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第22話
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「これが、どうかしたのか?」
指先でチャームを摘まみ上げてみる。
親指ほどの大きさのそれは、デフォルメされたウサギがモチーフになっていて、そのウサギがさくらの花びらのような何かを手に持っている。
「んー……」
タオルハンカチで足を拭き終えてそれをポシェットのなかにしまったリリーは、池の水で洗った葉の上で休憩させていたねこちゅーを拾い上げてから、片手の人差し指をこめかみに当てて唸った。
「あっ、そっかー! リタだ」
そして、正解を探り当てたとばかりにぱっと明るい表情になる。
「何がリタさんなんだ?」
「このストラップのチャーム。見覚えあるなーと思ったら、リタが似てるのを持ってたのを思い出したの」
「えっ?」
まさか、という気持ちもあったし、やっぱり、とも思った。
彼女が言うには、リタさんもポケットに壊れた携帯を持ち歩いていたらしい。そのカバーに括られていたのが、ほぼ同じデザインだったみたいだ。
「リタのウサギには赤いリボンがついてたよ。女の子のウサギってわけだね。……で、そのおかげで気づいちゃった」
リリーが忍び笑いする。……何だ?
「ウサギが手に持ってるこれ、たぶんハートの片側なんだと思うんだ」
「この花びらみたいなやつか?」
「うん。もう一つのストラップと組み合わせると、キレイなハート型になるように作られたペアストラップに間違いないと思うよ。自信ある!」
「……ペアストラップ」
確かに彼女の言う通り、線対称の作りものがもうひとつあれば、花びらに見えたものがハートを形作るように思える。
「こういうの、テーマパークとかによくあるんだよね。で、ノリで買っちゃったりするの」
「へぇ、そうなのか」
「場所によってはネーム入れてくれるところもありそうだよねー。ちょっとよく見せて。……でもこのウサギ、わたしは知らないなぁ。マイナーなキャラなのかな」
リリーにスマホを手渡す。ストラップについたウサギをしげしげと眺めるけれど、最終的には首を傾げてオレに返してきた。
――そうか、ネーム!
「リリー、リタさんのストラップにはネームは入ってたか?」
「どうだっけ。あんまりじっくりとは見てないから、何とも」
「もし本当にこれがペアなら、リタさんのストラップにもネームが入ってるはずだよな?」
「……あ、そうだね」
納得した様子でリリーが頷いた。
もしそのストラップが本当にリタさんのもので、リタさんの本当の名前が刻まれているのだとしたら、記憶を取り戻す手助けになるんじゃないだろうか。
「帰ったらリタさんに確かめよう。オレたちがペアでストラップを持つような間柄なら、きっと彼女の記憶も――」
「ちょっとユーキ、落ち着きなよ」
記憶の手がかりを見つけたかもしれないという興奮に早口で捲し立てるオレを、リリーが制した。
「ごめん、わたしもつい軽率に言っちゃったけど、それはやめときなよ」
「どうして?」
「わかるでしょ。ふたりがそんなに親しい関係で、しかも同じタイミングにこの世界にいるってことは……ふたりの間に何かがあって、そのせいなのかもしれない」
「あ……」
……そうか。ついさっき、そんな話をしたばかりだというのに、いざ手がかりを見つけてしまったら、すっかり頭から抜け落ちていた。
オレの知りたい情報は、知ってよかったと思える情報ではないかもしれないんだ。オレにとっても、リタさんにとっても。
「わたしは……この四人での生活を続けていきたい。ユーキかリタが何かを思い出したとき、どちらかが基地から出ていくようなことになってほしくないよ」
「……そう、だよな」
このまま終わりのときを待つと決めたんだ。それなら、足掻いたりせずに心穏やかに過ごそう。
頭ではわかっているのに、知りたい、自分を取り戻したいという欲求は、押さえつけることができない厄介なものらしい。
「リリー、ありがとう。今の話は聞かなかったことにするよ」
「うん。わたしも……ユーキの携帯は見なかったことにするね」
そう。押さえつけられないならそのまま蓋をしてしまえばいい。何も考えないことにして。
「――で、それとは別にってことで、訊きたい話があるんだけど」
洋服が汚れないようにするためだろう、立ったままニ―ソックスに足を通すリリーが切り出した。
「ユーキって、リタのこと好きだよね?」
「はっ?」
それとは別に――なんて言っておきながら、ほとんど同じような話題じゃないか。オレが素っ頓狂な声を出すと、リリーがもう片方のニーソックスを履きながら、勝ち誇ったみたいな顔をする。
「だってずっと目で追ってるのわかるもん。きっとそうなんだろうなって思って」
「いや、だからそれはさ……好きとか嫌いとかじゃなくて、リタさんのことを考えてると何か思い出せそうな気がするからだよ」
好き『だった』かもしれないけれど、その記憶を掘り返さないようにと釘を刺したのはリリーじゃないか。
「なら可愛いと思ったり、ドキドキしたりはしないってこと?」
「…………」
正直、好みのタイプではある。
「ほら、黙ったってことは心当たりがあるんだね」
「もういいだろ。この話は」
一体、リリーは何がしたいんだ? リタさんとの関係を思い出そうとするのは阻止したくせに、そのリタさんのことを好きなんじゃないかと突いてくるなんて。
「よくないよ。こんな退屈な世界で楽しめるのって、恋バナくらいじゃない?」
「リタさんの記憶を辿るなって言ったのはリリーだろ」
「辿らなくていいよ。でも、今リタのことが好きだって気持ちは、別に忘れようとする必要ないじゃない」
「……そんなのアリか?」
昔の記憶と切り離して恋愛をしろと、そういう意味なんだろうか。
「アリ、アリ。大アリだよ。心のオアシスって必要だよね。最期まで心穏やかに過ごすためには」
「知らないよ。リリーは心のオアシスでもユートピアでも作ってればいいだろ」
女っていうのは、こんな状況でも恋愛話が一番楽しめるのか。それとも、リリーが特別なんだろうか。
どっちでもいいけど、生憎オレは恋愛を楽しむ心の余裕なんてなさそうだし、そういうスイッチが入りそうにない。
「じゃ、わたしはユーキをオアシスにしよっかな」
ピンク色の厚底靴を履き終わったリリーは、もう魚を諦めたようだ。うーん、と伸びをひとつしてから言った。
「適当なこと言って。魚はもういいんだろ? 結局水浴びしにきただけだったな」
本気じゃないのが丸わかりな口調だったから、あしらうように言う。
薄々勘付いてはいたけれど、今朝もザクロを食べるしかなさそうだ。
「調べてみて絶望的だってことがわかったからね。あー、今度は森の奥の奥まで入っていって、動物がいないか探そっかー? お肉食べたいねー」
「……リリーが仕留めるならな」
彼女のマイペースっぷりにやれやれと肩を竦めつつ、オレたちは基地に戻ることにしたのだった。
指先でチャームを摘まみ上げてみる。
親指ほどの大きさのそれは、デフォルメされたウサギがモチーフになっていて、そのウサギがさくらの花びらのような何かを手に持っている。
「んー……」
タオルハンカチで足を拭き終えてそれをポシェットのなかにしまったリリーは、池の水で洗った葉の上で休憩させていたねこちゅーを拾い上げてから、片手の人差し指をこめかみに当てて唸った。
「あっ、そっかー! リタだ」
そして、正解を探り当てたとばかりにぱっと明るい表情になる。
「何がリタさんなんだ?」
「このストラップのチャーム。見覚えあるなーと思ったら、リタが似てるのを持ってたのを思い出したの」
「えっ?」
まさか、という気持ちもあったし、やっぱり、とも思った。
彼女が言うには、リタさんもポケットに壊れた携帯を持ち歩いていたらしい。そのカバーに括られていたのが、ほぼ同じデザインだったみたいだ。
「リタのウサギには赤いリボンがついてたよ。女の子のウサギってわけだね。……で、そのおかげで気づいちゃった」
リリーが忍び笑いする。……何だ?
「ウサギが手に持ってるこれ、たぶんハートの片側なんだと思うんだ」
「この花びらみたいなやつか?」
「うん。もう一つのストラップと組み合わせると、キレイなハート型になるように作られたペアストラップに間違いないと思うよ。自信ある!」
「……ペアストラップ」
確かに彼女の言う通り、線対称の作りものがもうひとつあれば、花びらに見えたものがハートを形作るように思える。
「こういうの、テーマパークとかによくあるんだよね。で、ノリで買っちゃったりするの」
「へぇ、そうなのか」
「場所によってはネーム入れてくれるところもありそうだよねー。ちょっとよく見せて。……でもこのウサギ、わたしは知らないなぁ。マイナーなキャラなのかな」
リリーにスマホを手渡す。ストラップについたウサギをしげしげと眺めるけれど、最終的には首を傾げてオレに返してきた。
――そうか、ネーム!
「リリー、リタさんのストラップにはネームは入ってたか?」
「どうだっけ。あんまりじっくりとは見てないから、何とも」
「もし本当にこれがペアなら、リタさんのストラップにもネームが入ってるはずだよな?」
「……あ、そうだね」
納得した様子でリリーが頷いた。
もしそのストラップが本当にリタさんのもので、リタさんの本当の名前が刻まれているのだとしたら、記憶を取り戻す手助けになるんじゃないだろうか。
「帰ったらリタさんに確かめよう。オレたちがペアでストラップを持つような間柄なら、きっと彼女の記憶も――」
「ちょっとユーキ、落ち着きなよ」
記憶の手がかりを見つけたかもしれないという興奮に早口で捲し立てるオレを、リリーが制した。
「ごめん、わたしもつい軽率に言っちゃったけど、それはやめときなよ」
「どうして?」
「わかるでしょ。ふたりがそんなに親しい関係で、しかも同じタイミングにこの世界にいるってことは……ふたりの間に何かがあって、そのせいなのかもしれない」
「あ……」
……そうか。ついさっき、そんな話をしたばかりだというのに、いざ手がかりを見つけてしまったら、すっかり頭から抜け落ちていた。
オレの知りたい情報は、知ってよかったと思える情報ではないかもしれないんだ。オレにとっても、リタさんにとっても。
「わたしは……この四人での生活を続けていきたい。ユーキかリタが何かを思い出したとき、どちらかが基地から出ていくようなことになってほしくないよ」
「……そう、だよな」
このまま終わりのときを待つと決めたんだ。それなら、足掻いたりせずに心穏やかに過ごそう。
頭ではわかっているのに、知りたい、自分を取り戻したいという欲求は、押さえつけることができない厄介なものらしい。
「リリー、ありがとう。今の話は聞かなかったことにするよ」
「うん。わたしも……ユーキの携帯は見なかったことにするね」
そう。押さえつけられないならそのまま蓋をしてしまえばいい。何も考えないことにして。
「――で、それとは別にってことで、訊きたい話があるんだけど」
洋服が汚れないようにするためだろう、立ったままニ―ソックスに足を通すリリーが切り出した。
「ユーキって、リタのこと好きだよね?」
「はっ?」
それとは別に――なんて言っておきながら、ほとんど同じような話題じゃないか。オレが素っ頓狂な声を出すと、リリーがもう片方のニーソックスを履きながら、勝ち誇ったみたいな顔をする。
「だってずっと目で追ってるのわかるもん。きっとそうなんだろうなって思って」
「いや、だからそれはさ……好きとか嫌いとかじゃなくて、リタさんのことを考えてると何か思い出せそうな気がするからだよ」
好き『だった』かもしれないけれど、その記憶を掘り返さないようにと釘を刺したのはリリーじゃないか。
「なら可愛いと思ったり、ドキドキしたりはしないってこと?」
「…………」
正直、好みのタイプではある。
「ほら、黙ったってことは心当たりがあるんだね」
「もういいだろ。この話は」
一体、リリーは何がしたいんだ? リタさんとの関係を思い出そうとするのは阻止したくせに、そのリタさんのことを好きなんじゃないかと突いてくるなんて。
「よくないよ。こんな退屈な世界で楽しめるのって、恋バナくらいじゃない?」
「リタさんの記憶を辿るなって言ったのはリリーだろ」
「辿らなくていいよ。でも、今リタのことが好きだって気持ちは、別に忘れようとする必要ないじゃない」
「……そんなのアリか?」
昔の記憶と切り離して恋愛をしろと、そういう意味なんだろうか。
「アリ、アリ。大アリだよ。心のオアシスって必要だよね。最期まで心穏やかに過ごすためには」
「知らないよ。リリーは心のオアシスでもユートピアでも作ってればいいだろ」
女っていうのは、こんな状況でも恋愛話が一番楽しめるのか。それとも、リリーが特別なんだろうか。
どっちでもいいけど、生憎オレは恋愛を楽しむ心の余裕なんてなさそうだし、そういうスイッチが入りそうにない。
「じゃ、わたしはユーキをオアシスにしよっかな」
ピンク色の厚底靴を履き終わったリリーは、もう魚を諦めたようだ。うーん、と伸びをひとつしてから言った。
「適当なこと言って。魚はもういいんだろ? 結局水浴びしにきただけだったな」
本気じゃないのが丸わかりな口調だったから、あしらうように言う。
薄々勘付いてはいたけれど、今朝もザクロを食べるしかなさそうだ。
「調べてみて絶望的だってことがわかったからね。あー、今度は森の奥の奥まで入っていって、動物がいないか探そっかー? お肉食べたいねー」
「……リリーが仕留めるならな」
彼女のマイペースっぷりにやれやれと肩を竦めつつ、オレたちは基地に戻ることにしたのだった。
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