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15.昼食は、四人で楽しく
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広い敷地内にある、隠れた一角。
いわゆる、裏庭と呼ばれるような場所に、アメルたちはいた。
木々がうっそうとし、誰も近づかないほど奥には、立派な天然木材で作られたテーブルとイス。
そのテーブルの上には、色とりどりな食べ物が並ぶ。
普段は、食堂やカフェテリアを利用したりするアメルたちだが、カイゼンが気を利かせたのか、大きなバスケットに詰められたお弁当を持ってきていた。
正確には、お昼に合わせて持ってきてもらったようだ。
サラダはパリッとしているし、あたたかなスープまでついている。
「俺にこの弁当を食えと?」
中身を見たデリックが、ひくりと口の端を上げた。
「別に無理に食べろとは言わないさ。ただし、今から食堂かカフェテリアに一人で行けば、相当な注目な的なうえ、下手をすると留学生御一行様に遭遇する可能性あるけど」
女子の好みを知り尽くしているカイゼンによる、可愛らしいお弁当は、デリックからしたら食べにくい。
しかし、カイゼンの指摘にデリックは何も言わずに早速バケットサンドを手に取って食べだした。
眉尻が上がり、むすっとしているので、怒りは持続中のようだ。
「二人もどうぞ、食べやすいように小さいものも作ってもらったから」
「ありがとう。でも、今日は助かったわ。まさか、アメルの従姉があそこまで話の通じない相手だと思わなかったのよ」
一口サイズの可愛らしい総菜をつまみながら、アイリーンがため息をついた。
早速な話題に、デリックはますます険しい顔をする。
「食事がまずくなるような話するな」
「じゃあ、ぜひとも話題を振ってほしいところだけど? まさか黙々と食べろと?」
「今一番、熱い話題だけど、アメルからしても気分のいいものではないよね」
「わたしは気にしないけど、初日早々にみんなを巻き込んで申し訳ない気持ちよ」
まさか、あんな騒ぎになるとは思っていなかった。
「そういえば、ルングレム王国の他の留学生はどのクラスなの?」
「僕たちのクラスだよ。学年的には一つ上だけど、やはり学力面で足りないところがあってね。それに、ほら言葉の壁もあるし」
「あの従姉ほど酷いとは思いたくないわ」
「まあまあ、かな? そこはさすがと言うべきかもね。流暢って程ではないけど、ほぼほぼ問題はないよ」
アメルも、リディア以外のメンバーの心配はしていなかった。
正直、学年を下げられたという方が驚きだった。
ただ、全員が同じクラスでなくてよかったと思う。
「アイリーン、色々とごめんなさい。なんか巻き込んだみたいだし」
「わたしが勝手に巻き込まれに行ったの。アメルは大事な友達だから、その友達が馬鹿にされて黙ってはいられないわ」
ルングレム王国では友達がいなかった。
それは、リディアのせいでもあるが、アメルも積極的に作っていなかったのもある。
でもアーバント帝国に来て同性の友達ができて、こうして自分を庇ってくれるとうれしい。
「あの女、何も変わってないな」
「デリックはアメルの従姉の事知ってるんだったよね?」
「知ってると言うか、実際にルングレム王国で見たことがある」
顔を合わせてあったことはないが、陰に隠れてリディアの事をデリックは見たことがある。
その時のアメルへの言葉など、聞いていて腹が立った。
「自分がまるで、この世で最も尊い存在だとでも思っているのか? 確かに生まれからすれば、ルングレム王国内で彼女は上位に存在するだろうが、それだけで人の価値は決まらないだろうに」
「でもあの可愛らしいお顔で、男子を虜にする才能は一級品よ。もうビックリしたわ」
アメルも本能のように、無意識に魅力を振りまき男子を自らの味方にする能力だけは、誰にも負けないと思っている。
逆に、怖いくらいだ。
「本当に厄介な人。でも、現実はそろそろ見た方がいいんじゃない? ここはルングレム王国ではなくアーバント帝国なんだから。男子はともかく、女子からは相当ヘイトを買っているわよ」
ルングレム王国でも、女子からの指示はあまりない。
しかし、高位貴族という事もあって、彼女に苦言を呈するものは居なかった。
「あの人にわたしの家の店を使われたら、どうなるか考えたくないわね。どうせ、ツケとかで買えると思っているんでしょうね。それとも、商品を献上するのが当然という考えかしら?」
「僕のところは、とりあえず彼らの態度が確定するまで、使わせないようにしたよ」
「一応、他国の王族よ? そんな事していいの?」
「ルングレム王国の王族が使える金銭はそこまで多くないよ。少なくとも、今日見た彼女が満足するようなものは、一つ二つくらいしか買えないだろうね。でも、それだけで満足するかな?」
満足しないだろうと、アメルははっきりと言えた。
「バカ皇子もあの様子では、あの子のために店の商品を全部献上しろとか言い出しそうだし。店を使わせてそうなるくらいなら、初めから使わせない方がいいね。まあ、僕のところはデリックの家と仲がいいから、バカ皇子も使う可能性が低いけど」
カイゼンがお茶を淹れ、配りながらそう言った。
「ところで、デリック。なんかいつもより好戦的だったようだけど、一応向こうは皇子なんだから、もう少し抑えた方がよかったんじゃないの?」
「先に手を出したのは向こうだろ」
「手を出すってほどじゃあなかったと思うけど、庇ってくれてありがとうデリック」
さすがに皇子とやり合う事はできない。
正直あの時はデリックが割り込んでくれて助かった。
ただし、そのせいでリディアの興味を最大限にかきたてたが。
「そういえば、王太子殿下はなぜリディアを迎えに来なかったの? 同じクラスだって言っていなかった?」
「そりゃあ、顔の整った留学生で、しかも王侯貴族なら女子が黙っていないよ。クラスの女子がこぞって面倒みているよ」
カイゼンがにこりと笑って説明してくれた。
そして、今頃ちょっとした騒動になってるかもね、とつぶやいたが、そのつぶやきは風と共に溶けて行った。
いわゆる、裏庭と呼ばれるような場所に、アメルたちはいた。
木々がうっそうとし、誰も近づかないほど奥には、立派な天然木材で作られたテーブルとイス。
そのテーブルの上には、色とりどりな食べ物が並ぶ。
普段は、食堂やカフェテリアを利用したりするアメルたちだが、カイゼンが気を利かせたのか、大きなバスケットに詰められたお弁当を持ってきていた。
正確には、お昼に合わせて持ってきてもらったようだ。
サラダはパリッとしているし、あたたかなスープまでついている。
「俺にこの弁当を食えと?」
中身を見たデリックが、ひくりと口の端を上げた。
「別に無理に食べろとは言わないさ。ただし、今から食堂かカフェテリアに一人で行けば、相当な注目な的なうえ、下手をすると留学生御一行様に遭遇する可能性あるけど」
女子の好みを知り尽くしているカイゼンによる、可愛らしいお弁当は、デリックからしたら食べにくい。
しかし、カイゼンの指摘にデリックは何も言わずに早速バケットサンドを手に取って食べだした。
眉尻が上がり、むすっとしているので、怒りは持続中のようだ。
「二人もどうぞ、食べやすいように小さいものも作ってもらったから」
「ありがとう。でも、今日は助かったわ。まさか、アメルの従姉があそこまで話の通じない相手だと思わなかったのよ」
一口サイズの可愛らしい総菜をつまみながら、アイリーンがため息をついた。
早速な話題に、デリックはますます険しい顔をする。
「食事がまずくなるような話するな」
「じゃあ、ぜひとも話題を振ってほしいところだけど? まさか黙々と食べろと?」
「今一番、熱い話題だけど、アメルからしても気分のいいものではないよね」
「わたしは気にしないけど、初日早々にみんなを巻き込んで申し訳ない気持ちよ」
まさか、あんな騒ぎになるとは思っていなかった。
「そういえば、ルングレム王国の他の留学生はどのクラスなの?」
「僕たちのクラスだよ。学年的には一つ上だけど、やはり学力面で足りないところがあってね。それに、ほら言葉の壁もあるし」
「あの従姉ほど酷いとは思いたくないわ」
「まあまあ、かな? そこはさすがと言うべきかもね。流暢って程ではないけど、ほぼほぼ問題はないよ」
アメルも、リディア以外のメンバーの心配はしていなかった。
正直、学年を下げられたという方が驚きだった。
ただ、全員が同じクラスでなくてよかったと思う。
「アイリーン、色々とごめんなさい。なんか巻き込んだみたいだし」
「わたしが勝手に巻き込まれに行ったの。アメルは大事な友達だから、その友達が馬鹿にされて黙ってはいられないわ」
ルングレム王国では友達がいなかった。
それは、リディアのせいでもあるが、アメルも積極的に作っていなかったのもある。
でもアーバント帝国に来て同性の友達ができて、こうして自分を庇ってくれるとうれしい。
「あの女、何も変わってないな」
「デリックはアメルの従姉の事知ってるんだったよね?」
「知ってると言うか、実際にルングレム王国で見たことがある」
顔を合わせてあったことはないが、陰に隠れてリディアの事をデリックは見たことがある。
その時のアメルへの言葉など、聞いていて腹が立った。
「自分がまるで、この世で最も尊い存在だとでも思っているのか? 確かに生まれからすれば、ルングレム王国内で彼女は上位に存在するだろうが、それだけで人の価値は決まらないだろうに」
「でもあの可愛らしいお顔で、男子を虜にする才能は一級品よ。もうビックリしたわ」
アメルも本能のように、無意識に魅力を振りまき男子を自らの味方にする能力だけは、誰にも負けないと思っている。
逆に、怖いくらいだ。
「本当に厄介な人。でも、現実はそろそろ見た方がいいんじゃない? ここはルングレム王国ではなくアーバント帝国なんだから。男子はともかく、女子からは相当ヘイトを買っているわよ」
ルングレム王国でも、女子からの指示はあまりない。
しかし、高位貴族という事もあって、彼女に苦言を呈するものは居なかった。
「あの人にわたしの家の店を使われたら、どうなるか考えたくないわね。どうせ、ツケとかで買えると思っているんでしょうね。それとも、商品を献上するのが当然という考えかしら?」
「僕のところは、とりあえず彼らの態度が確定するまで、使わせないようにしたよ」
「一応、他国の王族よ? そんな事していいの?」
「ルングレム王国の王族が使える金銭はそこまで多くないよ。少なくとも、今日見た彼女が満足するようなものは、一つ二つくらいしか買えないだろうね。でも、それだけで満足するかな?」
満足しないだろうと、アメルははっきりと言えた。
「バカ皇子もあの様子では、あの子のために店の商品を全部献上しろとか言い出しそうだし。店を使わせてそうなるくらいなら、初めから使わせない方がいいね。まあ、僕のところはデリックの家と仲がいいから、バカ皇子も使う可能性が低いけど」
カイゼンがお茶を淹れ、配りながらそう言った。
「ところで、デリック。なんかいつもより好戦的だったようだけど、一応向こうは皇子なんだから、もう少し抑えた方がよかったんじゃないの?」
「先に手を出したのは向こうだろ」
「手を出すってほどじゃあなかったと思うけど、庇ってくれてありがとうデリック」
さすがに皇子とやり合う事はできない。
正直あの時はデリックが割り込んでくれて助かった。
ただし、そのせいでリディアの興味を最大限にかきたてたが。
「そういえば、王太子殿下はなぜリディアを迎えに来なかったの? 同じクラスだって言っていなかった?」
「そりゃあ、顔の整った留学生で、しかも王侯貴族なら女子が黙っていないよ。クラスの女子がこぞって面倒みているよ」
カイゼンがにこりと笑って説明してくれた。
そして、今頃ちょっとした騒動になってるかもね、とつぶやいたが、そのつぶやきは風と共に溶けて行った。
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