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吉田郡山城の末路
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安芸国、吉田郡山城。
大友義統が手勢を率いて九州に渡り、背後を脅かすとの献策をしてきた。輝元は喜んで大友勢を送り出した。
「織田にしっぽを振る不忠者の立花と高橋を討ち果たし、こちらの戦を背後から支援いたします!」
「おお、義統殿は古今無双の勇将である。貴殿の武運長久なるを祈り、今宵は宴といたそう!」
「これはありがたい、必ずや織田に一泡吹かせて見せようぞ!」
非常に威勢が良いが、義統はこの籠城に勝利を見いだせず逃げようとしているだけである。とりあえず九州ならばかくまってくれる当てがあると思っているだけで、ただの場当たり対応であった。
こうして大友の手勢はひそかに城を出て九州に渡る。あえて阻止されなかったが、彼らの行く手は監視されている。義統は日向に上陸し、豊後との国境地帯の国人を頼っていった。ここで兵を集め騒乱を起こすことで中国から戦力を分散できると踏んでいるようである。
「なぜじゃ!?」
「貴方の父上は確かに大友家最大の版図を作りました。ですが…」
「…理由を聞こう」
「キリシタンとなって我らが大事にしている寺社を焼き払いました。そして重い税をかけ払えぬ女子供を南蛮人やバテレンに売り飛ばした。その恨みは忘れておりませぬ」
「領主に従わぬというのか!」
「領民を守らない領主など害悪です!」
「無礼者!」
やり取りの間に周囲がざわめいてくる。
「む、貴様まさか…」
居館の周囲を武装した兵が取り巻いている。義統の手勢は500あまりだが、周囲の兵力は3000を数えた。率いているのは立花宗茂であった。
「義統殿、おとなしく降伏なされよ。さもなくば討つ!」
「っく、この不忠者が!」
「家臣にも主を選ぶ権利がござる。貴殿はわが主たり得ず。よって暇をいただいたにすぎませぬ」
「ええい屁理屈を! 者ども、謀反人の立花宗茂を討ち取れ!」
しかしすでに義統の手勢は怖気づいている。
「やれるものならやってみよ!」
宗茂の大喝に武器を取り落とす兵すらいた。周囲から上がる鬨に震え上がっている。
「「えいとう! えいとう!」」
「降伏せぬならばお主ら全員討ち果たす、良いか!」
「「ひいいいいいいい」」
もともと食い詰めて義統に付き従っていたような連中である。見る見るうちに武器を捨てて降伏した。だが義統は激高する感情のままに宗茂に切りかかる。だがその横に付き従っている武者に一刀のもとに斬り捨てられた。
「誾千代、見事!」
「はい! 謀反人の大友義統はこの立花誾千代が討ち取った!」
吉田郡山城を出てわずか1週間の事だった。
一方そのころ、毛利輝元
「どういうことじゃ!?」
包囲陣の中に小早川と吉川の旗印を見つけたのである。問いかけられた近習も困惑の表情を隠せない。
「そうか、織田の陣中で寝返って敵の包囲網を撃退する策じゃな!」
近習たちは目線を交わしあい、お互いこう言っていた。「それはない」と。
「なれば叔父上に使者を出せ、寝返りの時期を聞かねばならぬ!」
「それには及びませんな」
城主の間に隆景が入ってくる。というか、だれも止められなかったというのが正しい。それくらい城内の兵は輝元に愛想を尽かしていた。
「おお、叔父上!」
「この大たわけが!」
「ひぃ!?」
「何が大毛利の復興じゃ! いまさらそれができたら苦労はないわ!」
「ど、どういうことで?」
「天下は織田に定まった。それをひっくり返す力はもうどこの家にもない。なぜそれがわからぬ。今更伊達や島津が寝返るわけがなかろうが」
「え、けれど儂のところに来た使者は…」
「こやつの事か?」
隆景の隣に付き従っていたちょび髭の男が前に出る。
「どうも、織田秀隆公の家臣、彦太郎と申しまあ~す。よしなに、お願い、致します」
言葉を区切るたびにうくねくねとポーズを付ける。正直非常にうっとおしい。こぶしを握って口元に持ってくるポーズの時は、近習たちもうげえとか言っていた。おっさんがやるには非常にきっつい絵面であるから当然か。
「なななななななななななななななななななななあああああああああああああああ!?」
輝元の絶叫が止まらない。騙されたと顔に書いてあるレベルである。
「今頃気づいたか。というかそんなうまい話が本当にあると思うてか! 世間を知れ! この痴れ者が!」
「嗚呼ああああああああああ…」
へたり込む輝元。そして袴がまた変色し異臭を放つ。
「うわ、なんてしょぼい。漏らしましたよ。こいつ漏らしましたよ」
「ああ、彦太郎殿。それ以上言うてやるな。武士の情けにござる」
「いやー、わたくし武士ではありませぬので。それにここで突っ込み入れなくていつ入れるんですか!」
「そこを何とか…頼めぬか」
「んー、わかりました。仕方ないっすねー」
妙に軽い口調のおっさんである。これでも秀隆配下の有数の間者であるのだから人の能力とはわからないものである。
人事不詳に陥った輝元はとりあえず簀巻きにされた。彼を縛り上げた近習には隆景から特別手当が出たという。
こうして吉田郡山城も開城したのだった。
大友義統が手勢を率いて九州に渡り、背後を脅かすとの献策をしてきた。輝元は喜んで大友勢を送り出した。
「織田にしっぽを振る不忠者の立花と高橋を討ち果たし、こちらの戦を背後から支援いたします!」
「おお、義統殿は古今無双の勇将である。貴殿の武運長久なるを祈り、今宵は宴といたそう!」
「これはありがたい、必ずや織田に一泡吹かせて見せようぞ!」
非常に威勢が良いが、義統はこの籠城に勝利を見いだせず逃げようとしているだけである。とりあえず九州ならばかくまってくれる当てがあると思っているだけで、ただの場当たり対応であった。
こうして大友の手勢はひそかに城を出て九州に渡る。あえて阻止されなかったが、彼らの行く手は監視されている。義統は日向に上陸し、豊後との国境地帯の国人を頼っていった。ここで兵を集め騒乱を起こすことで中国から戦力を分散できると踏んでいるようである。
「なぜじゃ!?」
「貴方の父上は確かに大友家最大の版図を作りました。ですが…」
「…理由を聞こう」
「キリシタンとなって我らが大事にしている寺社を焼き払いました。そして重い税をかけ払えぬ女子供を南蛮人やバテレンに売り飛ばした。その恨みは忘れておりませぬ」
「領主に従わぬというのか!」
「領民を守らない領主など害悪です!」
「無礼者!」
やり取りの間に周囲がざわめいてくる。
「む、貴様まさか…」
居館の周囲を武装した兵が取り巻いている。義統の手勢は500あまりだが、周囲の兵力は3000を数えた。率いているのは立花宗茂であった。
「義統殿、おとなしく降伏なされよ。さもなくば討つ!」
「っく、この不忠者が!」
「家臣にも主を選ぶ権利がござる。貴殿はわが主たり得ず。よって暇をいただいたにすぎませぬ」
「ええい屁理屈を! 者ども、謀反人の立花宗茂を討ち取れ!」
しかしすでに義統の手勢は怖気づいている。
「やれるものならやってみよ!」
宗茂の大喝に武器を取り落とす兵すらいた。周囲から上がる鬨に震え上がっている。
「「えいとう! えいとう!」」
「降伏せぬならばお主ら全員討ち果たす、良いか!」
「「ひいいいいいいい」」
もともと食い詰めて義統に付き従っていたような連中である。見る見るうちに武器を捨てて降伏した。だが義統は激高する感情のままに宗茂に切りかかる。だがその横に付き従っている武者に一刀のもとに斬り捨てられた。
「誾千代、見事!」
「はい! 謀反人の大友義統はこの立花誾千代が討ち取った!」
吉田郡山城を出てわずか1週間の事だった。
一方そのころ、毛利輝元
「どういうことじゃ!?」
包囲陣の中に小早川と吉川の旗印を見つけたのである。問いかけられた近習も困惑の表情を隠せない。
「そうか、織田の陣中で寝返って敵の包囲網を撃退する策じゃな!」
近習たちは目線を交わしあい、お互いこう言っていた。「それはない」と。
「なれば叔父上に使者を出せ、寝返りの時期を聞かねばならぬ!」
「それには及びませんな」
城主の間に隆景が入ってくる。というか、だれも止められなかったというのが正しい。それくらい城内の兵は輝元に愛想を尽かしていた。
「おお、叔父上!」
「この大たわけが!」
「ひぃ!?」
「何が大毛利の復興じゃ! いまさらそれができたら苦労はないわ!」
「ど、どういうことで?」
「天下は織田に定まった。それをひっくり返す力はもうどこの家にもない。なぜそれがわからぬ。今更伊達や島津が寝返るわけがなかろうが」
「え、けれど儂のところに来た使者は…」
「こやつの事か?」
隆景の隣に付き従っていたちょび髭の男が前に出る。
「どうも、織田秀隆公の家臣、彦太郎と申しまあ~す。よしなに、お願い、致します」
言葉を区切るたびにうくねくねとポーズを付ける。正直非常にうっとおしい。こぶしを握って口元に持ってくるポーズの時は、近習たちもうげえとか言っていた。おっさんがやるには非常にきっつい絵面であるから当然か。
「なななななななななななななななななななななあああああああああああああああ!?」
輝元の絶叫が止まらない。騙されたと顔に書いてあるレベルである。
「今頃気づいたか。というかそんなうまい話が本当にあると思うてか! 世間を知れ! この痴れ者が!」
「嗚呼ああああああああああ…」
へたり込む輝元。そして袴がまた変色し異臭を放つ。
「うわ、なんてしょぼい。漏らしましたよ。こいつ漏らしましたよ」
「ああ、彦太郎殿。それ以上言うてやるな。武士の情けにござる」
「いやー、わたくし武士ではありませぬので。それにここで突っ込み入れなくていつ入れるんですか!」
「そこを何とか…頼めぬか」
「んー、わかりました。仕方ないっすねー」
妙に軽い口調のおっさんである。これでも秀隆配下の有数の間者であるのだから人の能力とはわからないものである。
人事不詳に陥った輝元はとりあえず簀巻きにされた。彼を縛り上げた近習には隆景から特別手当が出たという。
こうして吉田郡山城も開城したのだった。
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