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35.好意に対する礼
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「本当に、大丈夫?」
アメルは幾度となくデリックに確認する。
本当に、自分と共にルングレム王国に行っても大丈夫なのかと。
「もう船が動き出してるのに、今更何度も聞くな。正式に学校側にも申請してるし、両親の許可もある」
今通っている学校には、実家での緊急の用事の際は最大三か月の休学申請が行える。
戻ってきた際に色々と課題が出されるが、遠くの地からやって来ている人もいるためのシステムだ。
アメルはそれを申請し、一時的にアーバンド帝国を離れることになっていた。
そして、デリックは家の用事として一か月の休学申請を行った。
実家の緊急でなくても、アーバント帝国有数の学校は多くの子女がいる。
中には他国の王族もいるため、公務などで休む場合、最大で一か月の休学申請ができるようになっていた。
デリックは今回、家の用事として申請し、その申請が通ったのでこうしてアメルと一緒にルングレム王国に向かっている。
もちろん、ただアメルに着いて行くわけではなく、きちんと父親から商談も任されていた。
家の用事などとうそをつくのだから、これくらいは仕事をしてこいというお達しだ。
「小父様からの仕事、手伝う?」
「いや、別にどうってことない。ただの建前みたいなものだから。まあ、ちょっと契約書持って帰ってこい、って感じの子供の使いだな」
果たして本当に子供の使い程度なのか疑う。
父親に代わって巨額な金額をデリック自身の判断で動かすこともある。
それをアメルは知っているので、気楽なデリックの言葉を疑いたくもなった。
「心配しなくても、大丈夫さ。もうすでにほとんど話はついている商談だ。これから拗れることはほぼない」
自信たっぷりにデリックが答えた。
「それならいいけど」
「それよりも、家に戻ったら色々忙しくなるのはそっちだろう」
「さぁ? どうだろう……」
「王太子の立太子の式典用衣装やら、装飾品やら合わせたりするだろう、女は」
「半分以上はすでに終わっているような気がするけど」
アメルがじろりとデリックを横目でにらむ。
女性の支度は衣装合わせよりも、衣裳を選ぶことの方が時間がかかる。
しかし、その時間は大幅に短縮されていた。
「デリックも小母様も、どうしてわたしに秘密でドレスとか装飾品を増やすのか、ぜひ話を聞きたいところなんだけど」
そうなのだ。
いつの間にかアメル用にと社交用のドレスやら、それに合わせた小物が揃えられていた。
それが季節ごとに増えるものだから、今やノイマン公爵邸の小部屋の一つは、アメルの衣裳部屋になっていた。
アーバント帝国で多少の社交は行っているが、そんなに頻繁ではないので、来ていないドレスは増える一方。
そのうち着るだろうと、デリックもライヒラも軽く言うが、実際着るよりも増える数の方が多いのは大層無駄だと思う。
しかし、金持ちが散財して経済回さないで誰がするんだと言われれば、その通りだと頷くしかない。
そして、今回ルングレム王国に帰国する際に、いまだに着たことのない豪奢なドレスをいくつも持たされた。
それに合わせた装飾品や小物も。
時間がないのでありがたいと思う反面、なんともいえない気持ちになる。
「リンデルス伯爵には、アメルの世話はこっちできっちりするって約束してるんだし、これくらい普通だろ」
アーバント帝国とルングレム王国では国力が違うので、同じ貴族とはいえお金の価値観や使い方が違う。
特にデリックの家であるノイマン公爵家は、アメルのドレスや装飾品を使いきれないほど買い込んだところで些細な金額と言ったところ。
「お父様も、ここまでのことは望んでいなかったと思うけど……」
アメルはため息交じりに呟く。
衣食住の面倒を見てもらうことにはなっていたが、それは最低限って意味だと思っていた。
それとも、自分が知らないだけで、これくらいは普通なのだろうか。
「そこまで思い悩まなくてもいいだろ。好意に対して申し訳なさそうにされるより、礼を言われる方が俺はうれしいけど」
デリックの言うことももっともだ。
好意に対して謝罪や遠慮よりも、お礼を言われる方がうれしい。
「色々と、ありがとう。今回の事、本当に感謝してる」
「そうだ。その方が、気持ちがいい」
デリックが笑い、アメルの口元を緩めた。
アメルは幾度となくデリックに確認する。
本当に、自分と共にルングレム王国に行っても大丈夫なのかと。
「もう船が動き出してるのに、今更何度も聞くな。正式に学校側にも申請してるし、両親の許可もある」
今通っている学校には、実家での緊急の用事の際は最大三か月の休学申請が行える。
戻ってきた際に色々と課題が出されるが、遠くの地からやって来ている人もいるためのシステムだ。
アメルはそれを申請し、一時的にアーバンド帝国を離れることになっていた。
そして、デリックは家の用事として一か月の休学申請を行った。
実家の緊急でなくても、アーバント帝国有数の学校は多くの子女がいる。
中には他国の王族もいるため、公務などで休む場合、最大で一か月の休学申請ができるようになっていた。
デリックは今回、家の用事として申請し、その申請が通ったのでこうしてアメルと一緒にルングレム王国に向かっている。
もちろん、ただアメルに着いて行くわけではなく、きちんと父親から商談も任されていた。
家の用事などとうそをつくのだから、これくらいは仕事をしてこいというお達しだ。
「小父様からの仕事、手伝う?」
「いや、別にどうってことない。ただの建前みたいなものだから。まあ、ちょっと契約書持って帰ってこい、って感じの子供の使いだな」
果たして本当に子供の使い程度なのか疑う。
父親に代わって巨額な金額をデリック自身の判断で動かすこともある。
それをアメルは知っているので、気楽なデリックの言葉を疑いたくもなった。
「心配しなくても、大丈夫さ。もうすでにほとんど話はついている商談だ。これから拗れることはほぼない」
自信たっぷりにデリックが答えた。
「それならいいけど」
「それよりも、家に戻ったら色々忙しくなるのはそっちだろう」
「さぁ? どうだろう……」
「王太子の立太子の式典用衣装やら、装飾品やら合わせたりするだろう、女は」
「半分以上はすでに終わっているような気がするけど」
アメルがじろりとデリックを横目でにらむ。
女性の支度は衣装合わせよりも、衣裳を選ぶことの方が時間がかかる。
しかし、その時間は大幅に短縮されていた。
「デリックも小母様も、どうしてわたしに秘密でドレスとか装飾品を増やすのか、ぜひ話を聞きたいところなんだけど」
そうなのだ。
いつの間にかアメル用にと社交用のドレスやら、それに合わせた小物が揃えられていた。
それが季節ごとに増えるものだから、今やノイマン公爵邸の小部屋の一つは、アメルの衣裳部屋になっていた。
アーバント帝国で多少の社交は行っているが、そんなに頻繁ではないので、来ていないドレスは増える一方。
そのうち着るだろうと、デリックもライヒラも軽く言うが、実際着るよりも増える数の方が多いのは大層無駄だと思う。
しかし、金持ちが散財して経済回さないで誰がするんだと言われれば、その通りだと頷くしかない。
そして、今回ルングレム王国に帰国する際に、いまだに着たことのない豪奢なドレスをいくつも持たされた。
それに合わせた装飾品や小物も。
時間がないのでありがたいと思う反面、なんともいえない気持ちになる。
「リンデルス伯爵には、アメルの世話はこっちできっちりするって約束してるんだし、これくらい普通だろ」
アーバント帝国とルングレム王国では国力が違うので、同じ貴族とはいえお金の価値観や使い方が違う。
特にデリックの家であるノイマン公爵家は、アメルのドレスや装飾品を使いきれないほど買い込んだところで些細な金額と言ったところ。
「お父様も、ここまでのことは望んでいなかったと思うけど……」
アメルはため息交じりに呟く。
衣食住の面倒を見てもらうことにはなっていたが、それは最低限って意味だと思っていた。
それとも、自分が知らないだけで、これくらいは普通なのだろうか。
「そこまで思い悩まなくてもいいだろ。好意に対して申し訳なさそうにされるより、礼を言われる方が俺はうれしいけど」
デリックの言うことももっともだ。
好意に対して謝罪や遠慮よりも、お礼を言われる方がうれしい。
「色々と、ありがとう。今回の事、本当に感謝してる」
「そうだ。その方が、気持ちがいい」
デリックが笑い、アメルの口元を緩めた。
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