異能力正義社

アノンドロフ

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輪廻

二週目

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「うぐぐぐぐ……ああぁ……」
 パソコンの前で、大きく伸びをする。肩と腰が痛い。あと、目。
 色素が少ない分、光の刺激が強いのか……?
「赤川さん……やっぱりパソコン代わってください……目が限界です」
「……ん」
 赤川さんは、真剣な表情でパソコンの画面を見つめていた。たまに、キーを押す音が聞こえてくる。
 ……何か、あったのか……?
 首をかしげながら、パソコンの電源を落とした。

 それから、約三十分後。
 相田さんが、赤川さんのところへ近づいて行った。手には、先ほどできたばかりのボトルシップ。
 相田さんと赤川さんは、幼い頃からの知り合いらしい。ちなみに、相田さんは赤川さんのことを「頼ちゃん」と呼んでいる。
 相田さんはフワフワした空気を見にまとって、赤川さんに話しかけた。
「頼ちゃん、ボトルシップ完成したよ」
「ふーん」
「えと……作るのに三ヶ月もかかったよー」
「へー」
「……小さい部品とかが難しくてさー」
「ほー」
「……頼ちゃん、何かあった?」
「……」
 相田さんは、ボトルシップをそっと赤川さんの机の上に置いて回れ右をすると、僕の方に近づいてきて、言った。
「今日、頼ちゃんおかしくないか?」
 僕は、赤川さんをチラッと見た。相変わらず、パソコンの画面を食い入るように見ている。
「……依頼でも来たんじゃないんですか?」
そう言ってみたが、相田さんは頭を横に振った。
「それは無い。依頼が来たところを俺は見ていないし、そもそも、二人以上で任務にあたらないといけないんだろ?」
 確かに、この社は単独行動を認めていない。そして、それを決めたのは赤川さんだ。それじゃあ、あの人は何をしているんだ?
「何か、嫌な予感がするな……」
 相田さんがボソリとそう呟いたのと同時に、赤川さんが立ち上がった。
「ちょっと用事ができた。行ってくる」
 ドアが開き、閉まる音。
 結局、あの人何やってたんだろうと思いながら、ふと赤川さんがさっきまでいた場所を見ると、赤川さんのパソコンを相田さんがいじっているのが目に飛び込んできた。
「ちょっ、勝手に触ったら怒られますよ!」
 僕の言葉を、相田さんは聞こうとしない。
 目に見えないような速さでキーボードを叩いているかと思うと、不意に、ヒョイヒョイと僕に手招きした。
「何ですか?」
 隣からパソコンの画面を覗きこむ。映し出されていたのは、どこかの倉庫らしきものの映像だった。
「これって……監視カメラの映像ですか?」
「うん。この倉庫は、住宅街の東の方にあるやつだね。五年前にこの倉庫を所有していた一家が引っ越ししたから、今は誰にも使われていない」
「……よく知ってますね」
「家が無かったときに野宿してたからなぁ、この辺りで」
 ……この人の経歴は謎だ。
「頼ちゃんは、出て行く直前までこの映像を見ていたみたいだ。ということは、彼女がそこへ向かった可能性は十分にあるだろう?」
 相田さんは、パソコンの電源を落とし、僕を見た。
「俺は今からそこへ行こうと思うけど、君はどうする?」
「それって赤川さん嫌がりそうですね」
 そう言った僕だったが、内心は行く気満々だった。そこへ行かないと、嫌なことが起こりそうな気がしたからだ。

 全力で走って、倉庫に辿り着いた。
 倉庫は、内側からカギがかけられていたため、五段ロッドで扉を壊した。
 中にいたのは、糸で拘束された男と、赤川さん。
 赤川さんは、切羽詰まった表情で、箱のようなものを抱きかかえ、その場にうずくまっていた。
 そして、僕らを見ると、顔を大きく歪ませた。
「どうして……どうしてここに来たんだよ……! あそこにいれば、あそこにいれば、君たちは……」
 赤川さんは、何かを言おうとしたみたいだ。しかし、聞き取ることはできなかった。
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