箱庭の英雄~滅んだ世界を立て直すために古代遺跡から始まる内政ライフ~

響 恭也

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チコさんの都市経営相談室

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「ふーん。なかなかいい人材そろえたわね」

 僕の頭の上で胡坐をかいて、チコが批評していた。

「そうなの?」

「うん、基礎ステータスは微妙だったけど、忠誠心が高いわね。そうするとレベルアップするときにボーナスがつくのよ。だからレベル15なのにオーガと渡り合えるのね」

「ほほう! 吾輩の忠義が殿の力になっているというわけですな?」

「そうよ。マスターのためにさらなる忠義を尽くしなさい!」

「はっ! 粉骨砕身の覚悟ですぞ!」



「内政効率がすごくいいわね。リソースの割り当てがほぼ完ぺきよ!」

「うふふふふふふ、ありがとう」

 じとっとチコをねめつけるように見ているのはアリエルだ。普段のクールな表情は鳴りを潜め潤んだ眼差しと上気した頬は実に色っぽい。

 アリエルの部下のエルフたちがぽーっとなている。

 これはあれだろうか。ギャップ萌えってやつ?



 チコとアリエルはあーでもない、こーでもないと施設の改善や、建設の優先順位について語っていた。

「そっか、確かにそうねえ」

「そうでしょ?」

 最優先に整備するところが決まったそうだ。

「街道の整備を提案します」

 アリエルは普段のクールな表情で僕に提案してきた。

「理由を聞かせてくれる?」

「はい。まずは境界の道を拡張します。こうすることで通商と、移住者の増加を図ります」

「なるほどね。次は?」

「都市内の街道整備です。居住区と商業区、生産区画を相互に結び付けます」

「今でもそれは進行してるんじゃない?」

「そうですね、リソース配分を変えるとご理解ください」

「労働者とか資材の割り当てを優先するってこと?」

「そうです」

「ちょっと気になったんだけど、防衛はどうなるの?」

「街道の治安を守るために、要所に詰め所を作ります。兵を常駐させ、街道の巡回をさせ、さらに詰め所に立て籠もることで援軍が来るまで持ちこたえさせます」

「なるほど。外部への街道を整備することで本拠の兵力を機動的に使うわけだ」



 ちなみに、僕にこの手の知識は乏しい。チコ……いまはチダになっている存在にいろいろと座学で教わったことだ。

 実は質問や返答も執務机の画面に表示されているのを読み上げているだけだったりする。

「うんうん、さすがあたしのマスター」

 僕の頭の上を定位置にふんぞり返っているチコ。足元には子犬ほどの大きさになったフェンリルがすやすやと眠っている。

 フェンリルは非常に燃費が悪い。都市エーテルを消費して戦闘に参加するが、出力が最大40万だ。

 ちなみに、僕も同じく都市エーテルを使用して戦うことになる。

 なので、先日のフェンリルを抑える戦いのあとは、しばらくエーテルを使えなくて都市経営が滞った。

 だから周辺に魔物が現れても僕やフェンリルが出て行って片づけるというわけにはいかないのである。収支が大きくマイナスになるためだ。



 さて、話がそれたが、都市開発の方針に若干の修正が加えられた。僕はそれを承認し、アリエルはすぐに現場に向けて駆けだした。

「うふふ、みんなこのガルニアと、クロノのために一生懸命だね」

「ありがたいことだよ。で、これからどうするべきだい?」

「あんたはどうしたいの?」

「僕のやりたいことは前から決まってる。みんなが幸せに過ごせるようにすることだよ」

「なるほど。じゃあ、そこにたどり着くまでにいろいろやらないとだわね」

「そう、その色々を提案してほしい。さしあたって優先順位が高いものから」



 チコはふわりと僕の前に飛び上がると、人差し指を立てて僕にこう告げてきた。

「まずは人を増やすこと。数は力なんだよマスター」

「うんうん」

「そのためにはさっきもアリエルに言ったけど人の往来を増やすの。そうしたらここに住んでくれる人も増えるはず」

「うん、そうだね。それは今やっている。じゃあ次に何をしておくべきかな?」

「食料の確保ね。人は食べないと生きていけないわ」

「なるほど!」

「その次は仕事を与えるの。自分が住む住居の建設とかいいかもね。愛着があれば都市を離れる人も減るはずだし、家族を呼んでくれる人も出てくると思うの」

「なるほど、アリエルへの指示書に入れておくよ」

「その必要はないわ。さっきの話でここまでは計画に入っているから」

「内政はまずはそこまでだね。じゃあ安全かな?」

「いいところに目を付けたわね」

「この前もちょっと離れたところの集落が襲撃を受けてね、守り切れなかったんだ」

「どうしたらいいと思う?」

「街道の敷設と、拠点の併設かな?」

「それだけじゃ間に合わないことも考えられるわ」

「うーん……」

 考え込んでしまった。いろいろと考えてみるがうまい手を思いつかない。

「ところで、兵力の編成なんだけどね」

「??」

「総兵力が514名。歩兵が300、弓兵が150、魔法兵が50、騎兵が14」

「う、うん。どうしたの?」

「規模が小さいのはまあ、仕方ないわ。それでね、ちょっとコストがかかるのは仕方ないんだけど、騎兵を増やしましょ」

「ああ、そういうことか。騎兵は足が速い!」

「よくできました」



 僕はアルバートに今話し合ったことを伝えた。

「なるほど。では商人から騎獣の買い付けと、編成転換の希望者を募りましょう」

「うん、お願いね」

「それで、ですな……予算が……」

「いいわよ。それくらいならアリエルに言っておくわ」

「あ、そうだ。この前新規の商人からもらったお酒が……」

 アルバートは最敬礼をして、兵舎へすっ飛んでいった。



「うん、飴ってだいじよね」

 アリエルは僕に向けてニカッと笑みを浮かべてサムズアップしてきた。



 なお、街道整備と騎兵の増加によってうちの兵の展開能力は大いに上がり、魔物による被害は激減した。

 治安も向上して住民は増えていき、都市開発は次のフェーズに入って行った。
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