない満面の笑みでそう答えた。
 僕は不意にドキッとしてしまう。ほとんどの男は、今の笑顔を向けられただけで、彼女を好きになってしまうだろう。
 王女様は照れ隠しするように、勢いよく言葉を継いだ。

「これからも色々と手伝ってもらうわよ!」
「可能な範囲でよければ」

 僕が答えると、王女様は頷く。

「それで良いわ。あと王女様じゃなくて、レミリア様と呼びなさい」
「わかりました。レミリア様」
「うん、良い感じね! ちゃんと様はつけるのよ? そうじゃなきゃ威厳いげんが感じられないもの」
「ははっ、レミリア様らしいですね」
「当然よ! 私は何があっても私だもの」

 レミリア様の新しい一面を知ることができた。まさか王女様と友人になれるなんて、自分でもびっくりだ。
 何となくだけど、僕も僕の周りも、少しずつ変化しているように思う。関係性や心情、立場や目的も変わってきている。そう感じる。

「じゃあ私はそろそろ帰るわ。あんまり遅くなると怪しまれちゃうから」

 王女様改めレミリア様が席を立つ。

「途中まで送っていきましょうか?」
「いいえ結構よ。それより私から注文を一つ」
「何です?」
「次に来るときまでに、この暑さを何とかしておいて」

 外に出て、降り注ぐ日差しに手をかざしながら、レミリア様はそう言った。
 日差しは乙女にとって大敵なのよ! なんて言葉も付け加えて。
 僕は苦笑して答える。

「わかりました。何とかしておきますよ」
「ええ、じゃあまた」
「はい。また来てください」

 レミリア様のセリフ。つまり、また近いうちに遊びに来るということかな。
 仕方ない、そのときまでに準備しておこうか。


 レミリア様が帰ったあとで、僕は街を少しぶらついた。建物も人も増え、いっそうの賑わいを見せていた。そしてほとんどの住民が、額から汗をタラタラと流している。
 たった十数分歩いただけで、僕も全身から汗が滝のように流れていた。

「これは確かに……早く対処しないとなぁ」

 降り注ぐ日差しに耐えながら、僕は屋敷へ戻った。


 その翌日、僕はメイドたちとユノ、さらにギランを加えて話し合いの場を設けた。議題はもちろん、日に日に強くなる暑さ対策だ。
 最初に屋敷のメイド長を務めるソラが、簡単に現状を説明する。

「一月下旬現在で、日中の平均気温は三十五度。記録されている最高気温は、四十二度にも及びます」

 僕はその数字にうなりながら、ソラに尋ねる。

「このレベルの暑さが、残り三ヶ月は続くんだよね?」
「その通りです。付け加えるなら、月をまたぐごとに暑さは増します」

 過去の資料や現状の変化をもとに計算すると、最終的な到達気温は日中で五十度を超えるらしい。そのあとに来るのは、極度に乾燥した季節だ。
 なるほど、これで僕らが最初にこの領地を訪れたときの荒れ模様が完成したのか。
 セイレーンのメイド、サトラが頬に手を当てながら言う。

「暑さで体調を崩す人も増えてきているみたいですね」
「病院は大賑わいですよ」

 そう付け加えたのはエルフのシーナだ。
 シーナの言う病院とは、少し前に建設した医療施設のことだ。
 治癒系の魔法を使える者たちを主に配置している。サトラとシーナの二人も治癒魔法を使えるので、時々手伝っているのだ。
 そこでは、ホロウの故郷の雪山で手に入れた万能薬も活躍中だ。
 ちなみに二人の報告では、現在は一日に五、六人が脱水症状で運ばれてくるらしい。

「病院でも適度な水分・塩分摂取を促しています。でもこれ以上暑さが増すとなると、ベッドの数も足りませんよ」
「そうだね、サトラ……暑さ対策と並行して、病院のベッド数増床も検討しよう」

 僕はサトラの懸念に対応策を考えることにして、話を進める。

「他の皆は大丈夫かな? ソラは?」
「私はまだ耐えられる暑さです。私よりもニーナとロトンは大変そうですね」

 ソラの視線の先には、ぐでーっと机に顔を伏せる猫獣人のニーナがいた。

「そうだよ、ウィル様~。あたし暑いの苦手だもん」

 ニーナがだらしないのはいつもだけど、最近は特にひどい。本当に暑さのせいなのかと疑いたくなるけど、隣にはぐったりした犬獣人のロトンの姿がある。
 二人は同じ獣人族だから、暑さに弱いのだと僕は察し、声をかける。

「大丈夫か? ロトン」
「は、はい、何とか……部屋の中は涼しいですから」

 ニーナやロトンのような獣人種は、暑さに弱く寒さに強い。そういう点では、狼人のホロウもかなりきついようだ。
 ホロウは僕のほうを見て、弱々しく笑う。

「狼人は獣人の中でも暑さに極端に弱いんです。だからもう……皆も参っていました」

 ずっと雪山で生活していた彼女たちには、この暑さは初体験だろう。今のところ、病院に運ばれてくる脱水患者の四割が、狼人族らしい。
 僕はユノに意見を求める。

「ねぇユノ、何か良い案はないかな?」
「うむ、そうじゃのう。日差しが原因なら、新たに結界を展開して一部をさえぎってみるか?」

 ユノは少し考えたあと、そんな提案をしてきた。

「そんなことできるの?」
「さぁのう。やってみんとわからんが、試す価値はあると思うのじゃ」

 今はなんでも試してみたい。僕はユノの考えに乗ることにした。

「だったらやろうよ。僕も手伝うからさ」
「決まりじゃな」

 ある程度方針が決まったところで、僕は皆を見回す。

「それじゃあ、他には何かないかな?」
「はいはーい!」

 先ほどまでしおれていたニーナが元気よく手を挙げている。

「はい、ニーナ」
「プールだよ、プール! 皆で遊べるプールを造ろうよ!」

 ニーナが何やら楽しげな案を口にすると、人魚とも呼ばれるセイレーンのサトラが頷く。

「良いかもしれないわね。暑さをしのぎつつ楽しめると思うわ」

 同意が得られて得意げになったニーナが、僕を振り向く。

「やった! サトラさんのお墨付きだよ! ねぇねぇ、ウィル様はどうかな?」
「うん、僕も良いと思うよ」

 遊びたい気持ちが駄々漏れなのはさておき、プールを造るという意見には賛成だ。

「それなら俺も一枚噛めそうだなぁ」

 待ってましたと言わんばかりに話に入ってきたのは、建築を任されているドワーフのギランだ。
 ギランはさらにいくつか提案する。

「どうせならとびきりでかくしようや! ただの水溜まりじゃつまらねぇだろ?」
「さすがだね。もしかして、もう構想があるのかい?」

 僕が尋ねると、ギランはにやりと笑った。

「まあ大まかにな。あとで他の奴らにも意見を聞いて、設計図を作るぞ」
「意見集めなら僕がやるよ。街の皆にも聞いておかないといけないしね」
「おう頼むぜ、旦那だんな! まあこんな状況じゃ、誰も嫌なんて言わねぇだろうけどよぉ」
「そうだね。僕もそう思うよ」


 その後、住民に意見を聞いたけど、案の定反対意見は出なかった。
 むしろ早くできてほしいから、自分たちも手伝いたいと名乗り出てくれた。ありがたく協力してもらおう。
 こうして僕らは暑さ対策を開始した。
 具体的には熱を遮る結界と、遊泳施設の建設。
 遊泳施設のほうはギランに一旦任せて、僕はユノと結界作りに取りかかる。

「あのさ、ユノ」
「何じゃ?」

 ユノと研究室へ入った僕は、率直な疑問を彼女に投げかける。

「実際どうなの? 熱だけを遮る結界なんて作れるのかな?」
「理論上は可能じゃと思う」

 僕が続きを促すと、ユノは彼女の考えを説明する。

「そもそも結界は単なる障壁ではない。すでに展開されておる結界も、入れるものと阻むものを選択しておるじゃろ?」
「あぁ、そういえばそうだったね」

 この街には二種類の結界が展開されている。一つは魔物の侵入を阻む結界。もう一つは、悪意のある者を阻む結界だ。

「そう考えると意外に簡単なのかな」

 僕の言葉にユノが呆れた声を出す。

「たわけか主は? 簡単なはずないじゃろう。むしろ今ある結界より何倍も難しいわい」
「えっ、そんなに?」

 僕としては、魔物を退けたり、悪意を検知したりする結界のほうがよっぽど難しそうなんだけど。

「理由を教えてもらってもいい?」
「構わんが、作業を進めながらでも良いか?」
「もちろんだよ。お願いします」
「うむ」

 僕はユノの指示通りに作業を手伝いながら、彼女の説明に耳を傾ける。
 結界とは単なる壁ではない。ある領域の出入りを選択、制限する高度な魔法の一つ。
 簡単な障壁であれば誰でも作れるが、一部を対象に出入りを制限する場合は、複雑な式を組み込む必要がある。
 ここで一番難しいのは、対象を絞ることだ。より狭い範囲に対象を限定するほうが難しく、エラーが生じやすい。
 魔物や人といった大きなくくりなら比較的容易だ。また悪意や思想によって人を判別し、出入りを制限することも、完璧でなくても良ければ難しくない。
 しかしこれから造ろうとしている結界は、熱を遮るためのものだ。
 熱を生んでいるのは太陽の日差し。ならば日差しを遮断すれば良いか? そんなことをしたら、一日中真っ暗になるだけ。
 遮るのは、太陽光の中でも熱を生じやすい光のみだ。
 説明を終えたユノが、僕に確認する。

「わかったかのう?」
「いや、うん……なんというか、大変なのはわかったよ」

 細かい原理とかも説明されたけど、僕には理解できなかった。
 ユノがやれやれと首を振る。

「まあそれで良い。じゃからこれが完成しても、暑さを完全に無効化することはできぬよ」
「だけど少しでも和らげば良いよ。さすがに五十度なんていったら、僕らでも耐えられないだろうし」
「ワシの計算上は、それを四十度までは抑え込める」
「十分だよ」

 それでもホロウとかは大変かな。ニーナとロトンも今でさえ、ぐったりしている。
 これはいっそうプールの建設に力を注がないといけない。

「あっ!」

 そこで僕はあることを思い出した。

「何じゃ急に? ワシの説明に間違いでもあったか?」
「いや違うよ。そういえば、ダンジョンから持ち帰った器とか色々、全然調べてないなと思ってさ」

 本当なら僕もユノも、今頃研究に没頭しているはずだったんだけどね。暑さ対策でそこまで手が回らなかった。

「仕方ないじゃろ。街のほうが優先じゃ」
「そうなんだけどさぁ……思い出したらまた気になってきたよ」
「やめろやめろ、ワシまで気になるじゃろ」

 ダンジョンの最後の部屋の棚に並んでいたたくさんの本には、まだ目を通せていない。それに日記の内容も気になる。
 あとは一つだけ箱に入っていた器も……あー駄目だ。こんなことを考えていると集中できない。
 暑さの解消は街の皆が待ち望んでいるんだ。

「今はこっちに集中するんじゃ」

 ユノの言葉に僕は頷く。
 早く研究に取り組むためにも、今は目先の課題を終わらせよう。
 幸いなことに結界造りはこれが初めてじゃない。何度か経験しているから、要領はわかっている。
 大変なのは暑さだけを通さないよう式を構築するユノだ。
 僕の役目は、彼女がそっちに集中できるようにサポートすること。
 作業は昼も夜も続き、ユノは睡眠も取らずに奮闘した。


 次の日の夜――

「ユノ、少し休んだら?」
「あと少しじゃ。このペースなら朝には間に合う」

 丸一日作業を続けるユノに僕はたまらず声をかけるが、彼女は自分の手元に集中している。

「そっか……」
「主こそ寝たらどうじゃ? ワシに合わせんでも良いぞ」
「僕は慣れてるから。元々睡眠時間も短いほうだし」
「主は人間なんじゃし、適度に睡眠を取らんと身体に悪いぞ。そういえば、ダンジョンで変換魔法を使ったじゃろ? あれから身体に変化はないかのう」

 逆に心配されてしまった。僕はユノに笑ってみせる。

「うん、今のところ大丈夫だよ。久しぶりに使ったけど、ちょこっとだったし倒れることはないと思う」
「そうか、ならば良い」


 その後、僕らは夜通し作業を進め、朝日が昇る頃には、新しい結界が完成した。
 完成した結界は薄い水色をしている。
 空の青に溶け込むから、結界があるのかどうかもわかりにくい。
 僕はその日、夜まで眠って、翌日からギランに合流した。次はプールの建設に取りかかる。
 まだまだ忙しい日が続くぞ。



 4 水のアトラクション


 新しい結界が完成したことで、街の暑さはいくらか和らいだ。ほんの数度の変化だけど、外で作業する人にとっては嬉しい変化だろう。
 ただし、この暑さはまだまだ序の口。来月にはさらに日差しが強くなる。
 せっかくなら、この暑さだからこその楽しみを提供したい。そんな思いで、僕とギランはプール建設に取りかかる。

「どうせならよぉ、公園みたいな感じにしてぇんだよなぁ~」

 ギランがプールの構想を語った。

「公園みたいな? えっと、遊具を作るってこと?」

 僕が尋ねると、ギランはにやりと笑う。

「普通の遊具じゃねぇぞ? 水を取り入れた遊具だ! 一応イメージはできてんだが、まあ試行錯誤してくしかねぇな」
「へぇ~、そのあたりはギラン任せだからよろしくね」
「おうよ!」
「その前に場所と広さを決めないとだね」

 とはいっても、場所に関しては目処めどが立っている。大樹の近くが、未だに広く空いたままだ。何に使おうかとずっと迷っていた場所だった。

「あそこなら広さも十分でしょ?」

 僕がギランに提案すると、彼も賛成の様子だ。

「だなっ! どうせならよぉ、広さも住人全員が入れるくらいにしてぇな」
「そ、それはさすがに無理なんじゃ……」

 頑張って領民を集めていた頃と比較して、この街の人口は大幅に増えた。
 狐人の加入と、王国に捕らわれていた亜人種たち、それから各地に隠れ住んでいた者が押し寄せ、今ではなんと一万人を突破している。しかも、噂を聞きつけて領民になりたいという亜人種は、まだまだ絶えない。
 もしかすると、いつか世界中の亜人種がここへ集まってくるかもしれない。そんな日が来たらいいなと、僕は夢見ている。

「そのくらいの意気込みで行こうって意味だ。まあ現実的な話をすると、せめて数千人は入れるようにするぞ」

 それでもかなりの規模だけど……まあ、ギランが言うなら何とかなるかな。

「そうだね。それならできるかも」
「んじゃ、さっそく設計図を作るぜ」

 僕とギランは完成予想図を作り始める。まずは建設予定の場所へ行き、周囲の状況などを確認する。さらに近くの建物などに影響がないかなども調べていく。

「あれだな。大樹に近づきすぎると、ほとんど日が入らねぇな」

 ギランの意見に僕も同意する。


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