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戦い終わって
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すぱーんと頭を刺激する一撃を受けて、僕はぱたっと倒れた。演技だけど。
僕に人外の力があることは知られてしまった。まあ、これは仕方ない。アルバート達が死ぬとか耐えられない。
だけど、僕の力が万能であるかのように思われてしまうと、人々は全部僕に頼りきりになってしまう。それはそれで嫌だった。
もちろん今回のことは非常事態だから仕方ない。
だから一芝居うったのだ。
「殿、殿おおおおおおおおおおおおおおおお!」
アルバートが叫ぶ。そもそも僕にツッコミ入れてしばいたの君だからね?
「ああ、なんということ! あれほどのエーテルを放出すれば……命に係わるのではー」
アリエルの棒読みが痛い。そういう意味じゃアルバートは演技過剰な気がする。
「メディック、メディーーーーーーーック!」
アルバートが僕をがくがくと揺さぶりながら叫んだ。
っていうか、アリエルは治癒魔法を修めてるよね?
とりあえずこのひと騒ぎで、クロノ様はすっごい魔法を使えるが、その行使には代償として寿命が削られるとかの都市伝説が流布された。
とりあえず、むやみやたらに引っ張り出されるとかはなくなってくれると……いいなあ。
ダンジョン化した森に冒険者の斥候を出しておいた。直前までは魔物がみっちり詰まっていたそうだが、今は良い感じで隙間が空いているそうだ。
高レベルの魔物とかもごっそり減っている。そういえば戦場に転がっていた魔石は、ゴブリンの上位種のものだったそうだ。
「変だと思ったのよ。わたしの矢を受けて致命傷になってないとか」
「並みのゴブリンならあの弾幕を駆け抜ける間に数回は魔石になっているだろうな」
そういえば、手柄争いは引き分けという形にした。
お互いにお互いの功績を主張しあって収拾がつかなかったのである。曰く
「俺の突撃が成功したのはアリエルの援護が的確だったからだ!」
「わたしの弓兵ではトロールは討てなかった。トロールを討って、敵の前衛を崩壊させたアルバートの手柄なのです!」
なんというか、こいつらツンデレか。いろいろと面倒なので、ともに同率の功績第一位とした。
それと、砦の守備をしていた戦士にハレックと名前を授けた。主君から名前をもらうのが名誉らしい。
守備隊にはボーナスを大盤振る舞いし、冒険者たちにも破格の報酬を出した。
そのことで信用を得られたのか、冒険者たちが詰め所や砦に積極的に入ってくれるようになった。
「うおおおおおお!」
アルバートが雄たけびを上げている。
「あー、なんか新しいスキルに目覚めたみたいですよ」
書類を持ってきたアリエルが教えてくれた。
「おお、それはめでたい。で、どんなスキル?」
「文字通りで、一刀両断ってスキルですね。クリティカルが出やすくなるのと、即死効果が付くそうで」
「すごい!」
「うふふ、わたしも新しいスキルを覚えたんですよ! 聞きたいですか?」
むしろ聞いてくれとばかりに満面の笑みを浮かべる。というか、アリエルはここに来た時に比べて表情が豊かになったなあ。
「へえ、どんなのだい?」
「うふふふー。魔法攻撃力向上と、弓兵指揮スキルです」
「すごい! さすがアリエルだね!」
ふと思いついたので、チコに相談してみた。
「たとえば、給料にスキル手当とか付けたらどうかな?」
「アリね!」
即答だった。交易で利益も上がっているし、むしろ人手は不足している。
兵や戦士のなり手が増えるのは良いことだと思う。
戦士は、兵の一段上に位置する地位としている。僕自身は領主だけども、特に爵位とか持っていないから便宜上そういう扱いにした。
そして、その戦士たちを束ねる肩書として戦士長を置いている。
軍のトップは領主たる僕だけど、実務面は戦士長のアルバートが担っている。訓練と実戦の指揮が主な仕事だけど、僕よりも兵たちに慕われているから適任だよねってのんきに思っていた。
通りすがりに、兵たちの訓練を覗いてみた。アルバートの掛け声に従って、剣と盾を持った歩兵が隊列を組んで動く。
「防御態勢!」
「「おう!」」
ガシッと隊列を整え、盾を並べる。盾と盾を並べることでまるで城壁のような堅牢な陣だった。
アルバートの指揮と、それに従う兵たちは一糸乱れずに見えない敵に対して攻撃と防御を繰り返す。
「よし、休め!」
一心不乱に訓練に打ち込む、そんな姿に思わず拍手をしてしまった。
兵たちは僕に気づくと、一斉に膝をつく。
「う、うえええ!?」
今までこんなことはなかったので、きょどってしまった。
「おお、殿!」
顎から汗を滴らせながらアルバートが僕に笑顔を向ける。
「この者たちは先日の戦いで砦に出向いたのです。それゆえ殿のお力もよく知ることになりまして、な」
「ああ、え? どういうこと!?」
「殿の武勇に命を救われた者どもです」
「ふぇ!?」
その一言に兵たちはうつむいていた顔を上げ、笑顔を見せた。
「殿! 一生ついていきます!」
「ありがとうございます!」
「俺、立派な戦士になって見せます!」
「罵ってください!」
口々に感謝? の言葉を僕に投げかけてくる。
なんか聞き捨てならない言葉も混じっていた気がするけど、聞かなかったことにしよう。
「わははははは、おかげで兵たちの訓練がはかどっております!」
アルバートは豪快に笑っている。とりあえず、いい方に向かっているならいいことだ。
「この街のみんなのために頑張って。よろしくね」
兵たちに言葉をかけてやってくださいと言われて、とりあえず思いつくことを言ってみた。なんかすごい鬨の声を上げて喜んでいる。
気合の入った掛け声を背に、僕は訓練場を出た。
「おう、殿!」
レギンがいい笑顔で僕のところにやってきた。
「この前の変異種オーガの素材だがの、高純度の魔石が含まれておったのじゃ。あとは鉱山のダンジョンからミスリルが採れてな。ダンジョンを攻略すればより効率のいい道具や高性能の武具を生産できるぞい」
「それはすごい。いい成果を出した人にはボーナス弾むって告知お願い」
「おう! 儂もうまい酒のために頑張るぞい!」
まだダンジョンは小さなものしか解放されていない。いつ新たに群れが溢れるかも予断を許さない。
けど、今回の勝利でうまい方に転がった気がする。
そして、僕のやらかしたことに尾ひれがついて触れ回った奴がいるようだ。
ダンジョン一つを魔法の一撃で焼き払ったってどんだけ……。1000以上の魔物の群れを一撃で薙ぎ払ったけどさ。
ただ、領主たる僕が「強い」ということは意味がある。少なくとも以前より移住者も増えたし冒険者も多くやってくるようになった。こうして、都市の発展は一つ新たな段階を踏んだのだった。
僕に人外の力があることは知られてしまった。まあ、これは仕方ない。アルバート達が死ぬとか耐えられない。
だけど、僕の力が万能であるかのように思われてしまうと、人々は全部僕に頼りきりになってしまう。それはそれで嫌だった。
もちろん今回のことは非常事態だから仕方ない。
だから一芝居うったのだ。
「殿、殿おおおおおおおおおおおおおおおお!」
アルバートが叫ぶ。そもそも僕にツッコミ入れてしばいたの君だからね?
「ああ、なんということ! あれほどのエーテルを放出すれば……命に係わるのではー」
アリエルの棒読みが痛い。そういう意味じゃアルバートは演技過剰な気がする。
「メディック、メディーーーーーーーック!」
アルバートが僕をがくがくと揺さぶりながら叫んだ。
っていうか、アリエルは治癒魔法を修めてるよね?
とりあえずこのひと騒ぎで、クロノ様はすっごい魔法を使えるが、その行使には代償として寿命が削られるとかの都市伝説が流布された。
とりあえず、むやみやたらに引っ張り出されるとかはなくなってくれると……いいなあ。
ダンジョン化した森に冒険者の斥候を出しておいた。直前までは魔物がみっちり詰まっていたそうだが、今は良い感じで隙間が空いているそうだ。
高レベルの魔物とかもごっそり減っている。そういえば戦場に転がっていた魔石は、ゴブリンの上位種のものだったそうだ。
「変だと思ったのよ。わたしの矢を受けて致命傷になってないとか」
「並みのゴブリンならあの弾幕を駆け抜ける間に数回は魔石になっているだろうな」
そういえば、手柄争いは引き分けという形にした。
お互いにお互いの功績を主張しあって収拾がつかなかったのである。曰く
「俺の突撃が成功したのはアリエルの援護が的確だったからだ!」
「わたしの弓兵ではトロールは討てなかった。トロールを討って、敵の前衛を崩壊させたアルバートの手柄なのです!」
なんというか、こいつらツンデレか。いろいろと面倒なので、ともに同率の功績第一位とした。
それと、砦の守備をしていた戦士にハレックと名前を授けた。主君から名前をもらうのが名誉らしい。
守備隊にはボーナスを大盤振る舞いし、冒険者たちにも破格の報酬を出した。
そのことで信用を得られたのか、冒険者たちが詰め所や砦に積極的に入ってくれるようになった。
「うおおおおおお!」
アルバートが雄たけびを上げている。
「あー、なんか新しいスキルに目覚めたみたいですよ」
書類を持ってきたアリエルが教えてくれた。
「おお、それはめでたい。で、どんなスキル?」
「文字通りで、一刀両断ってスキルですね。クリティカルが出やすくなるのと、即死効果が付くそうで」
「すごい!」
「うふふ、わたしも新しいスキルを覚えたんですよ! 聞きたいですか?」
むしろ聞いてくれとばかりに満面の笑みを浮かべる。というか、アリエルはここに来た時に比べて表情が豊かになったなあ。
「へえ、どんなのだい?」
「うふふふー。魔法攻撃力向上と、弓兵指揮スキルです」
「すごい! さすがアリエルだね!」
ふと思いついたので、チコに相談してみた。
「たとえば、給料にスキル手当とか付けたらどうかな?」
「アリね!」
即答だった。交易で利益も上がっているし、むしろ人手は不足している。
兵や戦士のなり手が増えるのは良いことだと思う。
戦士は、兵の一段上に位置する地位としている。僕自身は領主だけども、特に爵位とか持っていないから便宜上そういう扱いにした。
そして、その戦士たちを束ねる肩書として戦士長を置いている。
軍のトップは領主たる僕だけど、実務面は戦士長のアルバートが担っている。訓練と実戦の指揮が主な仕事だけど、僕よりも兵たちに慕われているから適任だよねってのんきに思っていた。
通りすがりに、兵たちの訓練を覗いてみた。アルバートの掛け声に従って、剣と盾を持った歩兵が隊列を組んで動く。
「防御態勢!」
「「おう!」」
ガシッと隊列を整え、盾を並べる。盾と盾を並べることでまるで城壁のような堅牢な陣だった。
アルバートの指揮と、それに従う兵たちは一糸乱れずに見えない敵に対して攻撃と防御を繰り返す。
「よし、休め!」
一心不乱に訓練に打ち込む、そんな姿に思わず拍手をしてしまった。
兵たちは僕に気づくと、一斉に膝をつく。
「う、うえええ!?」
今までこんなことはなかったので、きょどってしまった。
「おお、殿!」
顎から汗を滴らせながらアルバートが僕に笑顔を向ける。
「この者たちは先日の戦いで砦に出向いたのです。それゆえ殿のお力もよく知ることになりまして、な」
「ああ、え? どういうこと!?」
「殿の武勇に命を救われた者どもです」
「ふぇ!?」
その一言に兵たちはうつむいていた顔を上げ、笑顔を見せた。
「殿! 一生ついていきます!」
「ありがとうございます!」
「俺、立派な戦士になって見せます!」
「罵ってください!」
口々に感謝? の言葉を僕に投げかけてくる。
なんか聞き捨てならない言葉も混じっていた気がするけど、聞かなかったことにしよう。
「わははははは、おかげで兵たちの訓練がはかどっております!」
アルバートは豪快に笑っている。とりあえず、いい方に向かっているならいいことだ。
「この街のみんなのために頑張って。よろしくね」
兵たちに言葉をかけてやってくださいと言われて、とりあえず思いつくことを言ってみた。なんかすごい鬨の声を上げて喜んでいる。
気合の入った掛け声を背に、僕は訓練場を出た。
「おう、殿!」
レギンがいい笑顔で僕のところにやってきた。
「この前の変異種オーガの素材だがの、高純度の魔石が含まれておったのじゃ。あとは鉱山のダンジョンからミスリルが採れてな。ダンジョンを攻略すればより効率のいい道具や高性能の武具を生産できるぞい」
「それはすごい。いい成果を出した人にはボーナス弾むって告知お願い」
「おう! 儂もうまい酒のために頑張るぞい!」
まだダンジョンは小さなものしか解放されていない。いつ新たに群れが溢れるかも予断を許さない。
けど、今回の勝利でうまい方に転がった気がする。
そして、僕のやらかしたことに尾ひれがついて触れ回った奴がいるようだ。
ダンジョン一つを魔法の一撃で焼き払ったってどんだけ……。1000以上の魔物の群れを一撃で薙ぎ払ったけどさ。
ただ、領主たる僕が「強い」ということは意味がある。少なくとも以前より移住者も増えたし冒険者も多くやってくるようになった。こうして、都市の発展は一つ新たな段階を踏んだのだった。
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