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8.女同士の内緒話
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アメルは、国王陛下やその派閥が貴族派に対抗するために動いていることを知っている。
国王陛下は、まだまだ元気だが何が起こるのか分からない。
そのために、少しでも貴族派の力を削いでおきたいのだ。
本来なら、こんな急に王族の留学が決まるはずがない。
たとえ、リディアの言葉で動き出したことでも、今王太子が国を離れることを貴族派が良しとするはずがない。
しかし、アイザックはリディアがルングレム王国を離れれば二度と帰ってこないと思っているようで、頑なに自分も向かうと誇示していた。
そして、そこに父親である国王陛下も王太子として見分を広めるために許可した。
できるだけ早く、国を離れてほしかった国王陛下の後押しもあり、急に決まったのだと、手紙にはつづられていた。
国王陛下は、まだ親としての情も残している。
もし、アーバント帝国で自らを律して、考えを改めて戻ってくるのなら、それはそれでよしと思っていた。
しかし、そうでないのなら、切り捨てるしかないと決断も覚悟している。
はたして、どういう結果になるのかは、神のみぞ知ることだ。
しかし、アメルとしてはアイザックよりもリディアの言動の方が気になるところだ。
アイザックは良くも悪くも王族で、当然外交も多少はこなしている。
そのため、他国でそこまで見苦しいことはしないだろうと思っていたが、リディアに関しては全く想像がつかない。
ルングレム王国ではある意味やりたい方だで許されていた。
さらには権力主義でもあったので、実力主義であるアーバント帝国とはかなり相性が悪そうだ。
「とりあえず、色々聞いておくよ。どんな経緯で、この学校に来ることになったのか」
カイゼンがしっとりと微笑んで、アメルに言った。
楽しいことになりそうだと考えていることは、アメルを含めた三人にはまるわかりで、アイリーンはその顔をみて引きつっていた。
ろくなことになりそうにないな、と思っていそうだ。
「そういえば、そろそろ教室に行きましょう。一限目は時間にうるさい歴史の授業よ」
話を切り上げるべく、アイリーンがアメルに声をかけて立ち上がった。
男子二人は、まだ座ったままだ。
「僕たちのクラスは一限目自習だから、もう少しゆっくりしていくよ」
デリックとカイゼンは同じクラスで、アメルとアイリーンとはクラスが違う。
そのため、アメルはアイリーンと連れ立ってカフェテリアを出て行く。
それを二人が見送った。
カフェテリアを出てすぐに、アイリーンがアメルに内緒話をするように聞く。
「ねぇ、わたしもカイゼンも話でしか知らないけど、その従姉さんはそんなに男性に人気なの? ちょっと信じられないわ。だって、聞いていると、見た目と公爵家のご令嬢ってだけでしょう?」
アイリーンが生粋のアーバント帝国国民だ。
アーバント帝国民は、怠惰な人を好まない。
自ら学び、財産を作る事ができる人こそが、魅力的なのだ。
アイリーンの実家も大層な資産家だが、彼女自身も実家の稼業を手伝っている。
一部事業においては、責任者でもあった。
「でも、そんなに見た目がいいのなら、ちょっと見たくなるわね。どんな風に男を手玉にとっているのか」
「手玉って……」
「その従姉さんって、もしかして見た目のいい男ばっかり侍らしてる?」
「そうね、基本的に側にいる男性はみんな容姿が整っているのは間違いないわ」
「それじゃあ、デリックやカイゼンは目を付けられちゃうかしら?」
アメルは二人の容姿を思い浮かべた。
デリックとカイゼンは系統は違うが、とても整った容姿を持っている。
容姿だけみれば、リディアが気に入りそうだ。
「確かにリディアは気に入りそうだけど……」
「じゃあもし、二人が従姉さんに魅了されたらどうする?」
「あの二人がリディアの言いなりになる姿なんて想像できないけど?」
「もしも、の話」
アメルは手を顎にあて、考える。
もし、そんな未来が来たら自分はどう思うか。
「すごく、寂しい気持ちになるかも」
裏切られた気分になると言ってもいいかもしれない。
そんな気持ちをアイリーンに伝えると、彼女はにっこりと笑った。
「まあ、仮定の話だし。きっと大丈夫だと思うけどね」
満足そうにしているアイリーンに、結局何をしたかったのかアメルはいまいちわからなかった。
「そうそう、そういえば――」
話を変えるように明るく話題を振ってくるアイリーンに、少しだけ違和感を持ちながら教室まで女二人で話に花を咲かせた。
国王陛下は、まだまだ元気だが何が起こるのか分からない。
そのために、少しでも貴族派の力を削いでおきたいのだ。
本来なら、こんな急に王族の留学が決まるはずがない。
たとえ、リディアの言葉で動き出したことでも、今王太子が国を離れることを貴族派が良しとするはずがない。
しかし、アイザックはリディアがルングレム王国を離れれば二度と帰ってこないと思っているようで、頑なに自分も向かうと誇示していた。
そして、そこに父親である国王陛下も王太子として見分を広めるために許可した。
できるだけ早く、国を離れてほしかった国王陛下の後押しもあり、急に決まったのだと、手紙にはつづられていた。
国王陛下は、まだ親としての情も残している。
もし、アーバント帝国で自らを律して、考えを改めて戻ってくるのなら、それはそれでよしと思っていた。
しかし、そうでないのなら、切り捨てるしかないと決断も覚悟している。
はたして、どういう結果になるのかは、神のみぞ知ることだ。
しかし、アメルとしてはアイザックよりもリディアの言動の方が気になるところだ。
アイザックは良くも悪くも王族で、当然外交も多少はこなしている。
そのため、他国でそこまで見苦しいことはしないだろうと思っていたが、リディアに関しては全く想像がつかない。
ルングレム王国ではある意味やりたい方だで許されていた。
さらには権力主義でもあったので、実力主義であるアーバント帝国とはかなり相性が悪そうだ。
「とりあえず、色々聞いておくよ。どんな経緯で、この学校に来ることになったのか」
カイゼンがしっとりと微笑んで、アメルに言った。
楽しいことになりそうだと考えていることは、アメルを含めた三人にはまるわかりで、アイリーンはその顔をみて引きつっていた。
ろくなことになりそうにないな、と思っていそうだ。
「そういえば、そろそろ教室に行きましょう。一限目は時間にうるさい歴史の授業よ」
話を切り上げるべく、アイリーンがアメルに声をかけて立ち上がった。
男子二人は、まだ座ったままだ。
「僕たちのクラスは一限目自習だから、もう少しゆっくりしていくよ」
デリックとカイゼンは同じクラスで、アメルとアイリーンとはクラスが違う。
そのため、アメルはアイリーンと連れ立ってカフェテリアを出て行く。
それを二人が見送った。
カフェテリアを出てすぐに、アイリーンがアメルに内緒話をするように聞く。
「ねぇ、わたしもカイゼンも話でしか知らないけど、その従姉さんはそんなに男性に人気なの? ちょっと信じられないわ。だって、聞いていると、見た目と公爵家のご令嬢ってだけでしょう?」
アイリーンが生粋のアーバント帝国国民だ。
アーバント帝国民は、怠惰な人を好まない。
自ら学び、財産を作る事ができる人こそが、魅力的なのだ。
アイリーンの実家も大層な資産家だが、彼女自身も実家の稼業を手伝っている。
一部事業においては、責任者でもあった。
「でも、そんなに見た目がいいのなら、ちょっと見たくなるわね。どんな風に男を手玉にとっているのか」
「手玉って……」
「その従姉さんって、もしかして見た目のいい男ばっかり侍らしてる?」
「そうね、基本的に側にいる男性はみんな容姿が整っているのは間違いないわ」
「それじゃあ、デリックやカイゼンは目を付けられちゃうかしら?」
アメルは二人の容姿を思い浮かべた。
デリックとカイゼンは系統は違うが、とても整った容姿を持っている。
容姿だけみれば、リディアが気に入りそうだ。
「確かにリディアは気に入りそうだけど……」
「じゃあもし、二人が従姉さんに魅了されたらどうする?」
「あの二人がリディアの言いなりになる姿なんて想像できないけど?」
「もしも、の話」
アメルは手を顎にあて、考える。
もし、そんな未来が来たら自分はどう思うか。
「すごく、寂しい気持ちになるかも」
裏切られた気分になると言ってもいいかもしれない。
そんな気持ちをアイリーンに伝えると、彼女はにっこりと笑った。
「まあ、仮定の話だし。きっと大丈夫だと思うけどね」
満足そうにしているアイリーンに、結局何をしたかったのかアメルはいまいちわからなかった。
「そうそう、そういえば――」
話を変えるように明るく話題を振ってくるアイリーンに、少しだけ違和感を持ちながら教室まで女二人で話に花を咲かせた。
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