3 / 5
第三部【凍える雨の下で・・・】
序章 《後継者》
しおりを挟む
「何だって!?」
彼は『仕事』の資料を見て、素っ頓狂な声をあげた。組織のエージェント『G』から受け取ったUSBメモリに記録されていた、今回の任務についての資料を確認していたのだが、彼が驚いたのは今回仕事をやる上でコンビを組む相手である。
『任務遂行に当たり、Blood painのサポートと監視を行え』
それが組織から与えられた今回の『仕事』である。そんな馬鹿な・・・、Blood painは・・・、美浦みどりはもう死んでいる・・・。彼は資料を読み込むと、そこには二代目Blood painとの記載があった。この時、美浦みどりの死後、二年の月日が流れていた。その間、組織で新たなBlood painが造られたという事なのだろうか?
資料によると、二代目Blood painの名前は緋月牡丹。まだ肉体年齢は十歳の少女だとの事だ。資料の写真を見ると、不自然な程に色白で、見る者を魅入らせる様な妖艶な瞳をした少女の姿が写っていた。
「オイオイ、マジかよ・・・」
彼にとって、Blood painとの作戦行動は忘れ難いものとなっているだろう。そんな彼に、新たなBlood painの存在が明らかにされたのだ。心中穏やかで無いのは想像に難くない。
資料に書かれた情報によると、先代の失敗から、二代目Blood painは、強固なマインドコントロールをかけており、彼女が持つDNA、精神素養等の検証も兼ねた任務となっているらしい。
「懲りねぇヤツらだなぁ・・・」
先代Blood pain、美浦みどりは、組織に『適合者』としては失敗作と判断された。それ故に処分指令が下されたのだが、新たに二代目を現場に投入するという事は、『能力』自体は高く評価されていたという事なのだろう。実際、使いようによっては、かなり有用な人材と言える筈だ。Blood painの持つ血流制御の『能力』は、現場に物証を何一つ残す事無く、ターゲットを抹殺する事が出来るのだから、暗殺任務には打って付けだと言えるだろう。
「しかし・・・、こんなガキが、実戦で役に立つのか?」
彼は新しく与えられた任務に対し、少し苛立ちを感じていた。『仕事』とはいえ、体よく子供のお守りを頼まれた様なものである。
「ダリぃ任務だぜ・・・・・・」
彼は一人呟き、溜め息を吐いた・・・。
「Air edge、資料で確認しているだろうが、彼女が緋月牡丹。新しいBlood painだ」
『G』にそう紹介されたが、事前に写真で見たよりも、より一層不気味な目をしている。そこはかとなく赤みがかった虚ろな瞳は、まるで吸血鬼かのようなイメージを想起させた。
「・・・よろしくお願いします」
彼女はそう、淡々と彼に挨拶をする。感情を一切表わさない、まるで造り物のような、人間では無いかのような不気味さを醸し出していた。
「なぁ『G』、こんなガキが本当に実戦で役に立つのか?」
彼は眉間に皺を寄せ、『G』に毒づく。『適合者』としてカテゴライズされているという事は、組織で必要最低限の戦闘訓練は受けているのだろうが、まだ幼い十歳の少女だ。彼が訝しむのも無理は無い。
「その点については問題無い。仮にも『適合者』としてナンバリングされている以上、必要なカリキュラムは全てクリアしている。だからこその実戦投入だ」
『G』はそう言っているが、信頼に足る根拠にはならない。こんな幼い少女が『適合者』として現場で暗殺任務に就けるのか、彼は疑問を抱いていた。
そもそも、任務を伝達するエージェントが『J』から『G』に変わった事にも疑問が残る。後任の『G』に対して不満がある訳では無いが、『J』は今何をやっているのか?組織内で何かあったのだろうか?彼の知らぬ所で何らかの動きがあったのは確実だろう。これも憶測の域を超えないものだが、組織内で何らかのゴタゴタがあったのだとしたら、彼はとばっちりを受けるのを極力避けたいと思っていた。
そして、彼は徐に背後から銃を抜き出し、彼女の眉間にピタリと照準を合わせる。だが、彼女は微動だにせず、虚ろな目をしたまま身動き一つしなかった。
「本当にコイツ、役に立つんだろうな?」
そう問い糾す彼に『G』は、
「彼女を試そうとしても無意味だ。彼女には必要な時に、必要なアクションを実行するよう、強固なマインドコントロールをかけてある。第一に、君の事は敵対者として認識していない。先代・・・、美浦みどりのような無駄な行動はしないだろう」
『G』がそう説明している間も、彼女は眉一つ動かさず、平然としている。まるで自分には一切関係が無いかのような、彼が起こしたアクションも、何の脅威でもないかのような、泰然自若とした雰囲気だ。
「そうかよ・・・。なら構わねぇ。オイ牡丹、サッサと『仕事』に行くぞ」
彼はそう、吐き捨てるように言い、彼女を促す。そして、彼と彼女の奇妙なコンビでの『仕事』が始まった・・・。
彼は『仕事』の資料を見て、素っ頓狂な声をあげた。組織のエージェント『G』から受け取ったUSBメモリに記録されていた、今回の任務についての資料を確認していたのだが、彼が驚いたのは今回仕事をやる上でコンビを組む相手である。
『任務遂行に当たり、Blood painのサポートと監視を行え』
それが組織から与えられた今回の『仕事』である。そんな馬鹿な・・・、Blood painは・・・、美浦みどりはもう死んでいる・・・。彼は資料を読み込むと、そこには二代目Blood painとの記載があった。この時、美浦みどりの死後、二年の月日が流れていた。その間、組織で新たなBlood painが造られたという事なのだろうか?
資料によると、二代目Blood painの名前は緋月牡丹。まだ肉体年齢は十歳の少女だとの事だ。資料の写真を見ると、不自然な程に色白で、見る者を魅入らせる様な妖艶な瞳をした少女の姿が写っていた。
「オイオイ、マジかよ・・・」
彼にとって、Blood painとの作戦行動は忘れ難いものとなっているだろう。そんな彼に、新たなBlood painの存在が明らかにされたのだ。心中穏やかで無いのは想像に難くない。
資料に書かれた情報によると、先代の失敗から、二代目Blood painは、強固なマインドコントロールをかけており、彼女が持つDNA、精神素養等の検証も兼ねた任務となっているらしい。
「懲りねぇヤツらだなぁ・・・」
先代Blood pain、美浦みどりは、組織に『適合者』としては失敗作と判断された。それ故に処分指令が下されたのだが、新たに二代目を現場に投入するという事は、『能力』自体は高く評価されていたという事なのだろう。実際、使いようによっては、かなり有用な人材と言える筈だ。Blood painの持つ血流制御の『能力』は、現場に物証を何一つ残す事無く、ターゲットを抹殺する事が出来るのだから、暗殺任務には打って付けだと言えるだろう。
「しかし・・・、こんなガキが、実戦で役に立つのか?」
彼は新しく与えられた任務に対し、少し苛立ちを感じていた。『仕事』とはいえ、体よく子供のお守りを頼まれた様なものである。
「ダリぃ任務だぜ・・・・・・」
彼は一人呟き、溜め息を吐いた・・・。
「Air edge、資料で確認しているだろうが、彼女が緋月牡丹。新しいBlood painだ」
『G』にそう紹介されたが、事前に写真で見たよりも、より一層不気味な目をしている。そこはかとなく赤みがかった虚ろな瞳は、まるで吸血鬼かのようなイメージを想起させた。
「・・・よろしくお願いします」
彼女はそう、淡々と彼に挨拶をする。感情を一切表わさない、まるで造り物のような、人間では無いかのような不気味さを醸し出していた。
「なぁ『G』、こんなガキが本当に実戦で役に立つのか?」
彼は眉間に皺を寄せ、『G』に毒づく。『適合者』としてカテゴライズされているという事は、組織で必要最低限の戦闘訓練は受けているのだろうが、まだ幼い十歳の少女だ。彼が訝しむのも無理は無い。
「その点については問題無い。仮にも『適合者』としてナンバリングされている以上、必要なカリキュラムは全てクリアしている。だからこその実戦投入だ」
『G』はそう言っているが、信頼に足る根拠にはならない。こんな幼い少女が『適合者』として現場で暗殺任務に就けるのか、彼は疑問を抱いていた。
そもそも、任務を伝達するエージェントが『J』から『G』に変わった事にも疑問が残る。後任の『G』に対して不満がある訳では無いが、『J』は今何をやっているのか?組織内で何かあったのだろうか?彼の知らぬ所で何らかの動きがあったのは確実だろう。これも憶測の域を超えないものだが、組織内で何らかのゴタゴタがあったのだとしたら、彼はとばっちりを受けるのを極力避けたいと思っていた。
そして、彼は徐に背後から銃を抜き出し、彼女の眉間にピタリと照準を合わせる。だが、彼女は微動だにせず、虚ろな目をしたまま身動き一つしなかった。
「本当にコイツ、役に立つんだろうな?」
そう問い糾す彼に『G』は、
「彼女を試そうとしても無意味だ。彼女には必要な時に、必要なアクションを実行するよう、強固なマインドコントロールをかけてある。第一に、君の事は敵対者として認識していない。先代・・・、美浦みどりのような無駄な行動はしないだろう」
『G』がそう説明している間も、彼女は眉一つ動かさず、平然としている。まるで自分には一切関係が無いかのような、彼が起こしたアクションも、何の脅威でもないかのような、泰然自若とした雰囲気だ。
「そうかよ・・・。なら構わねぇ。オイ牡丹、サッサと『仕事』に行くぞ」
彼はそう、吐き捨てるように言い、彼女を促す。そして、彼と彼女の奇妙なコンビでの『仕事』が始まった・・・。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
合言葉は”社会をキレイに!”お掃除グループ
限界高校生
SF
今より遠い未来。社会はより一層汚くなっていた。
政治家の汚職、警察への賄賂事件、、、数えたらきりが無いこの社会で、とあるアイテムが流行している。と言ってもギャングなどではだが。幻想、ミラージュと呼ばれるそのアイテムは使用者のエネルギーを使い様々な事を可能にする。
主人公藤鼠 亜留(ふじねず ある)はそんな社会をミラージュを使い、キレイにするため”クリーニン”と言う組織を作った。
これはそんな主人公と愉快な組員達による大所帯の組織になるまでのバトルあり、ギャグありのお掃除物語である。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる