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魔法学園編(本編)
113.フレンダ・アルストロメリア②
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街で流れている噂話を耳にしたクランとグレン。
二人は朝食でその話をレイブ達にも伝えた。
話を聞いたリルネットが言う。
「街に出るゾンビ……本当だったら怖いね」
「そうっすよね~」
「まぁでも所詮ただの噂だしな? そいつも酔ってたらしいし夢でも見てたのかもしれないぜ?」
「複数の人間が同じ夢をですか? その方が不自然ですね」
「確かに……」
グレンの言葉にアリスが突っ込みをいれる。
「もし……」
レイブが口を開いた事で、全員の視線が集中する。
そしてそのまま話を続けた。
「もしその話が事実だとしたら、この街には【死霊使い】がいるって事になるな」
「死霊使い? それってよく本とかに書いてある……あの【死霊使い】の事っすか?」
「ああ」
レイブの発言にざわつく面々。
そんな中グレンが疑問を投げかける。
「あれって実在したのか? 俺ずっと嘘だと思ってたんだけど……」
「わたしも~ ねぇレイ、本当にいるの?」
リルネットがレイブに尋ねる。
まるで彼なら知っているように聞いたので、少し周囲の目が気になった様子。
レイブは他の視線を伺う。
どうやら不審にがられてはいないらしい。
レイブは心の中でそっと肩を撫で下ろし、その疑問に答える事にした。
「確かに今は資料でしか残ってないけど、俺は実在したと思う。実際【死霊魔法】は存在するしな」
「まさか使えるんすか!?」
皆が大きく反応した。
特にフレンダの反応が大きかったように見受けられる。
レイブは両手で落ち着くように合図した後、こう説明した。
「俺には無理だよ。死霊魔法は特異魔法に分類される魔法で、その資格を持っていないと使えない。だから俺にも使えないし、エレナ……師匠でも無理だね」
魔王だった俺は大抵の魔法なら十二分に使いこなす事が可能だ。
でも死霊魔法は別。
あれを使うにはまず、死者の魂に干渉できる才能を持っていないといけない。
魂を視る眼、魂に触れられる身体、そして魂を使役できる才覚。
その全てが揃って初めて、【死霊魔法】を使える魔術師になれる。
しかしそれだけでは足りない。
「それに【死霊魔法】は、いくつか条件をクリアしないと発動しない」
「条件?」
グレンが聞く。
「ああ。【死霊魔法:ネクロマンス】は、死者の魂を操り使役する魔法で、さっき話してたゾンビのような物を生み出せる。ただし死者の魂を媒介にするには、当然その魂を呼び起こす必要がある。そのための条件が、肉体の一部を所持している事、もしくはその者の魂が肉体から離れた場所……要するに死んだ場所である事なんだよ」
「へぇ~ 結構限定的な魔法なんだな」
「そうだな。だけど、その分強力な魔法だ。仮に戦場で発動させたり、こういう人口の多い街で発動したら、使役できる魂の量は桁外れ……魔力が続く限りゾンビを生み出せる。これほど制圧に向いている魔法は無い」
だけど俺はこの魔法が嫌いだ。
分類こそ違うが黒魔法に似ているから。
死者の魂に干渉する……
そんな事あってはならない。
死者は決して蘇らない。
たとえどれだけ魔法が万能であろうとも、それだけは叶わない。
その真理をこの魔法は冒涜している。
「……」
この時の話は、そのまま流れる形で終わった。
一応警戒するように心がける事にはなったのだが、信憑性が低いのであまり実感が無い。
そしてフレンダはこの話の最中、終始無言だった。
朝食を済ませた一行は、今日も巡回に出かけた。
ペアは昨日と変わらない。
レイブはフレンダと共に街を歩く。
「平和ですね~」
レイブが周囲を見渡してそう言った。
街での日常は穏やかに過ぎている。
さっきのような噂が出る街には到底思えない。
それほどに賑やかで明るい街だ。
子供も大人も老人も、皆笑顔で毎日を過ごしている。
そんな中、一人浮かない顔をしているフレンダ。
「……」
それを黙って見つめ歩くレイブ。
そういえば、朝食であの話になってから一言もしゃべってないような……
「先輩、大丈夫ですか?」
「えっ? 何かしら?」
フレンダは不意を疲れたように反応する。
「いや、さっきからぼーっとしてるので」
「そ、そうだったかしら? ごめんなさい、少し考え事をしていたわ」
会話が始まる。
二人は歩くスピードを少しだけ緩めた。
「今朝の事ですか?」
「ええ……レイブ君は本当だと思うのよね?」
「死霊使いの事ならそうですよ。先輩は信じられませんか?」
「そうね、死霊使いなんて文献でしか読んだ事ないから。だけど……」
フレンダはその後、続く言葉を言わずに黙り込んでしまった。
しかしレイブは察した。
きっと彼女は今、亡き父の事を考えているだろう。
もしこれまでの話が事実で、死霊使いがこの街にいるのなら、彼女の父も使役の対象になる。
彼女の父、テスカルト・アルストロメリアが亡くなったのはこの街なのだから。
「ねぇレイブ君、もし……貴方なら――――」
その瞬間、街に警報が鳴り響く。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
次回更新は11/25(日)12時です。
感想お待ちしております。
二人は朝食でその話をレイブ達にも伝えた。
話を聞いたリルネットが言う。
「街に出るゾンビ……本当だったら怖いね」
「そうっすよね~」
「まぁでも所詮ただの噂だしな? そいつも酔ってたらしいし夢でも見てたのかもしれないぜ?」
「複数の人間が同じ夢をですか? その方が不自然ですね」
「確かに……」
グレンの言葉にアリスが突っ込みをいれる。
「もし……」
レイブが口を開いた事で、全員の視線が集中する。
そしてそのまま話を続けた。
「もしその話が事実だとしたら、この街には【死霊使い】がいるって事になるな」
「死霊使い? それってよく本とかに書いてある……あの【死霊使い】の事っすか?」
「ああ」
レイブの発言にざわつく面々。
そんな中グレンが疑問を投げかける。
「あれって実在したのか? 俺ずっと嘘だと思ってたんだけど……」
「わたしも~ ねぇレイ、本当にいるの?」
リルネットがレイブに尋ねる。
まるで彼なら知っているように聞いたので、少し周囲の目が気になった様子。
レイブは他の視線を伺う。
どうやら不審にがられてはいないらしい。
レイブは心の中でそっと肩を撫で下ろし、その疑問に答える事にした。
「確かに今は資料でしか残ってないけど、俺は実在したと思う。実際【死霊魔法】は存在するしな」
「まさか使えるんすか!?」
皆が大きく反応した。
特にフレンダの反応が大きかったように見受けられる。
レイブは両手で落ち着くように合図した後、こう説明した。
「俺には無理だよ。死霊魔法は特異魔法に分類される魔法で、その資格を持っていないと使えない。だから俺にも使えないし、エレナ……師匠でも無理だね」
魔王だった俺は大抵の魔法なら十二分に使いこなす事が可能だ。
でも死霊魔法は別。
あれを使うにはまず、死者の魂に干渉できる才能を持っていないといけない。
魂を視る眼、魂に触れられる身体、そして魂を使役できる才覚。
その全てが揃って初めて、【死霊魔法】を使える魔術師になれる。
しかしそれだけでは足りない。
「それに【死霊魔法】は、いくつか条件をクリアしないと発動しない」
「条件?」
グレンが聞く。
「ああ。【死霊魔法:ネクロマンス】は、死者の魂を操り使役する魔法で、さっき話してたゾンビのような物を生み出せる。ただし死者の魂を媒介にするには、当然その魂を呼び起こす必要がある。そのための条件が、肉体の一部を所持している事、もしくはその者の魂が肉体から離れた場所……要するに死んだ場所である事なんだよ」
「へぇ~ 結構限定的な魔法なんだな」
「そうだな。だけど、その分強力な魔法だ。仮に戦場で発動させたり、こういう人口の多い街で発動したら、使役できる魂の量は桁外れ……魔力が続く限りゾンビを生み出せる。これほど制圧に向いている魔法は無い」
だけど俺はこの魔法が嫌いだ。
分類こそ違うが黒魔法に似ているから。
死者の魂に干渉する……
そんな事あってはならない。
死者は決して蘇らない。
たとえどれだけ魔法が万能であろうとも、それだけは叶わない。
その真理をこの魔法は冒涜している。
「……」
この時の話は、そのまま流れる形で終わった。
一応警戒するように心がける事にはなったのだが、信憑性が低いのであまり実感が無い。
そしてフレンダはこの話の最中、終始無言だった。
朝食を済ませた一行は、今日も巡回に出かけた。
ペアは昨日と変わらない。
レイブはフレンダと共に街を歩く。
「平和ですね~」
レイブが周囲を見渡してそう言った。
街での日常は穏やかに過ぎている。
さっきのような噂が出る街には到底思えない。
それほどに賑やかで明るい街だ。
子供も大人も老人も、皆笑顔で毎日を過ごしている。
そんな中、一人浮かない顔をしているフレンダ。
「……」
それを黙って見つめ歩くレイブ。
そういえば、朝食であの話になってから一言もしゃべってないような……
「先輩、大丈夫ですか?」
「えっ? 何かしら?」
フレンダは不意を疲れたように反応する。
「いや、さっきからぼーっとしてるので」
「そ、そうだったかしら? ごめんなさい、少し考え事をしていたわ」
会話が始まる。
二人は歩くスピードを少しだけ緩めた。
「今朝の事ですか?」
「ええ……レイブ君は本当だと思うのよね?」
「死霊使いの事ならそうですよ。先輩は信じられませんか?」
「そうね、死霊使いなんて文献でしか読んだ事ないから。だけど……」
フレンダはその後、続く言葉を言わずに黙り込んでしまった。
しかしレイブは察した。
きっと彼女は今、亡き父の事を考えているだろう。
もしこれまでの話が事実で、死霊使いがこの街にいるのなら、彼女の父も使役の対象になる。
彼女の父、テスカルト・アルストロメリアが亡くなったのはこの街なのだから。
「ねぇレイブ君、もし……貴方なら――――」
その瞬間、街に警報が鳴り響く。
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次回更新は11/25(日)12時です。
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