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リーヴァは引きこもった翌日、後宮の外れにある東屋でグートルーネと共に、獣人で唯一リーヴァが張った結界を行き来できるドゥンガ将軍と向き合っていた。
「……竜帝陛下でさえ破れない強固な防御結界が張れるのなら、我が国の保護など必要ないでしょう。だのになぜ、あなたの両親、アースラーシャの国王夫妻は、あなたと竜帝陛下の結婚を承諾したのでしょう?」
「あなたの疑問は尤もですわね」
リーヴァは頷いた。
「竜帝陛下がわたくしに婚姻を申し込んだ時は、これだけの結界は張れませんでしたから」
「どういう事ですか?」
「詳しくはお話できません」
ドゥンガ将軍は竜帝の臣下だ。いくら両親の事があってリーヴァに同情しても竜帝に対して隠し事はできない。だから、彼に全てを話す訳にはいかないのだ。
リーヴァのそんな思いが分かったのか、ドゥンガ将軍は仕方なさそうな顔で「分かりました」と言い話題を変えた。
「竜帝陛下や他の臣下は締め出すのに、俺だけは行き来を許してくださるのですね」
「グートルーネとあなたの仲を邪魔するのは気が引けたので」
さすがにグートルーネがリーヴァのように拒絶するならそうしたが、もふもふ系が大好きな彼女が本性が虎の彼をそうるすのはありえない。
ドゥンガ将軍は竜帝陛下に頼まれてリーヴァの様子を見に来るだけではなく、番であるグートルーネに会いにも来ているのだ。その交流のお陰か、グートルーネとトゥンガ将軍は相思相愛になれたようだ。
それをリーヴァは微笑ましく思った。
リーヴァは番である竜帝を拒絶しているが、全ての番達までそうしろと強要する気はない。
番を求める本能に依るものにしろ、そうでないにしろ、全ての番達の互いを想う心を否定する気は毛頭ない。
引きこもって一ヶ月ほど経った頃、ドゥンガ将軍が教えてくれた。
「あなたの両親、アースラーシャの国王夫妻がご病気になられたとかで離宮に静養されて即、あなたの兄上、王太子殿下が戴冠され今では彼が国王だそうですよ」
「さすがは宰相閣下とシグルズ。思っていたより早かったわ」
「予想されていたのですか?」
「ええ」
意外そうな顔をするドゥンガ将軍にリーヴァは頷いた。
リーヴァが帝国に行く前、健康だった国王夫妻が病気になるなど、まずありえない。
傍目にはそうは見えなかったが、シグルズもリーヴァを竜帝に売った国王夫妻に対して怒っていた。
分かっている。二人はシグルズの秘密を知らない。国王や王妃として国のために娘を売っても仕方なかった。けれど、親として娘のために抗いもせず、あっさりと竜帝に娘を差し出した。
リーヴァが両親への愛情が砕け散るほど許せなかったように、シグルスも許せなかったのだ。
国王夫妻を病気療養という名目で離宮に幽閉した。不衛生な牢屋ではないだけましだろう。それがリーヴァの両親、義理の両親となった二人に対するシグルズの最後の情だ。
元々、国王や王妃としては無能な二人だ。国は有能な王太子(今は国王だが)や宰相がいれば充分統治できる。
(引きこもり生活も、いよいよ終わりね)
リーヴァは心の中だけで、こっそり呟いた。
国王夫妻を追いやり、アースラーシャ王国での自分の痕跡を全て消したら迎えにくるとシグルズは約束してくれたのだ。
グートルーネは大丈夫だ。自分がいなくなってもトゥンガ将軍が守ってくれる。
グートルーネがついて来ると言った時はどうなるかと心配したが、彼女は帝国で自分の運命を見つけた。
(わたくしも、わたくしの「運命」と共に生きるわ)
定められた運命ではなくても、リーヴァにとってはシグルスだけが自分の「運命」だ。
シグルズが迎えに来るのを待つつもりだったリーヴァだが、そうはいかなくなった。
「……竜帝陛下でさえ破れない強固な防御結界が張れるのなら、我が国の保護など必要ないでしょう。だのになぜ、あなたの両親、アースラーシャの国王夫妻は、あなたと竜帝陛下の結婚を承諾したのでしょう?」
「あなたの疑問は尤もですわね」
リーヴァは頷いた。
「竜帝陛下がわたくしに婚姻を申し込んだ時は、これだけの結界は張れませんでしたから」
「どういう事ですか?」
「詳しくはお話できません」
ドゥンガ将軍は竜帝の臣下だ。いくら両親の事があってリーヴァに同情しても竜帝に対して隠し事はできない。だから、彼に全てを話す訳にはいかないのだ。
リーヴァのそんな思いが分かったのか、ドゥンガ将軍は仕方なさそうな顔で「分かりました」と言い話題を変えた。
「竜帝陛下や他の臣下は締め出すのに、俺だけは行き来を許してくださるのですね」
「グートルーネとあなたの仲を邪魔するのは気が引けたので」
さすがにグートルーネがリーヴァのように拒絶するならそうしたが、もふもふ系が大好きな彼女が本性が虎の彼をそうるすのはありえない。
ドゥンガ将軍は竜帝陛下に頼まれてリーヴァの様子を見に来るだけではなく、番であるグートルーネに会いにも来ているのだ。その交流のお陰か、グートルーネとトゥンガ将軍は相思相愛になれたようだ。
それをリーヴァは微笑ましく思った。
リーヴァは番である竜帝を拒絶しているが、全ての番達までそうしろと強要する気はない。
番を求める本能に依るものにしろ、そうでないにしろ、全ての番達の互いを想う心を否定する気は毛頭ない。
引きこもって一ヶ月ほど経った頃、ドゥンガ将軍が教えてくれた。
「あなたの両親、アースラーシャの国王夫妻がご病気になられたとかで離宮に静養されて即、あなたの兄上、王太子殿下が戴冠され今では彼が国王だそうですよ」
「さすがは宰相閣下とシグルズ。思っていたより早かったわ」
「予想されていたのですか?」
「ええ」
意外そうな顔をするドゥンガ将軍にリーヴァは頷いた。
リーヴァが帝国に行く前、健康だった国王夫妻が病気になるなど、まずありえない。
傍目にはそうは見えなかったが、シグルズもリーヴァを竜帝に売った国王夫妻に対して怒っていた。
分かっている。二人はシグルズの秘密を知らない。国王や王妃として国のために娘を売っても仕方なかった。けれど、親として娘のために抗いもせず、あっさりと竜帝に娘を差し出した。
リーヴァが両親への愛情が砕け散るほど許せなかったように、シグルスも許せなかったのだ。
国王夫妻を病気療養という名目で離宮に幽閉した。不衛生な牢屋ではないだけましだろう。それがリーヴァの両親、義理の両親となった二人に対するシグルズの最後の情だ。
元々、国王や王妃としては無能な二人だ。国は有能な王太子(今は国王だが)や宰相がいれば充分統治できる。
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リーヴァは心の中だけで、こっそり呟いた。
国王夫妻を追いやり、アースラーシャ王国での自分の痕跡を全て消したら迎えにくるとシグルズは約束してくれたのだ。
グートルーネは大丈夫だ。自分がいなくなってもトゥンガ将軍が守ってくれる。
グートルーネがついて来ると言った時はどうなるかと心配したが、彼女は帝国で自分の運命を見つけた。
(わたくしも、わたくしの「運命」と共に生きるわ)
定められた運命ではなくても、リーヴァにとってはシグルスだけが自分の「運命」だ。
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