神に喧嘩を売った者達 ~教科書には書かれない真実の物語~

平行宇宙

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招集編

第9話 憲央vs蓮華

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 「ついてくんなよ。」
 医務室からも離れない、憲央に文句を言った。まだ医務室で彼を待っていたらしい善まで一緒だ。
 「じゃあ、僕が先に行こうか?」
 そう言って、僕の前を歩き出す憲央。
 そうして、勝手に僕の部屋へと入っていった。

 部屋は電気がついていたから、まだ二人か、どっちか一人か分かんないけど、僕の部屋でぐだぐだしてるんだろう。なんだか、部屋に帰りたくなくなってきた。
 僕が躊躇して、立ち止まっていると、ぽん、と肩に手が置かれた。
 そうか、こいつもいたんだ。
 「行こうか。」
 いや、なんでだよ。
 「放置していると、ノンは君が一番困りそうなことをするぞ。」
 なにそれ?
 「信じないならいいが・・・」
 僕をまっすぐ見てくる善の目に揺らぎはない。
 きっと本当なんだろうな。第一そんな嘘を言う利益がない。

 と、そのとき、僕の部屋から何かが大量に破壊される音がした。
 僕は善と目を見合わせると、慌てて走って行く。

 うわぁ・・・

 机も椅子も、粉々だった。

 見ると、涼しい顔の憲央に、鼻の頭を掻いて困った顔の淳平。
 そして、目をつり上げて、自分の体に結界をかけ、掴みかからんばかりの勢いの蓮華。

 「あれ、遅かったじゃないか。今ね、君の部屋に無断侵入していた不審者に誰何してたとこ。飛鳥の知り合いだったりする?」
 しれっと、そんなことを言う憲央。
 お前が、二人を知らんわけないだろうが。

 「あ、飛鳥!この馬鹿がなんでここにいるのよ!さっさと追い出しなさい!ここはね関係者以外立ち入り禁止の区域なの。医務室から先は立ち入り禁止!」
 「あ、それは大丈夫。ちゃんと遙先生の許可はもらってますから。」
 ひらひらと、スケジュール表をちらつかせる憲央。
 「あらら、飛鳥ちゃん、またやらかした?」
 淳平がそれが何なのか気づいて、そんな風に言う。同時に蓮華も気づいたようで・・・
 だけど、
 「はぁ。飛鳥がまた食べるの忘れてたってこと?だったら私が管理するわよ。だから無関係のあんたは出ていったらいいの!」
 「ですが、確かに、この僕が遙先生から飛鳥の管理を命じられましたから。失敗すると僕にもペナルティがありますし、もちろん飛鳥も。ですよね、飛鳥。」
 「え?」
 「僕が、遙先生に飛鳥のレポートを毎日あげるように、命令されてたでしょう?」
 「それは、まぁ、そうなんだけど・・・」
 「はぁ?なんで他人のあんたにそんなこと命令するのよ。いいわ、直接遙に言ってやる。とっととそんな命令撤回させてやるわ!」
 「いや、そもそも、あなたも他人でしょう?そんな権限、ないですよね。」
 「はぁ?私は飛鳥と同じザ・チャイルドよ。あんたとは違うわ。」
 「でも、この遙先生の任務、次の任務終了までですよ?ちなみに次の任務、この僕と、善、そして飛鳥が同居する。これ以上適任はいないでしょう?」
 「任務?」
 「おや、聞いてませんか?まぁそうですよね。ザ・チャイルドの皆さんには、拒否権がありませんから、伝達事項として最終に知らされるんでしたっけ?まぁ、明日には分かることですし、僕らがあなた方のパートナーとして決定してるんで、お教えしておきますよ。」
 任務、と聞いて、蓮華と淳平が苦い顔をした。
 おそらく二人の情報網なら、僕らがどんな任務に就かされそうか、おおよその把握はしてるんだろう。さっきも憲央たち二人のことをなんか言ってたし、二人がパートナーにいるのも知っていたのだろう。そして、それが面白くないんだろうってことは、さすがに長いつきあいだ、僕にも感じられた。

 にしても、しばらくこいつらと同居とは、それを考えただけで、ぞっとするな。それに、あなた方、か。僕だけじゃなくて、まさかザ・チャイルド全員で当たるのか?相当の力の入れようってことだろうけど、その監視役が二人ってことはないと思いたいが・・・
 パートナーってのは、ザ・チャイルドの誰かが投入されるときの、共同作戦遂行者だ。局面にも寄るけど、戦闘中に関しては、僕らの指揮下に入る。が、要は監視要員も兼ねているわけで、一応上下関係はないことになってるけど、非戦闘時については、基本的に彼らの方が優位に立ってる。このパートナーっていうのも、そもそも裏の世界の住人なだけあって、一癖も二癖もある連中が多い。少ない人数で来られると、彼らを制する者がいないから、好き放題されて最終喧嘩になったり作戦が滞ったりすることも多々あるんだ。そういうのは大概こっち側の非にされる。ペナルティを喰らいたくなかったら、こっちがおとなしくするしかないって寸法だ。だけど、パートナーが増えると、パートナー同士で牽制してくれる。目が多くて面倒ではあるけど、理不尽なことは随分減る。4,5人が、僕的にはありがたいんだけど。


 「黙ってるってことは、飛鳥のことは僕に任せるってことでいいですよね。」
 にこり、と笑って憲央は言った。
 どうも蓮華の感心はさっきのことで、次の任務にいってしまったらしい。熱しやすく冷めやすいこの人は、どうせ、もう僕の食事云々は頭にないだろう。そういう点ではありがたいが。

 「じゃあ、飛鳥。そんなわけで今日の晩餐会はちゃんと参加して、それでちゃんと僕と食べよう。では後で。」
 異様な空気を残して、憲央は意気揚々と出ていった。
 唖然とする僕の肩を、ポンポンと叩いて、善もその後を追っていった。


 しばらくして、モニターで様子を見ていたであろうスタッフたちがやってきて、僕らは部屋を追い出された。片付くまで1時間は戻ってくるな、と言われて、僕はこれ幸いと、外へ出ることにした。蓮華はとっとと自分の部屋へ帰っていったし、淳平だってそうするだろう。
 さて、樹海で森林浴でもするか、そう思って歩き出したところを、ガシッと腕を捕まれた。

 「飛鳥。僕の部屋で話そうか。」
 淳平が僕のことをちゃん付けで呼ばないときは、からかっていないとき。真面目な話か怒られる時だけだ。僕はため息をついて、淳平の後を追った。
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