ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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夜、ロイさんが部屋に訪れた時に聞いてみた。

「ロイさん、防御魔法のコツって何?」

ダンさんがブホォッと笑いだす。
ロイさんは、難しい顔をして背ける。

「アオイ様、ロイ様は魔法使えないんです。」

「えっ!!だ、だって、ロイさん王族だから、」

「ダン、使えない、でなく、使わない、だ。言葉は正確に!」

「失礼しました。」

「……使わないの?」

「ロイ様は魔力量が多すぎて、小さい魔法が使えないんですよ。特大の攻撃魔法は簡単に使えるんですが。それに、そんな魔法しか使えなければ、領地が丸裸になってしまいますから、使わないんですよ。」

「防御魔法も?」

「防御魔法は、何故か知りませんが、魔力が勝手に変換されているそうなんです。先々代の魔法師団長も不思議がっていましたね。」

「何それ!!ズルい!!」

「私でよろしければ、教えましょうか?」

「ダンさん教えて!」

「防御魔法は、ロイ様と思えば、よろしいかと思います。」

「?わからないよ?」

「ダン、…よくやった。」

「ありがとうございます。では、そろっと就寝の時間でございます。お休みくださいませ。」

とロイさんに縦抱きにされ、寝室に運ばれた。今日も一緒に寝るらしい。

ベッドに降ろされ、布団を掛けられる。ロイさんは、部屋の灯りを消してくれる。

「さっきのコツは、コツだったの?」

「コツだよ。」

布団に入ってきて、抱きしめてくれる。

「アオイをこうやって、俺が守っているんだよ。」

「なるほど?」

「なぜ、疑問形。」

「ロイさんが守ってくれているのはわかるけど、防御魔法をロイさんだと思うと、使いづらいかな?と思って。」

「ふーん、なんで?」

あれ?ロイさんの声が低くなった。

「だって、私、ロイさんに怪我して欲しくないもの。私を守ってくれても、ロイさんが怪我したら、私すっごい罪悪感に苛まれそう。」

ロイさんは、ぎゅうっと力強く抱きしめてくる。

「アオイはかわいいなあ。」

と、今度はキスの嵐。私、何かのスイッチを押してしまったらしい。
本気に嫌がるまで、キスは続いた。
眠たいと、私は、めちゃくちゃ機嫌悪くなるから、ロイさんも普段だと加減をしてくれるが、今夜は私がマジギレして、ロイさんを部屋から追い出した。







「昨晩、シュバルツバルト公を部屋から追い出したって?」

グランダル先輩にそう聞かれた。

「…眠たかったんで。なんで、そんなこと聞くんですか?」

ちょっとムッとしてしまった。二人のことをとやかく言われたくない。

「父と私が話し合いをしている時に、公爵が令嬢から部屋を追い出されたと、しょんぼりと酒瓶を持ってきたので、お付き合いしたんだ。私と父でずーっと相談という惚気を聞かされて、」

「すみませんでした!!」

久々の90°のお辞儀をする。ロイさんは何しとるんじゃ!

「喧嘩でもしたのか?」

「いや、私眠い時、めちゃくちゃ機嫌が悪くなるの。昨日はロイさんが加減を間違えたから、このようなことになってしまって。」

「……加減。(何の加減とは、聞いてはいけない。)」

「そう、睡眠大事!寝ないと、魔力回復しないし、頭も働かない。第一、身長が伸びないじゃないですか?!」

「…シュバルツバルト嬢、あー、成人迎えたら、女性は大体伸びなくなるんだよ?」

「~~~夢くらい見せてよぉ!!」

私の雄叫びは、修練場に空しく響いた。




2日目午後には、80点を取れる防御魔法を使えるようになってきた。
更に高位の防御魔法は、許可がないと練習ができないので、今回はこれで終わりだ。
魔法士には、常に意識して張り続けるようにして、段々と日常化していけば、無意識のうちに使いこなせるようになると言われた。


2人には何回もお礼を言った。のみ込みが悪くて、何遍もどうイメージしていいかわからなくなって、その都度聞きまくっていた。
私はどうも、『攻撃は最大の防御』なところがあるらしく、物理的防御魔法の時も中々習得できなかった。


これは、私の悪い癖だ。魔法にまで影響しているかと思うと情けなくなる。凱吏の言葉を思い出す。


『母さんは自己犠牲し過ぎ。』


私はまだ、無意識に我慢をしているようだ。










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