ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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翌朝、日の出前に起きて(マリアさんに起こしてもらった。)準備をする。服装は、ワイシャツ・ズボンのため、どこから見ても可愛いお嬢さんではなく、お坊ちゃんだけど。

軽く朝食をいただき、待ち合わせの馬小屋に向かう。乗馬のできない私は、グランダル先輩に乗せてもらう。
空が白み始めた頃なのに、グランダル先輩と護衛騎士の方達はすでに準備を終えていた。

「おはようございます。遅かったですか?」

「おはよう。今準備が終わったところです。荷物を馬に括るので貸してください。」

「はい。お願いします。」

先輩に持ってきた荷物を渡す。先輩は慣れた手つきで荷物を馬に乗せる。護衛騎士達と、地図を開き、道順などの再確認を行う。

「アオイ。」

呼ばれて振り返えれば、ロイさんだった。

「おはよう。まだ早いから、寝ててよかったのに。」

「おはよう。これを渡すのを忘れていたから。」

と、布を渡された。広げてみれば、ポンチョだった。

「ここらへんじゃ、まだ黒目黒髪は珍しいと思うから、人前ではなるべく被ってくれ。」

「そっか、珍しいこと忘れていたよ。ありがとう。」

ロイさんがポンチョを手に取り、被せてくれた。

「いってらっしゃい。」

と、ロイさんが屈んで頬にキスしてくれたので、

「いってきます。」

と、私も頬にキスを返した。ロイさんも準備があるのか、少し慌ただしく戻って行った。

4日間の同行でロイさんの溺愛ぶりを見ていた先輩や護衛騎士達は気にもしなかったが、辺境伯の使用人たちは驚いていたようだった。
そりゃ、笑うどころか、怒りもしない無表情・無感情と言われた王弟殿下があんなに甘々になるなんて、誰も予想しなかったことだから。

最終確認をしたところで出発となった。


まだ、日が昇り始めだけど、ロイさんの言う通り黒目黒髪は目立つからと、先輩に言われてフードを被る。森に入った頃にはフードを外した。
大樹までは、毎月1回は辺境伯が通っているので、道がある程度整備されていて、馬でも通りやすくなっていた。空気は澄んでいるけど、時々、嫌な感じする場所がある。シュバルツバルトでも感じた、肌に纏わりつく生温く湿った空気だ。
グランダル先輩も森の異変には気が付いたようだった。

途中、小川の近くの開けた場所で休憩をとることにした。朝早く出たこともあり、私は昨日作っておいたおにぎりを出した。野宿の時にみんなにふるまったら、結構気に入ってくれたので、今回は冷めてもおいしいおにぎりだ。ちなみに具はないので、少しきつめの塩焼きした薄切りお肉を巻いてみました。

「シュバルツバルト嬢、あの荷物量で、これも入っていたのか?」

「私のカバン、実はマジックバッグなんです。リバーシで勝った戦利品として、陛下からもらっちゃいました。」

斜め掛けのカバンを見せる。少し使い込まれているが、またそこに味があるカバンだ。

「そ、それは、下賜されたんじゃ?」

「いえ、戦利品です。私、臣下じゃないし。」

「…ああ、臣下じゃなかったな。」

「リバーシで対戦して、10連勝したので、役立つ何かが欲しいと言ったら、使わなくなったマジックバッグをくれたんです。少し使い込まれた皮の感じが好きなんです。」

「たしかに、何十年も持ちそうだな。」

「…先輩、話していると、おにぎりなくなりますよ?」

騎士達の勢いはものすごかった。私は1個で十分だが、騎士達は両手に持ち、次から次へと食べていく。

「私はしっかり食べてきたから、大丈夫だ。しかしこれは腹持ちしていいな。パンと違って、飲み物もそんなに取らなくて済む。」

「お米は正義です。」

「確かに。」

お米の布教しているつもりはないが、騎士団から広まりつつあることを、アオイは知らなかった。
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