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冒険者を救援せよ
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「殿。鉱山のダンジョン付近で地震が発生したそうです」
アリエルの報告に思わず声をあげてしまう。
「えっ!? 確か調査の依頼が出てたよね?」
「はい、ギルドに確認を取りました。中層に4名、冒険者パーティがいるそうです」
ギルド経由で渡してある地図には魔法がかけてある。それを持っているパーティの状況がわかるのだ。
「えーっと……ええ!?」
「どうしました?」
「えっと、アリエル、君今レベルいくつだっけ?」
「はい、先日の戦闘で72になりましたわ」
「これ見てよ」
「……ええ!?」
そこに表示されていたのは、今調査に入っているパーティのレベル表示だ。
リーダーの槍使いが27、重戦士が29、魔法使いが25、そして弓使いが……69だった。
「救助に行くよ」
「ええ、そしてあわよくばその弓使いを配下に迎えるんですね」
「そうなってくれたらありがたいけどね。冒険者保護を掲げてる以上、彼らを見捨てるわけにはいかない」
「では、アルバートを中心に救助隊を……」
「いや、僕が行こう」
「え!?」
「ついでじゃないけど、鉱山のダンジョンもそろそろ解決しておかないと。町の規模もそろそろ上がるし、資材が必要でしょ」
「そう、ですね。ではわたしも同行します」
「ああ、助かるよ」
「鉱山ならば、レギンも呼びましょう」
「ああ、そうだね。彼なら鉱山の専門家だし」
こうしてガルニアの首脳陣という豪華というか過剰戦力ありありの編成で救助隊が組まれた。
「じゃあ、後は頼んだよ」
「お任せください」
チコは僕に同行するので、チダの方にもエーテルで素体を作った。
僕の代理人として任命し、執務室で待機する。
「うふふふー、よかったわねえ」
チコもご機嫌で僕の周りをくるくると回っている。
アルバートが選抜した戦士一人とと兵10名を率いて僕たちは鉱山ダンジョンに向かって出発した。
「地震の原因にもよるんだけど……んー」
「……エーテルの流れが乱れていますね」
アリエルの感知能力が上がっていることがわかる。
「うむ、鉱山に向かって捻じ曲げられておるのう」
レギンはさすが本職か。鉱山の中にいる何者かがエーテルを強引に吸い上げている。そんな感じか。
「急ごう」
少し歩調を速める。僕の手元には冒険者がいる部屋に多数の魔物が向かう姿が見えていた。
***********************************************************************************
「おい、みんな無事か?」
「な、なんとか」
「ウーム、ひどい揺れじゃのう」
俺たちが入ってきた方の通路は崩落しているようだ。わずかな隙間はあるが、人が通れるようにしようとするとかなりの手間がかかるだろう。……先に進むしかなくなったな。
地図を見ると進んだ先に枝道があって、そちらから別の坑道につながっている。外への道のりはかなり遠回りになるが何とかなるだろう。
こういう状況で冷静さを失ったら負けだ。
「地図を見てくれ」
状況を確認しようと声を掛けたら弓使いが立ち上がった。
「みんな、戦いの準備ニャ」
言い終わるかどうかのタイミングで矢を放った。
薄暗がりの坑道の先から悲鳴が聞こえる。
ゴブリンの類か。
「ワシが出る!」
重戦士が盾を構えて前に出た。盾にガンガンと投石が当たる。
「ぬおおおおおおお! フォートレス!」
スキルを使用した直後にかなり大きめの岩が盾に当たって砕けた。
「ふっ!」
鋭い呼気と共に放たれた矢は、一回り大きな体躯のゴブリンの眉間に突き立った。
「くそっ、ホブゴブリンだと!?」
上位種というやつで、並みのゴブリンよりも強い。
「スイッチだ!」
盾で防ぐにも限界がある。ゴブリンと殴り合ってダメージが蓄積されている状態を見て取って、俺と立ち位置を入れ替えた。
「すまん!」
槍のリーチを生かして敵を近寄らせないようにして戦う。投石はなるべく避けるが、よけきれない分は防具で受ける。
だが、衝撃は防具を貫通して俺の体の芯にダメージが蓄積する。
「だあっ!」
裂帛の気合と共に突き出した槍の穂先がゴブリンの胸を貫いた。
らちが開かないと見たのか、2体目のホブゴブリンが棍棒を構えて突進してくる。
「うらうらうらうらうらあああああああ!」
全力の速度で槍を突き出す。
「サウザンド・スラスト!」
大技を繰り出した。無数に繰り出した刺突がゴブリンの急所を貫く。
ぱああっと光が降り注いだ。傷が癒え、体に力が戻ってくる。
俺は大きく槍を振り回して敵を後退させた。
「よし、交代じゃ!」
「頼む!」
俺たちの後方では援護射撃や、守護の魔法がかけられる。
それがなければとっくに命を落としていただろう。
こうして、どれくらい戦い続けていたのかわからない時間が過ぎ、大量の魔石を残してゴブリンたちの襲撃は終わりを告げた。
「これ、飲むニャ」
「あ、ああ。すまんな」
「いい、支給品ニャ」
上級のポーションは傷だけでなく活力も回復してくれた。
「……素晴らしい」
「それはマナポーションか」
「ええ、エーテルを液体にして飲んだらこんな感じなのでしょうか」
「質がいいって言いたいんだな?」
「無論です」
「ふう、うまい!」
重戦士が豪快に携帯食にかぶりついていた。
パンとパンの間に肉が挟んである。手軽に食べられるので便利だ。
俺も同じく食事をとった。長期戦の疲れはあったが、腹がふくれると体に力が戻ってくる気がした。
「ちょいと奥の方になるが、枝道があってそっちから別の坑道に行けるはずなんだ。ただ、この地震で崩れていたりするかもしれない」
「そうじゃの。だがここでじっとしておってもじり貧じゃ」
「同意します。救助隊が向かっていると信じましょう」
「進むニャ」
無数、というほどではないが、かなり大量の魔石を拾い集めた。
「これだけでしばらく酒には困らんのう」
ドワーフらしく、酒には目がないようだ。
「生きて帰れたら好きなだけ飲ませてやるよ」
「言ったな? ククク、ドワーフの胃袋を舐めるなよ?」
「それも生きてりゃってこった」
「わたしはサラダを所望します」
「あんたもか!」
「固めの杯、ではないですが、同じ皿の食事としゃれこもうではありませんか」
「ああ、そうだな!」
「それ、ニャーもいていいの?」
「え? 当たり前だろ?」
そういったとたん彼女は少しうつむいた。
「わかったニャ! ニャーはお肉がいいニャ!」
笑顔で宣言すると、足取りも軽く坑道を歩き始めるのだった。
アリエルの報告に思わず声をあげてしまう。
「えっ!? 確か調査の依頼が出てたよね?」
「はい、ギルドに確認を取りました。中層に4名、冒険者パーティがいるそうです」
ギルド経由で渡してある地図には魔法がかけてある。それを持っているパーティの状況がわかるのだ。
「えーっと……ええ!?」
「どうしました?」
「えっと、アリエル、君今レベルいくつだっけ?」
「はい、先日の戦闘で72になりましたわ」
「これ見てよ」
「……ええ!?」
そこに表示されていたのは、今調査に入っているパーティのレベル表示だ。
リーダーの槍使いが27、重戦士が29、魔法使いが25、そして弓使いが……69だった。
「救助に行くよ」
「ええ、そしてあわよくばその弓使いを配下に迎えるんですね」
「そうなってくれたらありがたいけどね。冒険者保護を掲げてる以上、彼らを見捨てるわけにはいかない」
「では、アルバートを中心に救助隊を……」
「いや、僕が行こう」
「え!?」
「ついでじゃないけど、鉱山のダンジョンもそろそろ解決しておかないと。町の規模もそろそろ上がるし、資材が必要でしょ」
「そう、ですね。ではわたしも同行します」
「ああ、助かるよ」
「鉱山ならば、レギンも呼びましょう」
「ああ、そうだね。彼なら鉱山の専門家だし」
こうしてガルニアの首脳陣という豪華というか過剰戦力ありありの編成で救助隊が組まれた。
「じゃあ、後は頼んだよ」
「お任せください」
チコは僕に同行するので、チダの方にもエーテルで素体を作った。
僕の代理人として任命し、執務室で待機する。
「うふふふー、よかったわねえ」
チコもご機嫌で僕の周りをくるくると回っている。
アルバートが選抜した戦士一人とと兵10名を率いて僕たちは鉱山ダンジョンに向かって出発した。
「地震の原因にもよるんだけど……んー」
「……エーテルの流れが乱れていますね」
アリエルの感知能力が上がっていることがわかる。
「うむ、鉱山に向かって捻じ曲げられておるのう」
レギンはさすが本職か。鉱山の中にいる何者かがエーテルを強引に吸い上げている。そんな感じか。
「急ごう」
少し歩調を速める。僕の手元には冒険者がいる部屋に多数の魔物が向かう姿が見えていた。
***********************************************************************************
「おい、みんな無事か?」
「な、なんとか」
「ウーム、ひどい揺れじゃのう」
俺たちが入ってきた方の通路は崩落しているようだ。わずかな隙間はあるが、人が通れるようにしようとするとかなりの手間がかかるだろう。……先に進むしかなくなったな。
地図を見ると進んだ先に枝道があって、そちらから別の坑道につながっている。外への道のりはかなり遠回りになるが何とかなるだろう。
こういう状況で冷静さを失ったら負けだ。
「地図を見てくれ」
状況を確認しようと声を掛けたら弓使いが立ち上がった。
「みんな、戦いの準備ニャ」
言い終わるかどうかのタイミングで矢を放った。
薄暗がりの坑道の先から悲鳴が聞こえる。
ゴブリンの類か。
「ワシが出る!」
重戦士が盾を構えて前に出た。盾にガンガンと投石が当たる。
「ぬおおおおおおお! フォートレス!」
スキルを使用した直後にかなり大きめの岩が盾に当たって砕けた。
「ふっ!」
鋭い呼気と共に放たれた矢は、一回り大きな体躯のゴブリンの眉間に突き立った。
「くそっ、ホブゴブリンだと!?」
上位種というやつで、並みのゴブリンよりも強い。
「スイッチだ!」
盾で防ぐにも限界がある。ゴブリンと殴り合ってダメージが蓄積されている状態を見て取って、俺と立ち位置を入れ替えた。
「すまん!」
槍のリーチを生かして敵を近寄らせないようにして戦う。投石はなるべく避けるが、よけきれない分は防具で受ける。
だが、衝撃は防具を貫通して俺の体の芯にダメージが蓄積する。
「だあっ!」
裂帛の気合と共に突き出した槍の穂先がゴブリンの胸を貫いた。
らちが開かないと見たのか、2体目のホブゴブリンが棍棒を構えて突進してくる。
「うらうらうらうらうらあああああああ!」
全力の速度で槍を突き出す。
「サウザンド・スラスト!」
大技を繰り出した。無数に繰り出した刺突がゴブリンの急所を貫く。
ぱああっと光が降り注いだ。傷が癒え、体に力が戻ってくる。
俺は大きく槍を振り回して敵を後退させた。
「よし、交代じゃ!」
「頼む!」
俺たちの後方では援護射撃や、守護の魔法がかけられる。
それがなければとっくに命を落としていただろう。
こうして、どれくらい戦い続けていたのかわからない時間が過ぎ、大量の魔石を残してゴブリンたちの襲撃は終わりを告げた。
「これ、飲むニャ」
「あ、ああ。すまんな」
「いい、支給品ニャ」
上級のポーションは傷だけでなく活力も回復してくれた。
「……素晴らしい」
「それはマナポーションか」
「ええ、エーテルを液体にして飲んだらこんな感じなのでしょうか」
「質がいいって言いたいんだな?」
「無論です」
「ふう、うまい!」
重戦士が豪快に携帯食にかぶりついていた。
パンとパンの間に肉が挟んである。手軽に食べられるので便利だ。
俺も同じく食事をとった。長期戦の疲れはあったが、腹がふくれると体に力が戻ってくる気がした。
「ちょいと奥の方になるが、枝道があってそっちから別の坑道に行けるはずなんだ。ただ、この地震で崩れていたりするかもしれない」
「そうじゃの。だがここでじっとしておってもじり貧じゃ」
「同意します。救助隊が向かっていると信じましょう」
「進むニャ」
無数、というほどではないが、かなり大量の魔石を拾い集めた。
「これだけでしばらく酒には困らんのう」
ドワーフらしく、酒には目がないようだ。
「生きて帰れたら好きなだけ飲ませてやるよ」
「言ったな? ククク、ドワーフの胃袋を舐めるなよ?」
「それも生きてりゃってこった」
「わたしはサラダを所望します」
「あんたもか!」
「固めの杯、ではないですが、同じ皿の食事としゃれこもうではありませんか」
「ああ、そうだな!」
「それ、ニャーもいていいの?」
「え? 当たり前だろ?」
そういったとたん彼女は少しうつむいた。
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笑顔で宣言すると、足取りも軽く坑道を歩き始めるのだった。
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