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学園編 § 編入準備編

第47話 実験結果の報告

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 約1日後。
 僕は解放されて、ロシア領事館の車で寮へと戻された。
 部屋へ帰ると空っぽ。二人はどうやら外出中のようだ。
 これ幸いと、ベッドに潜り込む。
 さすがに疲れた。

 「ねぇ、起きて。ご飯だよ。」
 誰かが、僕の体を揺すっている。って誰だ?よく知ってる感じではないんだけど・・・
 僕は、疑問に思いつつ目を開ける。
 ルカ?なんで?
 びっくりして、ガバッと、飛び起きた。
 「うわぁ、びっくりした!」
 ルカが言うが、びっくりしたのはこっちだ。なんで部屋の中に部外者がいる?

 「飛鳥、起きたんならご飯行くよ。〈夕飯、分かる?〉」
 リビングの方を見ると、何人かの顔。
 部屋の入り口に立っていたノリが、日本語と、わざわざ片言の英語で声をかけてきた。あ、そうか。帰国子女設定だった。
 〈なんで、部外者が部屋にいるんだよ?〉
 「え、何?日本語で言える?」
 ったく、AAOの未来のえらいさんも質が落ちたもんだ。まさかこの程度も聞き取れないなんて。
 「なんで、ルカがここにいるか聞いたんだ。」
 「ああ、昨日からみんな心配してちょこちょこ覗いてくれてるんだよ。」
 「なんで?」
 「ひっどーい。なんで、ってなんだよ。飛鳥ちゃんひどいよ!」
 急に話に入ってきてわめくルカ。起き抜けにうざいよ。
 「まぁまぁ。とにかく飯行こうぜ!」
 どうやら外にまだいたらしい同級生。うち一人の太朗が声をかけてくる。
 それを聞いて、ベッドに座っていた僕の腕を引っ張るようにしてルカが僕を立たせた。
 ルカやノリ、太朗以外にも、ゼンと聖也がいて、僕が自分の部屋から出るのを見ると、そのままゾロゾロと寮の部屋から出ていく。
 僕はため息をつきながら、ルカにせかされるように食堂へと向かった。


 食堂に行くと、随分賑やかだ。
 新学期が近づいて、多くの生徒が寮にやってきたらしい。
 ここは男子寮。
 それが、いやと言うほど分かる光景だ。
 「姫だ。」「飛鳥姫」
 ぽそぽそと小声で言う声が、かえって耳につく。
 「なんだそれ?」「実は・・・」
 中3以上の生徒に、オリエンテーリングの罰ゲームの話をしているのも聞こえてくる。
 「何目立ってんだよ。」
 そんな話し声を耳にしてか、ゼンが言う。けど、
 「不可抗力だろ。」
 僕はムッとして答える。
 「ゼンお兄様。飛鳥が目立つのは仕方ないですよ。下手な女子よりよっぽどかわいいし。」
 睨み合う僕らに、フォローのつもりか、ルカがそんなことを言う。
 誰がかわいい、だ。冗談じゃない。
 「だな。」
 「だのに脱いだらすごい。あれはビビった。」
 ハハハハ・・・
 3人が笑ってるけど、みんなの耳がこっちに集中してるの、気づかないのかな。もうため息しか出ないよ。とにかくさっさと仕事を終えて、ここから脱出するのが一番だろうけど、わざわざ学生にされて忍び込む必要があるってことは、長丁場を上は考えてるんだろうか。そんなことを思いながら、僕は、食事を口に運んでいた。



 その後。

 同級生たちとは別れ、3人で寮の部屋へと戻ると、蓮華と淳平がすでに待機していた。
 「ロシア支部長に拉致られたんだって?」
 イヒヒ、と笑いながら、顔を見るなり淳平が言った。
 「ああ。」
 「領事館にでも連れ込まれた?」
 と、蓮華。
 「ああ。」
 「報告は?」
 蓮華が怒ったように言う。ていうか、相当怒ってるみたいだ。報告を上げられる状況じゃなかったし、伝言はノリたちに頼んだはずだけど。
 「あのねぇ、現況を報告しろって言ってんの。急に京都市内であんたの波動探せって命令が来たんだからね。こっちはなんも聞いてないっての!」
 あー・・・副支部長のやつ、命令だけで放置ってか?
 「例の魔法陣絡みか?」
 淳平も、まじめなモードで、言ってくる。
 「お前じゃなくて、お前の波動ってとこが妙だったんだが。」
 ほう・れん・そう。いつもうるさく言う副支部長が、まともにやってないのかって話だろ。
 って、あんまりじらすと、蓮華が切れそう・・・

 「ロシア領事館の結界に放り込まれてた。グレコリーの他に、ニーチェとうちの副支部長それにクロウリーがいたよ。」
 「アメリカ支部長?」
 「魔法陣がそっち系だったからな。」
 「そういうこと。で?」
 「ニーチェの写しに霊力を吸わせてた。」
 「は?」
 「最初は注げって言われたんだけどさ、どうも自動で吸い取るみたいで、丸一日吸われ続けてた。」
 「なんです、それ?そんなことしたら、霊力が枯渇して倒れるでしょう!」
 ノリが、怒ってるみたいだけど、何切れてんだか。
 こういう扱いは別に珍しくもないんだが・・・
 「両支部長とニーチェがいたからな。」
 ノリとゼンは分かってないみたいだが、さすがに蓮華と淳平は分かったようだ。
 「枯渇する前に補充されてたってことか。」
 僕は淳平の言葉に頷く。
 やっと、ノリたちにも意味が分かったようだ。僕がそういう能力を持つ、というのは知識としては持っているんだろう。実感はなさそうだけどね。

 「で?」
 蓮華はますます機嫌が悪いなぁ。いつ物が飛んできてもおかしくない感じだ。
 僕はさらにため息が深くなる。
 「で、って言われても・・・僕としてはただ霊力を吸われてるだけだったし。で、その霊力がどこかに転送されてるだろうってことで、出力先探しをやらせるって副支部長が言ってたから、後はそっちの方が詳しいんじゃないの?」
 「なるほどな。」

 4人して難しい顔をしてる。
 僕が帰されたってことは、ある程度出力先の特定は出来てるはずだと思ったけど、その情報は僕にはくれないんだろうか。まぁ、必要ないってんならそれでもいいけど。そういうことなら、魔法陣の件は僕の手を離れてるってことだろう?

 「ああ、逆だ。魔法陣の件、このメンバーがメインでやんなきゃならないと思う。」
 僕の心を読んだらしいノリが、そんな風に言ってきた。
 どういうことだ?

 「ああ、俺から。飛鳥ちゃんさ、昨日はずっと領事館ってことだよな。ってことは決まり。学校で悪さするド定番の場所ってか?ハハハ。この学校の体育館裏から一番、飛鳥ちゃんの力、溢れてたんだわ。」
 淳平が言った。
 「他にも複数。霊場のいくつかからも報告されてる。」
 ゼンが追加で言う。
 複数?
 どういうことだろう?

 「とりあえず、学校の内部も体育館だけじゃなくて複数感知してる。手分けして探すわよ。学校の結界、壊さないように、って上から命令が出てるわ。私たちは学校の外は調べなくていいって言質もらったから、明日にはこっちの担当が送られてくるでしょ。はい、今日は解散。淳平、行くわよ。」
 相変わらず機嫌が悪い様子で、でも、とくに暴力をふるうでもなく、蓮華は出ていった。すぐに淳平も後に続く。
 僕は、何かを言いたそうな二人を放置して、自分の部屋へ入り、まだ回復しきってない体力を補充するために、ベッドへと潜り込んだ。
 
 
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