ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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翌々日にミリアンナ様は、ジェームス様とお互いのご両親、立会人に書記官という話し合いの場を王宮で設けた。
婚約を解消するにしても、続行するにしても結局紙面のやり取りでは先に進まず、話し合いが必要だった。
それに言った言わないがないように、書記官も事前に手配しておくらしい。
更に王宮で行うともなれば、離婚調停の家裁の裁判所的役目に当たるみたいだ。
私とロイさんは立会人という形でことの成り行きを見守っていた。
第三者がいることで、言った言わないの誤差を防ぐらしい。
居ても役に立たない私だけど、ミリアンナ様の御指名なので、本当にいるだけで。
私の付き添いのロイさんの方が余程役に立つだろう。



ジェームス様は、ミッドレイ家の家督争いでミリアンナ様を守る為に、婚約解消を申し出たそうだ。ご両親に相談なしに決めたらしい。
婚約の契約書には、ミリアンナ様はミッドレイ家次期当主との婚姻を望むものであったから、ジェームス様が次期当主になれなかった場合、ミリアンナ様の婚約者が代わってしまうことになる。
ジェームス様は最悪のことを考えて、解消をしてしまったようだ。

「ロイさん、平民からみたら、貴族当主って魅力的なの?」

「野心があれば、な。」

「へぇ。でも、仕事量ハンパないし、領民から不平不満を聞いて、城から圧力かけられる言わば中間管理職でしょ?絶対やりたくないけどなぁ。」

「アオイは組織の仕組みがわかっているからそう言えるけど、平民からみた貴族は安全な家に豪華な食事は魅力的だと思うよ。」

「義務と権利の権利しかみてないのか。」

「実際に権利しか主張しない貴族もいるからね。」

「そういうのはどの世界にもいるんだね。私の中では王様なんて1番やりたくない職業だよ。でもそういう権利しか主張しない貴族が王権簒奪を企むんだよね。」

「…兄上に伝えておくよ。」

「お疲れ様との言葉と一緒にね。」

小声でロイさんと話していたが、いつの間にか全員私達の会話を聞いていた。
2人の両親方々は苦笑いをして、ジェームス様と書記官は唖然、ミリアンナ様はクスクス笑っていた。

「し、失礼致しました。どうぞ続けてください。」

「アオイ様、今回の次期当主争いで解決策があるんではないですか?」

「いきなり言われても。……実際当主の仕事やらせてみたらどうですか?」

「「「はぁ?!」」」

「職業体験ですよ。何事もやってみないとわからないじゃないですか?勉強ができたって、仕事ができるとは限らないし、途中放棄なんてできないから、体験させてみたらどうですか?元が平民なら、領民の生命を預かる意味をわかってなさそうだし。」

「アオイ、それは「なるほど、やってみましょう!」、えっ!」

「「「えっ!」」」

ジェームス様の父であるミッドレイ伯爵が私の提案に乗ってくれた。

「当主なんて見た目ほど良いものでないことを教え込めばいいんですね。」

「そうです!当主はふんぞり返って贅沢しているなんて考えを根底から覆してあげましょう!」

「全く本当にそうですな。平民からみたら贅沢しているようにみえるけど、きちんとした身なりでないと他の貴族にはバカにされるし。貴族は本当に面倒くさい。」

「ですよね。腹の探り合いの話し方なんてした日には、胃痛で食欲も激減ですよね。」

「探り合いに勝っているアオイが食欲がなくなる日なんてあったか?」

「ロイさん、うるさい。んっ、ということで当主を体験してもらうのが一番ですよね。」

「早速手配しましょう。」

「では、婚約解消の話し合いも一旦保留ですね。」

「そうですね。今は彼に適正があるかわかりませんから。」

「一月後あたりにはわかりそうですね。」

「ええ。」

「なら、彼に適正がありましたら、またお話し合いということで。」

「はい。」

私とミッドレイ伯爵は握手を交わした。
ミリアンナ様の婚約解消かどうかの話し合いは一旦保留となった。
私とミッドレイ伯爵で話を進めてしまったが、ミリアンナ様とご両親はホッとした顔をしていた。
ジェームス様とジェームス様のお母様もどこか安堵した顔をしていた。
ロイさんだけが憮然としていたけど。














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