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魔法学園編(本編)
105.剣帝
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剣帝からの提案に了承したレイブは、彼の案内で場所を訓練場へと移していた。
訓練場は王城の敷地内にあり、普段はここで騎士達が日々訓練をしている。
「ずいぶん人が増えましたね」
周囲には数十人の騎士達で埋め尽くされていた。
「私が皆に声をかけたんだ。私の意図は別にして、君と私の一戦は団員達にいい刺激となるだろうと思ってね。駄目だったかい?」
「いえ、別に構いませんよ。それでルールはどうします?」
「感謝するよ。ルールは簡単だ。お互いに剣術のみで戦い、相手を戦闘不能にするか降参させた方の勝利とする。もちろん殺すのは禁止だ」
「寸止めって事ですね。剣術のみというのは?」
「魔法まで使っては、この場が保たないだろう?」
なるほど、ご尤もだ。
訓練場は王城に繋がる建造物で囲まれている。
ここで派手に戦えば、文字通りの大惨事になるだろう。
「了解です。剣は自分のを使ってもいいですか? 貴方と戦うのに、使い慣れていない剣では足りないと思うので」
「ああ、構わないよ。私もそのつもりだったからね」
両者が笑い、互いの視線を合わせる。
剣帝vs灰色の守護者。
名を馳せた強者同士の戦いが幕を開けようとしていた。
周囲に緊張が走る。
そんな時、その緊張を諸共しない少女達がやってくる。
「お兄ちゃん!」
「ライム、それにレイムも……」
二人が走り寄ってくる。
引き締まっていた空気が一瞬で緩んでいった。
「二人ともどうしてここに?」
「お兄様が、団長様と試合をすると聞いて見に来たの!」
レイムが答える。
「陛下と王妃は一緒じゃないのか?」
「お父様達はお仕事に行ったよ。お兄ちゃんによろしくって言ってた!」
「そうか。なら見ていってくれ」
「「はい!」」
元気良く返事をした後、二人は観戦する騎士達の元へ離れていった。
慕ってくれる者に、格好良い姿を見せなくてはいけない。
そんな事を考えながら、レイブは再度アルベルトと視線を合わせる。
「準備は良いかな?」
「ええ、お待たせしました」
再び場に緊張が走る。
レイブは右手に聖剣を取り出し、アルベルトは腰から剣を抜いた。
すでに戦いは始まっている。
掛け声は無くとも、互いに剣を抜いた時点で始まっているのだ。
にらみ合う両者に、周囲の視線は釘付けにされる。
一歩も動いていないにも関わらず、なぜだか眼が離せない。
永遠にこのまま動かないのではないか?
そう思わせるほど膠着した空気に、一人の観客が息を飲み込む。
刹那、全ての視界から両者が消える。
鋼が打ち合う音がした時、二人の剣は刃を合わせていた。
一瞬の鍔迫り合い。
弾き合い間合いを取り、再度剣を合わせる。
悪いな二人とも!
見ててくれなんて言ったけど、見えないかもしれない!
光速の剣戟、瞬きすら許されない攻防。
両者は文字通り、眼にも留まらぬ速さで討ちあう。
そんな光速の戦いの最中、レイブは思考を加速させていく。
思った通り強い。
いや、思った以上に強い。
それに変わっている。
この人の剣には、まるで型が無いようだ。
剣筋が……動きが予めない。
「くっ―――」
現在の攻防は、6:4で剣帝が優勢だった。
戦いを観戦するほとんどの人間が、その光景を当然の結果だと感じている。
剣帝こそ最強の剣士、世間ではそう噂されているからだ。
そんな彼を剣帝たらしめているのは、聖剣のように特別な剣を持っているからではなく、彼の持つ加護にあった。
【鋼の加護】と【剣の加護】。
複数の加護を持つ彼を剣士の頂点に昇華したのが、この二つの加護である。
【鋼の加護】は、使用者の肉体に鋼の硬度を与え、【剣の加護】は、その者の剣術に関する才能を極限まで引き上げる事ができる。
この加護を持つ彼が剣を握れば、剣の力全てを引き出す事も容易だった。
彼と戦った剣士は皆、口を揃えてこう讃えたという―――
あの男は剣そのものだ。
剣帝優勢のまま攻防は続く。
彼の強さを感じたレイブは、さらに思考を加速させていく。
くっそ……
剣そのものとはよく言ったものだ。
本当に言葉通りじゃないか。
この人の剣は型が無いわけじゃなくて、俺が知らない型だってだけかよ!
ふっ、いいや知っている。
俺はこの剣を、彼の剣術を知っている。
彼と剣を交えてようやく思い出した。
先代勇者の仲間に、同じ加護を持つ剣士がいた。
最も剣に愛された男―――騎士サー・ラグロット。
そうかこの人は、あの男の血統か!
「ちっ……これじゃ勝てないな」
小さく言葉を漏らす。
その直後、レイブが一旦大きく距離をとる。
そして、
「あれは―――剣をもう一本持っているぞ!」
レイブは左手に魔剣を生成した。
聖剣と魔剣、二つの刃を構える。
その姿にアルベルトが何かを感じ取る。
彼の雰囲気が変わった……なるほど。
「ここからが本番のようだね」
アルベルトの顔つきが変わる。
緊張で場が染まっていくように、誰一人声をあげなかった。
静寂の中で、張り詰めた糸が切れる音がする。
その音が聞えた時、両者は再び剣を混じる。
魔王の剣と勇者の剣。
二つの剣を手に、レイブは今……剣士の頂に挑む。
訓練場は王城の敷地内にあり、普段はここで騎士達が日々訓練をしている。
「ずいぶん人が増えましたね」
周囲には数十人の騎士達で埋め尽くされていた。
「私が皆に声をかけたんだ。私の意図は別にして、君と私の一戦は団員達にいい刺激となるだろうと思ってね。駄目だったかい?」
「いえ、別に構いませんよ。それでルールはどうします?」
「感謝するよ。ルールは簡単だ。お互いに剣術のみで戦い、相手を戦闘不能にするか降参させた方の勝利とする。もちろん殺すのは禁止だ」
「寸止めって事ですね。剣術のみというのは?」
「魔法まで使っては、この場が保たないだろう?」
なるほど、ご尤もだ。
訓練場は王城に繋がる建造物で囲まれている。
ここで派手に戦えば、文字通りの大惨事になるだろう。
「了解です。剣は自分のを使ってもいいですか? 貴方と戦うのに、使い慣れていない剣では足りないと思うので」
「ああ、構わないよ。私もそのつもりだったからね」
両者が笑い、互いの視線を合わせる。
剣帝vs灰色の守護者。
名を馳せた強者同士の戦いが幕を開けようとしていた。
周囲に緊張が走る。
そんな時、その緊張を諸共しない少女達がやってくる。
「お兄ちゃん!」
「ライム、それにレイムも……」
二人が走り寄ってくる。
引き締まっていた空気が一瞬で緩んでいった。
「二人ともどうしてここに?」
「お兄様が、団長様と試合をすると聞いて見に来たの!」
レイムが答える。
「陛下と王妃は一緒じゃないのか?」
「お父様達はお仕事に行ったよ。お兄ちゃんによろしくって言ってた!」
「そうか。なら見ていってくれ」
「「はい!」」
元気良く返事をした後、二人は観戦する騎士達の元へ離れていった。
慕ってくれる者に、格好良い姿を見せなくてはいけない。
そんな事を考えながら、レイブは再度アルベルトと視線を合わせる。
「準備は良いかな?」
「ええ、お待たせしました」
再び場に緊張が走る。
レイブは右手に聖剣を取り出し、アルベルトは腰から剣を抜いた。
すでに戦いは始まっている。
掛け声は無くとも、互いに剣を抜いた時点で始まっているのだ。
にらみ合う両者に、周囲の視線は釘付けにされる。
一歩も動いていないにも関わらず、なぜだか眼が離せない。
永遠にこのまま動かないのではないか?
そう思わせるほど膠着した空気に、一人の観客が息を飲み込む。
刹那、全ての視界から両者が消える。
鋼が打ち合う音がした時、二人の剣は刃を合わせていた。
一瞬の鍔迫り合い。
弾き合い間合いを取り、再度剣を合わせる。
悪いな二人とも!
見ててくれなんて言ったけど、見えないかもしれない!
光速の剣戟、瞬きすら許されない攻防。
両者は文字通り、眼にも留まらぬ速さで討ちあう。
そんな光速の戦いの最中、レイブは思考を加速させていく。
思った通り強い。
いや、思った以上に強い。
それに変わっている。
この人の剣には、まるで型が無いようだ。
剣筋が……動きが予めない。
「くっ―――」
現在の攻防は、6:4で剣帝が優勢だった。
戦いを観戦するほとんどの人間が、その光景を当然の結果だと感じている。
剣帝こそ最強の剣士、世間ではそう噂されているからだ。
そんな彼を剣帝たらしめているのは、聖剣のように特別な剣を持っているからではなく、彼の持つ加護にあった。
【鋼の加護】と【剣の加護】。
複数の加護を持つ彼を剣士の頂点に昇華したのが、この二つの加護である。
【鋼の加護】は、使用者の肉体に鋼の硬度を与え、【剣の加護】は、その者の剣術に関する才能を極限まで引き上げる事ができる。
この加護を持つ彼が剣を握れば、剣の力全てを引き出す事も容易だった。
彼と戦った剣士は皆、口を揃えてこう讃えたという―――
あの男は剣そのものだ。
剣帝優勢のまま攻防は続く。
彼の強さを感じたレイブは、さらに思考を加速させていく。
くっそ……
剣そのものとはよく言ったものだ。
本当に言葉通りじゃないか。
この人の剣は型が無いわけじゃなくて、俺が知らない型だってだけかよ!
ふっ、いいや知っている。
俺はこの剣を、彼の剣術を知っている。
彼と剣を交えてようやく思い出した。
先代勇者の仲間に、同じ加護を持つ剣士がいた。
最も剣に愛された男―――騎士サー・ラグロット。
そうかこの人は、あの男の血統か!
「ちっ……これじゃ勝てないな」
小さく言葉を漏らす。
その直後、レイブが一旦大きく距離をとる。
そして、
「あれは―――剣をもう一本持っているぞ!」
レイブは左手に魔剣を生成した。
聖剣と魔剣、二つの刃を構える。
その姿にアルベルトが何かを感じ取る。
彼の雰囲気が変わった……なるほど。
「ここからが本番のようだね」
アルベルトの顔つきが変わる。
緊張で場が染まっていくように、誰一人声をあげなかった。
静寂の中で、張り詰めた糸が切れる音がする。
その音が聞えた時、両者は再び剣を混じる。
魔王の剣と勇者の剣。
二つの剣を手に、レイブは今……剣士の頂に挑む。
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