6 / 6
魔法使いへの道
しおりを挟む
【魔法の心得】がどのようなものなのかはリタさんにもわからなかったが、かわりに【剣の心得】のことを教えてもらった。
リタさんが【剣の心得】を取得したのは、彼女が十歳の頃だったらしい。リタさんのお父さんは元兵士で、剣の稽古をつけてくれていたそうだ。その稽古の目標が、「【剣の心得】の取得」だったらしい。リタさんが稽古のなかでしていたのは打ち合いのみで、モンスターを倒し始めたのは【剣の心得】を取得してから。つまり、どれくらい剣の練習に打ち込んだかが重要であり、モンスターの討伐数は関係がない。
これを魔法に置き換えてみると、「魔法でどれくらいモンスターを倒したのか」ではなく、「どれくらい魔法を使ったのか」によって【魔法の心得】が得られるというわけで、つまり、こうすればいい。
「【ライトニング】……おやすみなさい」
真っ暗な状態では寝られないため、光魔法で部屋を少しだけ明るい状態にしてから、ベッドの上で横になる。日常生活で積極的に魔法を使っていこうと心に決めて、重たいまぶたを下げた。
「おはようございます! 昨日は眠れましたか?」
「うん! ベッドふかふかだった!」
翌日。宿屋一階の食堂へ降りていくと、リタさんが二人分の席を確保してくれていた。店員さんを呼び、リタさんと同じものを注文してから、今日することを相談する。
「とりあえず、野宿に必要なものを揃えないといけないよね?」
「そうですね。毎日宿屋に泊まるわけにはいきませんよね」
「だよね。とりあえず、テントと寝袋は必要かな? お金足りそうかな?」
「あ。そういった物も、武器や防具と同じで値段が下がっているらしいですよ? だから、揃えられると思います!」
なるほどと頷いて、ちょうど運ばれてきたものを見る。おいしそうなツナサンドだった。
必要なものを揃えた私たちは、昨日と同じ森へと向かう。
「この森を抜けて進んだ先に、ルート村という小さい村があるんです。まずはそこまで目指してみませんか?」
「そうだね。薬草が生えているところも訊きたいし」
昨日ドロップ品を素材屋で売ったときに、薬草がどの辺りに生えているのかを訊いてみた。店主さんは「南の方に群生地があるというのを聞いたことはあるが、詳しくはわからない」と言っていたので、とりあえず南の方にある村で情報を集めていこうということになった。ルート村は、あの街から見てちょうど南に位置しているので、情報を集めることができるかもしれない。
私たちはモンスターを倒しながら南へ進む。太陽が出ているころのモンスターはそこまで強くないため、リタさんが一撃で仕留めてくれる。私はまだ攻撃魔法を持っていないので、【鋼の守り】で防御力を上げたり【氷結】でモンスターの足止めをしたりと補助魔法を使い続けた。
そして、夜。
「【フレイム】」
集めてきた枝の山に火をつけ、モンスターからドロップしたお肉を串に刺して焼く。一部、食べていいのかわからないようなものもあったけれど、リタさんが「大丈夫」と言ったので食べてもいいのだろう。
リタさんが、こんがりと焼けたお肉(ウサギとイノシシが合体したようなモンスターだったもの)を食べている。私も食べようか、と串に手を伸ばした瞬間。
「──あ。火が」
消えた。さっきまで強すぎるぐらいに燃えていたのに……。けど、まあいいか。もう一回つけられるし。
「【フレイム】……あれ? なんで?」
火がつかない。何度やってもつかない。え、なんで? さっきまで好調だったのに。
「ナナちゃん……?」
リタさんが不思議そうな顔でこちらを見る。
「なにしてるんですか……?」
「なにって……火をつけようとしているんだけど、つかなくて」
リタさんは首をかしげてジッと私を見つめ、そしてなぜかため息をついた。
「あの、ナナちゃん?」
「はい」
「MPって、知ってますか?」
「知ってるけど……あ、まさか」
急いでステータスを開いてみると、思ったとおりMPがなくなっていた。
「……MPって、回復したっけ?」
「寝ると回復しますけど……でも、不思議ですね。ナナちゃんのMPって多いのに、なぜなくなったのでしょう」
たしかに、謎だ。今日は魔法をたくさん使ったが、それでもMPの半分も使ってないはずである。
……いや、待てよ……?
「……寝てるあいだの【ライトニング】?」
「え?」
リタさんに話すと、なんとも言えない表情で「それですね」と言われた。
魔法の効果を持続させるにも、MPが必要である。おそらく、昨夜の【ライトニング】のおかげで、MPが回復されなかったようだ。
この夜、私は初めて真っ暗のなか眠ることとなった。
リタさんが【剣の心得】を取得したのは、彼女が十歳の頃だったらしい。リタさんのお父さんは元兵士で、剣の稽古をつけてくれていたそうだ。その稽古の目標が、「【剣の心得】の取得」だったらしい。リタさんが稽古のなかでしていたのは打ち合いのみで、モンスターを倒し始めたのは【剣の心得】を取得してから。つまり、どれくらい剣の練習に打ち込んだかが重要であり、モンスターの討伐数は関係がない。
これを魔法に置き換えてみると、「魔法でどれくらいモンスターを倒したのか」ではなく、「どれくらい魔法を使ったのか」によって【魔法の心得】が得られるというわけで、つまり、こうすればいい。
「【ライトニング】……おやすみなさい」
真っ暗な状態では寝られないため、光魔法で部屋を少しだけ明るい状態にしてから、ベッドの上で横になる。日常生活で積極的に魔法を使っていこうと心に決めて、重たいまぶたを下げた。
「おはようございます! 昨日は眠れましたか?」
「うん! ベッドふかふかだった!」
翌日。宿屋一階の食堂へ降りていくと、リタさんが二人分の席を確保してくれていた。店員さんを呼び、リタさんと同じものを注文してから、今日することを相談する。
「とりあえず、野宿に必要なものを揃えないといけないよね?」
「そうですね。毎日宿屋に泊まるわけにはいきませんよね」
「だよね。とりあえず、テントと寝袋は必要かな? お金足りそうかな?」
「あ。そういった物も、武器や防具と同じで値段が下がっているらしいですよ? だから、揃えられると思います!」
なるほどと頷いて、ちょうど運ばれてきたものを見る。おいしそうなツナサンドだった。
必要なものを揃えた私たちは、昨日と同じ森へと向かう。
「この森を抜けて進んだ先に、ルート村という小さい村があるんです。まずはそこまで目指してみませんか?」
「そうだね。薬草が生えているところも訊きたいし」
昨日ドロップ品を素材屋で売ったときに、薬草がどの辺りに生えているのかを訊いてみた。店主さんは「南の方に群生地があるというのを聞いたことはあるが、詳しくはわからない」と言っていたので、とりあえず南の方にある村で情報を集めていこうということになった。ルート村は、あの街から見てちょうど南に位置しているので、情報を集めることができるかもしれない。
私たちはモンスターを倒しながら南へ進む。太陽が出ているころのモンスターはそこまで強くないため、リタさんが一撃で仕留めてくれる。私はまだ攻撃魔法を持っていないので、【鋼の守り】で防御力を上げたり【氷結】でモンスターの足止めをしたりと補助魔法を使い続けた。
そして、夜。
「【フレイム】」
集めてきた枝の山に火をつけ、モンスターからドロップしたお肉を串に刺して焼く。一部、食べていいのかわからないようなものもあったけれど、リタさんが「大丈夫」と言ったので食べてもいいのだろう。
リタさんが、こんがりと焼けたお肉(ウサギとイノシシが合体したようなモンスターだったもの)を食べている。私も食べようか、と串に手を伸ばした瞬間。
「──あ。火が」
消えた。さっきまで強すぎるぐらいに燃えていたのに……。けど、まあいいか。もう一回つけられるし。
「【フレイム】……あれ? なんで?」
火がつかない。何度やってもつかない。え、なんで? さっきまで好調だったのに。
「ナナちゃん……?」
リタさんが不思議そうな顔でこちらを見る。
「なにしてるんですか……?」
「なにって……火をつけようとしているんだけど、つかなくて」
リタさんは首をかしげてジッと私を見つめ、そしてなぜかため息をついた。
「あの、ナナちゃん?」
「はい」
「MPって、知ってますか?」
「知ってるけど……あ、まさか」
急いでステータスを開いてみると、思ったとおりMPがなくなっていた。
「……MPって、回復したっけ?」
「寝ると回復しますけど……でも、不思議ですね。ナナちゃんのMPって多いのに、なぜなくなったのでしょう」
たしかに、謎だ。今日は魔法をたくさん使ったが、それでもMPの半分も使ってないはずである。
……いや、待てよ……?
「……寝てるあいだの【ライトニング】?」
「え?」
リタさんに話すと、なんとも言えない表情で「それですね」と言われた。
魔法の効果を持続させるにも、MPが必要である。おそらく、昨夜の【ライトニング】のおかげで、MPが回復されなかったようだ。
この夜、私は初めて真っ暗のなか眠ることとなった。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる