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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】
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引き続き、ロイ視点です。
「40過ぎ、ですか?」
「普段からは考えられないだろうけど、結婚して、子供もいた。神樹に呼ばれて、こっちに来るまで、普通に生活をしていた。婚約式の時に神獣に呼ばれ、一刻ほどだが、息子のカイリが来た。話では、向こうでアオイは死んだことになり、旦那もその後亡くなったそうだ。」
「死んだことに……。」
「そうすることで、お金がもらえるからって。そのお金で子供達の学費にしてもらいたいって。アオイはそんなことを言っていた。カイリはその通りにしたって言っていた。
子供を守るために、『自己犠牲し過ぎ』とも言っていた。旦那はアオイには優しくはなかったらしい。だから、男性は怖いと言っていた。
アオイは、何もかも見た目通りでないんだ。普段は何事も楽しそうに過ごしているくせに、夜が怖い、男性が怖い、1人が怖いって言えなくて、泣きながら眠るんだよ。誰かに頼ることを知らないんだ。頼ってはいけないと思い込んでいる。
でも最近は甘えてくるようになってきた。ダンにも怯えなくなったしな。」
「そうですね。ロイ様がいなくても、怯えられることがなくなってきましたね。」
「まだ令息は、自分の子供と同じくらいの感覚だから、普通に接することができるが、男性と見られた時から、畏怖の対象になるんだ。」
「だから、前回眠くても寝なかったのは、」
「いや、令息じゃなくて、騎士達の方だな。護衛と理解はしても、男性と認識している以上、無防備に寝れなかったんだと思う。中々にして厄介だ。」
「今回は、シュバルツバルト公がいるから、ですか?」
「それは、わからない。なんせ、アオイだから。」
「アオイ様ですから。」
理由は、アオイしかわからないから。
理由は聞けないし、聞かない。
「…防御魔法が使いこなせる日が来るといいですね。」
「ああ。そうだな。」
腕の中のアオイは、まだ眠っている。
夕暮れ前には屋敷に着いた。その頃にやっとアオイは起きた。
まだ少し顔色が悪いので、マリアにアオイを任せた。
令息と俺は、辺境伯に今回のことを伝える。
辺境伯は昔シュバルツバルト領に修行で来たことあり、深淵部に行ったことがあるらしく、
「あの場所が我が領にもできるとは!」
と、驚き、喜んでいた。
深淵部の注意事項をとりあえず口頭で伝える。
むやみに殺生をしてはいけない。
火は使ってはいけない。
神樹、ここでは大樹に感謝を忘れずに、訪れた際に必ず祈る。
この3点だ。
辺境伯と今後の対策を話し、城に伝達魔法で報告する。
今日で最後だから、と晩餐会の予定だったが、アオイの体調が悪いのでと断る。代わりに家族団欒を楽しんでほしいと言う。
話し合いの後、アオイの元に行く。
マリアは廊下で待機していた。
様子を聞くと、風呂に入り、顔色は戻ったが、まだ身体怠いと、横になっているらしい。
俺はそっと部屋に入る。
ベッドに近づくと、
眠ってはいないが、小声でなにか喋っている。よく聞けば、歌っているようだった。
聞いたことがない歌。
いつだったかの詩のように、自分を奮い立たせるための歌だろう。
言葉ひとつ足りないくらいで
全部こわれてしまうような
かよわい絆ばかりじゃないだろう
ーーー
歌い終わったのを確認して、声をかける。
「アオイ、体は?」
「ロイさん、まだ怠いよ。…歌っていたの聞いていた?」
「少し聞こえた。」
「音痴だから、恥ずかしい。」
「どんな歌なの?」
「どんなかなぁ?あんまり考えずに口遊んでいたから。強いて言えば、口下手な男の歌かな?上手く感謝を伝えられないって感じかな?」
「有名なの?」
「どうだろ?歌は毎日作られていたし、色んな音楽があったから、人それぞれ好きな音楽が違って良かった世界だから。」
「そんなにあるんだ。」
「そうだよ。あっ、スマホに元歌入っているから、聴く?」
「王都に戻って、ゆっくり過ごせるようになったら、聴かして?」
「うん。」
「…アオイ、魔力空っぽだね。また無理した。」
俺は少し怒っていた。アオイは後先考えずに無理をする。
「ごめんなさい。…あのね、大樹が金色に輝くのを見て、前の世界の好きだった風景を思い出したの。いつだって、草木は私を癒してくれていたって思ったら、恩返しのつもりで魔力を全部流していたの。」
「…アオイ約束して。自分を大事にして。アオイがいなくなったら、俺は本当にどうしていいか、わからなくなる。」
ロイはアオイを覆い被さり、布団ごと抱きしめる。
毎回魔力切れで倒れるのを見て、目が覚めなかったらと思うと、怖かった。
「ごめん、ごめんなさい。」
アオイは布団から上半身を出し、俺の頭を抱きしめる。泣きながら、謝る。
アオイの腕を解き、顔にキスしていく。
瞼、目尻、頬、鼻先、唇。
「俺を愛しているなら、アオイ自身を大事にして。アオイが倒れる度に、俺は怖くなる。」
「ごめんなさい。」
「もう泣かないで。…アオイ、愛しているよ。」
「私も、愛している。」
と、キスを交わす。
これで少しは自衛できれば、と俺は思った。
「40過ぎ、ですか?」
「普段からは考えられないだろうけど、結婚して、子供もいた。神樹に呼ばれて、こっちに来るまで、普通に生活をしていた。婚約式の時に神獣に呼ばれ、一刻ほどだが、息子のカイリが来た。話では、向こうでアオイは死んだことになり、旦那もその後亡くなったそうだ。」
「死んだことに……。」
「そうすることで、お金がもらえるからって。そのお金で子供達の学費にしてもらいたいって。アオイはそんなことを言っていた。カイリはその通りにしたって言っていた。
子供を守るために、『自己犠牲し過ぎ』とも言っていた。旦那はアオイには優しくはなかったらしい。だから、男性は怖いと言っていた。
アオイは、何もかも見た目通りでないんだ。普段は何事も楽しそうに過ごしているくせに、夜が怖い、男性が怖い、1人が怖いって言えなくて、泣きながら眠るんだよ。誰かに頼ることを知らないんだ。頼ってはいけないと思い込んでいる。
でも最近は甘えてくるようになってきた。ダンにも怯えなくなったしな。」
「そうですね。ロイ様がいなくても、怯えられることがなくなってきましたね。」
「まだ令息は、自分の子供と同じくらいの感覚だから、普通に接することができるが、男性と見られた時から、畏怖の対象になるんだ。」
「だから、前回眠くても寝なかったのは、」
「いや、令息じゃなくて、騎士達の方だな。護衛と理解はしても、男性と認識している以上、無防備に寝れなかったんだと思う。中々にして厄介だ。」
「今回は、シュバルツバルト公がいるから、ですか?」
「それは、わからない。なんせ、アオイだから。」
「アオイ様ですから。」
理由は、アオイしかわからないから。
理由は聞けないし、聞かない。
「…防御魔法が使いこなせる日が来るといいですね。」
「ああ。そうだな。」
腕の中のアオイは、まだ眠っている。
夕暮れ前には屋敷に着いた。その頃にやっとアオイは起きた。
まだ少し顔色が悪いので、マリアにアオイを任せた。
令息と俺は、辺境伯に今回のことを伝える。
辺境伯は昔シュバルツバルト領に修行で来たことあり、深淵部に行ったことがあるらしく、
「あの場所が我が領にもできるとは!」
と、驚き、喜んでいた。
深淵部の注意事項をとりあえず口頭で伝える。
むやみに殺生をしてはいけない。
火は使ってはいけない。
神樹、ここでは大樹に感謝を忘れずに、訪れた際に必ず祈る。
この3点だ。
辺境伯と今後の対策を話し、城に伝達魔法で報告する。
今日で最後だから、と晩餐会の予定だったが、アオイの体調が悪いのでと断る。代わりに家族団欒を楽しんでほしいと言う。
話し合いの後、アオイの元に行く。
マリアは廊下で待機していた。
様子を聞くと、風呂に入り、顔色は戻ったが、まだ身体怠いと、横になっているらしい。
俺はそっと部屋に入る。
ベッドに近づくと、
眠ってはいないが、小声でなにか喋っている。よく聞けば、歌っているようだった。
聞いたことがない歌。
いつだったかの詩のように、自分を奮い立たせるための歌だろう。
言葉ひとつ足りないくらいで
全部こわれてしまうような
かよわい絆ばかりじゃないだろう
ーーー
歌い終わったのを確認して、声をかける。
「アオイ、体は?」
「ロイさん、まだ怠いよ。…歌っていたの聞いていた?」
「少し聞こえた。」
「音痴だから、恥ずかしい。」
「どんな歌なの?」
「どんなかなぁ?あんまり考えずに口遊んでいたから。強いて言えば、口下手な男の歌かな?上手く感謝を伝えられないって感じかな?」
「有名なの?」
「どうだろ?歌は毎日作られていたし、色んな音楽があったから、人それぞれ好きな音楽が違って良かった世界だから。」
「そんなにあるんだ。」
「そうだよ。あっ、スマホに元歌入っているから、聴く?」
「王都に戻って、ゆっくり過ごせるようになったら、聴かして?」
「うん。」
「…アオイ、魔力空っぽだね。また無理した。」
俺は少し怒っていた。アオイは後先考えずに無理をする。
「ごめんなさい。…あのね、大樹が金色に輝くのを見て、前の世界の好きだった風景を思い出したの。いつだって、草木は私を癒してくれていたって思ったら、恩返しのつもりで魔力を全部流していたの。」
「…アオイ約束して。自分を大事にして。アオイがいなくなったら、俺は本当にどうしていいか、わからなくなる。」
ロイはアオイを覆い被さり、布団ごと抱きしめる。
毎回魔力切れで倒れるのを見て、目が覚めなかったらと思うと、怖かった。
「ごめん、ごめんなさい。」
アオイは布団から上半身を出し、俺の頭を抱きしめる。泣きながら、謝る。
アオイの腕を解き、顔にキスしていく。
瞼、目尻、頬、鼻先、唇。
「俺を愛しているなら、アオイ自身を大事にして。アオイが倒れる度に、俺は怖くなる。」
「ごめんなさい。」
「もう泣かないで。…アオイ、愛しているよ。」
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