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輪廻
三周目
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「うぐぐぐぐ……ああぁ……」
パソコンの前で、大きく伸びをする。肩と腰が痛い。あと、目。
色素が少ない分、光の刺激が強いのか……?
「赤川さん……やっぱりパソコン代わってください……目が限界です」
「やーごめんね隼人君、私ちょっと用事ができたんだ。だからそれは相田君にでも頼んでくれ。それじゃ一時間で戻ってくるから、電話番は頼んだよ。あと、くれぐれも私のあとをつけようだなんていう気は起こさないでくれよ? それでは、行ってくる」
ドアが閉まる音。なんだか、嵐が通り過ぎたみたいだ。あと、これは僕の見間違いかもしれないが、赤川さん、随分と疲れた顔をしていたような気がする。
「赤川さん、何しに行ったんだろう……相田さんは何か知ってます?」
「全っ然」
相田さんは、スマホを操作していた。そして目をスッと細めたかと思うと、いきなり立ち上がった。
「ちょっと頼ちゃん追いかけにいく」
「え!? いや、待ってくださいよ! あの人、追いかけてくるなって言ってたじゃないですか!」
「だからこそだ」
相田さんはホルスターから拳銃を抜くと、レボルバーの辺りを点検し始めた。
「さっき調べたけど、彼女が向かった先は誰にも使われていない倉庫だ。何もないようなところに行く理由なんて、普通はない。それと、彼女は武器を持っていった。これは、ただの会合じゃ必要ない。あと、彼女は疲れているように見えた。これはおそらく、能力の使いすぎだと思う。───理由はこんな感じだ」
相田さんは、拳銃をホルスターに差した。
「君もきてくれるかい?」
僕は少し迷ってから、ドアへ向かった。
全力で走って、倉庫に辿り着いた。
扉は開かれたままで、中を覗くと、無数の糸が張り巡らされているのが見えた。
「これって……赤川さんの糸……」
もっと奥まで見ようと、身を乗り出そうとしたそのとき、近くから銃声が聞こえた。
ちぎれた糸が、はらはらと床に落ちる。それにより、今まで見えていなかったものが見えた。
───倉庫の隅に横たわった、血を流している男性が。
横を、風が通り抜けていくのを感じた。
その風が相田さんであることに気付いたときには、相田さんは赤川さんの腕を締め上げ、押さえ込んでいた。
「君が、何をやったのかわかってるのか!」
相田さんが怒っている。目に鋭い光が宿っているのが、ここからでも見える。
赤川さんは、相田さんの手を離そうともがきながら、反論する。
「ちゃんとわかってるよ! でも、これしかなかった……! 離してよ相田君! 奴は、奴はまだ……!」
そのとき、モゾモゾと男性が動き始めた。
赤川さんと相田さんは、気付いていない。
男性は、ズボンのポケットから何かを取り出すと、出っ張った部分を押した。
パソコンの前で、大きく伸びをする。肩と腰が痛い。あと、目。
色素が少ない分、光の刺激が強いのか……?
「赤川さん……やっぱりパソコン代わってください……目が限界です」
「やーごめんね隼人君、私ちょっと用事ができたんだ。だからそれは相田君にでも頼んでくれ。それじゃ一時間で戻ってくるから、電話番は頼んだよ。あと、くれぐれも私のあとをつけようだなんていう気は起こさないでくれよ? それでは、行ってくる」
ドアが閉まる音。なんだか、嵐が通り過ぎたみたいだ。あと、これは僕の見間違いかもしれないが、赤川さん、随分と疲れた顔をしていたような気がする。
「赤川さん、何しに行ったんだろう……相田さんは何か知ってます?」
「全っ然」
相田さんは、スマホを操作していた。そして目をスッと細めたかと思うと、いきなり立ち上がった。
「ちょっと頼ちゃん追いかけにいく」
「え!? いや、待ってくださいよ! あの人、追いかけてくるなって言ってたじゃないですか!」
「だからこそだ」
相田さんはホルスターから拳銃を抜くと、レボルバーの辺りを点検し始めた。
「さっき調べたけど、彼女が向かった先は誰にも使われていない倉庫だ。何もないようなところに行く理由なんて、普通はない。それと、彼女は武器を持っていった。これは、ただの会合じゃ必要ない。あと、彼女は疲れているように見えた。これはおそらく、能力の使いすぎだと思う。───理由はこんな感じだ」
相田さんは、拳銃をホルスターに差した。
「君もきてくれるかい?」
僕は少し迷ってから、ドアへ向かった。
全力で走って、倉庫に辿り着いた。
扉は開かれたままで、中を覗くと、無数の糸が張り巡らされているのが見えた。
「これって……赤川さんの糸……」
もっと奥まで見ようと、身を乗り出そうとしたそのとき、近くから銃声が聞こえた。
ちぎれた糸が、はらはらと床に落ちる。それにより、今まで見えていなかったものが見えた。
───倉庫の隅に横たわった、血を流している男性が。
横を、風が通り抜けていくのを感じた。
その風が相田さんであることに気付いたときには、相田さんは赤川さんの腕を締め上げ、押さえ込んでいた。
「君が、何をやったのかわかってるのか!」
相田さんが怒っている。目に鋭い光が宿っているのが、ここからでも見える。
赤川さんは、相田さんの手を離そうともがきながら、反論する。
「ちゃんとわかってるよ! でも、これしかなかった……! 離してよ相田君! 奴は、奴はまだ……!」
そのとき、モゾモゾと男性が動き始めた。
赤川さんと相田さんは、気付いていない。
男性は、ズボンのポケットから何かを取り出すと、出っ張った部分を押した。
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