ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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一度は着てみたいメイド服。夢が叶いました。私は、メイド喫茶のような、『萌え萌えきゅん』がしたかっただけなんです。

それが何故か、ロイさんの膝の上に座ってお茶を飲ませる状況になっているのか、分かりません。おばちゃん、今、顔はチベスナになっているハズです。間違いなく。

「アオイがお茶飲ませてくれるなんて、嬉しい。」

イケメンが顔面崩壊しています。2人の温度差!空気読もう?!

「私は、お茶だけ出して終わりだったのに。」

「1週間は会えなかったんだよ?俺は寂しかったのに。」

「学園にいる時は何ヶ月もでしたよ?」

「今は同じ屋敷にいるのに。」

「大差ないですよ?」

「…アオイはまだ俺を意識してくれないの?」

「…まだ、してませんね。」

「あんなこと許してくれたのに?」

「手首縛られましたね。」

「キスで蕩けた顔したのに?」

「抵抗したんですが、力の差で押さえ込まれてしまいました。一種の酸欠です。」

「胸は気持ち良かったのに?」

「胸の話はするな!」

「ふっ、顔赤くなった。」

「~~~。」

「アオイ、キスしていい?」

「ダメです。」

「わかった。するね?」

「わかってない!」

顎を掴まれ、キスをされる。触れるだけ。でも角度を変えて何回も。
持っていたカップを、ロイさんはキスをしながら、取り上げて机に置く。
唇がようやく離れたと思ったら、

「口開けて。」

と言われる。ブンブンて横に首を振るが、また顎を掴まれキスをされる。今度は舌も入ってくる。舌を絡められ、クチュクチュと水音だけが執務室に響く。

やっと口が離れた頃は息があがっていた。

「アオイ、可愛い。今日はこのまま、ここにいる?メイドさんごっこ続ける?」

「はぁ、はぁ、し、しない。」

「そっか、残念。でも、またしてね?」

「しない!それに、ロイさん最近は、ずっとイヤラしいことばかりしてくる!ヤリたいだけなら、ヤればいいじゃん!」

忘れていたなんて嘘。だって、まだ怖いから。愛しているって言って裏切られるのが、時間とともに愛情がなくなるのが。だったら、身体だけの関係だけの方が全然いい。期待しなくて済むから。

「アオイ。」

ハッと、ロイさんを見ると、眼が怒っていた。
ロイさんの手が私の頬を触る。ビクッとしてしまったが。

「アオイ。まだ、伝わらない?好きだよ。愛している。不安なら、何回も言うよ?触られるのが嫌なら、もうしない。でも、アオイは言葉だけだと、信用しないでしょ?どうしたら、信じてくれる?」

真剣な眼差しで言われた。私は、おずおずと答えた。

「言葉はまだ、信じられない。…ロイさんに抱きしめられるのは、…安心する。でも、キス、は、ちょっと、激しいから、恥ずかしくて。何も、考えられなくて、流されちゃうから、嫌。流されれば、後悔しか、ないから。」

「うん、わかった。いっぱい抱きしめてあげる。キスは、慣れて?アオイが可愛いから俺はしたくなる。でも、深いキスはなるべく我慢する。」

「うん、お願いします。でも、過剰な行為は、なるべく、やめてね?」

「ふっ、抱きしめてもいい?」

「っ、…うん。」

優しく抱きしめてくる。この腕、この胸が今や安心する。言葉より、心臓の音を聴いている方が安心する。穏やかで規則正しい音。
何も言葉を交わさずに、抱きしめてもらえれば、温かくて眠くなってきた。

「アオイ、眠い?」

「うん、少し。あったかくて、眠くなってきた。」

「寝ていいよ?」

「ううん、自分の部屋戻る。」

「連れて行ってあげる。」

「ん。」

ロイさんに抱えられて、部屋のベッドで眠る。



抱えられて移動していた時に、小さい頃の記憶が蘇る。
コタツで寝た私を布団に運んでくれた父。
土木関係の仕事をしていたから、体格も良かった。
父から抱っこされるのが嬉しかった。仕事で、あまり家にいない人だったし、休日は田んぼや畑で忙しかったから。
無口で、母はよく文句を言っていた。家のことを何も考えていない。と。
大学に行かせられないと言った時は、本当にすまなそうな顔をしていた。
母は、私より跡継ぎの兄が大事だし、父は、子供を平等に扱いたかったんだろう。
まだ私は本当に何もわかってなかったんだ、あの頃は。

今なら少しはわかる、かもしれない。父の気持ちが。


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