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24.ローレンツサイド(過去:暴力的行為あり)
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ローレンツはローデンと没落貴族の元男爵令嬢との間に生まれた。
上級貴族の執事の一族は縁故でずっと引き継がれていく職業だ。
そのため、子供の頃から躾と称した体罰をずっと受けてローレンツは育った。
しかし、母親はローデンに歯向かう力もなく、離婚でもされたらどこにも行き場がない。
そのせいか、ずっとローデンの怒りに触れないように必死だった。
今なら、それが彼女の生きる術だったので多少なりとも理解はする。
だが、子供だった時分には守ってもくれない母親に理解が全くできなった。
ローデンは我が子に愛情を注ぐような男ではない。
むしろ伯爵家のためにだけ生きる、そんな人間だ。
執事の一族としてはそれが正しい生き方なのは分かるが、ローデンも当時現役の執事として采配していた祖父も家庭を顧みる人ではなかった。
その妻も、そのうち諦め、どこかで病んでいくのがこの家の執事の妻だ。
まるで洗脳されたように、一途に仕えるローデンの一族。
ローレンツは未だに全く理解できない。
どこかでまだ認められれば父に愛されるのではないかと思っていたのは五歳になる頃まで。
その頃に、ローデンは伯爵家の次期跡取りであるヘンリーの教育係となった。
伯爵家の次期後継者を育てる仕事は、ローデンにとって至高の喜びで、ますます母親とローレンツは突き放されていく。
それなのに、教育と称した体罰は止むことはない。
そんな中で、妹が生まれた。
父親と母親の事は大嫌いだけど、六歳離れたこの妹の事は大好きだった。
だから、妹を守るためにローレンツはがんばった。
がんばってこの家で自分の価値を認めさせれば、妹は守れる思っていたからだ。
それが意味をなさない事だと知ったのは二十の時だった。
「それは、どういう意味ですか?」
「言った通りだ。もとより、そのつもりで産ませた子供だ。今さら何を驚く。ヘンリー様にお仕えできるのだ、名誉ある仕事だろう」
「名誉? 仕事? アンナはまだ十四ですよ!? それを!」
「ヘンリー様がお望みなのだから、我が一族にしてもとても名誉ある事だ、父も喜んでくださっている。教育はお前に任せる。なに、そんなに難しいことではない。父も私も、姉妹の教育をしてきたのだ。ああ、でも今回は少し違う。初めての女が必要だから、最後までする事はないぞ」
それを言われた瞬間頭の中が真っ白になった。
――何を言っている……それではまるで……
人ではない何か。
ローレンツは悟った。
この血は狂っているのだと。
なぜ今まで唯々諾々とこの邸宅にいて、父親の命令通り動いていたのか分からなくなった。
しかし、ローレンツの中では、そんな禁忌を犯すことは全身で拒否していた。
ローレンツはもう大人だ。
しかも体罰でひどい目にあわされながらも、それなりの教育は受けてきた。
外に出ても、やっていける。
どうして今まで考えなかったのか分からないが、今こそその時だと知った。
このままここにいては、愛するアンナがひどい目にあわされる。
おそらく、ローレンツが拒否しても父親の手によって、その身を汚されることになる事は簡単に想像できた。
アンナを連れて逃げよう。
そう決意した。
そして決行日――……
「お前にはがっかりした」
散々殴られ、地べたに這いつくばって、それでもローレンツはその眼光だけは鋭かった。
「ク、ソ野郎! ぐっ!!」
「父親に向かって何て言い草だ。どうやらあの女は子供の教育に失敗したらしいな。罰を与えねばならん。これだから元貴族というのは厄介だ。一応貴族というだけで、何も出来ないのだからな」
「ア、アンナに手を……うっ!」
「アンナはもともと、この家のモノだ。どうしようとこの家のご当主一家がお決めになるのだ。元貴族の血も入っているから、ヘンリー様のおそばに仕えるのもいいかと思ったが……どうなるか。アンナが、しっかりお仕えできるか、見ようではないか。お前の教育成果もな」
ローレンツは大柄な下男に引きずられて、父親と一緒にヘンリーの寝室に入った。
そこには、獣のようにアンナに襲い掛かるヘンリーと泣き叫び殴打されながらも、あらゆつ屈辱を受けさせられていたアンナがいた。
「いやぁ! あぁ!!」
「うるさい、黙らせろ」
ヘンリーが後ろからアンナを襲い、その前にには違う男が無理矢理アンナの口にどす黒いモノを咥えさえた。
「噛んだりしたら、殺していいか?」
「ああ? まあ使用人の一人くらい不敬で殺したところでローデンは許してくれる。なあ?」
「もちろんでございます」
「ぐっ! ぐぅぅ!!」
ローデンがさも当然のように答え、その隣で、拘束されているローレンツが唸る。
「ローデン、そいつはどうした?」
「不肖の息子にヘンリー様がいかに素晴らしいか見せたいと思いまして。よろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。しっかり見ておくように言っておけ。お前もいいだろう?」
「ま、大勢に見られながらって言うのも興奮するな」
――腐っている!!
十四のアンナは他の同年代と比べて多少発育はいい方だ。
だが、それこそ貴族はもっと発育がいい。
それは男も女も。
ヘンリーともう一人は貴族で、同年代とはいえすでに平民の成人程の体格を持っていた。
男二人の手で押さえつけられてはアンナにはどうすることも出来ない。
藻掻けば、殴られ、泣けば口を無理矢理塞がれ、アンナの瞳にはすでに光は無かった。
それは、明け方近くまで続けられ、解放された時にはアンナはこと切れた人形のようになっていた。
何もできない自分の無力さに、身体から力が抜けた。
「ローデン、次はもっと躾の出来てる女がいい。ああ、でも初物はなかなか楽しいな。これはもういいから捨ててこい。せっかく私たち貴族の精を与えてやってこれなら、不要なモノだ」
「かしこまりました」
平然と自分の血を分けた娘をモノの様に扱う父親の言葉も耳から抜け落ち、ただ光無く涙の跡が残っているアンナを見ることしか出来なかった。
いつの間にかローレンツは、ヘンリーの部屋から連れ出されていたが、思考は止まったままだった。
上級貴族の執事の一族は縁故でずっと引き継がれていく職業だ。
そのため、子供の頃から躾と称した体罰をずっと受けてローレンツは育った。
しかし、母親はローデンに歯向かう力もなく、離婚でもされたらどこにも行き場がない。
そのせいか、ずっとローデンの怒りに触れないように必死だった。
今なら、それが彼女の生きる術だったので多少なりとも理解はする。
だが、子供だった時分には守ってもくれない母親に理解が全くできなった。
ローデンは我が子に愛情を注ぐような男ではない。
むしろ伯爵家のためにだけ生きる、そんな人間だ。
執事の一族としてはそれが正しい生き方なのは分かるが、ローデンも当時現役の執事として采配していた祖父も家庭を顧みる人ではなかった。
その妻も、そのうち諦め、どこかで病んでいくのがこの家の執事の妻だ。
まるで洗脳されたように、一途に仕えるローデンの一族。
ローレンツは未だに全く理解できない。
どこかでまだ認められれば父に愛されるのではないかと思っていたのは五歳になる頃まで。
その頃に、ローデンは伯爵家の次期跡取りであるヘンリーの教育係となった。
伯爵家の次期後継者を育てる仕事は、ローデンにとって至高の喜びで、ますます母親とローレンツは突き放されていく。
それなのに、教育と称した体罰は止むことはない。
そんな中で、妹が生まれた。
父親と母親の事は大嫌いだけど、六歳離れたこの妹の事は大好きだった。
だから、妹を守るためにローレンツはがんばった。
がんばってこの家で自分の価値を認めさせれば、妹は守れる思っていたからだ。
それが意味をなさない事だと知ったのは二十の時だった。
「それは、どういう意味ですか?」
「言った通りだ。もとより、そのつもりで産ませた子供だ。今さら何を驚く。ヘンリー様にお仕えできるのだ、名誉ある仕事だろう」
「名誉? 仕事? アンナはまだ十四ですよ!? それを!」
「ヘンリー様がお望みなのだから、我が一族にしてもとても名誉ある事だ、父も喜んでくださっている。教育はお前に任せる。なに、そんなに難しいことではない。父も私も、姉妹の教育をしてきたのだ。ああ、でも今回は少し違う。初めての女が必要だから、最後までする事はないぞ」
それを言われた瞬間頭の中が真っ白になった。
――何を言っている……それではまるで……
人ではない何か。
ローレンツは悟った。
この血は狂っているのだと。
なぜ今まで唯々諾々とこの邸宅にいて、父親の命令通り動いていたのか分からなくなった。
しかし、ローレンツの中では、そんな禁忌を犯すことは全身で拒否していた。
ローレンツはもう大人だ。
しかも体罰でひどい目にあわされながらも、それなりの教育は受けてきた。
外に出ても、やっていける。
どうして今まで考えなかったのか分からないが、今こそその時だと知った。
このままここにいては、愛するアンナがひどい目にあわされる。
おそらく、ローレンツが拒否しても父親の手によって、その身を汚されることになる事は簡単に想像できた。
アンナを連れて逃げよう。
そう決意した。
そして決行日――……
「お前にはがっかりした」
散々殴られ、地べたに這いつくばって、それでもローレンツはその眼光だけは鋭かった。
「ク、ソ野郎! ぐっ!!」
「父親に向かって何て言い草だ。どうやらあの女は子供の教育に失敗したらしいな。罰を与えねばならん。これだから元貴族というのは厄介だ。一応貴族というだけで、何も出来ないのだからな」
「ア、アンナに手を……うっ!」
「アンナはもともと、この家のモノだ。どうしようとこの家のご当主一家がお決めになるのだ。元貴族の血も入っているから、ヘンリー様のおそばに仕えるのもいいかと思ったが……どうなるか。アンナが、しっかりお仕えできるか、見ようではないか。お前の教育成果もな」
ローレンツは大柄な下男に引きずられて、父親と一緒にヘンリーの寝室に入った。
そこには、獣のようにアンナに襲い掛かるヘンリーと泣き叫び殴打されながらも、あらゆつ屈辱を受けさせられていたアンナがいた。
「いやぁ! あぁ!!」
「うるさい、黙らせろ」
ヘンリーが後ろからアンナを襲い、その前にには違う男が無理矢理アンナの口にどす黒いモノを咥えさえた。
「噛んだりしたら、殺していいか?」
「ああ? まあ使用人の一人くらい不敬で殺したところでローデンは許してくれる。なあ?」
「もちろんでございます」
「ぐっ! ぐぅぅ!!」
ローデンがさも当然のように答え、その隣で、拘束されているローレンツが唸る。
「ローデン、そいつはどうした?」
「不肖の息子にヘンリー様がいかに素晴らしいか見せたいと思いまして。よろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。しっかり見ておくように言っておけ。お前もいいだろう?」
「ま、大勢に見られながらって言うのも興奮するな」
――腐っている!!
十四のアンナは他の同年代と比べて多少発育はいい方だ。
だが、それこそ貴族はもっと発育がいい。
それは男も女も。
ヘンリーともう一人は貴族で、同年代とはいえすでに平民の成人程の体格を持っていた。
男二人の手で押さえつけられてはアンナにはどうすることも出来ない。
藻掻けば、殴られ、泣けば口を無理矢理塞がれ、アンナの瞳にはすでに光は無かった。
それは、明け方近くまで続けられ、解放された時にはアンナはこと切れた人形のようになっていた。
何もできない自分の無力さに、身体から力が抜けた。
「ローデン、次はもっと躾の出来てる女がいい。ああ、でも初物はなかなか楽しいな。これはもういいから捨ててこい。せっかく私たち貴族の精を与えてやってこれなら、不要なモノだ」
「かしこまりました」
平然と自分の血を分けた娘をモノの様に扱う父親の言葉も耳から抜け落ち、ただ光無く涙の跡が残っているアンナを見ることしか出来なかった。
いつの間にかローレンツは、ヘンリーの部屋から連れ出されていたが、思考は止まったままだった。
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