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内閣総理大臣 喜多川信隆
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平成38年。内閣総理大臣、喜多川信隆が誕生した。若干35歳である。そして内閣ナンバー2の官房長官には彼の弟である秀隆が着任した。こちらは33歳である。
日本は閉塞感に包まれていた。欧州連合とは講和が結ばれ、地域的な紛争以外には大きな武力衝突が起きなくなって、すでに数十年がたっている。
人口は増加から減少に転じ、経済も徐々に縮小している。一言で言うと不景気だった。それゆえに国民は何かをやってくれそうなリーダーを求めていた。そしてその時流に乗って最年少の総理大臣が誕生したのである。
信隆は所信表明演説に臨む。柄にもなく緊張していた。かつては数万の軍を叱咤し、敵軍を追い散らした身である。
「なあ、秀隆よ。こういう時どんな言葉を伝えるべきかの?」
「兄上。その心をそのままにお伝えなされ」
「わかった。では行ってくる」
そして国会議事堂の演壇に立つ。ある意味歴史的な一言が放たれた。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」
野党席からは怒号と共にペットボトルが飛び交う。与党を叩くことを至上命題にしている左巻きマスコミはここぞとばかりにこの総理はやはり頭がおかしいと飛ばし記事を書き立てようとした。
「落ち着け!」
マイクがハウリングを起さんばかりの怒号がただ一人の口から発される。
その一言で議事堂が静まり返った。
「私は、織田信長の再来と呼ばれている。それはそれでよい。我が国で最も有名な人物と並び評される、実に名誉なことである。
先の俳句は信長の人格を評して歌われたとのことであるが……そのような力ずくの暴君が統一できるほど、戦国時代とその後の海外との戦いは甘いものではなかった。
何かを成し遂げた人物はある種の狂気をはらむ。昨今の時勢により、私が政権を担うことになったことと無関係ではない。
ここに宣言しておく。私が改革するに聖域はない。現状にそぐわぬ人物、制度,全てが対象である。不条理な因習は許されぬ。そう覚えておいてもらいたい」
この演説に与野党問わず歓声が沸き上がる。その圧倒的なカリスマを前にすべての人間が酔いしれた。この人なら何かをやってくれる、変えてくれると、そう感じさせるものであった。
さて、信隆の行った最初の法改正は、意外なことに婚姻制度の改正であった。重婚や同姓婚へのあらゆる規制を取り払ったのである。はじめは男女不平等であるとフェミ団体が憤慨を始めたが、単純な一夫多妻でなく、一人の女性が複数の男性と婚姻関係を結ぶことも許可された。同姓婚も同様である。こうなると、フェミ団体はLGBTを支援する団体に駆逐されてゆく結果となった。
まず真っ先に効果が現れたのはブライダル関連だった。総理が、めでたいことは盛大に祝うべきであると言い、盛大な挙式が相次いだのである。また、複数の成人男女が暮らすこととなるため、マンションや一軒家の建築や売買が盛んになり、不動産業もにわかバブルに沸いた。
総理の弟である秀隆氏は、学生時代からの付き合いの妻がいたが、このたび新たに二人の妻を娶った。この時のキャッチフレーズで、「選ばなくてもいいんです。みんなで幸せになりましょう!」と言ったある意味無責任ないいようであるが、前向きな言葉に国民は突き動かされた。
婚姻にかかわる法律改正は、連日大きく報じられ、国民の耳目はそこに引き付けられた。総理の弟の電撃結婚のニュースも連日国民をにぎわせた。実はこの法案が出る直前まで、妻以外の女性と不適切な関係とスキャンダルにされかけていたのであるが、不適切な関係が法律的に適切な関係となってしまったがゆえに、逆に新たな日本を象徴する人物と持ち上げられてしまったのである。
そして、その裏で、汚職役員や議員は徹底的に糾弾され、ひっそりと解任されたりして行った。通称ブライダル法に関連してと銘打って規制緩和が進められ、その規制を行っていた、信隆が無意味と断じた役所やそれに応じた公社などは問答無用で解体されてゆく。そこで浮いた予算や人的リソースを人手不足になっていた部署、もしくは業界に再投資する。
信隆の力強い言葉は国民を確かに動かしたのである。
日本は閉塞感に包まれていた。欧州連合とは講和が結ばれ、地域的な紛争以外には大きな武力衝突が起きなくなって、すでに数十年がたっている。
人口は増加から減少に転じ、経済も徐々に縮小している。一言で言うと不景気だった。それゆえに国民は何かをやってくれそうなリーダーを求めていた。そしてその時流に乗って最年少の総理大臣が誕生したのである。
信隆は所信表明演説に臨む。柄にもなく緊張していた。かつては数万の軍を叱咤し、敵軍を追い散らした身である。
「なあ、秀隆よ。こういう時どんな言葉を伝えるべきかの?」
「兄上。その心をそのままにお伝えなされ」
「わかった。では行ってくる」
そして国会議事堂の演壇に立つ。ある意味歴史的な一言が放たれた。
「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」
野党席からは怒号と共にペットボトルが飛び交う。与党を叩くことを至上命題にしている左巻きマスコミはここぞとばかりにこの総理はやはり頭がおかしいと飛ばし記事を書き立てようとした。
「落ち着け!」
マイクがハウリングを起さんばかりの怒号がただ一人の口から発される。
その一言で議事堂が静まり返った。
「私は、織田信長の再来と呼ばれている。それはそれでよい。我が国で最も有名な人物と並び評される、実に名誉なことである。
先の俳句は信長の人格を評して歌われたとのことであるが……そのような力ずくの暴君が統一できるほど、戦国時代とその後の海外との戦いは甘いものではなかった。
何かを成し遂げた人物はある種の狂気をはらむ。昨今の時勢により、私が政権を担うことになったことと無関係ではない。
ここに宣言しておく。私が改革するに聖域はない。現状にそぐわぬ人物、制度,全てが対象である。不条理な因習は許されぬ。そう覚えておいてもらいたい」
この演説に与野党問わず歓声が沸き上がる。その圧倒的なカリスマを前にすべての人間が酔いしれた。この人なら何かをやってくれる、変えてくれると、そう感じさせるものであった。
さて、信隆の行った最初の法改正は、意外なことに婚姻制度の改正であった。重婚や同姓婚へのあらゆる規制を取り払ったのである。はじめは男女不平等であるとフェミ団体が憤慨を始めたが、単純な一夫多妻でなく、一人の女性が複数の男性と婚姻関係を結ぶことも許可された。同姓婚も同様である。こうなると、フェミ団体はLGBTを支援する団体に駆逐されてゆく結果となった。
まず真っ先に効果が現れたのはブライダル関連だった。総理が、めでたいことは盛大に祝うべきであると言い、盛大な挙式が相次いだのである。また、複数の成人男女が暮らすこととなるため、マンションや一軒家の建築や売買が盛んになり、不動産業もにわかバブルに沸いた。
総理の弟である秀隆氏は、学生時代からの付き合いの妻がいたが、このたび新たに二人の妻を娶った。この時のキャッチフレーズで、「選ばなくてもいいんです。みんなで幸せになりましょう!」と言ったある意味無責任ないいようであるが、前向きな言葉に国民は突き動かされた。
婚姻にかかわる法律改正は、連日大きく報じられ、国民の耳目はそこに引き付けられた。総理の弟の電撃結婚のニュースも連日国民をにぎわせた。実はこの法案が出る直前まで、妻以外の女性と不適切な関係とスキャンダルにされかけていたのであるが、不適切な関係が法律的に適切な関係となってしまったがゆえに、逆に新たな日本を象徴する人物と持ち上げられてしまったのである。
そして、その裏で、汚職役員や議員は徹底的に糾弾され、ひっそりと解任されたりして行った。通称ブライダル法に関連してと銘打って規制緩和が進められ、その規制を行っていた、信隆が無意味と断じた役所やそれに応じた公社などは問答無用で解体されてゆく。そこで浮いた予算や人的リソースを人手不足になっていた部署、もしくは業界に再投資する。
信隆の力強い言葉は国民を確かに動かしたのである。
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