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学園編 § 学校生活編
第62話 初等部図書館にて
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結論から言えば、初等部には例の魔法陣もどきはありそうになかった。
位置的にも近いし、同じ学校である中等部高等部には、剥がしても剥がしても現れるのに、初等部には残滓も感じられない。
まぁ、いいことではあるんだろう。少なくとも当面は調査対象から外すことができる。
僕は、感覚を広げてそのこととを確認すると、3人に連れられて、図書館と呼ばれる1室へと入って行った。
まぁ、何の変哲もない部屋だ。
昔と違い、本といっても紙は少ない。ほとんどが電子書籍で、貴重なものは図書館内の端末でのみ閲覧可能だ。持ち出しは、図書館の用意したシートで行い、コピーは著作権によって定められた金額を支払うことによって行えるものもある。シートは図書館のものとなるので返却が必要だ。それに定められた日数を経過すると閲覧ができなくなる。現在の図書館はもっぱらこういうシステムになっており、頂法寺学園の図書館でも例外ではない。あ、ある意味例外か。図書館専用の端末シートが入学時に与えられ、図書館の持ち出しはこのシートによってのみできる、というわけだ。
紙の本については、基本持ち出しができない。
よっぽどの本ではない限り、電子化がされているので、そもそも持ち出しの必要はないし、破損は歴史的価値を損なうから、というのが理由だ。
一般論は置いておいて、今回目的の本は、紙ベースで持ち出し不可のものだった。そして、1つの机に座った僕ら4人の前に、同じ絵本が3冊ある。そう3冊だ。
「3冊?」
「ああ、たぶんそれで全部だと思うぜ。」
禁書が、だぞ?
その言葉は、だが、発しなかった。太朗はいいとして、あとの二人は僕の正体を知らない。うかつな発言をするわけにはいかない。
「あ、とりあえずお前ら読めば?俺は暗記するぐらい読んでるし、家にもある。しかも、ほら。」
太朗はそう言って自分のシートをとりだした。
画面には、絵本の表紙と同じものが映し出されている。
ひょっとして電子書籍?
「電子化されたときに親父が買ってきたんだ。」
・・・電子化もされてるのかよ。
「いいから読んでみ?」
太朗から促されて1冊を読む。すでに他の二人は読み始めていて、残っていた一番古そうな1冊を手にした。
内容は・・・昨日聞いたとおりだ。
聞いたとおりなんだが、なんだこれは・・・
まず、けなげな少年のアスカ。それを支えるクールで天才肌のジュン。超絶美少女で慈母のようなレンゲ。その3人を中心としたヒーローもの
読むと、あああの事件か、という記憶があるものばかりではある。内情を知らなければ分からないようなところもあったから、リークは間違いなく蓮華だろう。何故か優しい、とか慈悲深い、とか言う枕言葉がレンゲの前についているのは、本人の要望か。そっちが気になって、話は入ってこない。
クライマックスは、例の巨大亀裂を塞ぐシーンか。世界中から光が集まりアスカに注ぎ込むと、髪がバサッと広がる様子も描かれている。剣をクラックに差し込み訪れる静寂。
気を失いベッドに寝ているアスカに「神に逆らう悪魔め!地獄に落ちろ!」と叫びつつ心臓をナイフで刺す聖職者らしき格好の男。死んだ!そう思われていたにもかかわらず目を開けるアスカ。そのアスカを何度も狂ったようにナイフで刺す男。
「ただ、人々を、この星を守りたかったんだ。」そう涙するアスカ。そしてその場を立ち去り、ナレーション。「今日も密かにアスカたちは神から人々を守っているのです。」
ハハハハ。まぁ、クラックに剣を刺すまでは、事実を並べたかんじだけど、ベッド以降は完全フィクションだ。
それに、髪の毛が長いのって、光を受けた以降の数ページのみ。それに、なんだか、悔しいがこのアスカの容姿は、僕よりもずっと大人だ。太朗のようにこれを僕と重ねる、なんてのは、うん、ないな。そう思って僕はホッとしていた。
「ウッウッ・・・」
急に声を出してルカが泣き始める。
「こんな話だったっけ?」
こちらも涙目の聖也。
「飛鳥、大変だったんだなぁ。」
聖也が言う。
はぁ?コレ見て僕と重ねるか?
「飛鳥ちゃぁん!」
泣きながら立ちあがって、ルカが僕の頭を抱え込んだ。
小学生の図書館で、泣いている中学生。
ちょっとシュールすぎるだろ!
「ちょっと、静かにしろって。ここ、図書館だろうが!」
僕は小声で叫んだ。
「それにそれは絵本であって、名前が同じだけの僕とは関係ないだろ!」
「いや、これはどう見ても飛鳥だろ。」
僕だけじゃなくて、淳平や蓮華だって、そんなに似ていないし。
・・・・
?
そのとき、遠目に向かいの席で聖也が読んでいた絵本がぴらぴらっと数枚めくれたのが目の端に写り、妙な違和感を覚えた。
なんだ?
僕は、ひっついているルカを強引に引きはがして、もう一度、絵本をぺらぺらとめくった。
最初は気付かなかった。
それにこの話が実話で、いろいろデフォルメされてるけどこのアスカは僕だと知っているから、頭で僕自身に置き換えてるんだ、そう思ってたけど・・・
サブリミナル・・・・
僕の頭にその単語が浮かぶ。
なんだよこれ・・・
それと認知できないような形で無意識でのみキャッチできる画像を提供すると、その画像が強烈に意識される。
昔、映画のコマの中にコーラを仕込んだら、その時のコーラの売れ上げがすさまじかった、なんていう実験もあったとか。
そのサブリミナル、が仕込まれている。
多分、僕の本当の顔、というか写真かなんかが、絵の中に何枚も仕込まれているんだと思う。持ち帰って細かく解析したいけど・・・・
ぺらぺらとめくって3冊とも同じ効果があれそうなことまでは分かったけど・・・
「これ、持ち出し禁止なんだよな。」
「何?ひょっとして何か分かったとか?現物いる?」
「うーまぁ。」
「実家から取り寄せようか?」
「・・・いや。とりあえずこっちでなんとかする。」
全部ならAAOの手持ちを確認させればいいだろうし。
しかし、誰がなんのために?
僕は、なんとなく手に取った絵本の背表紙を開く。
蘭子のサインらしきものが記されていた。
【たっちゃんへ。アスカをよろしくね。蘭子。平成27年3月20日】
位置的にも近いし、同じ学校である中等部高等部には、剥がしても剥がしても現れるのに、初等部には残滓も感じられない。
まぁ、いいことではあるんだろう。少なくとも当面は調査対象から外すことができる。
僕は、感覚を広げてそのこととを確認すると、3人に連れられて、図書館と呼ばれる1室へと入って行った。
まぁ、何の変哲もない部屋だ。
昔と違い、本といっても紙は少ない。ほとんどが電子書籍で、貴重なものは図書館内の端末でのみ閲覧可能だ。持ち出しは、図書館の用意したシートで行い、コピーは著作権によって定められた金額を支払うことによって行えるものもある。シートは図書館のものとなるので返却が必要だ。それに定められた日数を経過すると閲覧ができなくなる。現在の図書館はもっぱらこういうシステムになっており、頂法寺学園の図書館でも例外ではない。あ、ある意味例外か。図書館専用の端末シートが入学時に与えられ、図書館の持ち出しはこのシートによってのみできる、というわけだ。
紙の本については、基本持ち出しができない。
よっぽどの本ではない限り、電子化がされているので、そもそも持ち出しの必要はないし、破損は歴史的価値を損なうから、というのが理由だ。
一般論は置いておいて、今回目的の本は、紙ベースで持ち出し不可のものだった。そして、1つの机に座った僕ら4人の前に、同じ絵本が3冊ある。そう3冊だ。
「3冊?」
「ああ、たぶんそれで全部だと思うぜ。」
禁書が、だぞ?
その言葉は、だが、発しなかった。太朗はいいとして、あとの二人は僕の正体を知らない。うかつな発言をするわけにはいかない。
「あ、とりあえずお前ら読めば?俺は暗記するぐらい読んでるし、家にもある。しかも、ほら。」
太朗はそう言って自分のシートをとりだした。
画面には、絵本の表紙と同じものが映し出されている。
ひょっとして電子書籍?
「電子化されたときに親父が買ってきたんだ。」
・・・電子化もされてるのかよ。
「いいから読んでみ?」
太朗から促されて1冊を読む。すでに他の二人は読み始めていて、残っていた一番古そうな1冊を手にした。
内容は・・・昨日聞いたとおりだ。
聞いたとおりなんだが、なんだこれは・・・
まず、けなげな少年のアスカ。それを支えるクールで天才肌のジュン。超絶美少女で慈母のようなレンゲ。その3人を中心としたヒーローもの
読むと、あああの事件か、という記憶があるものばかりではある。内情を知らなければ分からないようなところもあったから、リークは間違いなく蓮華だろう。何故か優しい、とか慈悲深い、とか言う枕言葉がレンゲの前についているのは、本人の要望か。そっちが気になって、話は入ってこない。
クライマックスは、例の巨大亀裂を塞ぐシーンか。世界中から光が集まりアスカに注ぎ込むと、髪がバサッと広がる様子も描かれている。剣をクラックに差し込み訪れる静寂。
気を失いベッドに寝ているアスカに「神に逆らう悪魔め!地獄に落ちろ!」と叫びつつ心臓をナイフで刺す聖職者らしき格好の男。死んだ!そう思われていたにもかかわらず目を開けるアスカ。そのアスカを何度も狂ったようにナイフで刺す男。
「ただ、人々を、この星を守りたかったんだ。」そう涙するアスカ。そしてその場を立ち去り、ナレーション。「今日も密かにアスカたちは神から人々を守っているのです。」
ハハハハ。まぁ、クラックに剣を刺すまでは、事実を並べたかんじだけど、ベッド以降は完全フィクションだ。
それに、髪の毛が長いのって、光を受けた以降の数ページのみ。それに、なんだか、悔しいがこのアスカの容姿は、僕よりもずっと大人だ。太朗のようにこれを僕と重ねる、なんてのは、うん、ないな。そう思って僕はホッとしていた。
「ウッウッ・・・」
急に声を出してルカが泣き始める。
「こんな話だったっけ?」
こちらも涙目の聖也。
「飛鳥、大変だったんだなぁ。」
聖也が言う。
はぁ?コレ見て僕と重ねるか?
「飛鳥ちゃぁん!」
泣きながら立ちあがって、ルカが僕の頭を抱え込んだ。
小学生の図書館で、泣いている中学生。
ちょっとシュールすぎるだろ!
「ちょっと、静かにしろって。ここ、図書館だろうが!」
僕は小声で叫んだ。
「それにそれは絵本であって、名前が同じだけの僕とは関係ないだろ!」
「いや、これはどう見ても飛鳥だろ。」
僕だけじゃなくて、淳平や蓮華だって、そんなに似ていないし。
・・・・
?
そのとき、遠目に向かいの席で聖也が読んでいた絵本がぴらぴらっと数枚めくれたのが目の端に写り、妙な違和感を覚えた。
なんだ?
僕は、ひっついているルカを強引に引きはがして、もう一度、絵本をぺらぺらとめくった。
最初は気付かなかった。
それにこの話が実話で、いろいろデフォルメされてるけどこのアスカは僕だと知っているから、頭で僕自身に置き換えてるんだ、そう思ってたけど・・・
サブリミナル・・・・
僕の頭にその単語が浮かぶ。
なんだよこれ・・・
それと認知できないような形で無意識でのみキャッチできる画像を提供すると、その画像が強烈に意識される。
昔、映画のコマの中にコーラを仕込んだら、その時のコーラの売れ上げがすさまじかった、なんていう実験もあったとか。
そのサブリミナル、が仕込まれている。
多分、僕の本当の顔、というか写真かなんかが、絵の中に何枚も仕込まれているんだと思う。持ち帰って細かく解析したいけど・・・・
ぺらぺらとめくって3冊とも同じ効果があれそうなことまでは分かったけど・・・
「これ、持ち出し禁止なんだよな。」
「何?ひょっとして何か分かったとか?現物いる?」
「うーまぁ。」
「実家から取り寄せようか?」
「・・・いや。とりあえずこっちでなんとかする。」
全部ならAAOの手持ちを確認させればいいだろうし。
しかし、誰がなんのために?
僕は、なんとなく手に取った絵本の背表紙を開く。
蘭子のサインらしきものが記されていた。
【たっちゃんへ。アスカをよろしくね。蘭子。平成27年3月20日】
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