ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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翌日からはロイさんとはほとんどすれ違いで、顔を合わすことがなかった。私は、日中はほとんど調理場、夜は、寝室で過ごした。夜に帰ってきているらしいが、ほとんど、会議室にダンさんと籠っている。寝室には来なかった。

3日間の調査が終わり、領地に戻ることになった。久しぶりに見たロイさんは、疲れている顔はしていなかった。顔を合わせていなかったせいか、恥ずかしかった行為は、時間とともに忘れていた。そしていつものように、一緒に馬に乗り、領地に戻る。

森に入った時に感じた、嫌な感じが帰りにはしなかった。反対に、深淵部にいるかのような澄んだ空気になっていた。魔力を流したことで、神樹が力を取り戻し、また正常の世界へと戻しつつあるのだろう。

「アオイ、気分はどうだ?」

「大丈夫。来た時より、空気が澄んでいて気持ちがいいよ。」

「ああ、アオイのおかげだ。」

褒められ慣れていない私は照れてしまい、そのまま俯いてしまう。

「ふ、可愛い」と項にキスを落とす。

『可愛い』とキスがセットになりつつありますけど。今は、みんなが見ているからやめて欲しい。見ていなくても、やらないで欲しいけど。でも大声出したりしたら、馬もびっくりするから、馬から降りたら一発蹴りを入れたい。
ジトーッと恨みがましい目で見るが、ロイさんに効き目はなかった。

シュバルツバルトの森に行ってから、ロイさんに好き放題されている気がする。もう少し、強気で行こうと決意する。

森を抜け、途中の宿屋で昼食をいただく。ダンさんや騎士の人たちは、宿屋に立ち寄った商人や旅人の話を聞いていた。私は、さっきのキスで怒って、馬を降りた途端ロイさんを蹴って、ダンさんに引っ付いていた。が、すぐにロイさんに回収され、二人みんなとは離れて食べている。

「アオイ、悪かった。」

「それってあんまり俺は悪くないけど、とりあえず謝って機嫌を宥めようって言い方です。」

「きちんと反省はしている。アオイは恥ずかしかったんだよな?」

「///、うるさいです!」

「顔真っ赤で、可愛い。」

もう本当にどこかに良い眼科医いたら、紹介して欲しい。

なんて会話をしていたら、一人の綺麗な女性がロイさんに話しかけてきた。

「お兄さん、ここら辺は初めて?私案内するわよ?」

「いや、間に合っている。」

「そんな小さい男の子じゃなくて、私の方が楽しめるわよ?」

と、ロイさんの腕に手を絡めて、胸を押し当てる。恰好から、私は男の子に見えたようだ。ツルペタだもんね。

そんな様子を私は冷静に観察しながら、スープを掬って飲んでいる。
ロイさんは、騒ぎを起こしたくないが、はっきり断れば、女の方が騒ぎだしそうなのがわかった。しょうがない、助けますか?

「…パパ、そのおばさんとどっか行くの?」

あざとく、キュルンとした瞳で聞いてみる。ロイさんは固まった。女性の方は、

「えっ、お、おばさん?!パ、パパ?!ふん、子持ちだったのね!」

と言って、離れていった。この国は、一夫一妻制(同性同士も)で、浮気・不倫は刑罰の対象だ。バレたらの話だが。人の眼が多いこの場所では、確実に捕まるから、女性は逃げたようだ。ちなみに貴族は存続に関する事柄であれば、話し合いで、側室を迎えることはできる。国に届出が必要であるが。愛人なんて、以ての外らしい。

ロイさんは項垂れながら、

「……パパ呼びはやめてくれ。」

「胸の大きい女性でしたね?」

「…アオイがいい。」

「男性は、やっぱり大きい方がお好きかと思いまして。」

「それ以上言ったら、また泣かせるぞ。」

「……。やったら、一週間口をききません。」

2人して、うぬぅっと睨み合う。私は急いで食べ終えると、またダンさんに引っ付いた。

宿屋を出立する時は、またロイさんに回収され、大人しく馬に乗って帰った。


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