一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生

染井トリノ

文字の大きさ
上 下
129 / 132
魔界編(本編)

181.ケルア草

しおりを挟む
 スズネを治療するため、俺は一人ケルア草採取へと向かった。
 場所はガストニアを西に十数キロ下った洞窟である。以前ここへ親衛隊を向かわせたらしいが、それなりの道のりを歩いて、無駄骨だったというのだから報われない。

 洞窟はすぐに見つけることができた。
 岩肌にぽっかりと開いた穴、周辺には魔物の気配は無い。

「され、行きますか」

 俺は洞窟の中へ入った。
 当然だが明かりは無い。魔法で足元を照らしながら進む。

「なんだか暗い場所ばっかりきてるなぁ~」

 俺は奥へと進みながらそうぼやいた。
 こういう暗い道のりを歩くのは、遺跡に続いて二度目だ。魔界へ訪れて数日、地上を歩いている方が少ないように錯覚する。

 洞窟には複数の魔物が生息している。出発前に入手した事前情報によると、少なくとも三種類はいる。そのうちの一種が、目の前に現れた。

「シュルルルルル――」

 ヘビーシャーク、エリサがネクロマンスで召喚した魔物。今回は死体ではなく本物である。
 巨大な蛇の魔物で、口から吐かれる毒の息は、洞窟のような密閉された空間では脅威である。

「【風魔法:風刃ふうじん】」 

 真空の刃が、シャークの首を両断した。
 シャークの攻略法は単純。毒の息を吐かれる前に、首を斬りおとせばいい。感知能力が高く、回避も得意なので、可能な限り速い攻撃がベストである。

「よっと」

 付け加えると、シャークの体液にも触れてはいけない。息と同じく猛毒であるためだ。
 俺はシャークの死体を飛び越えた。
 さらに先へと進んでいく。途中別れ道もあり、いりくんでいるが問題はない。クロガネから正しい道順は聞いてある。

「お次は蜘蛛か」

 続いて立ち塞がったのは、バンブルスパイダー。ハチのような模様をした蜘蛛の魔物である。
 シャークほどの大きさは無いが、複数体が壁の左右上下に張り付いている。よくみると、すでに糸で巣を形成している。
 スパイダーの吐く糸は、鉄の剣で斬れない強靭さをもっている。それを束ねさらに強度を増し、強い粘性で絡まった獲物を逃さない。

「【炎魔法:フレアバースト】」

 洞窟を満たす程の炎を前方へ放つ。
 スパイダーの糸は炎に弱い。さらにスパイダー本体も炎に弱く、相性は抜群である。
 ただし、仲間が糸に捉えられている場合は控えよう。一緒に燃やしてしまうから。

「暑い……」

 洞窟の中で炎を使うと一気に暑くなる。
 魔法は周囲の環境、相手との相性など様々な情報を元に選択して使っていく。
 さらに奥へ進んでいく。今のところ何も無いが、注意を怠ってはいけない。クロガネから聞いた最後の一種、ヘルバットが潜んでいるかもしれないのだ。
 ヘルバットはコウモリも魔物、特殊な超音波によって、自らの音を消すことが出来る。さらに外見が真っ黒であるため、暗い洞窟では見つけ難い。そして超音波は攻撃にもなる。実態がない攻撃は、視認することが出来ず、音も無く察知が難しい。

「【探知魔法:マナフィール】」

 こういう時に役立つ魔法が、魔力を感知する魔法である。
 音や気配は無くとも、魔物であれば魔力を持っている。しばらく進んでいくと、前方に複数の反応を感知した。
 一旦立ち止まり、千里眼で観察する。天井から黒い影が数体ぶら下がっているのを発見。

「【雷魔法:ライジュウ】」

 すかさず遠距離狙撃をしかける。雷を束ねた光線が、ヘルバットを次々に撃ち落している。
 合計九発打ち込み、同じ数のヘルバットを討伐した。強力な魔物だが、見つけてしまえばそれほど恐くない。
 順調に進んでいくこと三十分。俺はようやく目的の場所へ到着した。
 青く光る水晶、透き通る地下湖、そして優しい緑色をした草が生えている。

「ケルア草発見だな」

 この空間に魔物がいないことを確認する。
 俺はケルア草まで近寄り、膝をついてそっと手を伸ばした。

「うん、間違いないな。それじゃ――始めますか」

 万能薬の調合、材料はすべてここに揃っている。
 まずケルア草、これの葉だけをちぎりすり潰す。茎までとってしまうと、すぐに枯れてしまうのだ。
 すり潰す際に加えるのが、湖の水と水晶のかけらである。
 この湖の水には、余計なものが一切含まれていない。さらに水晶、これは魔法原石の一種で、高純度高品質に育っている。
 どちらもこの環境が育んだ素材、これらでなくては万能薬は作れない。

「よし、あとは――」

 すり潰し混ぜ合わせたそれに、僅かずつ魔力を注ぐ。
 この作業は一番難しい。少しでも量を間違えたり、時間がずれれば万能薬は出来ない。この作業を最低一時間は行う必要があるのだ。
 その間、神経を研ぎ澄まし続けなくてはならない。仮に敵が攻めてきたら、隙をつかれて負けてしまうかもしれない。それほどの集中が必要なのだ。

「スゥー……」

 呼吸を整えならが耐える。
 スズネを助けるため、彼女との約束を果すため、アリス達のもとへ帰るため。
 俺は魔力を注ぎ続ける。
 
しおりを挟む
感想 291

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺おとば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。