17 / 86
本編
17 顔を隠してなら
しおりを挟む
「……助けに来るなら早く来てくれ」
聞き慣れた美声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けた私は、舞踏会会場となっている大広間の扉から出てくるアーサーと二人の少女に気づいた。
慌てて柱の陰に隠れた私につられたのか、アルバートとエリックも同じ行動をとっていた。
「何、隠れてるんですか。アーサーに話しかけるチャンスですよ」
「……嫌よ。できない」
柱の陰でこそこそ話す私達姉弟に勿論気づかずアーサー達は会話している。
「あら、すぐ助けに行ったのでは、ありがたみがないじゃない」
くすくす笑いながら言うのは、絶世の美少女。美女といってもいいほど大人びて見えるが今年で十七歳だ。仮面をしていても王妃の若い頃は、こうだったに違いないという美貌は充分窺い知れる。漆黒の髪と瞳、すらりとした肢体に真紅のドレスがよく似合う。
私とアーサーの従姉でロバートの妹、エリックの実兄エリオット・ラングリッジ伯爵令息の婚約者、ロクサーヌ・ウィザーズ侯爵令嬢だ。
「……君は、そういう女だよな」
アーサーは、どこかげんなりした様子だった。話からして女性達に囲まれていた彼をロクサーヌが助けたのだろうが、すぐに助け出さず困っている彼を見て楽しんでいたようだ。
「そういえば、王女様とご一緒に来なかったの? 婚約者のあの方が傍にいれば、女性達に絡まれる事もなかったのに」
ロクサーヌの口から王女の話題が出たので、ドキッとした。
「……公式のパーティーは仕方ないけど、それ以外は私と一緒に行きたくないと、はっきり言われたからな」
……そう、かつて私がアーサーに言った事だ。周囲に王女が婚約者を嫌いだと示すために。
「でも、珍しいですね。アーサー様がこういう仮面舞踏会に参加されるなんて」
ロクサーヌの隣にいる少女が言った。アーサーやロクサーヌに比べると、ごく平凡な容姿の少女だ。それは仮面をつけていても分かる。漆黒の髪と暗褐色の瞳、中背で華奢な肢体(私と同じく胸がさほどないので勝手に親近感を抱いている)。
アーサーの母親イグレーヌの若い頃を思わせる容姿の彼女は、彼のはとこ(イグレーヌの従姉の娘)、ロクサーヌのクラスメートで(二人とも特Aクラスだ)親友でもあるエレノア・フォゼリンガム侯爵令嬢だ。
「……事情があってな」
「事情?」
首を傾げるロクサーヌを無視してアーサーはエレノアに言った。
「君こそ、こういう催しは苦手じゃなかったか?」
「……顔を隠してなら、あの方と少しでもお話できる気がして」
「一人じゃ心細いというから、わたくしが一緒に来たのよ」
エレノアの後、ロクサーヌが続けて言った。
「……女性というのは、同じ事を考えるものなんだな」
アーサーが呆れたように言った。
「……でも、あの方、婚約者ではない女性とご一緒で、しかも何やら言い争っていたので、とても話しかけるなどできませんでした」
悲しそうに言うエレノアに私は内心謝った。
(……ごめん! エレノア! アルバートと一緒にいた女は私なのよ! あなたが気にする女じゃないの!)
心の中で、いくら叫んでもエレノアに届くはずはないのだが、とてもアーサーの前に出る勇気がない私は柱の陰から謝罪の念を送っていた。
何を思ったのか、アルバートが私の手首を摑むと歩き出した。アーサー達に向かって。
「……ちょっ、アルバート」
三人に気づかれないように小声でとめようとする私にアルバートは構わない。
「アーサーと話したくて来たんでしょう。行きますよ」
そうだ。その予定だった。だが――。
「今更怖気づかないでくださいね。公衆の面前で婚約破棄宣言どころか妊娠発言までしたんでしょう。正体を隠して婚約者と話すくらいなんですか」
小声で言い合う私とアルバートに最初に気づいたのはエレノアだった。
「……あっ、王子様」
王子に連れられている私を見てエレノアの顔が強張ったのが仮面越しでも分かった。
「……あっ、違うんですの。王子様は王女様に頼まれて私と同行してくださっただけで」
エレノアは王子が好きなのだ。今の私はアルバートの姉、王女ではなく、ただの令嬢。そんな私が仮面舞踏会に王子と一緒に来たのだ。妙な誤解をしても仕方ない。
私としては、アルバートには脳内お花畑なアントニアよりエレノアと結婚してほしいと思っている。
それは、この世で一番嫌いな妾妃に似ているアントニアより、私と同じでさほど胸がないエレノアのほうに親近感を抱いているからじゃない。
エレノアは特Aクラスに入れるほど聡明でテューダ王国の貴族令嬢らしく武術も優れ、それでいて控えめだ。彼女なら王子妃どころか王妃になっても、うまくやるだろう。
何よりエレノアはアルバートを愛してくれている。いくら私が弟に対して肉親の情が抱けなくても、勿論不幸を望んだりはしない。
……絶対に手に入らない女性をいつまでも想うよりも自分を愛してくれる女性と結婚して幸せになってほしいと姉として願っている。
だが、厄介な事に、ペンドーン侯爵家ほどでなくてもフォゼリンガム侯爵家も結構権力がある。エレノアと王子が結婚すれば、次代の王位を巡って貴族が二分する恐れがある。私は勿論、アルバートだって、そんな事態は絶対に望まない。
……まあそれも、王女が消えれば済む話だ。
「……王女様とお親しいのですか?」
私の必死な弁明が通じたのか、エレノアは、どこかほっとした顔になった。
「……それなりに」
まさか「王女本人なの」とは言えない。
「ごきげんよう。エリック様。まさか仮面舞踏会で、あなたに会うとは思いませんでしたわ」
なぜか私達姉弟にそのままついてきたエリックにロクサーヌが声をかけた。
「……ロバートに、あなたの兄に、誘われたのですよ」
「では、なぜ、この方達とご一緒に行動されているの?」
ロクサーヌの当然の疑問に、エリックは何とも言えない顔になった。
「……成り行きで」
まあ確かに成り行きだ。納得する私の隣で、アルバートがとんでもない事を言いだした。
「アーサー、このご婦人が君と話したいそうだ」
アルバートは私の肩を摑むと、ずいっとアーサーに突き出した。
「アル、王子様!?」
「アルバート」と言いそうになって慌てて「王子様」と言い直した。
「何言いだすのよ」
私は弟に小声で抗議したが彼は醒めた眼差しを向けてきた。
「さっさとアーサーと会話でも、それ以上の事でもしてください。それで、私の役目は終わるので」
弟も小声だが、とんでもない科白が混じっている。どうやら弟は不機嫌らしい。私に付き合わされて仮面舞踏会に来たのに、私が逃げた事や直前になって怖気づいた事に苛立っているのだ。
「……アーサーと話すわ。だから、あなたもエレノアの相手をしてあげて」
さっさと帰る気満々の弟に私は交換条件を出した。
「それとこれは別では?」
アルバートは美しい眉をひそめた。彼は鈍感な人間ではない。自分に向けられるエレノアの好意に気づいていて避けている。彼女に期待を持たせたくないという彼の優しさだ。
アルバートの気持ちも分かるから、どんなにアントニアが気に入らなくてもエレノアと彼をくっつけようとはしなかった。
だが、私と同じように「仮面で顔を隠してなら普通に話せるかもしれない」と考えて、ここに来たらしい(アーサーとの会話からしてそうだろう)エレノアの気持ちを思うと無下にできない。
「分かりました。その方とお話しましょう」
王子が言ったからか、アーサーは、あっさり了承した。
「だからと言う訳ではないのですが、王子殿下はエレノアとお話してください」
「アーサー様!?」
「アーサー!?」
エレノアとアルバートの声が重なった。
(……そっか、はとこのために、私と話す気になったんだ)
母親に似ているからか、昔からアーサーは、はとこを結構気遣っていた。
少しだけがっかりしてしまったが、チャンスだと思って心置きなくアーサーと会話すればいいのだ。……これが最後なのだから。
「それでは行きましょうか」
私の手を取って歩き出そうとするアーサーをロクサーヌがとめた。
「少しお待ちになって。わたくし、その方にお話がありますの」
口調は柔らかだが、私に向けるロクサーヌの眼差しは険しかった。
聞き慣れた美声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けた私は、舞踏会会場となっている大広間の扉から出てくるアーサーと二人の少女に気づいた。
慌てて柱の陰に隠れた私につられたのか、アルバートとエリックも同じ行動をとっていた。
「何、隠れてるんですか。アーサーに話しかけるチャンスですよ」
「……嫌よ。できない」
柱の陰でこそこそ話す私達姉弟に勿論気づかずアーサー達は会話している。
「あら、すぐ助けに行ったのでは、ありがたみがないじゃない」
くすくす笑いながら言うのは、絶世の美少女。美女といってもいいほど大人びて見えるが今年で十七歳だ。仮面をしていても王妃の若い頃は、こうだったに違いないという美貌は充分窺い知れる。漆黒の髪と瞳、すらりとした肢体に真紅のドレスがよく似合う。
私とアーサーの従姉でロバートの妹、エリックの実兄エリオット・ラングリッジ伯爵令息の婚約者、ロクサーヌ・ウィザーズ侯爵令嬢だ。
「……君は、そういう女だよな」
アーサーは、どこかげんなりした様子だった。話からして女性達に囲まれていた彼をロクサーヌが助けたのだろうが、すぐに助け出さず困っている彼を見て楽しんでいたようだ。
「そういえば、王女様とご一緒に来なかったの? 婚約者のあの方が傍にいれば、女性達に絡まれる事もなかったのに」
ロクサーヌの口から王女の話題が出たので、ドキッとした。
「……公式のパーティーは仕方ないけど、それ以外は私と一緒に行きたくないと、はっきり言われたからな」
……そう、かつて私がアーサーに言った事だ。周囲に王女が婚約者を嫌いだと示すために。
「でも、珍しいですね。アーサー様がこういう仮面舞踏会に参加されるなんて」
ロクサーヌの隣にいる少女が言った。アーサーやロクサーヌに比べると、ごく平凡な容姿の少女だ。それは仮面をつけていても分かる。漆黒の髪と暗褐色の瞳、中背で華奢な肢体(私と同じく胸がさほどないので勝手に親近感を抱いている)。
アーサーの母親イグレーヌの若い頃を思わせる容姿の彼女は、彼のはとこ(イグレーヌの従姉の娘)、ロクサーヌのクラスメートで(二人とも特Aクラスだ)親友でもあるエレノア・フォゼリンガム侯爵令嬢だ。
「……事情があってな」
「事情?」
首を傾げるロクサーヌを無視してアーサーはエレノアに言った。
「君こそ、こういう催しは苦手じゃなかったか?」
「……顔を隠してなら、あの方と少しでもお話できる気がして」
「一人じゃ心細いというから、わたくしが一緒に来たのよ」
エレノアの後、ロクサーヌが続けて言った。
「……女性というのは、同じ事を考えるものなんだな」
アーサーが呆れたように言った。
「……でも、あの方、婚約者ではない女性とご一緒で、しかも何やら言い争っていたので、とても話しかけるなどできませんでした」
悲しそうに言うエレノアに私は内心謝った。
(……ごめん! エレノア! アルバートと一緒にいた女は私なのよ! あなたが気にする女じゃないの!)
心の中で、いくら叫んでもエレノアに届くはずはないのだが、とてもアーサーの前に出る勇気がない私は柱の陰から謝罪の念を送っていた。
何を思ったのか、アルバートが私の手首を摑むと歩き出した。アーサー達に向かって。
「……ちょっ、アルバート」
三人に気づかれないように小声でとめようとする私にアルバートは構わない。
「アーサーと話したくて来たんでしょう。行きますよ」
そうだ。その予定だった。だが――。
「今更怖気づかないでくださいね。公衆の面前で婚約破棄宣言どころか妊娠発言までしたんでしょう。正体を隠して婚約者と話すくらいなんですか」
小声で言い合う私とアルバートに最初に気づいたのはエレノアだった。
「……あっ、王子様」
王子に連れられている私を見てエレノアの顔が強張ったのが仮面越しでも分かった。
「……あっ、違うんですの。王子様は王女様に頼まれて私と同行してくださっただけで」
エレノアは王子が好きなのだ。今の私はアルバートの姉、王女ではなく、ただの令嬢。そんな私が仮面舞踏会に王子と一緒に来たのだ。妙な誤解をしても仕方ない。
私としては、アルバートには脳内お花畑なアントニアよりエレノアと結婚してほしいと思っている。
それは、この世で一番嫌いな妾妃に似ているアントニアより、私と同じでさほど胸がないエレノアのほうに親近感を抱いているからじゃない。
エレノアは特Aクラスに入れるほど聡明でテューダ王国の貴族令嬢らしく武術も優れ、それでいて控えめだ。彼女なら王子妃どころか王妃になっても、うまくやるだろう。
何よりエレノアはアルバートを愛してくれている。いくら私が弟に対して肉親の情が抱けなくても、勿論不幸を望んだりはしない。
……絶対に手に入らない女性をいつまでも想うよりも自分を愛してくれる女性と結婚して幸せになってほしいと姉として願っている。
だが、厄介な事に、ペンドーン侯爵家ほどでなくてもフォゼリンガム侯爵家も結構権力がある。エレノアと王子が結婚すれば、次代の王位を巡って貴族が二分する恐れがある。私は勿論、アルバートだって、そんな事態は絶対に望まない。
……まあそれも、王女が消えれば済む話だ。
「……王女様とお親しいのですか?」
私の必死な弁明が通じたのか、エレノアは、どこかほっとした顔になった。
「……それなりに」
まさか「王女本人なの」とは言えない。
「ごきげんよう。エリック様。まさか仮面舞踏会で、あなたに会うとは思いませんでしたわ」
なぜか私達姉弟にそのままついてきたエリックにロクサーヌが声をかけた。
「……ロバートに、あなたの兄に、誘われたのですよ」
「では、なぜ、この方達とご一緒に行動されているの?」
ロクサーヌの当然の疑問に、エリックは何とも言えない顔になった。
「……成り行きで」
まあ確かに成り行きだ。納得する私の隣で、アルバートがとんでもない事を言いだした。
「アーサー、このご婦人が君と話したいそうだ」
アルバートは私の肩を摑むと、ずいっとアーサーに突き出した。
「アル、王子様!?」
「アルバート」と言いそうになって慌てて「王子様」と言い直した。
「何言いだすのよ」
私は弟に小声で抗議したが彼は醒めた眼差しを向けてきた。
「さっさとアーサーと会話でも、それ以上の事でもしてください。それで、私の役目は終わるので」
弟も小声だが、とんでもない科白が混じっている。どうやら弟は不機嫌らしい。私に付き合わされて仮面舞踏会に来たのに、私が逃げた事や直前になって怖気づいた事に苛立っているのだ。
「……アーサーと話すわ。だから、あなたもエレノアの相手をしてあげて」
さっさと帰る気満々の弟に私は交換条件を出した。
「それとこれは別では?」
アルバートは美しい眉をひそめた。彼は鈍感な人間ではない。自分に向けられるエレノアの好意に気づいていて避けている。彼女に期待を持たせたくないという彼の優しさだ。
アルバートの気持ちも分かるから、どんなにアントニアが気に入らなくてもエレノアと彼をくっつけようとはしなかった。
だが、私と同じように「仮面で顔を隠してなら普通に話せるかもしれない」と考えて、ここに来たらしい(アーサーとの会話からしてそうだろう)エレノアの気持ちを思うと無下にできない。
「分かりました。その方とお話しましょう」
王子が言ったからか、アーサーは、あっさり了承した。
「だからと言う訳ではないのですが、王子殿下はエレノアとお話してください」
「アーサー様!?」
「アーサー!?」
エレノアとアルバートの声が重なった。
(……そっか、はとこのために、私と話す気になったんだ)
母親に似ているからか、昔からアーサーは、はとこを結構気遣っていた。
少しだけがっかりしてしまったが、チャンスだと思って心置きなくアーサーと会話すればいいのだ。……これが最後なのだから。
「それでは行きましょうか」
私の手を取って歩き出そうとするアーサーをロクサーヌがとめた。
「少しお待ちになって。わたくし、その方にお話がありますの」
口調は柔らかだが、私に向けるロクサーヌの眼差しは険しかった。
0
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる