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とあるパーティの冒険
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ここガルニアは冒険者優遇政策をとっていて、ギルドに登録すると様々なアイテムが安く買えたり、宿泊や食事が格安だったりする。
魔石の買取価格もほかのギルドより高いし、駆け出しへの支援も手厚い。実に住みやすいところだった。
そんな場所なので、冒険者はひよっこからベテランまで多く集まる。それでも人手不足というのだから恐れ入る景気の良さだ。
俺はダンジョン化した鉱山の調査依頼を受けて、ガルニア北東の鉱山街を訪れた。依頼書を掲げて声をあげるんだ。こういうふうに。
「鉱山の調査依頼だ。同行してくれる奴はいないか? 俺はレベル27の槍使いだ!」
「乗った!」
「希望する」
「いいかニャ?」
俺の声掛けに応えて集まったのは、ドワーフの重戦士、エルフの魔法使い、猫人族の弓使いだった。
エルフは攻撃魔法が主体だが、治癒魔法も使える。驚いたことにドワーフも治癒魔法が使えるらしい。
魔物は治癒魔法の光を嫌う傾向がある。なぜかはよくわかっていない。だがその習性から癒し手は敵によく狙われる。
あとで聞くと彼はもともと神官だったらしい。だが、敵を迎え撃つうちに防御力の高い武具を装備するようになった。ということらしい。
猫人族の弓使いはすさまじい腕だった。俺からすれば点にしか見えないような魔物を見つけては一矢で撃つ。
彼女は都度魔石の所有権を確認してきた。ほかのメンバーも問題なく了承した。彼女の腕でなければとても倒せないような相手だったからだ。
「こっちだ」
依頼を受けたときに渡されたのは鉱山の地図だった。もちろんダンジョン化で変わっている部分もあるそうで、そういった場所の確認も依頼料に含まれているそうだ。
「ニャーが先行する」
彼女の主張には誰も異を挟まなかった。彼女の腕はこれまでの道中でいやというほど目にしていたからだ。
というか、依頼遂行後の報酬の分け前をかなり増やさなければならないんじゃないかとすら思っていた。
冒険者と言えば食い詰め物の代名詞だ。何物にもなれなかったやつのなれの果て。そう言われても仕方のない一面もあった。
だからこそ俺はそうじゃないと証明するために命を張っている。
今回集まったメンバーは良い奴らだった。だからできればこれからも一緒にやっていきたいと思っていた。
「ハンドサイン、大丈夫ニャ?」
「おうよ、任せて置け!」
坑道のような暗闇に潜む魔物は音に敏感なことが多い。声を出しての連携は時に新たな魔物を呼び寄せる。だから、あらかじめ片手で、例えば指を一本立てたら敵がいる。みたいに合図を決めておくのだ。
先頭に弓使い、次に重戦士。3番目は魔法使い、最後尾に俺だ。こうしておけば背後から攻撃を受けても態勢を整えられる。
時折背後を確認しながら、坑道を進む。今までは地図通りだったが、ところどころ崩落していたり、壁が崩れてその奥に通路ができていたりと、わずか、とは言えないほどの変化が起きていた。
「ふっ!」
鋭い呼気と同時に弦から指が離れる。空気を斬り裂いて真一文字に矢が飛んでいき、巨大なムカデの目と目の間に突き立った。
断末魔すら上げられずムカデは絶命し、あとに魔石が残る。これまでの道中とは異なり、彼女は共有の戦利品を入れる袋に魔石を放りこんで行く。
「いいのか?」
「何がニャ?」
「魔石だ。お前さんが仕留めたんだろう?」
「ダンジョンの中でそんなわがまま言うほどガキじゃないニャ。それにあんたらがフォローしてくれるんニャろ?」
「あ、ああ。それはそうだが」
「じゃあ、この魔石はみんなの戦利品ニャ」
やたらドヤ顔でそう宣言する弓使い。
「がははははは、わかっておるのう」
「いいことを言いますね」
重戦士と魔法使いが笑顔で答えた。ダンジョンの中では負傷などで戦力が落ちると、それが崩壊の原因となることがよくある。
俺たちは運命共同体なのだ。
そして、分け前でもめてパーティが機能しなくなることすらある。そして命を落とす。それはあまりにバカらしい死に方だろう。
「前方、少し開けたスペースがあるニャ。地図はどうなってるニャ?」
「ああ、地図通りだな。工夫の休憩所らしい」
「んじゃ少しそこで休むニャ」
「賛成」
「無理するべきではないの」
俺たちは警戒しながら小部屋に入った。よくあるのは部屋に入った途端、通路に魔物が現れて閉じ込められるパターンだ。
「精霊石よ、邪なる威力を退けよ!」
魔法使いが精霊石に魔力を通して結界を張った。本来精霊石は俺たちのような中堅パーティがお手軽に使えるようなものじゃない。実はこれはギルドから支給されたものだ。
腰を下ろすとジワリと疲労がにじんでくる。ほかのメンバーも同じようだった。ここに至るまで戦闘らしい戦闘はなかった。
それでも一瞬の気のゆるみが死につながるダンジョンの中だ。皆相応に緊張しているし、疲労もたまる。
「なあ、みんなは何で冒険者をやってるんだ?」
ふとした思い付きで声をかけてみた。基本的に冒険者同士でこういった詮索はあまり好まれない。けど、今日初めて組んだとは思えない、おたがいの呼吸がしっくりくるメンバーは初めてのことだった。
「……私は故郷の森がダンジョン化してしまった。だから食うためにやっている」
「ワシは人助けじゃな。元神官としてはまっとうじゃろ?」
「ニャーは強い人を探してる」
それぞれの理由をぽつぽつと話してくれた。
「そういうあんたはどうなんだ?」
エルフの問いかけに今では青臭すぎて笑い話にもならない、初心を語ってしまった。
「一山当ててさ、有名になりたかったんだよな」
「がははは、なんじゃそりゃ」
即座にドワーフが大笑いする。エルフも口元をゆがめてその表情はかろうじて笑みを形作っているようだった。
猫人族の彼女は無表情で、その感情はうかがい知れない。
それでも拒絶する感情を感じなかったのは、その尻尾がゆらゆらと揺れていたからか。
少し打ち解けた雰囲気であーでもない、こうでもないと雑談をしていたその時、猫人族の彼女が今までにない鋭い声で警告を発したのだ。
「伏せるニャ!」
直後、わずかに振動を感じたと思った直後、大きな揺れを感じ、俺たちは地に伏せた状態のまま身動きが取れなくなった。
魔石の買取価格もほかのギルドより高いし、駆け出しへの支援も手厚い。実に住みやすいところだった。
そんな場所なので、冒険者はひよっこからベテランまで多く集まる。それでも人手不足というのだから恐れ入る景気の良さだ。
俺はダンジョン化した鉱山の調査依頼を受けて、ガルニア北東の鉱山街を訪れた。依頼書を掲げて声をあげるんだ。こういうふうに。
「鉱山の調査依頼だ。同行してくれる奴はいないか? 俺はレベル27の槍使いだ!」
「乗った!」
「希望する」
「いいかニャ?」
俺の声掛けに応えて集まったのは、ドワーフの重戦士、エルフの魔法使い、猫人族の弓使いだった。
エルフは攻撃魔法が主体だが、治癒魔法も使える。驚いたことにドワーフも治癒魔法が使えるらしい。
魔物は治癒魔法の光を嫌う傾向がある。なぜかはよくわかっていない。だがその習性から癒し手は敵によく狙われる。
あとで聞くと彼はもともと神官だったらしい。だが、敵を迎え撃つうちに防御力の高い武具を装備するようになった。ということらしい。
猫人族の弓使いはすさまじい腕だった。俺からすれば点にしか見えないような魔物を見つけては一矢で撃つ。
彼女は都度魔石の所有権を確認してきた。ほかのメンバーも問題なく了承した。彼女の腕でなければとても倒せないような相手だったからだ。
「こっちだ」
依頼を受けたときに渡されたのは鉱山の地図だった。もちろんダンジョン化で変わっている部分もあるそうで、そういった場所の確認も依頼料に含まれているそうだ。
「ニャーが先行する」
彼女の主張には誰も異を挟まなかった。彼女の腕はこれまでの道中でいやというほど目にしていたからだ。
というか、依頼遂行後の報酬の分け前をかなり増やさなければならないんじゃないかとすら思っていた。
冒険者と言えば食い詰め物の代名詞だ。何物にもなれなかったやつのなれの果て。そう言われても仕方のない一面もあった。
だからこそ俺はそうじゃないと証明するために命を張っている。
今回集まったメンバーは良い奴らだった。だからできればこれからも一緒にやっていきたいと思っていた。
「ハンドサイン、大丈夫ニャ?」
「おうよ、任せて置け!」
坑道のような暗闇に潜む魔物は音に敏感なことが多い。声を出しての連携は時に新たな魔物を呼び寄せる。だから、あらかじめ片手で、例えば指を一本立てたら敵がいる。みたいに合図を決めておくのだ。
先頭に弓使い、次に重戦士。3番目は魔法使い、最後尾に俺だ。こうしておけば背後から攻撃を受けても態勢を整えられる。
時折背後を確認しながら、坑道を進む。今までは地図通りだったが、ところどころ崩落していたり、壁が崩れてその奥に通路ができていたりと、わずか、とは言えないほどの変化が起きていた。
「ふっ!」
鋭い呼気と同時に弦から指が離れる。空気を斬り裂いて真一文字に矢が飛んでいき、巨大なムカデの目と目の間に突き立った。
断末魔すら上げられずムカデは絶命し、あとに魔石が残る。これまでの道中とは異なり、彼女は共有の戦利品を入れる袋に魔石を放りこんで行く。
「いいのか?」
「何がニャ?」
「魔石だ。お前さんが仕留めたんだろう?」
「ダンジョンの中でそんなわがまま言うほどガキじゃないニャ。それにあんたらがフォローしてくれるんニャろ?」
「あ、ああ。それはそうだが」
「じゃあ、この魔石はみんなの戦利品ニャ」
やたらドヤ顔でそう宣言する弓使い。
「がははははは、わかっておるのう」
「いいことを言いますね」
重戦士と魔法使いが笑顔で答えた。ダンジョンの中では負傷などで戦力が落ちると、それが崩壊の原因となることがよくある。
俺たちは運命共同体なのだ。
そして、分け前でもめてパーティが機能しなくなることすらある。そして命を落とす。それはあまりにバカらしい死に方だろう。
「前方、少し開けたスペースがあるニャ。地図はどうなってるニャ?」
「ああ、地図通りだな。工夫の休憩所らしい」
「んじゃ少しそこで休むニャ」
「賛成」
「無理するべきではないの」
俺たちは警戒しながら小部屋に入った。よくあるのは部屋に入った途端、通路に魔物が現れて閉じ込められるパターンだ。
「精霊石よ、邪なる威力を退けよ!」
魔法使いが精霊石に魔力を通して結界を張った。本来精霊石は俺たちのような中堅パーティがお手軽に使えるようなものじゃない。実はこれはギルドから支給されたものだ。
腰を下ろすとジワリと疲労がにじんでくる。ほかのメンバーも同じようだった。ここに至るまで戦闘らしい戦闘はなかった。
それでも一瞬の気のゆるみが死につながるダンジョンの中だ。皆相応に緊張しているし、疲労もたまる。
「なあ、みんなは何で冒険者をやってるんだ?」
ふとした思い付きで声をかけてみた。基本的に冒険者同士でこういった詮索はあまり好まれない。けど、今日初めて組んだとは思えない、おたがいの呼吸がしっくりくるメンバーは初めてのことだった。
「……私は故郷の森がダンジョン化してしまった。だから食うためにやっている」
「ワシは人助けじゃな。元神官としてはまっとうじゃろ?」
「ニャーは強い人を探してる」
それぞれの理由をぽつぽつと話してくれた。
「そういうあんたはどうなんだ?」
エルフの問いかけに今では青臭すぎて笑い話にもならない、初心を語ってしまった。
「一山当ててさ、有名になりたかったんだよな」
「がははは、なんじゃそりゃ」
即座にドワーフが大笑いする。エルフも口元をゆがめてその表情はかろうじて笑みを形作っているようだった。
猫人族の彼女は無表情で、その感情はうかがい知れない。
それでも拒絶する感情を感じなかったのは、その尻尾がゆらゆらと揺れていたからか。
少し打ち解けた雰囲気であーでもない、こうでもないと雑談をしていたその時、猫人族の彼女が今までにない鋭い声で警告を発したのだ。
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