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学園編 § 学校生活編
第86話 養老千暮の告白
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「あの魔法陣はどこで手に入れて、何であんなところで使おうとしたんだ?」
僕の質問に、しかし、千暮はキョトンとした表情をした。
「ネットで見たんだ。ティッシュに書かれた電話番号にかけた。それで自分だけの魔法陣が与えられて、願いが叶えられるっていうから・・・」
「願い?」
「俺、・・・いや僕は、勇者の友としてすごいやつになりたかったんだ。その、・・・周りで俺だけがダメだったから。」
「ダメ?」
「道場に来てるやつらも、兄さんや姉さんも、みんなすげぇ力を持ってる。俺だけだ。俺だけはてんで力もなくて、大きくなったら父さんみたいにすっごい術者になるって思ってたけど。でもまだ全然で・・・だから、願いが叶えられるんならって、電話して・・・」
霊能者の一族で時折見られる才能のあるなしでの葛藤ってやつか、と、僕は内心ため息をついた。彼なりに悩んでるのかもしれない。が、才能がない、または劣っているというだけで、いないものとして扱われたり、家を追い出されたりするような人達を何人も見てきた。それに比べ、そもそもが霊力がないことを前提に、大事に育てられた子供が、何を言っているのかって思わなくもない。
そんな気持ちが出てしまったんだろうか。
僕を見て、不安そうな表情から、苛立ちへと表情を変えた。
「なんだよ。悪いか?俺だってヒーローになりたいって思ったら悪いかよ。あんたみたいに唯一無二だとみんなにちやほやされてる奴にはわかんないかもしれないけどさ、周りがみんなすごい能力者の中で、一人無能力者、なのに坊ちゃん坊ちゃんって持ち上げられて、それがどれだけ惨めかあんたには分かんないだろう?」
「千暮、おまえ、そんな風に思って・・・」
唖然とした様子の健二を、どうしてもしらけた思いで見てしまう。
「じゃあ、あんたには分かるか?ごく普通に暮らしていたんだ。父子家庭でもごくごく平凡な中学生だった。それが突然化け物に襲われて、目の前で父を殺された。気がついたら周りは化け物みたいな大人たちだらけ。そんな中で、無理矢理戦闘訓練だ。化け物の前に立たされて、ただひたすら戦うことを強要された。そんな平凡なガキの気持ちが、あんたには分かるか?」
「・・・ああ。うらやましいね。平凡な中学生?それが最前線?いいじゃないか!それこそヒーローだろ!俺はあんたになりたかった!!」
「・・・そうか。のし付けてプレゼントしたいけどな。僕は、平凡な子供でいたかったよ。普通に大人になって年老いて・・・」
「いつまでも子供のまま。期待され注目され、何を望む!みんなそんな特別な存在になりたくてなりたくて、あんたを見てたらイライラする。」
「・・・まぁ、いいよ。別に嫌われるのも慣れてるさ。僕のことはいい。今はあんたのことだ。あんたは札や魔法陣は使えるのか?つまり、養老の子として、どの程度の知識を持つ?」
「?」
「あ、飛鳥君?千暮には霊力がない。だから何も教えていない。できればこんな世界と関わらせず、自由に生きて欲しいと願って育ててきたからね。残念ながら、それが千暮を傷つけ、こんな状況に追いやってしまったようだが。」
「だけど、養老の家で育ったんですよね?文献として札なんかは見れなかったんですか?」
「それは・・・」
「見た。道場にある書庫を漁ってたんだ。」
「なんだって。」
「父さんは僕に道場に近づくなって言ってたけど、霊力はなくても戦闘訓練はできるって、兄さんに・・・大きくなると霊力が使えるようになるって小さいときに兄さんや姉さんに言われてたから・・・体術ぐらいは先に出来ればすごい霊能者になれるって思ったんだ・・・」
「!」
どうやら、当主どのは知らなかったようだな。
だったら・・・
「だったら、札の術式とか、理屈なんかは分かってるのか?」
「それは・・・理屈は知らない。だけど、だいたいは覚えてる。」
「それでか。」
蓮華がもたらした情報。
あのとき使われた術式は、妙にきっちりとした線を使われていた、という。書き慣れた、とでも言おうか。そのためか、くっきりと術の意味が分かったのだが、分析の結果あやかしへの霊力添付つまりは力の増強と、酩酊状態による凶暴化、洋風にいえば、バーサク状態の付与、は見て取れたらしい。
質の良い状態のそんな札を顕現済みのあやかしに貼るとどうなるかは簡単に想像出来る。そしてその相手が神の眷属、顕現した稲荷の狐、ともなると、舌打ちしたくなる状況だ。
あのときノリたちの到着が間に合わず、もし、あの稲荷に札を使っていたら・・・
容易に想像出来る。
あの一角が、吹き飛んでいてもおかしくないだろう。
「あんたは知ってたのか?もしあのとき阻止されなかったとしたらどうなっていたか?」
「成功したら願いが叶うんだろう?神の奉られてい場所で発動させれば願いが叶うんだろ?」
「そう聞いたのか?」
「ああ、そうだけど・・・」
「聞いた、のか?読んだんじゃなくて?」
「あ、うん。サイトには人にバレないように大勢の人が通るところに設置しろって書いてあっただけだ。」
「なのにどうして?あそこは個人の庭の稲荷だろ?大勢の人は通らないぞ。」
「うん。だけど、あそこには本当に霊孤が住んでるって聞いた。強い神やその眷属の力を借りる方が本当に願いが叶うんだって。」
「誰がそんなことを言ってたんだ?」
「彼女は僕と違ってちゃんとした霊能者だからね。僕が霊力がないことをずっと心配していろいろ考えたり、方法をずっと探してくれてた良いやつさ。ティッシュだってあの子がくれたんだ。」
「だから、それは誰だ?」
「あれ?飛鳥も彼女から聞いたんだろ?魔法陣のこと。それは・・・」
その名は、リストを見て予想がついていた名、ではあった。信じたくはなかったけど・・・
僕の質問に、しかし、千暮はキョトンとした表情をした。
「ネットで見たんだ。ティッシュに書かれた電話番号にかけた。それで自分だけの魔法陣が与えられて、願いが叶えられるっていうから・・・」
「願い?」
「俺、・・・いや僕は、勇者の友としてすごいやつになりたかったんだ。その、・・・周りで俺だけがダメだったから。」
「ダメ?」
「道場に来てるやつらも、兄さんや姉さんも、みんなすげぇ力を持ってる。俺だけだ。俺だけはてんで力もなくて、大きくなったら父さんみたいにすっごい術者になるって思ってたけど。でもまだ全然で・・・だから、願いが叶えられるんならって、電話して・・・」
霊能者の一族で時折見られる才能のあるなしでの葛藤ってやつか、と、僕は内心ため息をついた。彼なりに悩んでるのかもしれない。が、才能がない、または劣っているというだけで、いないものとして扱われたり、家を追い出されたりするような人達を何人も見てきた。それに比べ、そもそもが霊力がないことを前提に、大事に育てられた子供が、何を言っているのかって思わなくもない。
そんな気持ちが出てしまったんだろうか。
僕を見て、不安そうな表情から、苛立ちへと表情を変えた。
「なんだよ。悪いか?俺だってヒーローになりたいって思ったら悪いかよ。あんたみたいに唯一無二だとみんなにちやほやされてる奴にはわかんないかもしれないけどさ、周りがみんなすごい能力者の中で、一人無能力者、なのに坊ちゃん坊ちゃんって持ち上げられて、それがどれだけ惨めかあんたには分かんないだろう?」
「千暮、おまえ、そんな風に思って・・・」
唖然とした様子の健二を、どうしてもしらけた思いで見てしまう。
「じゃあ、あんたには分かるか?ごく普通に暮らしていたんだ。父子家庭でもごくごく平凡な中学生だった。それが突然化け物に襲われて、目の前で父を殺された。気がついたら周りは化け物みたいな大人たちだらけ。そんな中で、無理矢理戦闘訓練だ。化け物の前に立たされて、ただひたすら戦うことを強要された。そんな平凡なガキの気持ちが、あんたには分かるか?」
「・・・ああ。うらやましいね。平凡な中学生?それが最前線?いいじゃないか!それこそヒーローだろ!俺はあんたになりたかった!!」
「・・・そうか。のし付けてプレゼントしたいけどな。僕は、平凡な子供でいたかったよ。普通に大人になって年老いて・・・」
「いつまでも子供のまま。期待され注目され、何を望む!みんなそんな特別な存在になりたくてなりたくて、あんたを見てたらイライラする。」
「・・・まぁ、いいよ。別に嫌われるのも慣れてるさ。僕のことはいい。今はあんたのことだ。あんたは札や魔法陣は使えるのか?つまり、養老の子として、どの程度の知識を持つ?」
「?」
「あ、飛鳥君?千暮には霊力がない。だから何も教えていない。できればこんな世界と関わらせず、自由に生きて欲しいと願って育ててきたからね。残念ながら、それが千暮を傷つけ、こんな状況に追いやってしまったようだが。」
「だけど、養老の家で育ったんですよね?文献として札なんかは見れなかったんですか?」
「それは・・・」
「見た。道場にある書庫を漁ってたんだ。」
「なんだって。」
「父さんは僕に道場に近づくなって言ってたけど、霊力はなくても戦闘訓練はできるって、兄さんに・・・大きくなると霊力が使えるようになるって小さいときに兄さんや姉さんに言われてたから・・・体術ぐらいは先に出来ればすごい霊能者になれるって思ったんだ・・・」
「!」
どうやら、当主どのは知らなかったようだな。
だったら・・・
「だったら、札の術式とか、理屈なんかは分かってるのか?」
「それは・・・理屈は知らない。だけど、だいたいは覚えてる。」
「それでか。」
蓮華がもたらした情報。
あのとき使われた術式は、妙にきっちりとした線を使われていた、という。書き慣れた、とでも言おうか。そのためか、くっきりと術の意味が分かったのだが、分析の結果あやかしへの霊力添付つまりは力の増強と、酩酊状態による凶暴化、洋風にいえば、バーサク状態の付与、は見て取れたらしい。
質の良い状態のそんな札を顕現済みのあやかしに貼るとどうなるかは簡単に想像出来る。そしてその相手が神の眷属、顕現した稲荷の狐、ともなると、舌打ちしたくなる状況だ。
あのときノリたちの到着が間に合わず、もし、あの稲荷に札を使っていたら・・・
容易に想像出来る。
あの一角が、吹き飛んでいてもおかしくないだろう。
「あんたは知ってたのか?もしあのとき阻止されなかったとしたらどうなっていたか?」
「成功したら願いが叶うんだろう?神の奉られてい場所で発動させれば願いが叶うんだろ?」
「そう聞いたのか?」
「ああ、そうだけど・・・」
「聞いた、のか?読んだんじゃなくて?」
「あ、うん。サイトには人にバレないように大勢の人が通るところに設置しろって書いてあっただけだ。」
「なのにどうして?あそこは個人の庭の稲荷だろ?大勢の人は通らないぞ。」
「うん。だけど、あそこには本当に霊孤が住んでるって聞いた。強い神やその眷属の力を借りる方が本当に願いが叶うんだって。」
「誰がそんなことを言ってたんだ?」
「彼女は僕と違ってちゃんとした霊能者だからね。僕が霊力がないことをずっと心配していろいろ考えたり、方法をずっと探してくれてた良いやつさ。ティッシュだってあの子がくれたんだ。」
「だから、それは誰だ?」
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