ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

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夕食の時に報告をまとめた結果、深淵部には危険な魔獣は見当たらなかった。予定通り明日神樹に行くこととなった。とみんなに伝えられた。

ダンさんに、危険な魔獣とは?と聞いてみると、狼や熊や猪みたいな魔獣らしい。虎とかネコ科はいないみたい。

朝食の仕込みを終えてから、部屋に戻る。

部屋では、ロイさんが執務机で書き物をしていた。邪魔しないように奥の寝室に行く。

昨日の今日だから、別の部屋がいいのかな?と思い、自分のカバンを持って、寝室を出て、部屋を出ようとした時に声をかけられた。

「アオイ、どこ行くんだ?」

「いや、一緒の部屋は嫌かな?と思って。私、別の部屋で寝るよ。」

「ダメだ。昨日も言ったが、万が一なんてことがあったら、どうするんだ?」

「いやいや、それは本当にないって。みんな、こんなツルペタなんて興味ないよ?」

ロイさんは頭を抱えてしまった。

「アオイはわかっていない。」

「自分のことぐらい、わかっているよ!」

ロイさんは、椅子から立ち上がり、私に近づきカバンを奪って、私を抱き抱えた。

「えっ、ちょっ、離してよ!」

暴れてみたものの体格差なのか、効き目はない。

寝室に入り、カバンを下ろして、私をベッドに下ろした。

「いいからこの部屋を使って。」

「でも、ベッド1つしかないから、ロイさんはどうするの?」

「俺はソファで寝る。」

「体休まらないでしょ?だったら、やっぱり私が別の部屋に行くよ。」

立ち上がろうとしたら、トンと押され、ベッドに仰向けに倒れた。両手首を掴まれ、頭の上で片手で押さえられる。

「アオイ、いい加減にしてくれ。おまえは自分の魅力をわかっていないし、すぐ抑え込まれるおまえがどうやって、反撃する?」

自分の魅力って何?そんなのがあるなんて、思ったこともない。

「離してよ!」

「ダメだ。わからないから、教えているんだ。」

「わ、わかったから!」

「わかっていない。」

「本当に、わかったから。…離してよ。」

初めてロイさんが怖いと思った。涙が出てきそうだった。男性からこんな風に抑え込まれるなんてことはなかったから。

「俺、昨日、アオイに気持ちを伝えたよな?なのに、他の男に持っていかれてもおかしくない状況を許す訳ないだろ?」

ロイさんのもう片方の手が、私の顔をなぞる。私は、だんだんとロイさんが知らない男の人に見えてきた。

「っ、ごめん、な…さい。はな、…して。」

もう、怖くて仕方がなかった。

「それにアオイは、自分を大事にしていない。昨日だって、簡単に俺に抱かれていいなんて言って。」

首筋に手がいく。そして、シャツのボタンを1つ外す。そして、もう1つ。前を少し緩めて、胸元を曝け出す。

「…ああ、この綺麗な肌を、他の男に触らせる気だったの?」

ブンブンと首を横に振った。そんな気は一切ない。と。

「アオイは、もう少し物事考えてから、行動して?」

うんうんと頷く。もうポロポロ泣いて声が出なかった。

「ああ、泣かないで。」

ロイさんの顔が近づいたかと思ったら、目元にキスをされた。そして反対側も。

私はビックリして、目を見開いてキョトンとしてしまった。

「ふっ、かわいい。」

顎をぐいっとロイさんの方に向けられると、唇にキスをされた。触るだけの、優しいキスだった。

ロイさんの顔が、体が離れて、

「俺はもう寝室には来ないから、ここで寝るんだよ?」

と、言ってから、寝室から出て行った。



掴まれた両手首が痛かった。でも痣になっていないから、力は加減してくれたようだ。加減してもらっても、振り解けなかった。男女の体格の差を、むざむざ見せつけられた。


それより、最後にキスしたのなんて10年以上前で、物凄く恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。



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