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第9話
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「はいはーい、注目! それじゃ、リタとユーキの歓迎会を始めまーす。みんな、ザクロの準備はOKですかー?」
リタさんが加わったことによりオレからは真正面の位置に移動したリリーが、車座の中心に積まれたものと同じ球状の赤い果実――オレは彼女に言われて、ザクロの実であることを初めて知った――を高く掲げながら訊ねた。
ずっしりと重たいその実を軽く握って頷くと、左手に座るリタさんも、右手に座るアンも、乾杯のときみたいに頭の位置までそれを持ち上げる。
「ではー、これからよろしくお願いしますってことで!」
リリーの音頭で口々に「よろしく」と挨拶を述べ、互いの顔を見合わせる。……何だか飲み会みたいだ、と思う。
オレはちらりとリタさんの方を見た。
外から戻ってすっかり気分がよくなったみたいだけど、少し無理をしているのかもしれない。
というのも、リリーが開会の言葉を口にするまでの間、リリーとアンには自分から話しかけていたのに、オレに対しては遠慮を感じるのだ。
無理もないか。あのときのリタさんの顔、「この世の終わり」みたいだったもんなぁ。
……って、ある意味此処はそういう場所だったな。死んではいないものの、確実にそちらへ近づいているんだから。
「ところでこれ、どうやって食べるんだ?」
「ユーキ、ザクロ食べたことないの?」
「ああ、多分」
「ホント!? 信じらんないっ」
未知の果物を持て余していると、リリーが意外そうに声を張った。
「ずっと都会暮らしだったりすると、知らなかったりするのかもねー」
そのリアクションに笑いを零しつつ、アンがザクロの剥き方を教えてくれる。
えーと、先端の方から指で割るんだな――先端の窪みに親指を二本添えて、力を加える。すると、ザクロの実は思いのほか簡単に二つに割れた。
「何だこれ?」
だけど中身にびっくりする。こんな果物を見たことがない。
「あー、驚いたっしょー。ザクロって、種が果肉みたいなもんだからねー。こう、トウモロコシみたいな感覚で食べるといいと思うよ」
「トウモロコシ……」
数えきれない粒々がびっしりと詰まっている様は、確かに似ている。でも、トウモロコシには感じないこのグロテスクな雰囲気は、赤い色のせいか?
この世界には相応しいのかもしれないが、食べるにはまだ勇気が要る。
「味はね、酸っぱいんだよ。わたしは好きだけど、苦手な人は苦手かも」
「ま、ユーキが食べても正確な味を感じられないとは思うけどね」
「どういうことですか?」
オレより先に、リタさんが訊ねた。
「んー、その話もおいおい、ね。……それよりユーキ。それにリタ。この世界のこと、知りたいんでしょ?」
アンが自分のザクロを左右に割りながら訊ねる。オレとリタさんは間髪入れずに「はい」と答える。
「二人が何を知っているのか、そして何を知らないのかがわからないし、二人の間でも違うだろうから、ひとまず俺とリリーが知ってることを話していこうと思うんだけど、それでいい?」
「お願いします」
意図しなくてもリタの声とユニゾンした。返事を聞きつけると、アンは歪に割れたザクロの果実にかぶりついてから「わかった」と言った。
「繰り返しになる部分もあると思うけど、まぁとりあえず聞いてね。……此処に集まるヤツらっていうのはクリミナル――現世で何らかの罪を犯した犯罪者だ。しかし残念ながら、その罪に関する記憶はおろか、現世での記憶は全て失った状態なんだよね」
唇に滴った赤い果汁を舌先で舐めて、アンが続ける。
「ユーキ、俺はさっきキミに言ったよね。俺たちはまだ死んでいない。だけど、生きてもいないって」
「はい」
「この世界はね、いわゆる『精神世界』っていうヤツだと思うんだ。精神や心によって構成された世界――よく思い出してみて。キミがさっきいかにも外国人っぽい大男と揉み合いになったとき、きちんと言葉が通じていたでしょ?」
アンに助けてもらったあのとき、オレは確かに日本語で意思の疎通を成立させていた。
アイツだけじゃない。その次に見掛けた北欧系と中国系の男女も、リリーを狙っていたアラブだかアフリカ系だかの男も、黒尽くめのサングラスも……。
「あの男、見るからにバカっぽかったから多分日本語なんて知らないだろーよ。だけどそれが出来るのは、此処が現実には存在していない世界だからなんだ。何て言ったらいいのかなー……言語じゃなく、精神と精神とで会話をしていたっていうワケ」
「精神と精神……」
不思議だなと思っていた現象に説明がついて納得していると、リタさんが何かに気がついたように「あっ」と声を上げる。
「『精神世界』――ってことは、物理的な概念がないってことでしょう。さっきの話はつまり、彼がザクロを食べても、彼はそもそもザクロの味を知らないから、正確な味を感じることが出来ない」
「勘がいいね、そーゆーこと。この世界は現実に存在していない。だからザクロの実も、それを味わうユーキの舌も……いや、ユーキの身体そのものだって存在していないことになる」
「うーん……」
何だか話が難しい方向へ進んでいる気がする。両手に乗ったザクロを見つめて唸っていると、
「ユーキ、それちょっと食べてみてよ」
リリーに促され、割れた実の片方を脇に置いた。そして、ちょっと抵抗を感じながらも、種のように見える果肉を一粒摘んで口の中に放り込み、噛み締める。
「どう? どんな味?」
「……うーん……何かボンヤリと酸っぱい」
「何かに例えてみて。他の果物とかで」
素直に感想を述べたつもりだけど、リリーはそれでは満足してくれない。他の果物、ねえ……。
「えっと。果物じゃないけど、トマト、かな」
「ね、言った通りでしょ?」
得意気な顔をしたのはアンだ。
「ザクロはもっと酸っぱいんだ。感じ方には個人差があるけど、少なくともトマトの味とは遠いんだよ。……ユーキがそんな風に判断したのは、見た目の赤色と、リリーがさっき『ザクロは酸っぱくて、苦手な人は苦手』って言ったのを覚えていたからなんだと思う」
つまり、常識的な部分での記憶を手繰り寄せて味を推測した――と、そういうことなんだろうか。
「違う例えを挙げてみようか、そうだな――じゃあ、森の中にちらほらとヒガンバナが咲いていただろう? あの、赤い花」
アンがオレとリタさんを交互に見る。
「一般的にも知られてるけど、ヒガンバナって人を死に至らしめるほどの猛毒を含んだ花なんだ」
「そうだったんですか」
知らなかったので純粋に驚く。それはリタさんも同じだったようで、「へえ」という息声を洩らしていた。
「それを知ったキミらが、うっかりこの世界でヒガンバナを食べてしまったとする――まぁ、実体がないんだから何か食べなきゃ身体がどうこうってワケではないんだけど、あくまで、習慣的にね。そうすると、おそらくその実体のない身体にも異常が現れるだろう。『猛毒がある』という知識によってね。ところが、キミらがそれを知らないままであったなら……」
「『猛毒だ』という情報がないから、特に何も起こらない?」
リタさんが食い気味に訊ねた。アンはザクロを地面に置いて「その通り」と手を叩く。
「リタは大体、仕組みが理解出来たんじゃないかな。……ユーキもわかった?」
「わかったような、わからないような」
頼りない返事を返すと、アンはあぐらをかいた足を組み直して声を立てて笑う。
「ははっ。まあいいさ。そのうちわかるよ。で、次は蜘蛛だな、蜘蛛」
オレは無意識に首もとを触れた。タトゥーにも似た蜘蛛の印のあたりを。
「クリミナルは身体のどこかに一匹ずつ蜘蛛を飼っている――つまり、身体の一部にその印が刻まれているんだ。……ああいう感じで」
アンがああいう、と示したのは、勿論オレの首もとだ。リリーやリタさんにもガッツリ見えている。
「こんな風に見えてるのは損なんでしょう? さっきそう言われましたよ」
「そーね。目に見える位置にあると、必然的に狙われやすくなっちゃうからさー。本当にユーキはツイてないと思うよ」
くそ。この蜘蛛のせいで何度ヒヤヒヤしたことか。
「この世界から脱け出す手立てがないわけじゃない。それが例の、蜘蛛を三匹集める――ってヤツだ。それが叶えば現世に戻れるって話だけど、確かめられるワケじゃないし、本当かどうかは知らないな。それに」
アンが意味深に言葉を止めた。
「……三匹集めたヤツが、本当に現世に戻りたいと思えるかどうかは別の問題だし」
「え?」
どういう意味だろうと思った。現世に戻るために必死に……他のヤツを犠牲にしてまで集めたっていうのに、そこで思い留まることなんてあり得るのか?
細く長い息を吐きながら、アンが言った。
「蜘蛛を集めるごとに、蘇るらしいんだ――現世での記憶が、さ」
リタさんが加わったことによりオレからは真正面の位置に移動したリリーが、車座の中心に積まれたものと同じ球状の赤い果実――オレは彼女に言われて、ザクロの実であることを初めて知った――を高く掲げながら訊ねた。
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そのリアクションに笑いを零しつつ、アンがザクロの剥き方を教えてくれる。
えーと、先端の方から指で割るんだな――先端の窪みに親指を二本添えて、力を加える。すると、ザクロの実は思いのほか簡単に二つに割れた。
「何だこれ?」
だけど中身にびっくりする。こんな果物を見たことがない。
「あー、驚いたっしょー。ザクロって、種が果肉みたいなもんだからねー。こう、トウモロコシみたいな感覚で食べるといいと思うよ」
「トウモロコシ……」
数えきれない粒々がびっしりと詰まっている様は、確かに似ている。でも、トウモロコシには感じないこのグロテスクな雰囲気は、赤い色のせいか?
この世界には相応しいのかもしれないが、食べるにはまだ勇気が要る。
「味はね、酸っぱいんだよ。わたしは好きだけど、苦手な人は苦手かも」
「ま、ユーキが食べても正確な味を感じられないとは思うけどね」
「どういうことですか?」
オレより先に、リタさんが訊ねた。
「んー、その話もおいおい、ね。……それよりユーキ。それにリタ。この世界のこと、知りたいんでしょ?」
アンが自分のザクロを左右に割りながら訊ねる。オレとリタさんは間髪入れずに「はい」と答える。
「二人が何を知っているのか、そして何を知らないのかがわからないし、二人の間でも違うだろうから、ひとまず俺とリリーが知ってることを話していこうと思うんだけど、それでいい?」
「お願いします」
意図しなくてもリタの声とユニゾンした。返事を聞きつけると、アンは歪に割れたザクロの果実にかぶりついてから「わかった」と言った。
「繰り返しになる部分もあると思うけど、まぁとりあえず聞いてね。……此処に集まるヤツらっていうのはクリミナル――現世で何らかの罪を犯した犯罪者だ。しかし残念ながら、その罪に関する記憶はおろか、現世での記憶は全て失った状態なんだよね」
唇に滴った赤い果汁を舌先で舐めて、アンが続ける。
「ユーキ、俺はさっきキミに言ったよね。俺たちはまだ死んでいない。だけど、生きてもいないって」
「はい」
「この世界はね、いわゆる『精神世界』っていうヤツだと思うんだ。精神や心によって構成された世界――よく思い出してみて。キミがさっきいかにも外国人っぽい大男と揉み合いになったとき、きちんと言葉が通じていたでしょ?」
アンに助けてもらったあのとき、オレは確かに日本語で意思の疎通を成立させていた。
アイツだけじゃない。その次に見掛けた北欧系と中国系の男女も、リリーを狙っていたアラブだかアフリカ系だかの男も、黒尽くめのサングラスも……。
「あの男、見るからにバカっぽかったから多分日本語なんて知らないだろーよ。だけどそれが出来るのは、此処が現実には存在していない世界だからなんだ。何て言ったらいいのかなー……言語じゃなく、精神と精神とで会話をしていたっていうワケ」
「精神と精神……」
不思議だなと思っていた現象に説明がついて納得していると、リタさんが何かに気がついたように「あっ」と声を上げる。
「『精神世界』――ってことは、物理的な概念がないってことでしょう。さっきの話はつまり、彼がザクロを食べても、彼はそもそもザクロの味を知らないから、正確な味を感じることが出来ない」
「勘がいいね、そーゆーこと。この世界は現実に存在していない。だからザクロの実も、それを味わうユーキの舌も……いや、ユーキの身体そのものだって存在していないことになる」
「うーん……」
何だか話が難しい方向へ進んでいる気がする。両手に乗ったザクロを見つめて唸っていると、
「ユーキ、それちょっと食べてみてよ」
リリーに促され、割れた実の片方を脇に置いた。そして、ちょっと抵抗を感じながらも、種のように見える果肉を一粒摘んで口の中に放り込み、噛み締める。
「どう? どんな味?」
「……うーん……何かボンヤリと酸っぱい」
「何かに例えてみて。他の果物とかで」
素直に感想を述べたつもりだけど、リリーはそれでは満足してくれない。他の果物、ねえ……。
「えっと。果物じゃないけど、トマト、かな」
「ね、言った通りでしょ?」
得意気な顔をしたのはアンだ。
「ザクロはもっと酸っぱいんだ。感じ方には個人差があるけど、少なくともトマトの味とは遠いんだよ。……ユーキがそんな風に判断したのは、見た目の赤色と、リリーがさっき『ザクロは酸っぱくて、苦手な人は苦手』って言ったのを覚えていたからなんだと思う」
つまり、常識的な部分での記憶を手繰り寄せて味を推測した――と、そういうことなんだろうか。
「違う例えを挙げてみようか、そうだな――じゃあ、森の中にちらほらとヒガンバナが咲いていただろう? あの、赤い花」
アンがオレとリタさんを交互に見る。
「一般的にも知られてるけど、ヒガンバナって人を死に至らしめるほどの猛毒を含んだ花なんだ」
「そうだったんですか」
知らなかったので純粋に驚く。それはリタさんも同じだったようで、「へえ」という息声を洩らしていた。
「それを知ったキミらが、うっかりこの世界でヒガンバナを食べてしまったとする――まぁ、実体がないんだから何か食べなきゃ身体がどうこうってワケではないんだけど、あくまで、習慣的にね。そうすると、おそらくその実体のない身体にも異常が現れるだろう。『猛毒がある』という知識によってね。ところが、キミらがそれを知らないままであったなら……」
「『猛毒だ』という情報がないから、特に何も起こらない?」
リタさんが食い気味に訊ねた。アンはザクロを地面に置いて「その通り」と手を叩く。
「リタは大体、仕組みが理解出来たんじゃないかな。……ユーキもわかった?」
「わかったような、わからないような」
頼りない返事を返すと、アンはあぐらをかいた足を組み直して声を立てて笑う。
「ははっ。まあいいさ。そのうちわかるよ。で、次は蜘蛛だな、蜘蛛」
オレは無意識に首もとを触れた。タトゥーにも似た蜘蛛の印のあたりを。
「クリミナルは身体のどこかに一匹ずつ蜘蛛を飼っている――つまり、身体の一部にその印が刻まれているんだ。……ああいう感じで」
アンがああいう、と示したのは、勿論オレの首もとだ。リリーやリタさんにもガッツリ見えている。
「こんな風に見えてるのは損なんでしょう? さっきそう言われましたよ」
「そーね。目に見える位置にあると、必然的に狙われやすくなっちゃうからさー。本当にユーキはツイてないと思うよ」
くそ。この蜘蛛のせいで何度ヒヤヒヤしたことか。
「この世界から脱け出す手立てがないわけじゃない。それが例の、蜘蛛を三匹集める――ってヤツだ。それが叶えば現世に戻れるって話だけど、確かめられるワケじゃないし、本当かどうかは知らないな。それに」
アンが意味深に言葉を止めた。
「……三匹集めたヤツが、本当に現世に戻りたいと思えるかどうかは別の問題だし」
「え?」
どういう意味だろうと思った。現世に戻るために必死に……他のヤツを犠牲にしてまで集めたっていうのに、そこで思い留まることなんてあり得るのか?
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