【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ

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14.誰が自分にふさわしい相手か

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《前書き》 

 13話ですが、四人(アメル、デリック、アイリーン、カイゼン)が教室を離れる場面を書き足しました。200文字程度なので、読み返していただければと思います。
 14話は四人が教室を離れた後の話になります。


※ ※ ※ ※




 その場に残されたリディアは、呆然としているディリスの横顔に不機嫌になった。
 ルングレム王国で王族というものは敬われるものであり、ただの貴族にあのような無礼をされることはない。

 それを許すということは、侮られているということだ。

 実際、ディリスはアーバント帝国では侮られるような存在であるのだが、リディアはその事実を知らない。
 知らないがゆえに、ディリスがあまりにもふがいなく感じてしまい、逆にアメルを守るように立った、デリックの方が魅力的に感じてしまった。

 こちらをまるで敵を見るかのような目で見てくる相手ではあったが、魅力的なのは間違いない。
 しかも、どうやらこの学校どころか、アーバント帝国でもかなりの家柄の様だと、そこまで考えて、リディアはふふっと小さく笑った。

 どうしてアメルのような気の利かない、美人でもかわいくもない子の側にいるのかは分からないが、アメルに彼はもったいない。

 それに、彼も自分の事をきちんと知ってくれれば、アメルなんかよりも自分の事を選んでくれるはずだと、にんまり笑う。

 異国の地は、認めたくはないが確かにルングレム王国よりも素晴らしく発展している。
 見るもの、触れるもの、全てがルングレム王国よりも質が良く、しかも便利だ。

 アーバント帝国に数日いるだけで、リディアの生まれ育ったルングレム王国がどれほど田舎か思い知らされた。

 そのため、リディアは自分が最も輝ける場所は、アーバント帝国だと考えるようになっていた。
 求婚している男性の中で、リディア自身が手をとるのは、ディリスかもしれないと思い始めている。
 しかし、リディアは気づいてしまった。

 皇子とはいえ、彼は実はあまり影響力がないのではないかと。

 思い出されるのは、先ほどのやりとり。
 騎士のように女性を守っている場面で、見劣りしたディリス。
 それに比べて、アメルを庇ってい立っていた彼は、完璧に見えた。

 そこまで思い返し、やはりアメルが彼の隣に並ぶのは分不相応だと感じた。
 普通なら、自ら身を引きリディアに彼を紹介するのが筋なのに、本当にアメルは気が利かなのだからと、困ったように眉尻を下げた。

 その憂いを帯びたような表情に、ディリスは焦る。

『リディア! アメル・リンデルスに何か嫌な事でもされたのか? あの女は本当にお前に嫉妬ばかりで、お前はいつも困っていたな? もし何かあったのなら、私が直々に話を付けてやる』
『ディリス様、わたしは大丈夫です。ですが、アメルの性格を知らずに友人として付き合っている彼らが不憫でならないのです』
『ああ、その心配はない。あいつらは全員性格が悪いからな。お前が心配するほど価値のある人間じゃない』

 リディアが彼らを気にしたことで、ディリスがふんと鼻を鳴らす。

『それよりも、アイザックたちはどうした? クラスが違うのに、迎えにも来ないとは紳士としてあるまじきことだ』
『きっと迷っているだけですわ』

 正直、自分に求婚しているのにアイザックたちが来ないのも少し気に食わないが、それよりも惜しまれるのは、アメルを守るようにして立っていた彼の素性をきちんと聞けなかったことだ。

 本当に、アメルは自分を苛立たせる天才だ。

 実家はリディアよりも格下で、アメルはリディアに従うのが当然なのに。

 これではルングレム王国に戻った時に、きちんとリンデルス伯爵家に抗議しなければ。

『ディリス様、わたしクラスの方たちと交流を深めたいと思います。ですので、彼らと一緒に昼食をとろうと思いますので、心配しないでください。とっても親切な方々ですもの』

 にっこり笑ってリディアは言う。
 ディリスは、リディアの側にいる男子生徒をじろりと見て、リディアを任せても問題ないか探る。

「おい、リディアをしっかりエスコートできるんだろうな?」

 デリックは相手が皇子だろうと関係なく、堂々とした態度で接していたが、本来はそうではない。

 さすがに、デリックほど気安く帝室の血を引く者に声をかけることは憚られた。

 そのため、彼らはしどろもどろになりながら、もちろんです、と必死で頷いていた。
 その様子を見ると、やはりあの彼は、少し特別なのだとリディアは再認識した。
 
 このお友達・・・になった人たちは、きっと親切に先ほどの人が誰なのか教えてくれるはずだ。
 
 リディアだって、少しくらいは大陸共通語を学んでいるのだ。
 片言でも、伝われば問題ない。

 それに、本来は彼らこそがルングレム王国語を学び、リディアのために通訳をかって出る事をしなければいけないのだ。

 なにせ自分は、ルングレム王国の王族にも所縁のある血筋。
 この場にいる彼らよりも尊い血を持っているのだから。



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