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さようなら、たった一人の妹。私、あなたが本当に大嫌いだったわ

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 おいしい?

 よかったわ。あなたがこの世で飲む最後のお茶になるからね。




 何度も考えたのだけれど、私と彼が幸せになるためには、あなた邪魔なのよ。

 だから、排除する事にしたわ。

 突然、何を言い出すんだという顔ね。

 あなたのその察しが悪くて愚鈍で無神経な所が昔から大嫌いだったわ。

 同じ両親から生まれた姉妹だのに、両親の私とあなたの扱いの差に気づきもしない。

 家族の団欒に、いつも私だけがいなかった事を不思議に思わなかった?

 誕生日を祝われるのもプレゼントが貰えるのも自分だけな事を不思議に思わなかった?

 自分はたくさんドレスを新調してもらっているのに、わたしには一枚もなかった事を不思議に思わなかった?

 私と婚約者のお茶会に妹の自分が毎回混ざる事も、彼が婚約者を私からあなたにしてほしいと願った時、両親がそれをあっさり了承した事についても何とも思わなかった?

 婚約者が妹のあなたになったのはともかく、この伯爵家の当主をあなたに替える、さらには、もう嫁にはいけないだろうから、この先ずっとあなたの補佐をしろと言われた時には、怒りと絶望で、どうにかなりそうだったわ。

 まあ、そのお陰で、家族への愛情や期待が完全になくなったから今更どう扱われようと心は波立たないと思っていたのだけれど、私から愛する彼を奪おうとした事は許さない。

 私から婚約者を奪っておいて、愛する彼まで奪うなど許せるはずないでしょう?

 奪ったんじゃない?

 婚約者は、お姉様より自分を好きになってくれて、お父様もお母様も婚約者の入れ替えを認めてくれたから?

 ああ、誤解される言い方をしたわね。婚約者については怒ってないわよ。

 初対面から私のほうが優秀なのが気に入らないからって、自分は何の努力もせず悪態ばかりを吐く器の小さな男など、こっちから願い下げだわ。あなたが奪ってくれて、むしろせいせいしたわね。

 許せないのは、愛する彼を奪おうとした事よ。

 婚約者がいても、ずっと好きだった。どうか自分を新たな婚約者にしてほしいと言ってくれたのが、隣国の王族で留学生だった彼だった。

 元婚約者と違って私を気遣ってくれる彼を好きになるのに時間はかからなかったわ。

 だから、周囲に彼との結婚を認めてもらおうとしていたのに、あなたが邪魔をする。

 あのまま私の元婚約者と結婚してくれていればよかったのに。

 彼のほうが婚約者よりハイスペックな男だから乗り換えたのよね。

 違う? 自分は彼のつがいだから? 自分が結ばれるべき相手は彼だから?

 確かに、彼は獣人族の末裔で、獣人には番という運命の伴侶がいて、それがたまたま、あなただった。

 でも、彼が愛しているのは、私よ。そして、私も彼を愛している。

 天や運命が定めた番なんか関係ない。

 私と彼は自分の意思で、お互いこそが唯一の番だと定めたのよ。

 だのに、天や運命が定めた番だからと、周囲が勝手に、あなたと元婚約者の婚約を白紙に戻して、あなたを彼の婚約者にしたわ。

 許せなかった。

 私から彼を奪おうとするなど。

 けれど、彼の番が存在する以上、私は彼を手に入れられない。

 かの国にとって番は絶対だもの。

 だから、考えたわ。

 私が誰はばかる事なく彼と結婚できる方法を。

 そしたら、出てくる結論は一つしかなかった。

 彼の番を消せばいいってね。

 獣人にとって番は唯一無二。

 消せば、この先二度と現れない。

 迷わなかったわ。

 血の繋がった妹だろうが歯止めにはならなかった。

 だって、昔から大嫌いだったもの。

 彼は自分がやる。私が手を汚す必要はないと言ってくれたけど断ったわ。

 彼が手を汚すのはいいの。私のために罪を背負ってくれるのは、むしろ、私には無上の歓びだもの。彼のその罪ごと受け入れるし生涯愛していくわ。

 断ったのは、いざという時、番を求める本能のせいで手を下せなくなるのは困るし、あなたが本当に彼を愛しているのなら、愛する人に殺されるのは、ある意味最高の死に方じゃない。

 あなたに、そんな幸福を与えたくなかった。

 ああ、ようやく毒が効いてきたようね。

 最初に言ったじゃない。あなたがこの世で飲む最後のお茶になるって。

 さようなら、たった一人の妹。

 私、あなたが本当に大嫌いだったわ。

 

 


 



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