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学園編 § 学校生活編
第78話 結界の中の神社
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京都市内に神社は正式に登録されているものだけでも約800。
実際には、この数倍はあると言われていて、僕も正確には知らない。
今、僕がいるのは、最古と言っても良いだろう神代の成立とされる地主神社、の元社と言われる場所だ。
一応、最低限の神社の体はなしている。
現・地主神社はそこそこ有名だが、その神社が今の場所に設置される以前に置かれていた、とされる、この場所は、まぁ、現神社とは目と鼻の先なんだけど、一般の人の目に触れることはない。
禁足地扱いされいる杜の中にひっそりと佇んでいて、代々巫女をその守人としている。本当に巫女、なんだ。神の依り代、という意味で。
この巫女には成熟した清き乙女だけがなれる、とされる。
桜庭一族、という、まぁシャーマンの家系で、なんだかんだでその一族だけで3桁は家があるんじゃないか、ていう、この世界では知られた一族だ。
で、ここの守人は、巫女が行い、その世話を前巫女たる、姉様が行う。
ちなみに巫女の任期は15歳の誕生日まで。
巫女が15歳の誕生日を迎えるその1月ほど前から様々な儀式が行われる。
特に重要なのは、小学生以上の初潮を向かえていない少女たちを一族から集めることだ。もちろんここは狭いので、桜庭本家の有する山にて、彼女たちは修行と称する禊ぎを行う。
そして、巫女が15歳を迎える日、集められた子供たちの1人が初潮を向かえるのだという。不思議なことに神代から続くと称されるこの儀式、必ず1人の子がその資格を得るのだという。
なんで僕がこのことを知っているか、ていうと、2度ほどこの儀式に護衛として参加したからだ。
実際、1人の子だけが該当したのには驚いたけど、初めてこれに参加したときに、眉唾だと思ったのは確かだ。
当時の姉様に、
「昔は産まれた時が1歳で、元日にまとめて2歳になるんだろ?なのに誕生日云々っておかしくないか?」
なんて、言ったんだけど、どうやらそれはあくまで庶民の話らしい。
政治の都合上、僕が言ったみたいな年齢の数え方をしたのは間違いないんだけど、実際は、特に霊的な政に近しい貴族は、生まれた日を重要視していたのだそうだ。だいたい、月や天体を読んで、世に起こる事象を占う天文省なんていう役所が平安時代には普通にあったんだ、人に対する占いに、生まれた日を考慮しない、なんてことがあるはずないでしょ、そんな風なことを言って姉様は、おかしそうに笑っていたっけ。
その日、姉様が妙にテンションが高いのは、今考えると、やっと解放されることに、喜びが隠せなかったんだと思う。
産まれてからずっと修行、という名の、精神統一だったり、霊力の操作だったりをさせられてきたんだ。そして、年頃、ということで連れ出され、たまたま日が合ってしまったというだけで、巫女になる。当時11歳だったとか。で、15歳で姉様に。当時の当代は10歳の少女でそれから5年、間もなく20歳になろうとしているこの時になって、やっとお役御免。晴れて世俗へと復帰できる。
姉様を終えると、特に義務はないらしい。
ただし、霊能者としても有能であり、家として次代を産み育てることが、半ば暗黙の了解だ。実際、彼女も同じ桜庭一族の中で嫁いだらしい。あれ以来会ったことはないけれど。
それでも、巫女になって姉様を終えるまで、この敷地から、敢えて言えば清浄な結界に包まれたこの世界から、一歩たりとも出ることは許されていない。それと比べれば、夢にまで見た外の世界、興奮するなと言う方が無理な話か。
そんな何年も前のことを、僕は思い出しつつ、この清浄なる結界の中に足を踏み込んだ。この地にも、結界柱があり、京の守りを担っているってこともあったんだけど・・・
「飛鳥様?」
結界に踏み込んで、間もなく当代の姉様が、慌てて飛び出してきた。
僕のことを覚えていたんだ?
この子は、僕が護衛に入った2度目の儀式の時に、巫女に選ばれた子、だと思う。あれは、たぶん7,8年ぐらい前だったか。
僕らみたいな、外の世界の人間が護衛、というのもおかしな話だと思ったけど、巫女に選ばれると、その所属家が力を持てるのだという。だから同じ家の中で、結構物騒な足の引っ張り合いが起きる。
桜庭とは大昔から関係性が深いらしい蓮華の家から頼まれて、50年ぐらい前だったか、僕らザ・チャイルドが、子供たちの修行場に張り付いて護衛をしたんだ。実際、襲撃があったし、複数の分家筋が粛正された。
で、しばらく大人しかったはずなのに、権力というのはそんなにいいのか、もう一度頼まれたのが、前々回になるのか?の儀式の時。
僕らが救った元巫女の肝いりだった、と聞いている。
その時選ばれた子が今姉様をやっている。
そのことをすっかり僕は忘れていたけど。
むしろ、僕のことを覚えている方がちょっと驚いたけど、そういえば、この子をあやかしから守ったっけ?
あのとき、まさかの、霊を召喚して襲わせたバカがいたんだ。
そのとき、彼女が狙われていたってのもあって、僕が保護したんだっけ?しばらく怯える子供を抱いていたから、それで覚えていたのかも。なんせあのときから僕の姿は変わっていないから。
「飛鳥様、どうなさいました?ここはそうそう俗世の方がおたずねいただける場所でもないのですが。」
「あ、その、ちょっと調べたいことがあって。その姉様?は、外の様子を知ってる?」
僕は彼女たちの名前を知らない。
巫女様、姉様、と誰もが言う。ここに来た時点で名はなくなる。
名を知られると、霊的にいろいろまずいことも多いという理由で同じように名をなくしたり変えたりする風習は結構多かったりする。古今東西問わず、といったところだ。
「外、ですか?いいえ。」
「そっか・・・京は通常の何倍もあやかしが増えてるんだ。その原因を探っている。京の結界を調査したくてここに来たんだ。」
「そうでしたか。それはご苦労様です。私にできることはございますか?」
「え、いいの?」
「いい、とは?」
「いや、やっといてなんだけど、許可なく結界の中に入り込んで調査、とか言ってるし、怪しい奴、と思われても、ね?」
「フフフ。だって飛鳥様ですわ?私の命の恩人です。何が怪しいことなどございましょう?」
「・・・・まぁ、それは・・・」
いいのか?と逆に心配になってしまう。
「フフフ。それにしても本当にお変わりなく。もう私の方が年上みたいですわね。ちょっと複雑ですわ。」
こういうときの切り返しは、未だに分からない。
だから、僕はどうしても、黙ってしまう。
「まぁまぁ。そんな顔はなさらないでくださいまし。お茶でも入れましょう。それとも先に調査をなさいますか?」
「いや、お茶とか、そんな気遣ってもらわなくても・・・」
「私が一緒に飲みたいのです。巫女様にも会って上げてくださいませ。フフフ。本物の飛鳥様を見たら大喜びですわよ。」
「いや、だから・・・」
「あら、だったら、調査は許可できませんわ。女の園に殿方が押し入って、何をなさるのかしら?」
「ちょっと!」
「冗談ですわ。でも、調査しても良い代わりにお茶をしてくださいませ。そのぐらいのわがまま、聞いていただけませんか?」
「・・・分かったよ。」
「先にどちらを?」
「はぁ。先に調べさせて。」
「分かりました。でしたら、終わり次第宮の方へいらしてくださいね。お茶の用意をしておきますので。あ、努々勝手に帰ろうなどとはなさらないでくださいね。もし勝手に帰ってしまわれたら、私、本家に殿方が押し入った、なんて告げ口しちゃうかもしれませんわよ。」
「ちょっ!」
ホホホ、と笑いながら、姉様は去ってしまった。
娯楽が少ないのは分かるけど、まったく、怯えていた少女はどこへいってしまったんだろう・・・
複雑な気持ちを抑えながら、僕は結界柱の調査に向かった。
調査、といっても、近くに行けばすぐに分かる。
ここは、こういう環境もあって、保守も巫女の仕事になっている。
だから、調査は入っていなかっただろうし、普通の人が、たとえ霊能者であっても、彼女たちに知られることなく侵入するのは、さっきのことからも分かるように不可能だ。
思った通り、ここの結界は異常がないように見えた。
無事に作動しているし、流れにもおかしなところはなさそうだ。
そう思って、ホッとした・・・のだけれど・・・・
まただ。
なんだ、この違和感。
僕は改めて、霊力を強くして眺める。
特に問題は、ない。
問題はない、はずなんだけど、なんだろう、違和感・・・?
神経質になってるだけ?
本当に?
常日頃、ここの管理を行っている巫女は、この違和感を感じないのか?
僕は、気持ち悪い違和感を感じつつ、お茶を用意しているであろう、宮へと足を向けた。
実際には、この数倍はあると言われていて、僕も正確には知らない。
今、僕がいるのは、最古と言っても良いだろう神代の成立とされる地主神社、の元社と言われる場所だ。
一応、最低限の神社の体はなしている。
現・地主神社はそこそこ有名だが、その神社が今の場所に設置される以前に置かれていた、とされる、この場所は、まぁ、現神社とは目と鼻の先なんだけど、一般の人の目に触れることはない。
禁足地扱いされいる杜の中にひっそりと佇んでいて、代々巫女をその守人としている。本当に巫女、なんだ。神の依り代、という意味で。
この巫女には成熟した清き乙女だけがなれる、とされる。
桜庭一族、という、まぁシャーマンの家系で、なんだかんだでその一族だけで3桁は家があるんじゃないか、ていう、この世界では知られた一族だ。
で、ここの守人は、巫女が行い、その世話を前巫女たる、姉様が行う。
ちなみに巫女の任期は15歳の誕生日まで。
巫女が15歳の誕生日を迎えるその1月ほど前から様々な儀式が行われる。
特に重要なのは、小学生以上の初潮を向かえていない少女たちを一族から集めることだ。もちろんここは狭いので、桜庭本家の有する山にて、彼女たちは修行と称する禊ぎを行う。
そして、巫女が15歳を迎える日、集められた子供たちの1人が初潮を向かえるのだという。不思議なことに神代から続くと称されるこの儀式、必ず1人の子がその資格を得るのだという。
なんで僕がこのことを知っているか、ていうと、2度ほどこの儀式に護衛として参加したからだ。
実際、1人の子だけが該当したのには驚いたけど、初めてこれに参加したときに、眉唾だと思ったのは確かだ。
当時の姉様に、
「昔は産まれた時が1歳で、元日にまとめて2歳になるんだろ?なのに誕生日云々っておかしくないか?」
なんて、言ったんだけど、どうやらそれはあくまで庶民の話らしい。
政治の都合上、僕が言ったみたいな年齢の数え方をしたのは間違いないんだけど、実際は、特に霊的な政に近しい貴族は、生まれた日を重要視していたのだそうだ。だいたい、月や天体を読んで、世に起こる事象を占う天文省なんていう役所が平安時代には普通にあったんだ、人に対する占いに、生まれた日を考慮しない、なんてことがあるはずないでしょ、そんな風なことを言って姉様は、おかしそうに笑っていたっけ。
その日、姉様が妙にテンションが高いのは、今考えると、やっと解放されることに、喜びが隠せなかったんだと思う。
産まれてからずっと修行、という名の、精神統一だったり、霊力の操作だったりをさせられてきたんだ。そして、年頃、ということで連れ出され、たまたま日が合ってしまったというだけで、巫女になる。当時11歳だったとか。で、15歳で姉様に。当時の当代は10歳の少女でそれから5年、間もなく20歳になろうとしているこの時になって、やっとお役御免。晴れて世俗へと復帰できる。
姉様を終えると、特に義務はないらしい。
ただし、霊能者としても有能であり、家として次代を産み育てることが、半ば暗黙の了解だ。実際、彼女も同じ桜庭一族の中で嫁いだらしい。あれ以来会ったことはないけれど。
それでも、巫女になって姉様を終えるまで、この敷地から、敢えて言えば清浄な結界に包まれたこの世界から、一歩たりとも出ることは許されていない。それと比べれば、夢にまで見た外の世界、興奮するなと言う方が無理な話か。
そんな何年も前のことを、僕は思い出しつつ、この清浄なる結界の中に足を踏み込んだ。この地にも、結界柱があり、京の守りを担っているってこともあったんだけど・・・
「飛鳥様?」
結界に踏み込んで、間もなく当代の姉様が、慌てて飛び出してきた。
僕のことを覚えていたんだ?
この子は、僕が護衛に入った2度目の儀式の時に、巫女に選ばれた子、だと思う。あれは、たぶん7,8年ぐらい前だったか。
僕らみたいな、外の世界の人間が護衛、というのもおかしな話だと思ったけど、巫女に選ばれると、その所属家が力を持てるのだという。だから同じ家の中で、結構物騒な足の引っ張り合いが起きる。
桜庭とは大昔から関係性が深いらしい蓮華の家から頼まれて、50年ぐらい前だったか、僕らザ・チャイルドが、子供たちの修行場に張り付いて護衛をしたんだ。実際、襲撃があったし、複数の分家筋が粛正された。
で、しばらく大人しかったはずなのに、権力というのはそんなにいいのか、もう一度頼まれたのが、前々回になるのか?の儀式の時。
僕らが救った元巫女の肝いりだった、と聞いている。
その時選ばれた子が今姉様をやっている。
そのことをすっかり僕は忘れていたけど。
むしろ、僕のことを覚えている方がちょっと驚いたけど、そういえば、この子をあやかしから守ったっけ?
あのとき、まさかの、霊を召喚して襲わせたバカがいたんだ。
そのとき、彼女が狙われていたってのもあって、僕が保護したんだっけ?しばらく怯える子供を抱いていたから、それで覚えていたのかも。なんせあのときから僕の姿は変わっていないから。
「飛鳥様、どうなさいました?ここはそうそう俗世の方がおたずねいただける場所でもないのですが。」
「あ、その、ちょっと調べたいことがあって。その姉様?は、外の様子を知ってる?」
僕は彼女たちの名前を知らない。
巫女様、姉様、と誰もが言う。ここに来た時点で名はなくなる。
名を知られると、霊的にいろいろまずいことも多いという理由で同じように名をなくしたり変えたりする風習は結構多かったりする。古今東西問わず、といったところだ。
「外、ですか?いいえ。」
「そっか・・・京は通常の何倍もあやかしが増えてるんだ。その原因を探っている。京の結界を調査したくてここに来たんだ。」
「そうでしたか。それはご苦労様です。私にできることはございますか?」
「え、いいの?」
「いい、とは?」
「いや、やっといてなんだけど、許可なく結界の中に入り込んで調査、とか言ってるし、怪しい奴、と思われても、ね?」
「フフフ。だって飛鳥様ですわ?私の命の恩人です。何が怪しいことなどございましょう?」
「・・・・まぁ、それは・・・」
いいのか?と逆に心配になってしまう。
「フフフ。それにしても本当にお変わりなく。もう私の方が年上みたいですわね。ちょっと複雑ですわ。」
こういうときの切り返しは、未だに分からない。
だから、僕はどうしても、黙ってしまう。
「まぁまぁ。そんな顔はなさらないでくださいまし。お茶でも入れましょう。それとも先に調査をなさいますか?」
「いや、お茶とか、そんな気遣ってもらわなくても・・・」
「私が一緒に飲みたいのです。巫女様にも会って上げてくださいませ。フフフ。本物の飛鳥様を見たら大喜びですわよ。」
「いや、だから・・・」
「あら、だったら、調査は許可できませんわ。女の園に殿方が押し入って、何をなさるのかしら?」
「ちょっと!」
「冗談ですわ。でも、調査しても良い代わりにお茶をしてくださいませ。そのぐらいのわがまま、聞いていただけませんか?」
「・・・分かったよ。」
「先にどちらを?」
「はぁ。先に調べさせて。」
「分かりました。でしたら、終わり次第宮の方へいらしてくださいね。お茶の用意をしておきますので。あ、努々勝手に帰ろうなどとはなさらないでくださいね。もし勝手に帰ってしまわれたら、私、本家に殿方が押し入った、なんて告げ口しちゃうかもしれませんわよ。」
「ちょっ!」
ホホホ、と笑いながら、姉様は去ってしまった。
娯楽が少ないのは分かるけど、まったく、怯えていた少女はどこへいってしまったんだろう・・・
複雑な気持ちを抑えながら、僕は結界柱の調査に向かった。
調査、といっても、近くに行けばすぐに分かる。
ここは、こういう環境もあって、保守も巫女の仕事になっている。
だから、調査は入っていなかっただろうし、普通の人が、たとえ霊能者であっても、彼女たちに知られることなく侵入するのは、さっきのことからも分かるように不可能だ。
思った通り、ここの結界は異常がないように見えた。
無事に作動しているし、流れにもおかしなところはなさそうだ。
そう思って、ホッとした・・・のだけれど・・・・
まただ。
なんだ、この違和感。
僕は改めて、霊力を強くして眺める。
特に問題は、ない。
問題はない、はずなんだけど、なんだろう、違和感・・・?
神経質になってるだけ?
本当に?
常日頃、ここの管理を行っている巫女は、この違和感を感じないのか?
僕は、気持ち悪い違和感を感じつつ、お茶を用意しているであろう、宮へと足を向けた。
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