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魔界編(本編)
168.アリス・フォートランド③
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仰向けに倒れているエリサに、俺は質問を投げかけた。
「魔界へ来たのは国を滅ぼすためか、それとも味方に付けるためか? お前以外に何人来ている」
「……」
エリサは俺の質問を聞きながら、俺の顔をじっとみていた。そして、質問の答えではない言葉を口にする。
「どうやって……」
エリサは、自分がどうやって倒されたのかわからなかった。俺は期待した答えが返ってこなかったことに苛立ちながら、彼女の疑問に答えた。
「……上を見てみろ」
エリサは視線をずらし、空を見上げた。空には魔法陣が展開されていた。発動後で徐々に消えかかっている。
「あれは……」
「お前がシャークをけしかけた時点で、二体の悪魔を待機させていることには気付いてたからな」
エリサはようやく理解した。
そう……。つまり、シャークに飛び掛る直前に、もう魔法陣を展開させていたのね。それに私は気付けなかった。
「……さすがね」
エリサは脱力してそう言った。
俺は彼女に再度問いかける。
「そろそろ、俺の質問に答えてもらおうか」
「答えると思うの?」
「……」
俺とエリサは視線を重ねたまま逸らさなかった。
「だろうな。お前は答えないと思ったよ」
さらにつけ加えるならエリサにも、ゼロによって干渉魔法を妨害するプロテクトが施されているはずだ。彼女が自ら口を割らなければ、これ以上の情報は得られそうに無い。
「当然よ、だってメリットがないもの。それとも……言えば助かるのかしら?」
「……」
俺はエリサの全身を見回した。光の剣は彼女の手足、腹部に突き刺さっている。にじみ出た血が、彼女の服と地面を赤く染めていく。
俺は首を横に振ってこう答えた。
「いいや、助からない。手加減はしてない、急所も外してない。お前はいずれ死ぬ」
「でしょうね」
無情に言い放った俺を笑いながら、エリサはアリスに目を向けた。
「この先に……遺跡があるわ」
「遺跡?」
「真実を知りたいのなら、自分の目で確かめなさい」
「真実って一体――」
「アリス」
俺が名前を呼ぶと、アリスは口に出かけた言葉をそっとしまいこんだ。この時にはすでに、エリサは両目を閉ざしていたのだ。
戦いが終わった後、俺達はエリサが言っていた遺跡へ向かった。アリスが暗い表情をしながら、俺に問いかける。
「よかったのですか。あの人の遺体を……」
エリサの亡骸には一切触れていない。今もまだ、地面に転がり落ちている。
「ああ」
「ですが……」
「そうだな、ゼロなら復活させる手段をもってるよ。だけどそれはない」
「何故ですが?」
「ゼロにとって、あいつらは使い捨ての駒でしかないからだ。目的のために利用しているだけ。余程貴重な力を持っていない限り、一人や二人死のうが、あいつはなんとも思わないよ」
アリスは俯きながら歩いている。そんな彼女の横顔を見ながら、俺は足を止めて尋ねた。
「それより、本当に行くんだな?」
「はい」
アリスは立ち止まって振り返り、真剣な表情をして答えた。そしてこう続ける。
「危険だとはわかっています。ですが、私は知りたいです。自分が何者なのかを……」
「そうか……わかったよ」
「申し訳ありません」
アリスは謝罪を口にして頭を下げた。
「謝らなくていい。自分のことを知りたいと思うのは当然だ。ただ、一つだけ約束してくれ。なにを知っても、今の自分は見失うな」
「……はい」
俺には不安あった。エリサの口ぶりかして、おそらくこの先で知る真実は、あまり良い内容ではない。内容次第では、アリスの心を傷つけてしまうかもしれない。でも、知りたいと強く思う彼女の気持ちも無下にはしなくなかった。
不安を抱きながら、俺達は歩き続けた。そして、目的の遺跡に到着した。
「ここが……思っていたより小さいな」
コケの生えた石レンガで出来た建物があった。大きさは民家程度しかなく、それ以外に建造物はない。人や魔物の気配も感じられなかった。
ムウが建物に近づき、入り口らしき場所を見つけた。
「主殿、アリス殿! ここに階段があるであります!」
ムウが見つけた階段は建物の中でなく、横に沿うように設けられていた。俺とアリスが階段へ近寄る。
「地下か」
「そのようですね」
数秒無言で階段を見つめた後、俺は横にある建造物に視線を向けた。
「先にこっちを調べよう」
「はい」
俺達は建物の外周を回った。すると、階段とは反対側の壁に、民家の玄関より二周りほど大きな入り口があった。警戒しながらゆっくりと中へ入る。中は殺風景で、床と天井と壁があるだけだった。
「何もないでありますなぁ」
「いや……」
俺は壁に描かれている壁画をみつけた。
たくさんの人間が空に手を挙げている。人間達の上には、天使のような存在が描かれていた。
「なにを示しているのでしょうか」
「さぁな。何かを召喚するための儀式……人間はそのための生贄か?」
「生贄……」
「ただの予想だよ。その答えもきっと、あの階段の先にあるはずだ」
建物内には、それ以外何も無かった。俺達はムウが見つけた階段まで戻った。そして――
「行くぞ」
「はい」
「了解であります」
階段を降り始めた。
この先に待っている真実は――
「魔界へ来たのは国を滅ぼすためか、それとも味方に付けるためか? お前以外に何人来ている」
「……」
エリサは俺の質問を聞きながら、俺の顔をじっとみていた。そして、質問の答えではない言葉を口にする。
「どうやって……」
エリサは、自分がどうやって倒されたのかわからなかった。俺は期待した答えが返ってこなかったことに苛立ちながら、彼女の疑問に答えた。
「……上を見てみろ」
エリサは視線をずらし、空を見上げた。空には魔法陣が展開されていた。発動後で徐々に消えかかっている。
「あれは……」
「お前がシャークをけしかけた時点で、二体の悪魔を待機させていることには気付いてたからな」
エリサはようやく理解した。
そう……。つまり、シャークに飛び掛る直前に、もう魔法陣を展開させていたのね。それに私は気付けなかった。
「……さすがね」
エリサは脱力してそう言った。
俺は彼女に再度問いかける。
「そろそろ、俺の質問に答えてもらおうか」
「答えると思うの?」
「……」
俺とエリサは視線を重ねたまま逸らさなかった。
「だろうな。お前は答えないと思ったよ」
さらにつけ加えるならエリサにも、ゼロによって干渉魔法を妨害するプロテクトが施されているはずだ。彼女が自ら口を割らなければ、これ以上の情報は得られそうに無い。
「当然よ、だってメリットがないもの。それとも……言えば助かるのかしら?」
「……」
俺はエリサの全身を見回した。光の剣は彼女の手足、腹部に突き刺さっている。にじみ出た血が、彼女の服と地面を赤く染めていく。
俺は首を横に振ってこう答えた。
「いいや、助からない。手加減はしてない、急所も外してない。お前はいずれ死ぬ」
「でしょうね」
無情に言い放った俺を笑いながら、エリサはアリスに目を向けた。
「この先に……遺跡があるわ」
「遺跡?」
「真実を知りたいのなら、自分の目で確かめなさい」
「真実って一体――」
「アリス」
俺が名前を呼ぶと、アリスは口に出かけた言葉をそっとしまいこんだ。この時にはすでに、エリサは両目を閉ざしていたのだ。
戦いが終わった後、俺達はエリサが言っていた遺跡へ向かった。アリスが暗い表情をしながら、俺に問いかける。
「よかったのですか。あの人の遺体を……」
エリサの亡骸には一切触れていない。今もまだ、地面に転がり落ちている。
「ああ」
「ですが……」
「そうだな、ゼロなら復活させる手段をもってるよ。だけどそれはない」
「何故ですが?」
「ゼロにとって、あいつらは使い捨ての駒でしかないからだ。目的のために利用しているだけ。余程貴重な力を持っていない限り、一人や二人死のうが、あいつはなんとも思わないよ」
アリスは俯きながら歩いている。そんな彼女の横顔を見ながら、俺は足を止めて尋ねた。
「それより、本当に行くんだな?」
「はい」
アリスは立ち止まって振り返り、真剣な表情をして答えた。そしてこう続ける。
「危険だとはわかっています。ですが、私は知りたいです。自分が何者なのかを……」
「そうか……わかったよ」
「申し訳ありません」
アリスは謝罪を口にして頭を下げた。
「謝らなくていい。自分のことを知りたいと思うのは当然だ。ただ、一つだけ約束してくれ。なにを知っても、今の自分は見失うな」
「……はい」
俺には不安あった。エリサの口ぶりかして、おそらくこの先で知る真実は、あまり良い内容ではない。内容次第では、アリスの心を傷つけてしまうかもしれない。でも、知りたいと強く思う彼女の気持ちも無下にはしなくなかった。
不安を抱きながら、俺達は歩き続けた。そして、目的の遺跡に到着した。
「ここが……思っていたより小さいな」
コケの生えた石レンガで出来た建物があった。大きさは民家程度しかなく、それ以外に建造物はない。人や魔物の気配も感じられなかった。
ムウが建物に近づき、入り口らしき場所を見つけた。
「主殿、アリス殿! ここに階段があるであります!」
ムウが見つけた階段は建物の中でなく、横に沿うように設けられていた。俺とアリスが階段へ近寄る。
「地下か」
「そのようですね」
数秒無言で階段を見つめた後、俺は横にある建造物に視線を向けた。
「先にこっちを調べよう」
「はい」
俺達は建物の外周を回った。すると、階段とは反対側の壁に、民家の玄関より二周りほど大きな入り口があった。警戒しながらゆっくりと中へ入る。中は殺風景で、床と天井と壁があるだけだった。
「何もないでありますなぁ」
「いや……」
俺は壁に描かれている壁画をみつけた。
たくさんの人間が空に手を挙げている。人間達の上には、天使のような存在が描かれていた。
「なにを示しているのでしょうか」
「さぁな。何かを召喚するための儀式……人間はそのための生贄か?」
「生贄……」
「ただの予想だよ。その答えもきっと、あの階段の先にあるはずだ」
建物内には、それ以外何も無かった。俺達はムウが見つけた階段まで戻った。そして――
「行くぞ」
「はい」
「了解であります」
階段を降り始めた。
この先に待っている真実は――
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