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3巻

3-1

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 1 研究再開


 名門グレーテル家の三男ウィリアム・グレーテルとして生まれた僕は、貴族の癖に魔法が使えないため落ちこぼれと呼ばれていた。
 亜人種に肩入れする変わり者としても知られた僕は、十八歳になる年に何もない枯れた大地に追いやられた。でも僕は隠された【変換魔法】という力を駆使し、左遷先の土地で新しい亜人種たちの街を作るため、建物を造ったり、住人を集めたりしていった。
 大変な日々だけど、僕を支えてくれる人たちもいる。
 小さい頃から一緒にいるメイドのソラを始め、ニーナ、ホロウ、シーナ、サトラ、ロトンというメイドたち。頼りになる相棒で、長い時を生きる神祖しんそのユノ。ドワーフのギランは建築の達人で、獣人の村で決闘したイズチとは親友と呼べる間柄になった。それから幼い頃に出会った狐の獣人ヒナタとも再会を果たし、僕の周りはいっそう賑やかになっていく。
 僕が造った街を取り囲む事情も大きく変わった。
 隣国とのトラブルと、それを巡る国王との交渉によって、ウェストニカ王国から独立することになったんだ。
 そうして僕たちの街は、自由都市ウィルとして新たなスタートを迎えることになった。


 王国から独立し、自由都市となった僕らの街では、今日も穏やかに時間が過ぎていく。季節は巡り、てつく寒さは薄れ、現在は暑い日が続いていた。

「暑い……」

 執務室で仕事をしている僕は、ひたいから流れる汗をぬぐう。
 空調設備を整えておいて良かったと、心から思った。
 この土地には暑いときに五十度を超え、寒いときは氷点下という大きな寒暖差がある。
 人が手を入れていなかったのなら、僕がこの領地に来る前のような、大地が枯れ果てる状態になるのも無理はない。
 王国から離脱して二ヶ月ほど経過した。王国の庇護ひごをなくして最初は少し不安だったけど、今日まで何とかやっている。隣国からの襲撃もなく、大きな問題は今のところ発生していない。
 ただ、色々と一気に変わってしまったから、僕を含めて全員が大忙しだ。

「さてと、ちょっと様子を見に行こうかな」

 まっていた仕事が一段落した僕は、執務室をあとにした。
 廊下に出ただけで一気に気温が上がったのを感じ取る。そこから外へ出ると焼けるように暑い。あまりに日差しが強いので、街の至るところに屋根つきの休憩所をもうけたほどだ。
 今もチラホラ利用している人が見られる。そのうちの一人が声をかけてきた。

「こんにちは、ウィル様」
「うん、こんにちは。今日も暑いから、水分と塩分を取るようにしてね」
「はい」

 王国離脱の騒動をきっかけに、街にはさらに亜人がたくさん集まってきた。
 中でも一番目立つ変化は、見上げるのも大変な大樹だろうか。ユダの大樹という、狐人たちの村にあった大樹を、ユノの開発した魔道具でこの街に移動させた。
 大樹の中には以前は階段しかなかったけど、ギランとユノが協力して階層ごとに転移できる装置を設置した。これで移動がだいぶ楽になった。この装置は街全体で十ヶ所ほど設置されている。操作パネルで行き先を選択し、大きな台座の上に乗れば、十秒後に転送してくれる仕組みだ。

「こんなものまで作っちゃうんだから、やっぱりユノは凄いな~」

 僕は感心しながら、転移装置で大樹の中層へ移動した。
 大樹は上中下の三階層に分かれていて、下層が居住エリア、中層が商業エリアとなっている。そして今から僕が向かう上層には、大樹に住む狐人族のおさであるスメラギがいる。今ではちょっと高級な居住エリアだ。
 上層へ到着すると、神社のような建物がある。その前で車椅子に座っている少女を見つけ、僕は近寄りながら声をかける。

「ヒナタ」
「ウィル!」

 僕の声を聞き、ヒナタはうれしそうに振り返った。

「今日も来てくれたんだね!」
「うん、ちょっと様子を見にね」
「ありがとう! とっても嬉しいよ」

 僕はヒナタを王国から救い出したあの日から毎日、彼女の様子を見に来ている。特に用事がないときでも、こうしてふらりと訪れる。そういうとき、彼女はいつも僕に微笑ほほえんでくれた。

「リハビリは順調?」

 僕が尋ねると、ヒナタは元気よくうなずく。

「うん!」

 ヒナタはよいしょっというかけ声とともに、車椅子から立ち上がった。

「見てて!」

 ヒナタはそう言い、ゆっくりと歩き出す。
 まだまだぎこちないけど、一歩一歩しっかり地面を踏みしめながら歩いている。
 彼女は十年にわたって地下の牢獄ろうごくに捕らわれていた。
 食事も粗末で栄養が不足し、動く機会もなかったから筋力が低下した。
 再会したときには、かなり弱っていたヒナタだけど、今日まで毎日リハビリを頑張って、何とか一人で歩けるくらいには回復している。

「いいね、ヒナタ。ちゃんと歩けてる」
「うん! まだ長い時間は無理だけどね。でもでも! こんなこともできるようになったんだよ!」

 彼女はステップを踏み、その場でクルリと回ろうとした。
 しかし、勢い余ってふらつく。

「わっ!」
「――っと!」

 倒れそうになったヒナタを、僕は慌てて抱きかかえた。


「危ないな~。あんまり無茶しちゃ駄目だよ?」

 僕が注意すると、彼女は悪戯いたずらがバレた子供のように笑った。

「えへへ、ごめんね」

 その笑顔を僕は、太陽のようにまぶしく感じる。
 ヒナタは今でこそ底抜けに明るいが、牢獄を出てからの数週間は、表情がぎこちなかった。
 自分の顔も見られない場所にいたから、笑い方がわからなかったと彼女は言っていた。
 それでも僕と話しているときは、わりと自然に笑ってくれていたから、皆とは違う反応に少しだけ優越感を覚えたりする。

「ウィル」

 ヒナタの声に、僕は振り返る。

「ん?」
「いつか自由に歩けるようになったら、一緒にどこかへ遊びに行こうよ」
「うん、もちろんいいよ」
「約束だよ?」

 念を押すヒナタに、僕は笑ってみせた。

「約束だ」

 この約束が、彼女をはげます力となりますように。


 ある日の夕暮れ。僕は一人、ユノの研究室を訪れた。

「入るよ」

 僕の声に反応したユノがこちらを振り向く。

「ん、何じゃぬしか」
「うん。今時間あるかな?」
「また惚気のろけばなしか」

 ユノはムスッとした表情でそう言った。

「ち、違うよ!」

 僕は慌てて否定したけど、ユノは呆れたような顔をする。

「どうだかのう。最近の主ときたら、ことあるごとにヒナタとかいう狐娘の話ばかりしよる」
「そ、そうかな?」
「自覚なしか。あまり一人に構ってばかりいると、皆から愛想あいそを尽かされるぞ?」
「気をつけます」

 今日のユノは何だか機嫌が悪いみたいだ。色々と話があって来たんだけど、この様子だと日を改めたほうがいいかもしれない。そう思った僕が、とぼとぼと研究室を出ようとすると、ユノに引き止められた。

「どこへ行くのじゃ?」
「えっ、いや……間が悪そうだったから帰ろうかと」
「話があるのじゃろ? ならさっさと済ませよ」
「いいの?」

 僕が尋ねると、ユノは仏頂面ぶっちょうづらで答える。

「初めから駄目とは言っておらんが?」
「でも何か、怒ってたし……」
「主よ……むしろこの状況で帰られるほうが不愉快じゃぞ」
「じゃ、じゃあ話すね」

 やっぱり機嫌が悪いのは確かだ。ここは言葉を選びつつ、とどこおりなく話を進めるようにしなければ。
 いつもより緊張しながら僕は話す。

「相談なんだけどね? そろそろ亜人の研究を本格的に再開しようかと思ってるんだ」
「ほう、どうしてまた?」
「今までは領地開拓で忙しかったけど、最近はそうでもないでしょ?」
「まあそうじゃな。人数こそ増えたが、生活の基盤ならとうに整っておるわけじゃし」
「うん。だからそろそろかなぁーって」

 最近はできていなかったが、僕は亜人種の成り立ちについて研究している。この世界に突如として誕生した亜人種たち。そこに隠された謎を解き明かし、彼らを理解することが僕の夢なのだ。
 研究はユノにも協力してもらっている。ただ、この領地へ移ってからは、開拓や諸々の問題で手一杯で、研究を進める余裕がなかった。
 ここへ移ったばかりの頃は、何もないまっさらな荒野だったけど、現在開拓はおおむね完了しているといっても過言ではない。
 僕は話を続ける。

「正直に言うとね? この街にたくさんの亜人種が集まってくるたびに、研究のことを思い出してウズウズしてた」
「そうじゃったのか」
「うん。でも僕は領主だから、皆のことを優先して考えなきゃって思って我慢してたよ」

 しかし最近は急ぎで必要な設備も、対応すべき問題も特に起きていない。
 今しかないと僕は思っていた。

「また遺跡を探索したり、研究を本格化させるなら、ユノにも手伝ってもらいたいんだけど……いいかな?」

 ユノはあごに手を当てて考えるそぶりをした。

「ふむふむ、そうかそうか。そんなにワシに手伝ってほしいのか?」
「えっ、うん」

 いきなり聞かれて、僕は反射的に頷いてしまう。
 するとユノは嬉しそうな表情になる。

「ふんっ、仕方がないのう! 主にはワシがおらんと駄目なようじゃな」

 さっきまで不機嫌だったのに……まあ、機嫌が直ってホッとした。
 ユノが研究の段取りの話に入る。

「で、主よ。何から進める? どこから取りかかるんじゃ?」
「えーっと、それなんだけどさ。前に皆を街に引き入れるために色々な場所へ行ったよね?」
「行ったのう。ワシの扉を使ってな」
「その途中で、新しい遺跡を三ヶ所くらい見つけたのって覚えてる?」
「あぁ、そういえばあったのう」

 エルフの森、狼人おおかみびとの雪山、セイレーンの海。
 以前訪れたこの三ヶ所の近くで、僕らは大昔に造られた建造物を発見している。
 あのときは探索する余裕がなかったけど、もしかすると亜人種の謎につながるヒントが隠されているかもしれない。
 僕はユノに提案する。

「ひとまずその三ヶ所を探索してみない? 他にも世界各地には遺跡が点在しているから、三ヶ所を調べ終えたら各地を巡ってみたい」

 ユノは腕を組んで頷く。

「良いのではないか? あの三つはワシも初見じゃし、有益な情報が眠っておるかもしれん」
「よし! だったらどこから回ろうか」

 見た目や規模はどこも似たような感じだった。あとは周辺の環境とか、扉からどれくらい離れているかが考慮すべき点になる。

「エルフの森かセイレーンの海じゃな」
「ちなみにどうして?」

 即答したユノに僕は尋ねた。すると――

「寒いのは嫌じゃ」
「……」

 子供じみた理由だった。
 何となく彼女ならそう言うんじゃないかと予想はしていたよ。
 僕はやれやれと首を横に振る。

「別にいいけど、雪山もいずれ行くからね?」
「……」

 ユノは無反応だった。さっきまでの上機嫌はどこへやら。雪山に行きたくないオーラがにじみ出ている。

「そんなに嫌なの?」
「嫌じゃな」
「だったら仕方がないね。雪山だけは他の誰かと一緒に――」

 またしても即答したユノに、僕がそう言うと――

「やっぱり行くのじゃ」
「えぇ?」

 急に手のひらを返したので、唖然あぜんとする。今日のユノは何か変だ。

「他の女子おなごと行くくらいなら、ワシが行ってやるわい!」
「別に女の子とは限らないけど……でも行ってくれるんだね?」
「……うむ」

 ちょっと間があったけど言質げんちは取った。
 とはいえ、また駄々だだをこねられると面倒だし、嫌なことは早めに済ませたほうがいいと思って僕は告げる。

「じゃあ雪山から探索しよう」
「……主は鬼か」
「これでも純粋な人間だよ」

 こうして最初の目的地は、極寒の雪山に決定した。


 雪山出身のホロウの話では、以前訪れたときに見舞われた大寒波はすでに収まって、気象は安定しているらしい。それをユノに説明したが、彼女はあんじょうぶつぶつと文句を口にしていた。
 嫌がるユノを無理やり引っ張り、僕らは探索に向けて準備を進める。

「うぅ……また遭難そうなんでもしたらどうするつもりじゃ~」

 ぐずぐずとごねるユノに、僕は再度説明する。

「今度は大丈夫だよ。ルートはわかるし、前みたいに天気が荒れるのはまれって話だから」
「主よ……稀というのはゼロではないんじゃぞ?」
「知ってるよ。そのときはすぐに引き返せば問題ないから」

 今回は急ぐ理由もないので、もし続行が困難な場合は、大人しく引き返して日を改めれば良いだけだ。あれこれ言いながら、僕らは準備を進めていった。


 翌日の早朝――
 外は灼熱しゃくねつの地獄と化す中、僕とユノだけはそんな気候にそぐわない格好をしている。
 全身しっかりと着込んで、風を通さないように防御済みだ。

「暑いのじゃ……」
「仕方がないよ、ユノ。この扉をくぐったら、一気に寒くなるからね」

 そう言う僕も服の中は汗がにじんできている。しかし、寒波が収まっているとはいえ、現地の気温は氷点下。これくらい着込まないと、前回みたいにユノは気絶してしまうだろう。

「早く行くぞ」

 ユノがかしてくるので、僕はちょっと意地悪に返す。

「あれ? さっきまで行きたくないって言ってたのに」
「やかましいわ! ワシは暑いのも嫌いなんじゃ」
「はははっ、じゃあ出発しようか」

 ユノはからかいがいがある。まあ、行く気になってくれて良かったよ。僕らはさっそく扉を潜り、雪山へと移動した。

「寒いのじゃ!」

 ユノの叫びが真っ白な景色に木霊こだまする。

「そう? 前よりマシだと思うけどなぁ」
「どこがじゃ! 普通に寒いではないか!」
「そりゃーまあ、このくらいは寒いよ」

 僕は手持ちの温度計で気温を確認した。現在の気温はマイナス三十度だ。
 それをユノに伝えると、彼女はまた駄々をこね出した。

「やっぱりワシは帰る! こんな寒いところにいられるか!」
「ちょっと! 駄目だよ。行くって決めたんでしょ?」
「嫌じゃ嫌じゃあ! 帰って暖かい布団で二度寝するんじゃ!」

 ユノは子供みたいに叫び始めた。これには僕も呆れてしまう。
 普段は頼りがいがある彼女も、極限の寒さには勝てないのか。もしくはこっちが素なのか。
 どちらにしろ、このままじゃ先へ進めない。

「しょーがないな~」

 僕はそう言って彼女をお姫様抱っこする。

「よっと! ユノは軽いね」
「なっなな、何をするんじゃ!」
「だってこうしないと、いつまでっても出発できないでしょ?」

 僕はユノを抱えたまま歩き出す。

「急に触れるでないわ! 驚くじゃろ!」

 ユノは態度こそ変わらないが、嫌がるそぶりはない。

「はいはい、だったら自分で歩く? 嫌なら下ろすよ」
「むっ……しばらくこのままで良い」

 ユノは頬を赤らめながら、僕の胸に顔を寄せる。

「寝ないでよ、ユノ?」
「こんな状況で寝られるか」
「前は寝てたよね……」

 僕らは軽口を交わしながら先へ進んだ。しばらく行くと、ユノから下ろしても良いと言われた。
 さすがに観念したらしく、今は隣を歩いている。ただ相変わらず文句はタラタラだ。

「まだかのう……」
「あと二十分くらいだよ」
「そんなにあるのか……雪の上は歩きにくいのじゃ……」

 地面には新しい雪が積もっていて、踏みしめると足が沈む。かなり歩きにくいのは確かだ。
 僕は少し慣れてきたけど、ユノは全く慣れないとぼやいている。

「二ヶ月くらい前に、うちの領地でも雪が積もったよね? ちょっとは慣れたと思ってたけど」

 僕がそう尋ねると、ユノは当然のように応える。

「ワシがあの時期に外へ出たと思うか?」
「……出てないんだね」
「愚問じゃな」

 ユノはなぜか偉そうに言い切った。
 よくよく思い出してみると確かにそうだ。雪が積もったあとは、外出するユノの姿をほとんど見ていない。
 ずっと研究室でぬくぬくしていたわけか。

「来年は無理にでも外に出てもらおうかな」

 僕が意地悪くそう言うと、ユノは本気でおびえた表情を浮かべた。

「主、やはり鬼か」
「この際それでもいいかな~」

 そんな冗談を話しながら、僕らは歩を進めた。


 目的の場所に到着した僕らの前には、大きく雪で盛り上がった小山があった。僕はそれを見ながら呟く。

「確かここだったんだけど……雪で入り口が埋もれてるね」
「なら帰るかのう」

 僕はきびすを返そうとするユノの腕をつかんで言う。

「いや、雪をどけるよ」
「……わかったのじゃ」

 僕らは雪かきの要領で、入り口をふさいでいる雪をどけた。
 寒波の間はずっと吹雪が続いていたみたいで、予想よりもたくさん積もっていた。三十分くらいかけて、何とか除雪を終える。身体を動かしたから、少し温まった。
 雪をどけた場所に出現したのは、石でできた四角い入り口だ。そこから階段が下へ続いている。僕はユノを振り向いた。

「それじゃ行こうか」
「うむ」

 僕らは遺跡の内部へと足を進めた。



 2 雪山のダンジョン


 中に入ってすぐの階段はかなり長いようで、先は暗くてよく見えない。僕らはあらかじめ用意しておいたランタンに火をともし、周囲を照らしながら階段を下る。

「……寒い」

 ユノが両腕で身体を包むようにして呟いた。

「そうだね」
「中に入れば平気かと思ったが、全く変わらないではないか」
「でも風はないし、外よりはマシでしょ?」
「少しの差じゃがのう」

 ユノの愚痴ぐちを聞きながら、僕は先へ進んだ。しばらくすると階段が終わり、長い一本道に差しかかった。
 どうやらこの遺跡はかなり広いらしい。これまでに探索してきた遺跡は、こんなに地下深くなかったし、もっと狭かった。
 今回はそれらの何倍も大きい可能性がある。その分、高まる期待も倍増だ。

「あっ、分かれ道だね」
「じゃのう」

 目の前には二手に分かれた道がある。
 僕はユノにお願いして、内部構造を魔法で調べてもらった。

「むっ……どちらも先まで続いておるが、かなり入り組んでおるのう。まるで迷路じゃ」

 僕はユノに尋ねる。

「そうなの? どっちが正解かわかる?」
「少し待て。最深部へ到達できるルートを割り出しておる」

 彼女の能力でわかるのは構造までだ。実際の景色やそこに何があるのかは見て確かめないとわからない。とりあえず、一番奥に続いている道を探してもらおう。

「こっちか? いや違うのう……なら次の道を……あぁ、もう間違えたのじゃ!」

 道順の割り出しには五分くらいかかった。
 イライラしながら調べるユノを見て、かなり複雑な構造になっていることを察する。やっぱりこれまでの遺跡とは違うようだ。

「よし、こっちじゃな」

 ようやく探査が終わったらしいユノに、僕は声をかける。

「お疲れ様」
「まだ早いぞ。そのセリフはここを出てからじゃ」

 ユノに案内され先へと進む。
 彼女が言っていた通り、進めば進むほど道は分かれ、入り組んでいる。
 もし一人で来ていたら、確実に迷子になっていただろう。ユノが一緒で良かったと心底思う。


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