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「陛下との話し合いで、ボンクラでM王子とルーイはデアードエッス帝国の後宮、お父様とお継母様はビイデイ王国の後宮に行く事が決まりましたの。ご安心なさって。相愛のお二方を引き離す事はしませんから。王家や皇家の方々も夫婦共で構わないと仰ってくださったし。ただし、後宮の女達と間違いを犯さないように王子とお父様はアレをちょん切る事になっていますわ」
ビイデイ王国やデアードエッス帝国の国民は性に奔放だ。特に王侯貴族となると、この私ですら眉をひそめるような趣味嗜好なのだ。
それでも、どちらの国も資源が豊富で公人としては有能な人間が多い。
その二国に貢ぎ者として外見だけは美しい両親と妹と元婚約者を差し出す事を国王に提案したのは私だ。
国王は一瞬の逡巡もなく第一王子さえ差し出す私の提案に頷いた。負い目のある私の提案というだけでなく国王としても愚息を「始末」したかったからだろう。
エッスニーモナッレエル公爵家の財産を食いつぶすだけの私の家族と無能な王子と引き替えに豊かな二国の資源を手に入れられるのなら安いものだ。
「はあ!? 何を言っているんだ!?」
「「はあ!? 何を言っているのよ!?」」
さすがは家族というべきか父と継母と妹は同時に同義の科白を叫んだ。
「馬鹿な事を言うな! 父上がそのような事を承知するはずないだろう!」
なぜ先程だけでなく普段の自分への国王の言動で、そう思えるのか心底不思議だ。
「残念ながら、陛下は拍子抜けするほど、あっさりとわたくしの提案に頷いてくださいましたわよ。ボンクラでM王子殿下」
「ヴォンクウラデームだ! 貴様、婚約者だのに、何度も何度も俺の名前を間違えやがって!」
「婚約破棄したでしょう。それも忘れたんですか? 本当に記憶力もない馬鹿でボンクラで実はMで生きている価値もないモノですね」
冷たい視線を向けると予想通り王子の顔は真っ赤になった。外見だけは私はSの女王様のような艶麗な美女なので、Mっ気のある男には私の蔑んだ視線はご褒美なのだ。
わざわざ喜ばせるのが馬鹿馬鹿しいので今まで王子と視線を合わせた事はなかったが(どうしても蔑んだ視線を向けてしまうから)会うのがこれで最後なので元婚約者として特別サービスしてやった。
「最後なので言っておきますが『俺が妹に心奪われた事を許せず』とほざいていましたが、わたくし、あなたに惚れてなどいませんよ。むしろ、わたくしにとって、あなたは生きている価値などないモノです」
私は、ハイスペックなイケメンや美女に罵倒されて悦ぶドMだ。勉学でも剣術でも何もかも私より劣るボンクラに罵倒されてもむかつくだけで萌えないのだ。
「はあ!? 何言ってるんだ! 公爵家の力で無理矢理、俺と婚約したんだろうが!」
怒鳴ってくる王子に、私はこれみよがしに溜息を吐いた。
「……誰に何を吹き込まれたか知りませんが、わたくしとあなたの婚約は先程陛下自身が仰ったように王命ですよ。自分で決めていいのなら、あなたのような顔がいいだけのボンクラでMな男は絶対に選ばない。むしろ、王家の不良物件を押しつけられていい迷惑でした」
仮に今日、婚約破棄などという愚行をしなくても、ボンクラでMな男など私にとっては勿論、国や領民にとっても生きる価値などない。結婚しても表向きは病死か事故死してもらって権力のある変態に売りつけて多少我が家の役に立ってもらうつもりだった。それくらいしか、このボンクラでMな馬鹿は使い道がないのだから。
「陛下! 嘘ですよね!? コレに何を吹き込まれたか知りませんが、こんな馬鹿な事がまかり通るはずありませんよね!?」
往生際悪く国王に詰め寄ろうとする父に私は冷たく先程と同じ言葉を繰り返した。
「肉親殺しは大罪なのですよ。お父様。命があるだけ感謝してくださいな」
まあ言葉の通じない他国でアレをちょん切られて尊厳を踏みにじられる人生が待っているけど。
「今日までエッスニーモナッレエル公爵家のお金で贅沢できたでしょう? 公爵家の特権を享受してきただけで義務や責任を果たさなかったのです」
欲望に忠実な私ですら今生で公爵家という高位貴族に生まれ、その恩恵を享受してきた以上、その責任を果たさなければという理性くらいはあるのだ。
だから、貴族としての特権を享受するだけで義務や責任から逃れるなど絶対に許さない。
ビイデイ王国やデアードエッス帝国の国民は性に奔放だ。特に王侯貴族となると、この私ですら眉をひそめるような趣味嗜好なのだ。
それでも、どちらの国も資源が豊富で公人としては有能な人間が多い。
その二国に貢ぎ者として外見だけは美しい両親と妹と元婚約者を差し出す事を国王に提案したのは私だ。
国王は一瞬の逡巡もなく第一王子さえ差し出す私の提案に頷いた。負い目のある私の提案というだけでなく国王としても愚息を「始末」したかったからだろう。
エッスニーモナッレエル公爵家の財産を食いつぶすだけの私の家族と無能な王子と引き替えに豊かな二国の資源を手に入れられるのなら安いものだ。
「はあ!? 何を言っているんだ!?」
「「はあ!? 何を言っているのよ!?」」
さすがは家族というべきか父と継母と妹は同時に同義の科白を叫んだ。
「馬鹿な事を言うな! 父上がそのような事を承知するはずないだろう!」
なぜ先程だけでなく普段の自分への国王の言動で、そう思えるのか心底不思議だ。
「残念ながら、陛下は拍子抜けするほど、あっさりとわたくしの提案に頷いてくださいましたわよ。ボンクラでM王子殿下」
「ヴォンクウラデームだ! 貴様、婚約者だのに、何度も何度も俺の名前を間違えやがって!」
「婚約破棄したでしょう。それも忘れたんですか? 本当に記憶力もない馬鹿でボンクラで実はMで生きている価値もないモノですね」
冷たい視線を向けると予想通り王子の顔は真っ赤になった。外見だけは私はSの女王様のような艶麗な美女なので、Mっ気のある男には私の蔑んだ視線はご褒美なのだ。
わざわざ喜ばせるのが馬鹿馬鹿しいので今まで王子と視線を合わせた事はなかったが(どうしても蔑んだ視線を向けてしまうから)会うのがこれで最後なので元婚約者として特別サービスしてやった。
「最後なので言っておきますが『俺が妹に心奪われた事を許せず』とほざいていましたが、わたくし、あなたに惚れてなどいませんよ。むしろ、わたくしにとって、あなたは生きている価値などないモノです」
私は、ハイスペックなイケメンや美女に罵倒されて悦ぶドMだ。勉学でも剣術でも何もかも私より劣るボンクラに罵倒されてもむかつくだけで萌えないのだ。
「はあ!? 何言ってるんだ! 公爵家の力で無理矢理、俺と婚約したんだろうが!」
怒鳴ってくる王子に、私はこれみよがしに溜息を吐いた。
「……誰に何を吹き込まれたか知りませんが、わたくしとあなたの婚約は先程陛下自身が仰ったように王命ですよ。自分で決めていいのなら、あなたのような顔がいいだけのボンクラでMな男は絶対に選ばない。むしろ、王家の不良物件を押しつけられていい迷惑でした」
仮に今日、婚約破棄などという愚行をしなくても、ボンクラでMな男など私にとっては勿論、国や領民にとっても生きる価値などない。結婚しても表向きは病死か事故死してもらって権力のある変態に売りつけて多少我が家の役に立ってもらうつもりだった。それくらいしか、このボンクラでMな馬鹿は使い道がないのだから。
「陛下! 嘘ですよね!? コレに何を吹き込まれたか知りませんが、こんな馬鹿な事がまかり通るはずありませんよね!?」
往生際悪く国王に詰め寄ろうとする父に私は冷たく先程と同じ言葉を繰り返した。
「肉親殺しは大罪なのですよ。お父様。命があるだけ感謝してくださいな」
まあ言葉の通じない他国でアレをちょん切られて尊厳を踏みにじられる人生が待っているけど。
「今日までエッスニーモナッレエル公爵家のお金で贅沢できたでしょう? 公爵家の特権を享受してきただけで義務や責任を果たさなかったのです」
欲望に忠実な私ですら今生で公爵家という高位貴族に生まれ、その恩恵を享受してきた以上、その責任を果たさなければという理性くらいはあるのだ。
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