【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ

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25.罪の告白

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『何よそれ!? わたしが?』

 犯罪者扱いされたリディアが目を吊り上げて、アメルに向かって怒りを露わにする。

『何を言っている!? リディアがそんなことするわけないだろう!』
『そうよ! わたしが王族費を勝手に使い込んだって、そんなおかしなこと言わないで!』

 王族費は、王族しか扱えない。
 しかし、リディアは現実にアイザックに支給されている王族費を勝手に持ち出していた。

『リディア、あなた王太子殿下の名前で何度も買い物したでしょう?』
『それが何? だってわたしは王太子妃筆頭よ? 殿下だって何もおっしゃらなかったわ!』

 リディアはアイザックの名で、店が良く買い物をしていた。 
 その請求はすべてアイザックに割り振られている予算から使われていた。

 おそらく、アイザックは自分に言えばなんでも買うという意味だったのだ。
 それに、普通はそうする。
 でも、それはまだアイザックも了承していたのかもしれない。
 
 しかし、リディアは実際にアイザックの王族費を勝手に持ち出すことまでしていた。

『店でアイザック様の名前で買い物する行為も本来なら、許される行為じゃないわ。それよりも、あなたはアイザック様の王族費を勝手に持ち出しまでした』
『わたしは王太子妃になるのよ? 夫の財産の管理は妻の仕事。それを先んじてやっていただけよ! 夫になる人のお金を使うことに何の問題があるのよ!?』

 腕を組んで悪びれもなく言うリディア。

「この女、本当に何も悪いと思っていないのか?」

 呆れたように、デリックが隣でつぶやいた。
 アメルにだけ分かるように。

『リディア、そもそもあなたはまだアイザック様の婚約者でもないのよ? 財産管理人が言うには、あなたに脅されたとも言っていたわよ』
『わたしが人を脅すとでも思っているの? ひどいわ……。勝手に罪を擦り付けるなんて!』
『確かに、あなたは脅していないのかもしれないわ。いつものように・・・・・・・相手に言っただけよね?』

 訝し気にリディアがアメルを見た。

 財産管理人が言っていた。
 
『自分の言うことを信じないのなら、アイザック様に確認してみて? もし本当ならば、あなたは未来の王太子妃に無礼を働いたとして罪に問われるわよ? と言ったのよね?』

 これを脅しと言わずになんという。
 だが、普通ならここでアイザックに確認をとるところ、財産管理人はリディアの言葉に従った。

 それは、リディアの全てをアイザックが許しているせいだ。
 リディアの事になると狭量になるアイザックに、確認したところで全て肯定として帰っくる。

 むしろ、リディアの言ったことを疑った自分の方が、処罰されると確信していた。
 現在、王宮内では国王派閥と貴族派閥が争っているが、王太子であるアイザックを味方につけている貴族派閥が優勢と見られていた。

 そのため、保身のために動くことは当然ともいえる。
 
 実力だけではどうにもならないのが、ルングレム王国。
 職を追われるだけならともかく、もしかしたら厳罰をもらうかもしれない。

 だったら、リディアの言葉を受け入れた方が利口――そう考えた。

 しかし、今。

 アイザックが王太子の座を追われる可能性が出てきた。
 そして、それが現実味を帯びてきた今、告白したそうだ。

 王太子の弱点となりそうなリディアの行為を告白し、それを功績にして国王派に寝返ったということだ。

 リディアの行ったことは、結局財産管理人の確認不足として処理されてもおかしくないが、ここぞとばかりに貴族が王族の費用を勝手に使用していたとして、問題になった。

 少しの隙で、簡単に権力の座がひっくり返る。

『リディア、あなたの言い分が王国でも通るといいわね? それに、アイザック様もあなたを庇うかしら?』

 アメルは昼の様子に、今のリディアの様子から相当アイザックと拗れていると感じていた。

 そうでなければ、さすがにここまで来ないだろうと。

 リディアはアメルを睨みつけ、そして次の瞬間ディリスに縋りついた。



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