真紅の殺戮者と魔術学校

蓮月

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第一章

第1話

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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「ぎゃあああぁ!!」

「嫌だッ!やめろッ!!」

「助けてッ!死にたくないッ!!」

「うわぁぁあぁぁー!!」

「黙れッ!!……おい!次はお前だ!!」

「早く出て来い!!」

血と薬の臭い。
静かに部屋に響く機械音。
子供の泣き声と叫び声。
大人の怒鳴り声。
冷たい地面。
傍らには動かなくなった子供達。

(ああ……次は俺の番か……。)

グイッと腕を引っ張られる。
そして文字が刻まれている冷たい台の
上に身体を押し付けられた。

「……ほう。コイツは期待出来るな。」

「珍しいですな、この容姿。」

「ハハッ……さあ、試験体No.666の×××××実験を始めるぞ。」

(…俺も……死ぬのか。……こんな狂った奴らによって……。)

そこで少年の意識は途切れた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

(……っ。……な、ん、だ?)

あれからどれ位経ったのだろうか。

(……俺、生きているのか?)

薄らと目を開ける。
そこにはあの狂った奴らが
気持ち悪い笑みを浮かべて立っていた。

「目を覚ましたか、試験体No.666。…いや、成功体No.666か。」

「身体の機能は……あと1日ほどしたら、回復しますね。」

「そうか。なら、明日から訓練だな。」

(くん、れん?…また……何か……するのか?)

「久々にやっと成功体が出来ましたね。」

「ああ、これで54体目だ。」

「まずをするだけで失敗するのが、多いですもんね。」

「そうだな。今のところ758体中54体しか成功してない。しかも、成功したところで訓練中に死んでしまう。」

「確か……この成功体を省いて53体中11体しか生き残ってませんよね?」

「そうだ。それに今朝また、が2体増えた。」

「ドールですか…。ではまた、商品に?」

「ああ。女と男の2体だ。女の方は、そのまま売る。高値で売れるしな。男の方は、廃棄する。」

「となると、これで10体ですか。」

「ああ。」

(……ああ、また苦痛を味わうのか。……こんなんなら、さっき死んでた方がマシだった…か。)

少年は再び目を閉じた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

それから、訓練を繰り返した。

何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も。

一体どれ位の時が経ったのだろう。
そしてどれ程の子供達が死んだのだろう。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

いつものように汚い布に丸まり、
冷たい床に転がって寝る。
その日は風が強くボロボロの窓は
カタカタと音を立てていた。

(……三日月……。)

ぼんやりと三日月を見ていた。
チャリッと訳もなく首にかかっている
ナンバーの書かれた銀のネックレスを
触った。

ー ジリジリジリジリジリジリ!!!!!!

すると、突然何かの音が
鳴り響いた。

(何だ?何が起こった??)

布から出て立ち上がると
同時に勢いよく部屋の扉が開かれる。

「おいっ!!早く出て来い!!」

あの狂った奴らの1人に腕を
引っ張られるようにして
部屋を出た。
そして、風の強い外へ出る。

「クッソッ!!何で見つかったッ!!」

(見つかった?何に??)

外へ出ると、生き残っていた
自分と同じ成功体と呼ばれる4人が
自分と同じように狂った奴らに
外へと運ばれていた。

「集まったか!?」

「ああ!!早くずらかるぞ!!」

「まさか、あの"狂炎"に見つかるなんて!!」

(きょう……え、ん?)

疑問に思っていると成功体の一人が
狂った奴らの1人の腕に噛み付いた。
確か……No.423だったか。

「痛ッ!!テメェ!何しやがる!?」

すると、No.423は
いつの間にか狂った奴らから
奪った魔銃を噛み付いた奴に
向かって構えた。

「なッ!?」

ー バシュッ!

鈍い音と共に、
噛み付かれた奴が倒れた。

「クソがッ!!」

ー バシュッ!

狂った奴らの1人がNo.423を
魔銃で撃ち抜く。

「おいッ!!貴重な成功体をッ!!」

「しょうがねぇだろ!?俺らだって殺されるかもしれなかったんだぞ!?」

「くッ!!今は急ぐぞ!!」

ー ドオオォォォンンッッ!!!

再び歩きだそうとすると、
目の前が真っ赤に染まる。

「なッ!!爆破だとッ!!?」

「爆弾が仕掛けられてたかッ。クソッ罠かッ!!」

「……逃げられると思ったか?」

後ろから低い声が聞こえた。
振り向くとそこには燃えるような
赤い髪の男が立っていた。

「"狂炎"!!」

「……可哀想に。」

赤髪の男は傍らで死んでいる
No.423をチラリと見た。
そして再び自分の傍らに
立っている4人の狂った奴らを
金色の双眸で睨む。

「……その子達を解放しろ。」

「ふんッ!!するか!!お前こそ魔銃を置けっ!!子供達に攻撃が当たっても良いのか!?」

グイッと1人の狂った奴に
引き寄せられて頭に魔銃を
押し付けられた。

「……腐った奴め。」

赤髪の男はそれでもカチャリと
音を立てて自分と同じ赤色の魔銃を
こちらへ構えた。

「!?あ、当たってもいいのか!?」

「……………………。」

ザアッと強い風が髪を揺らす。

(ああ……月が綺麗だな。)

俺はふと三日月を見上げた。
本当に綺麗な三日月だった。

「………………だ。」

不意に自分の口から掠れた声が出た。

「あ!?何か言ったか!?」

更に頭にグリリッと魔銃が
突きつけられる。
多分余計な事を言えば
自分は死ぬだろう。
けど、言わずにはいられなかった。

「……月が……綺麗だ。」

「「「は?」」」

その場にいた狂った奴らが
驚愕の表情で自分を見る。

「こんな時に、何をっ……。」

ー パンパンパンッ!!

その隙に赤髪の男が狂った奴らの内
1人を残して撃った。

「はっ、し、しまった!!」

1人が狼狽える。

「もう終わりだ。投降しろ。」

赤髪の男が低い声で呟く。

蒼白な顔をする残った1人。
すると他の成功体のNo.501とNo.597が
その1人を掴んで炎の中へ飛び込んだ。

「なッ!!待てッ!!」

赤髪の男が焦った声で静止の声を
上げるがもう遅かった。

「ギィ、ギィィィィヤァァァァ!!??」

炎の中の叫び声はきっと
最後の狂った奴らの1人だろう。
チラリと見えたNo.501とNo.597の
顔は綺麗な笑顔を浮かべていたから。

「クッソ……。」

赤髪の男は悔しそうに
唇を噛み締めた。
俺は傍らに立っている
No.624を見る。
様子から多分アイツらが言っていた
になってしまっていた。

だから、俺は落ちていた魔銃を
拾い上げてNo.624に向けた。

ー パアンッ!

1発の乾いた音が響いた。
No.624はコロりと倒れた。

ー パシンッ!!

すると何故かまた今度は
甲高い音が響いた。
何だろうと思うと同時に
次第に頬が熱くなっていき、
ああ、叩かれたんだと気づく。
いつの間にか目の前には、
あの赤髪の男が立っていた。

「何で殺したッ!!」

物凄い形相で怒鳴る赤髪の男。
何で?だって……

になったから。」

ポツリと男に向かって呟く。

「ドール?何だそれは。」

「……もうNo.624は、自分の意思で動けない。」

「何故だ?」

「人格が崩壊したから。そうすると、さっきのNo.624の様にただそこにいるだけになる。だから……殺した。楽にしてあげないと、可哀想。」

「!!」

俺が言い終わると同時に
今度は赤髪の男に抱き締められた。

「……すまない。本当にすまない。私がもっと早く見つけていればッ。」

「何で泣いている?」

暫くの間、ポロポロと赤髪の男は
涙を流した。

「……こんなにも月が綺麗だから?」

訳もわからずただ
抱き締められ続けた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

暫くして他にも沢山の人が
やって来た。
赤髪の男がその人達に指示を
出していく。

「……ディオン様、その子は?」

1人の女性が赤髪の男に聞く。

「……私が引き取る。」

「「「は?」」」

その場にいた者達がピシッと
固まる。

「ひ、引き取るんですか?というか、この子は……生き残った子ですよね??」

「ああ、生き残ったのはこの子だけだ。」

ポンッと頭に手を置かれた。

「ええ~…キッカ姉様には……。」

「ちゃんと説明する。多分きっと、キッカも喜んでくれる。」

「……はぁ。分かりました。とりあえず、ディオン様はその子を連れて王都に戻ってください。」

「分かった。よし……えーと、名前何だ?」

赤髪の男に優しく手を握られる。

「なまえ?……No.666。」

名前とは番号の事か??

「No.?……666?」

何故か首を傾げられた。
さっきの女性がハッとした
表情で言う。

「……確か、ここの連中は子供達をナンバーで読んでいたそうです。」

「「「なッ!?」」」

女性と俺以外が絶句している。
あちこちで酷いと声が上がる。
……何で酷い?

「……なら、私が名前を付けてやる。」

「?」

「……レウ。お前の名前は今日からレウだ。」

「れ、う?……レウ。俺の名前はレウ。」

少年は確かめる様に呟いた。
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