77 / 90
学園編 § 学校生活編
第77話 龍脈の調査
しおりを挟む
翌日。
僕は学校は休んで、二重陣が発見された辻を回っていた。
この京を守護する結界は、二重陣を排除し、新たに設置されているはず。
だけど、なんでこんなに京の状態は変わらないんだろう。
僕はうんざりしながら、有象無象溢れる道を、霊力のバリアで無双しながら歩いて行く。
結界はちゃんと作動しているんだ。
でもなんだろう?詰まったみたいな状態?
汲み上げるはずの霊力が、以前より少ない気がする。
どの結界の起点の発生装置をチェックしても、そんな風に感じてしまう。
いくつめかの結界をチェックしているとき、背後に高度な霊力の塊を感じて後ろを向く。
「天一・・・」
そこには陰陽師が操る最高峰の式神の一柱、天一が微笑んでいた。
『久しいですね。』
「うん。・・・騰虵に会ったよ。』
同じく十二天将の式神の名を言う。
『ええ。彼も焦っているのでしょう。邪気が増えてますから。』
「邪気?ごめん、僕にはわからないや。」
『まだ人には無理でしょう。龍脈が傷つけられているのです。』
「龍脈が?」
『ええ。見たいですか?』
「うーん。見た方がいいのかなぁ。」
『くさびが何本も打ち込まれています。』
「ふう。分かったよ。でもここじゃまずいなぁ。場所を借りよう。」
僕は天一を連れて、近くにあった西福寺へと向かった。
組織のことを知っている住職に、幽体離脱をするから、と、場所を借り、僕は天一に身をゆだねた。
龍脈は、だいたい古くからの宗教施設の下には走っている。当然この寺の下にもあり、僕は天一に手を引かれつつ、地下へと潜った。
霊体になって移動するのは初めてじゃない。
何度か経験があるが、その視界はあやかしの視界に近くなる。いや存在そのものが重なった次元にある、という方がいいのか。
僕は抵抗を受けることなく地下へと潜り、時折ある力の塊を興味深く見る。
不定形だったり、球体だったり、希に何かの獣のようだったりする、ぼんやり光って見えるもの。それらは通常暮らす次元に重なる次元に存在する力の塊だ。
普通は意志持たぬ者、なんだけど、何かの拍子に、急に目覚めたりする。
意志を持った力は、より自分の欲するあり方へと向かって姿を変え、時には地上に出て、僕らの次元に影響を与えることもある。
いうならばあやかしどもの子宮といったところ。
しかし、何か多くないか?
僕は少し疑問を抱く。
力の塊が、どうしても多すぎる気がするんだ。
もう少し沈むと、龍脈が現れる。
なんというか、ブルーライトに照らされた青い蓄光塗料が川を作る感じ、といえば分かるだろうか?
本来なら、この澄んだ青い光が蕩蕩と流れているんだ。
だけど、なんだろう、虫食いじみた黒い空間が、看過できないほど光の中に存在していた。
それだけを確認して、僕は体に戻った。
『どこもかしこもあんな感じです。』
「一番多いのはどこか分かる?」
『いいえ、全部見たわけではありませんので。』
「あれが何かは?」
『おそらく何か術の残滓ではないかと?』
「人間の?」
天一は小さく申し訳なさそうに頷いた。
「分かった。教えてくれてあれがとう。」
その後、僕は天一と別れて、近くの稲荷神社を訪れた。
稲荷の狐だって霊的存在だ。
神社は霊的につながりがあり、それらは、大元は本山の神に繋がっているらしい。
僕は、伏見の威光を纏って稲荷の狐に呼びかけた。
呼びかけが終わるよりずっと早く、僕の前には1匹の狐が。
「あんさん、おひいさまの力を纏って何者ですねん。」
「ああ悪かった。彼女から君たちを自由に使っていいって言われてたからちょっとお願いしたいな、と思って。」
「ひょっとして飛鳥様でっしゃろか?」
「うん。直江飛鳥。一応、伏見のおひいさまの加護は受けてる。」
「あほいいなさんな。どこが一応、なんですか?バリバリの加護ですやん。ま、いいです。で、依頼はわて本人でっか?眷属総動員でっか?」
「できる限り多くの協力がもらえると嬉しい。」
「分かりました。ご期待にそうとしまひょ。で、内容は?」
「龍脈って見れる?」
「地に潜れってんですかい?まぁ見れますけど。」
「とりあえず可能な範囲で龍脈のチェックを頼みたいんだ。」
「龍脈のチェックどすか?」
「うん。さっき潜ってみたんだけど、なんかへんな黒い塊がいっぱい入ってるだ。その場所と量の情報が欲しい。」
「またけったいなもん調べますなぁ。まぁいいでっしゃろ。承りました。」
「あ、くれぐれも見て調査するだけだよ。近づかないでね。」
「・・・分かりました。みんなにも申しつけますわ。」
「うん。よろしく。」
狐に丸投げ。
情報は式神。
なんか、AAOの仕事か怪しくなってきそう。
あんまり人外を使うと、嫌がられるから、報告は黙っておきたいところだけど、さすがにニュースソースはごまかせないだろうな。
しかし、あれは何が起こってるんだ?
人がやったにしろ、なんか規模が大きすぎる気がする。
どんな組織がやっている?
こんなに大々的に仕掛けて、なんで手がかりが掴めてないんだ?
少なくとも、辻の魔法陣設置はプロの手だ。
そこに素人作成の魔法陣を使っているのは謎だとしても、少なくともあれをあそこに置いた、置こうとしたヤツらはプロだと思う。
なんで素人の作成?
力が強い者が作る強い魔法陣は、呪術汚染の可能性があるから、とか、ノリたちは予測してるみたいだけど。
だったら、狙いはなんだろう?
そんな風に考えながら、同じように結界の発生装置を設置している、某神社へと足を運んだ。
僕は学校は休んで、二重陣が発見された辻を回っていた。
この京を守護する結界は、二重陣を排除し、新たに設置されているはず。
だけど、なんでこんなに京の状態は変わらないんだろう。
僕はうんざりしながら、有象無象溢れる道を、霊力のバリアで無双しながら歩いて行く。
結界はちゃんと作動しているんだ。
でもなんだろう?詰まったみたいな状態?
汲み上げるはずの霊力が、以前より少ない気がする。
どの結界の起点の発生装置をチェックしても、そんな風に感じてしまう。
いくつめかの結界をチェックしているとき、背後に高度な霊力の塊を感じて後ろを向く。
「天一・・・」
そこには陰陽師が操る最高峰の式神の一柱、天一が微笑んでいた。
『久しいですね。』
「うん。・・・騰虵に会ったよ。』
同じく十二天将の式神の名を言う。
『ええ。彼も焦っているのでしょう。邪気が増えてますから。』
「邪気?ごめん、僕にはわからないや。」
『まだ人には無理でしょう。龍脈が傷つけられているのです。』
「龍脈が?」
『ええ。見たいですか?』
「うーん。見た方がいいのかなぁ。」
『くさびが何本も打ち込まれています。』
「ふう。分かったよ。でもここじゃまずいなぁ。場所を借りよう。」
僕は天一を連れて、近くにあった西福寺へと向かった。
組織のことを知っている住職に、幽体離脱をするから、と、場所を借り、僕は天一に身をゆだねた。
龍脈は、だいたい古くからの宗教施設の下には走っている。当然この寺の下にもあり、僕は天一に手を引かれつつ、地下へと潜った。
霊体になって移動するのは初めてじゃない。
何度か経験があるが、その視界はあやかしの視界に近くなる。いや存在そのものが重なった次元にある、という方がいいのか。
僕は抵抗を受けることなく地下へと潜り、時折ある力の塊を興味深く見る。
不定形だったり、球体だったり、希に何かの獣のようだったりする、ぼんやり光って見えるもの。それらは通常暮らす次元に重なる次元に存在する力の塊だ。
普通は意志持たぬ者、なんだけど、何かの拍子に、急に目覚めたりする。
意志を持った力は、より自分の欲するあり方へと向かって姿を変え、時には地上に出て、僕らの次元に影響を与えることもある。
いうならばあやかしどもの子宮といったところ。
しかし、何か多くないか?
僕は少し疑問を抱く。
力の塊が、どうしても多すぎる気がするんだ。
もう少し沈むと、龍脈が現れる。
なんというか、ブルーライトに照らされた青い蓄光塗料が川を作る感じ、といえば分かるだろうか?
本来なら、この澄んだ青い光が蕩蕩と流れているんだ。
だけど、なんだろう、虫食いじみた黒い空間が、看過できないほど光の中に存在していた。
それだけを確認して、僕は体に戻った。
『どこもかしこもあんな感じです。』
「一番多いのはどこか分かる?」
『いいえ、全部見たわけではありませんので。』
「あれが何かは?」
『おそらく何か術の残滓ではないかと?』
「人間の?」
天一は小さく申し訳なさそうに頷いた。
「分かった。教えてくれてあれがとう。」
その後、僕は天一と別れて、近くの稲荷神社を訪れた。
稲荷の狐だって霊的存在だ。
神社は霊的につながりがあり、それらは、大元は本山の神に繋がっているらしい。
僕は、伏見の威光を纏って稲荷の狐に呼びかけた。
呼びかけが終わるよりずっと早く、僕の前には1匹の狐が。
「あんさん、おひいさまの力を纏って何者ですねん。」
「ああ悪かった。彼女から君たちを自由に使っていいって言われてたからちょっとお願いしたいな、と思って。」
「ひょっとして飛鳥様でっしゃろか?」
「うん。直江飛鳥。一応、伏見のおひいさまの加護は受けてる。」
「あほいいなさんな。どこが一応、なんですか?バリバリの加護ですやん。ま、いいです。で、依頼はわて本人でっか?眷属総動員でっか?」
「できる限り多くの協力がもらえると嬉しい。」
「分かりました。ご期待にそうとしまひょ。で、内容は?」
「龍脈って見れる?」
「地に潜れってんですかい?まぁ見れますけど。」
「とりあえず可能な範囲で龍脈のチェックを頼みたいんだ。」
「龍脈のチェックどすか?」
「うん。さっき潜ってみたんだけど、なんかへんな黒い塊がいっぱい入ってるだ。その場所と量の情報が欲しい。」
「またけったいなもん調べますなぁ。まぁいいでっしゃろ。承りました。」
「あ、くれぐれも見て調査するだけだよ。近づかないでね。」
「・・・分かりました。みんなにも申しつけますわ。」
「うん。よろしく。」
狐に丸投げ。
情報は式神。
なんか、AAOの仕事か怪しくなってきそう。
あんまり人外を使うと、嫌がられるから、報告は黙っておきたいところだけど、さすがにニュースソースはごまかせないだろうな。
しかし、あれは何が起こってるんだ?
人がやったにしろ、なんか規模が大きすぎる気がする。
どんな組織がやっている?
こんなに大々的に仕掛けて、なんで手がかりが掴めてないんだ?
少なくとも、辻の魔法陣設置はプロの手だ。
そこに素人作成の魔法陣を使っているのは謎だとしても、少なくともあれをあそこに置いた、置こうとしたヤツらはプロだと思う。
なんで素人の作成?
力が強い者が作る強い魔法陣は、呪術汚染の可能性があるから、とか、ノリたちは予測してるみたいだけど。
だったら、狙いはなんだろう?
そんな風に考えながら、同じように結界の発生装置を設置している、某神社へと足を運んだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
あやかし嫁取り婚~龍神の契約妻になりました~
椿蛍
キャラ文芸
出会って間もない相手と結婚した――人ではないと知りながら。
あやかしたちは、それぞれの一族の血を残すため、人により近づくため。
特異な力を持った人間の娘を必要としていた。
彼らは、私が持つ『文様を盗み、身に宿す』能力に目をつけた。
『これは、あやかしの嫁取り戦』
身を守るため、私は形だけの結婚を選ぶ――
※二章までで、いったん完結します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる