25 / 39
25.罪の告白
しおりを挟む
『何よそれ!? わたしが?』
犯罪者扱いされたリディアが目を吊り上げて、アメルに向かって怒りを露わにする。
『何を言っている!? リディアがそんなことするわけないだろう!』
『そうよ! わたしが王族費を勝手に使い込んだって、そんなおかしなこと言わないで!』
王族費は、王族しか扱えない。
しかし、リディアは現実にアイザックに支給されている王族費を勝手に持ち出していた。
『リディア、あなた王太子殿下の名前で何度も買い物したでしょう?』
『それが何? だってわたしは王太子妃筆頭よ? 殿下だって何もおっしゃらなかったわ!』
リディアはアイザックの名で、店が良く買い物をしていた。
その請求はすべてアイザックに割り振られている予算から使われていた。
おそらく、アイザックは自分に言えばなんでも買うという意味だったのだ。
それに、普通はそうする。
でも、それはまだアイザックも了承していたのかもしれない。
しかし、リディアは実際にアイザックの王族費を勝手に持ち出すことまでしていた。
『店でアイザック様の名前で買い物する行為も本来なら、許される行為じゃないわ。それよりも、あなたはアイザック様の王族費を勝手に持ち出しまでした』
『わたしは王太子妃になるのよ? 夫の財産の管理は妻の仕事。それを先んじてやっていただけよ! 夫になる人のお金を使うことに何の問題があるのよ!?』
腕を組んで悪びれもなく言うリディア。
「この女、本当に何も悪いと思っていないのか?」
呆れたように、デリックが隣でつぶやいた。
アメルにだけ分かるように。
『リディア、そもそもあなたはまだアイザック様の婚約者でもないのよ? 財産管理人が言うには、あなたに脅されたとも言っていたわよ』
『わたしが人を脅すとでも思っているの? ひどいわ……。勝手に罪を擦り付けるなんて!』
『確かに、あなたは脅していないのかもしれないわ。いつものように相手に言っただけよね?』
訝し気にリディアがアメルを見た。
財産管理人が言っていた。
『自分の言うことを信じないのなら、アイザック様に確認してみて? もし本当ならば、あなたは未来の王太子妃に無礼を働いたとして罪に問われるわよ? と言ったのよね?』
これを脅しと言わずになんという。
だが、普通ならここでアイザックに確認をとるところ、財産管理人はリディアの言葉に従った。
それは、リディアの全てをアイザックが許しているせいだ。
リディアの事になると狭量になるアイザックに、確認したところで全て肯定として帰っくる。
むしろ、リディアの言ったことを疑った自分の方が、処罰されると確信していた。
現在、王宮内では国王派閥と貴族派閥が争っているが、王太子であるアイザックを味方につけている貴族派閥が優勢と見られていた。
そのため、保身のために動くことは当然ともいえる。
実力だけではどうにもならないのが、ルングレム王国。
職を追われるだけならともかく、もしかしたら厳罰をもらうかもしれない。
だったら、リディアの言葉を受け入れた方が利口――そう考えた。
しかし、今。
アイザックが王太子の座を追われる可能性が出てきた。
そして、それが現実味を帯びてきた今、告白したそうだ。
王太子の弱点となりそうなリディアの行為を告白し、それを功績にして国王派に寝返ったということだ。
リディアの行ったことは、結局財産管理人の確認不足として処理されてもおかしくないが、ここぞとばかりに貴族が王族の費用を勝手に使用していたとして、問題になった。
少しの隙で、簡単に権力の座がひっくり返る。
『リディア、あなたの言い分が王国でも通るといいわね? それに、アイザック様もあなたを庇うかしら?』
アメルは昼の様子に、今のリディアの様子から相当アイザックと拗れていると感じていた。
そうでなければ、さすがにここまで来ないだろうと。
リディアはアメルを睨みつけ、そして次の瞬間ディリスに縋りついた。
犯罪者扱いされたリディアが目を吊り上げて、アメルに向かって怒りを露わにする。
『何を言っている!? リディアがそんなことするわけないだろう!』
『そうよ! わたしが王族費を勝手に使い込んだって、そんなおかしなこと言わないで!』
王族費は、王族しか扱えない。
しかし、リディアは現実にアイザックに支給されている王族費を勝手に持ち出していた。
『リディア、あなた王太子殿下の名前で何度も買い物したでしょう?』
『それが何? だってわたしは王太子妃筆頭よ? 殿下だって何もおっしゃらなかったわ!』
リディアはアイザックの名で、店が良く買い物をしていた。
その請求はすべてアイザックに割り振られている予算から使われていた。
おそらく、アイザックは自分に言えばなんでも買うという意味だったのだ。
それに、普通はそうする。
でも、それはまだアイザックも了承していたのかもしれない。
しかし、リディアは実際にアイザックの王族費を勝手に持ち出すことまでしていた。
『店でアイザック様の名前で買い物する行為も本来なら、許される行為じゃないわ。それよりも、あなたはアイザック様の王族費を勝手に持ち出しまでした』
『わたしは王太子妃になるのよ? 夫の財産の管理は妻の仕事。それを先んじてやっていただけよ! 夫になる人のお金を使うことに何の問題があるのよ!?』
腕を組んで悪びれもなく言うリディア。
「この女、本当に何も悪いと思っていないのか?」
呆れたように、デリックが隣でつぶやいた。
アメルにだけ分かるように。
『リディア、そもそもあなたはまだアイザック様の婚約者でもないのよ? 財産管理人が言うには、あなたに脅されたとも言っていたわよ』
『わたしが人を脅すとでも思っているの? ひどいわ……。勝手に罪を擦り付けるなんて!』
『確かに、あなたは脅していないのかもしれないわ。いつものように相手に言っただけよね?』
訝し気にリディアがアメルを見た。
財産管理人が言っていた。
『自分の言うことを信じないのなら、アイザック様に確認してみて? もし本当ならば、あなたは未来の王太子妃に無礼を働いたとして罪に問われるわよ? と言ったのよね?』
これを脅しと言わずになんという。
だが、普通ならここでアイザックに確認をとるところ、財産管理人はリディアの言葉に従った。
それは、リディアの全てをアイザックが許しているせいだ。
リディアの事になると狭量になるアイザックに、確認したところで全て肯定として帰っくる。
むしろ、リディアの言ったことを疑った自分の方が、処罰されると確信していた。
現在、王宮内では国王派閥と貴族派閥が争っているが、王太子であるアイザックを味方につけている貴族派閥が優勢と見られていた。
そのため、保身のために動くことは当然ともいえる。
実力だけではどうにもならないのが、ルングレム王国。
職を追われるだけならともかく、もしかしたら厳罰をもらうかもしれない。
だったら、リディアの言葉を受け入れた方が利口――そう考えた。
しかし、今。
アイザックが王太子の座を追われる可能性が出てきた。
そして、それが現実味を帯びてきた今、告白したそうだ。
王太子の弱点となりそうなリディアの行為を告白し、それを功績にして国王派に寝返ったということだ。
リディアの行ったことは、結局財産管理人の確認不足として処理されてもおかしくないが、ここぞとばかりに貴族が王族の費用を勝手に使用していたとして、問題になった。
少しの隙で、簡単に権力の座がひっくり返る。
『リディア、あなたの言い分が王国でも通るといいわね? それに、アイザック様もあなたを庇うかしら?』
アメルは昼の様子に、今のリディアの様子から相当アイザックと拗れていると感じていた。
そうでなければ、さすがにここまで来ないだろうと。
リディアはアメルを睨みつけ、そして次の瞬間ディリスに縋りついた。
245
お気に入りに追加
5,036
あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。
かのん
恋愛
真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。
けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。
ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん
.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

愛しているからこそ、彼の望み通り婚約解消をしようと思います【完結済み】
皇 翼
恋愛
「俺は、お前の様な馬鹿な女と結婚などするつもりなどない。だからお前と婚約するのは、表面上だけだ。俺が22になり、王位を継承するその時にお前とは婚約を解消させてもらう。分かったな?」
お見合いの場。二人きりになった瞬間開口一番に言われた言葉がこれだった。
初対面の人間にこんな発言をする人間だ。好きになるわけない……そう思っていたのに、恋とはままならない。共に過ごして、彼の色んな表情を見ている内にいつの間にか私は彼を好きになってしまっていた――。
好き……いや、愛しているからこそ、彼を縛りたくない。だからこのまま潔く消えることで、婚約解消したいと思います。
******
・感想欄は完結してから開きます。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる