ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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日が真上にくる頃、大樹の元に到着した。
葉っぱはところどころ茶色くなっていたり、葉っぱもついていない枝もある。 
大樹も神樹と同じ滅多なことでは、枯れないと教わった。何十年も青々と生い茂っているはずなのに。

神獣ちゃんもいないから、正しい方法かはわからないけど、幹に触ってみる。
どうしたら、元気になるか教えて欲しいと、願いを込めて。

その時、左手首のブレスレットが淡く金色に光り出す。ブレスレットから、声が伝わる。


『私にも魔力を分けて』


光がなくなると、一匹の大きな白い狼が現れた。

「フェンリルだ!」

騎士達は私を守るように、囲んだ。グランダル先輩も、私の前に立つ。
フェンリルは、敵意を見せないが、こちらをじっと見つめている。

「先輩、もしかして、私に何か伝えたいのかも知れません。」

「しかし、フェンリルは魔獣の中では、最高ランクだ。この人数では勝てないが、君を守らないといけない。シュバルツバルト公と約束したんだから。」

「大丈夫です。敵意は見られないし、少しお話させてください。」

「……わかった。私も一緒に行く。」

「はい。でも、手出しはしないでくださいね。」

と、私と先輩はフェンリルに近づく。先輩や騎士達はハラハラしているが、この子大丈夫と、神樹のブレスレットから伝わる。
優しく話しかけてみる。

「私に何か伝えたいのね。教えて。」

「がう。」

と、一声鳴くと、頭の中に語りかけてきた。

フェンリルは、この辺りを縄張りにしていて、大樹を見守ってきた一族だ。それが最近ここらに来たスライムが、根こそぎ大樹の魔力を奪って、緑を荒らした。フェンリル達も倒そうとするが、反対に立ち向かったものから、食われていった。元々数が少ないフェンリルは、この子とこの子の番しか残っていない。番が妊娠中で、今は別の場所に避難しているらしい。

「わかった。ありがとう。大樹は私に任せて、番の元に戻って。」

「がう。」

タッと、その場からいなくなった。

フェンリルがいなくなって、みんなの緊張が解けた。
私は、大樹とフェンリルの話をみんなに伝える。
フェンリルですら食べてしまうスライムの話は、辺境伯とロイさんにも伝達魔法で伝えた。

「では、大樹に魔力を流します。」

神樹に流した時のように、少しずつ流していく。
金色の光がブレスレットから大樹に伝わる。大樹に触れている部分から光が広がる。大樹全体に伝わる頃には、私の魔力も半分は減っていた。これ以上減るとみんなに迷惑かけるからと、流すのをやめる。
光は消えたが、枯れかけていた葉っぱも青くなり、葉っぱがなかった枝には、新芽が出でいた。

ごめんね、また回復したら来るから。

『ありがとう。待っている。』

ブレスレットを通して、感謝の言葉を聞いた。


「シュバルツバルト嬢!大丈夫か?!」

「っ、はい、なんとか。まだ、大樹の魔力も半分も回復していません。私が回復したら、また来ます。」

「無理はしないで。」

「少し休んだら、帰りましょう。」

「ああ。」

大樹の根元に座り、大樹に寄り掛かる。
心地良い風、柔らかい日差し、草木の薫り。

心が落ち着く。明日への活力をもらえている気がする。




帰りも何事もなく帰れた。屋敷に着いた時は夕暮れだった。着いた頃には眠くて仕方なかったが、ロイさんがいないから眠れないでいた。

「シュバルツバルト嬢、大丈夫か?昼間何も食べていなかったし。」

「大丈夫です。少し休みたいです。」

疲れ過ぎて食欲もなかった。早く部屋に戻って、寝たかった。

「アオイ!」

と、少しフラついた時にロイさんが、私を抱きとめた。

「お疲れ様。寝ていいよ。」

「ん、ロイさん、ありがとぅ。」

と、そのまま、ロイさんの腕の中で寝た。




「シュバルツバルト公、申し訳ないです。私が付いていたのに。」

「大丈夫。今日はそんなに無理をしてないようだから。」

「眠そうにしていたんですが、私の乗馬技術に不安があったのかもしれません。」

「あー、なるほど。いや、そうじゃないんだ。ここだけの話にしてもらいたいのだが、アオイは大人の男性が怖いんだ。最近は、よくなってきていたから気が付かなかったかもしれないが、前の世界で嫌なめに合って、男性の前では隙を見せたくないみたいなんだ。心の傷がまだ癒えていないだけだ。令息が悪いわけではない。だから、気にしないでくれ。」

と、アオイを抱き抱えて、部屋に連れて行った。


アオイが安心して眠れるのは、ロイの腕の中。



エドワードは、お互いを信頼できる関係であることにやはり自分が入り込む場所はないんだな。と、改めて実感した。




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