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柊カイト
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何度も夢に出てきた館。
何度でも俺を繋ぎ止めようとする牢獄。
門の鍵を開けて無駄に広い庭の中に入ると、それの威圧感はさらに増した。
足が止まりそうになる。しかし、もう戻ることはできない。
なぜなら、すでに館からこちらを見ているのだから。
尾十切が。
俺の仲間を傷付けた奴が。
顔の筋肉がこわばっていくのが分かる。それを急いで元に戻す。
ここでは、感情を表に出してはいけない。何が尾十切のスイッチを押すか分からないからだ。
重たいドアを押し、館の中へ足を踏み出す。
相変わらず、生活感がない場所だ。俺がここから逃げたあの日から、何も変わっていない。
まるで、時が止まっていたかのようだ。
「……わっ」
目の前を何かが走り抜けていった。気持ちを落ち着かせながら、だだっ広い廊下の曲がり角をそっと覗いた。
そこには、さっきのがいた。ロボットだ。モーター音を響かせながら、何かを運んでいる。
もしかすると、人の気配がないのは、使用人全員がロボットだからなのでは──?
「まさか、な」
さすがに、尾十切以外誰もいないわけがない。それに、俺がここで作らされていたのは、メイドロボットではなかった。
「──何が、『まさか』なんだ?」
ばっと振り返る。そこには、尾十切が立っていた。
「いつのまに──」
「今の間だ」
俺の独り言にそっけなく返しながら、尾十切は腕をつかんできた。
「こっちだ」
今、ここで尾十切の手を振り払ったら、どうなるのだろうかと考えてしまう。
答えはすぐに出た。
だから、俺はこいつの言う通りについていった。
しかし、それでも体は震えている。まるで、頭と体が切り離されたみたいだ。
「ここだ」
何度か角を曲がって階段を降りた後、尾十切は不意に立ち止まった。
「ここは……?」
湿っぽく、外の光が完全に入ってこない地下室は、存分に不安を掻き立てる。
そして、コンクリートの壁に掛けられた無数の刃物を見て、俺はこの部屋を理解した。
「どうやら、分かったようだな」
尾十切は壁から垂れた鎖に俺の両腕を固定すると、刃物を選び始めた。
あの頃は、地下がなかったからすぐに思い至らなかった。
ここは、お仕置き部屋だ。
「今まで、私の手から離れていた罰だ」
尾十切は鉈を持ち上げると、大きく振り落とした。
「ぐぁあ!?」
激痛が、襲う。胸から下腹部までを斬られた。
このままサッと意識が無くなってくれたら楽になれるのだろうが、そうまい具合にはいかないものだ。
痛みは絶え間なく身体中を駆け巡り、恐怖を産み出していく。
数秒が経った。体の痛みは徐々に消えていき、傷も塞がっていったが、震えだけは止まらない。
返り血を浴びた尾十切が、再び鉈を降り下ろそうとする。
俺はそれを避けることもできず、受け止めるしかなかった。
何度でも俺を繋ぎ止めようとする牢獄。
門の鍵を開けて無駄に広い庭の中に入ると、それの威圧感はさらに増した。
足が止まりそうになる。しかし、もう戻ることはできない。
なぜなら、すでに館からこちらを見ているのだから。
尾十切が。
俺の仲間を傷付けた奴が。
顔の筋肉がこわばっていくのが分かる。それを急いで元に戻す。
ここでは、感情を表に出してはいけない。何が尾十切のスイッチを押すか分からないからだ。
重たいドアを押し、館の中へ足を踏み出す。
相変わらず、生活感がない場所だ。俺がここから逃げたあの日から、何も変わっていない。
まるで、時が止まっていたかのようだ。
「……わっ」
目の前を何かが走り抜けていった。気持ちを落ち着かせながら、だだっ広い廊下の曲がり角をそっと覗いた。
そこには、さっきのがいた。ロボットだ。モーター音を響かせながら、何かを運んでいる。
もしかすると、人の気配がないのは、使用人全員がロボットだからなのでは──?
「まさか、な」
さすがに、尾十切以外誰もいないわけがない。それに、俺がここで作らされていたのは、メイドロボットではなかった。
「──何が、『まさか』なんだ?」
ばっと振り返る。そこには、尾十切が立っていた。
「いつのまに──」
「今の間だ」
俺の独り言にそっけなく返しながら、尾十切は腕をつかんできた。
「こっちだ」
今、ここで尾十切の手を振り払ったら、どうなるのだろうかと考えてしまう。
答えはすぐに出た。
だから、俺はこいつの言う通りについていった。
しかし、それでも体は震えている。まるで、頭と体が切り離されたみたいだ。
「ここだ」
何度か角を曲がって階段を降りた後、尾十切は不意に立ち止まった。
「ここは……?」
湿っぽく、外の光が完全に入ってこない地下室は、存分に不安を掻き立てる。
そして、コンクリートの壁に掛けられた無数の刃物を見て、俺はこの部屋を理解した。
「どうやら、分かったようだな」
尾十切は壁から垂れた鎖に俺の両腕を固定すると、刃物を選び始めた。
あの頃は、地下がなかったからすぐに思い至らなかった。
ここは、お仕置き部屋だ。
「今まで、私の手から離れていた罰だ」
尾十切は鉈を持ち上げると、大きく振り落とした。
「ぐぁあ!?」
激痛が、襲う。胸から下腹部までを斬られた。
このままサッと意識が無くなってくれたら楽になれるのだろうが、そうまい具合にはいかないものだ。
痛みは絶え間なく身体中を駆け巡り、恐怖を産み出していく。
数秒が経った。体の痛みは徐々に消えていき、傷も塞がっていったが、震えだけは止まらない。
返り血を浴びた尾十切が、再び鉈を降り下ろそうとする。
俺はそれを避けることもできず、受け止めるしかなかった。
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