12 / 39
12.昼食の約束
しおりを挟む
デリックとカイゼンは、一体どういう状況かと教室内を見まわし、不機嫌そうなアイリーンとその正面で対峙している見慣れない金髪の少女、それに頭が痛いと言わんばかりの困り顔のアメルを見つけ、大体の状況を把握した。
「二人とも、迎えにきたよ。一緒にお昼食べる約束忘れてないよね?」
カイゼンがなんとも言えない空気をぶった切るように、教室内に声を響かせた。
アメルとアイリーンは、すかさずその言葉に乗る。
「ごめん、今行く!」
アイリーンがアメルの腕を掴み、強引に二人を囲うように立っている男子たちを抜ける。
デリックとカイゼンの効果か、男子たちは道を譲るように開けてくれた。
しかし、抜け切る前にリディアがアメルの腕を掴む。
『アメル、酷いわ! 言葉が通じないところに一人にするなんて……。わたしも一緒に行くわ。ついでに学校内を案内してちょうだい』
その目は、うるんでいて庇護欲をそそる儚げな様子で、まるで見捨てられた小動物のようだった。
だが、言っていることは強制にも近い言葉。
当然のようにアメルに命じる様子に、アイリーンがリディアを睨む。
すると、またもや非難するように男子の視線が突き刺さった。
助けを求めているのに、突き放すのかという男子の視線に、うんざりする。
『頼むなら、そこの男子に頼みなさいよ。わたしたちは約束があるんだから』
アイリーンが眉を吊り上げて断った。
『あなたには頼んでいないわよ。わたしはアメルに言ってるの。それに、アメルの知り合いならわたしも知る必要があるでしょう? 愚図な従妹がお世話になっているんだから、挨拶くらいはしないと』
アメルとアイリーンは、リディアの目がデリックとカイゼンに向かっていたのを見逃さなかった。
このまま連れて行けば、二人に迷惑がかかるだろう。
カイゼンはともかく、デリックは絶対に不機嫌になる。これは、間違いない。
手を振り払ってリディアを拒絶することはできるが、思いのほか手首を掴むリディアの手は強かった。
それに、今ここで無視をしたところで、クラスが同じならば何度でもこんなことが起こりそうだ。
アメルはため息をつき、二人を紹介することにした。
従姉に友達を紹介しないのも、狭量すぎる気がしたのだ
ただ、本当のところは少し心配もしている。
リディアがどういう存在かをデリックとカイゼンには説明していたが、もしリディアに魅了されたらどうしようかと。
アメルは、リディアの事が好きではないが、見た目が男子受けすることは嫌と言う程しっていた。
二人は大丈夫だと思いながらも、人の気持ちはどうにもならないのもまた事実。
『分かったから、腕を放してもらってもいい?』
『じゃあ、これでいいかしら?』
腕に巻きつくようにリディアがくっついてくる。
まるで仲が良い従姉妹アピールだ。
その様子に、再びアイリーンがリディアへ向かって口を開いた――その時。
『その手を放せ!』
割り込むように、声が教室内に響く。
そして、鋭く怒り込めた声音の持ち主は、ずかずかと教室に入り込んで、アメルとリディアの二人を無理矢理引き離す。
その際、首の後ろで結んでいた灰青色の髪がアメルの顔に思い切り当たる。
「リディアが愛らしいからとイジメているような声が聞こえてきた、この学校も落ちたものだ。留学生をイジメる風習ができようとは」
生徒は全員指定の制服を着ることになっている。
しかし、アメルを罵倒する相手は貴族的な質の良いフロックコートを着込んで、派手な装飾品もつけていた。
一瞬誰だと思ったが、アメルはすぐにその人物が誰なのか思い当たった。
「お前、名はなんという。私が直々にお前の家を罰してやる」
気障ったらしく、リディアを庇う相手に、どう返すべきかアメルは悩む。
『アイザックたちは、一体何をしているのだ。同じ学校にいながらリディアの側をはなれるとは。心配で様子を見に来て正解だった。リディア、私が来たからもう心配はいらないからな』
部外者がこうも堂々と学校内に入り込んでいいのかアイリーンに視線で問いかけると、即座にアイリーンが首を振った。
「おい、早く名乗れ。私はアーバント帝国の第一皇子だぞ!」
「それ以上帝室の名を貶めるのはいかがなものかと思いますよ、ディリス殿下」
大股でこちらにやってきたのは、教室の入り口に立っていたデリックだった。
その後ろからカイゼンもやってきた。
「二人とも、迎えにきたよ。一緒にお昼食べる約束忘れてないよね?」
カイゼンがなんとも言えない空気をぶった切るように、教室内に声を響かせた。
アメルとアイリーンは、すかさずその言葉に乗る。
「ごめん、今行く!」
アイリーンがアメルの腕を掴み、強引に二人を囲うように立っている男子たちを抜ける。
デリックとカイゼンの効果か、男子たちは道を譲るように開けてくれた。
しかし、抜け切る前にリディアがアメルの腕を掴む。
『アメル、酷いわ! 言葉が通じないところに一人にするなんて……。わたしも一緒に行くわ。ついでに学校内を案内してちょうだい』
その目は、うるんでいて庇護欲をそそる儚げな様子で、まるで見捨てられた小動物のようだった。
だが、言っていることは強制にも近い言葉。
当然のようにアメルに命じる様子に、アイリーンがリディアを睨む。
すると、またもや非難するように男子の視線が突き刺さった。
助けを求めているのに、突き放すのかという男子の視線に、うんざりする。
『頼むなら、そこの男子に頼みなさいよ。わたしたちは約束があるんだから』
アイリーンが眉を吊り上げて断った。
『あなたには頼んでいないわよ。わたしはアメルに言ってるの。それに、アメルの知り合いならわたしも知る必要があるでしょう? 愚図な従妹がお世話になっているんだから、挨拶くらいはしないと』
アメルとアイリーンは、リディアの目がデリックとカイゼンに向かっていたのを見逃さなかった。
このまま連れて行けば、二人に迷惑がかかるだろう。
カイゼンはともかく、デリックは絶対に不機嫌になる。これは、間違いない。
手を振り払ってリディアを拒絶することはできるが、思いのほか手首を掴むリディアの手は強かった。
それに、今ここで無視をしたところで、クラスが同じならば何度でもこんなことが起こりそうだ。
アメルはため息をつき、二人を紹介することにした。
従姉に友達を紹介しないのも、狭量すぎる気がしたのだ
ただ、本当のところは少し心配もしている。
リディアがどういう存在かをデリックとカイゼンには説明していたが、もしリディアに魅了されたらどうしようかと。
アメルは、リディアの事が好きではないが、見た目が男子受けすることは嫌と言う程しっていた。
二人は大丈夫だと思いながらも、人の気持ちはどうにもならないのもまた事実。
『分かったから、腕を放してもらってもいい?』
『じゃあ、これでいいかしら?』
腕に巻きつくようにリディアがくっついてくる。
まるで仲が良い従姉妹アピールだ。
その様子に、再びアイリーンがリディアへ向かって口を開いた――その時。
『その手を放せ!』
割り込むように、声が教室内に響く。
そして、鋭く怒り込めた声音の持ち主は、ずかずかと教室に入り込んで、アメルとリディアの二人を無理矢理引き離す。
その際、首の後ろで結んでいた灰青色の髪がアメルの顔に思い切り当たる。
「リディアが愛らしいからとイジメているような声が聞こえてきた、この学校も落ちたものだ。留学生をイジメる風習ができようとは」
生徒は全員指定の制服を着ることになっている。
しかし、アメルを罵倒する相手は貴族的な質の良いフロックコートを着込んで、派手な装飾品もつけていた。
一瞬誰だと思ったが、アメルはすぐにその人物が誰なのか思い当たった。
「お前、名はなんという。私が直々にお前の家を罰してやる」
気障ったらしく、リディアを庇う相手に、どう返すべきかアメルは悩む。
『アイザックたちは、一体何をしているのだ。同じ学校にいながらリディアの側をはなれるとは。心配で様子を見に来て正解だった。リディア、私が来たからもう心配はいらないからな』
部外者がこうも堂々と学校内に入り込んでいいのかアイリーンに視線で問いかけると、即座にアイリーンが首を振った。
「おい、早く名乗れ。私はアーバント帝国の第一皇子だぞ!」
「それ以上帝室の名を貶めるのはいかがなものかと思いますよ、ディリス殿下」
大股でこちらにやってきたのは、教室の入り口に立っていたデリックだった。
その後ろからカイゼンもやってきた。
239
お気に入りに追加
5,036
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。
かのん
恋愛
真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。
けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。
ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん
.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる