上 下
2 / 47

これからどうしようか?

しおりを挟む
「どうしようかなー」
「どうするの?」
彼女の独り言だったが、少年は訊きかえした。
「ここで暮らすことってできるのかな?家とか仕事とか
探せるのかな?私こどもだけど?」
「暮らせるよ 仕事をする必要はないけどね
食料も道具も道路設備も整ってるから
働く必要がないんだよ 予備資源の補充や整備をたまにするけど
義務じゃないから気が向いたときにしたい人がするかんじだね」
「生活するために働く必要がないの?」
「働く必要はないね生活する必要はあるけど…」
「生活するってどうすればいいの?」
「説明するから一緒に歩こうか?」

 彼女は少年と歩き出した。田舎に見えるのだが意外と人に出会う。
出会う度に色々な物をもらう。食料とか飲み物とか
帽子とかショールとか、靴とか。
「お金も払わずに貰っていいの?」
「お金って物の取引に使う引換券のこと?」
「そんな感じのやつ」
「君が貰った物はくれた人たちが作ったものだけど
皆 資源や道具を十分に持っていて経済活動を
する必要がないんだ 君も十分にものを持っていて
持ってなくて困ってる人がいたら あげるってなるんじゃない?」
「でも貰いっぱなしでいいのかなー」
「こどもが遠慮するもんじゃないよ」
 少年にそう言われ彼女はむっとしたが、
見た目も中身もこどもだと証明されていしまっているので、
言い返せない。
「千里…」
「?」
「ちさとって言うの私の名前!」
「ああ そういえばまだ名前聞いてなかったね」
「僕はソフだよ」
「おじいちゃんみたいな名前だねーフフフ」
仕返しだと彼女は言い放つ。
「そう思う?こどもって面白いな はは」
本気で笑われたので負けたと彼女は思った。

「ひょっとして住むところも余ってたりする?」
「そうだねーでもはじめのうちは誰かと一緒に暮らしてみた方がいいんじゃない?こどものサイズに作られた家はないから
一人だと大変だよ」
「里親募集みたいなのを出せばいいの?」
「それもいいけど 僕んちで暮らさない?」
「部屋余ってるの?家族の人は大丈夫?」
「僕は一人暮らしだよ」

 取りあえずソフの家に行ってみたら、程よく広いし、
部屋もあるし、家の外装も家具も好みなので、
「ここで暮らしていい?」
と彼女は言いだした。
 
 と言う訳で二人暮らしは始まった。

 貰い物の整理をして、自分の部屋の模様替えをした。
家具の移動はソフに頼んだ。より彼女好みの部屋になった。
 今日は歓迎会ねとソフが言いだしたので、
二人で食糧庫に行った。
 家の地下と外の倉庫と二つあり、食料の種類と量に彼女は驚いた。
百年分ぐらいありそう。蜂蜜とお酒が大量にある。他にも干物とかチーズとかハーブとか香辛料とか小麦などが大量にある。
「何を食べるの?」
「チサトの好きな物でいいよ 選んでごらん」
「暖炉が部屋にあったけど 使えるのソフ?」
「もちろん」

棚を覗きながら彼女は振り向いた。
「だったら ハイジのチーズとパンが食べたい」

 少年が暖炉に火をともしてくれた。今日会った人に貰ったパンを
チーズと一緒に刺して暖炉の火で焼いて食べた。
 絵に描いたまんまのあのパンだった。
物凄く素朴な味ではあったが、それで彼女は満足だった。
「それ美味しい?」
「楽しい!」
美味しくはないんだね…ソフはそういいながら
暖炉の鍋に何かを削って入れていた。
なんかかっこいいと彼女は思った。
「何作ってるの?」
「ただのスープだよ」
ソフは凝ったデザインのお玉で、小さなカップに
スープを入れてくれた。
「熱いから気をつけて飲むんだよ」
それは金色の液体だった。
 とてもいい香りだったハーブと魚の匂いがした。
ゆっくりと飲んでみると。とてもおいしくて彼女は
ソフにお代わりを入れてもらった。
 その日は夜遅くまでソフと色々な話をした。
ソフの近所に住んでいる人の話とか、木苺がなっている場所とか
湧水の出る場所とか、明日一緒に見回る約束をした後、
彼女の意識は座ったまま眠りに落ちてしまった。
 少年は彼女をベットまで運ぶと、
「君はずっとそのままでいいんだよ 僕が守ってあげるからね」
そうつぶやいて少年は彼女の部屋を出ていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした

星ふくろう
恋愛
 カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。  帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。  その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。  数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。    他の投稿サイトでも掲載しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

処理中です...