ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

文字の大きさ
上 下
75 / 143
おばちゃん学園に通っちゃいます!【1年生】

29

しおりを挟む
屋敷で3日ほど過ごしたら、準備ができたとのことなので、深淵部に向かうことになった。今回は、ロイさん、ダンさん、騎士団より10名ほどの1個小隊で行くことになった。

森の中なので、馬車は使えない。乗馬再びです。服装もワンピースだと馬に乗りにくいので、成人前の男の子の服を用意してもらいました。ツルペタだから、似合う、似合う。ぐすっ。
でも、あれから走り込みをしているから、体力も筋肉もついたから、立てなくなるなんてことはないと思うが。
拠点となる屋敷は、前回の小屋よりも大人数がいられるように作られてあるらしい。そこから深淵部には歩いて行く。

ロイ義兄様と一緒に馬に乗り、拠点を目指す。
前回は、あれこれが珍しくて落ち着きがなかったが、今回は大人しくしている。

森に入って少し進んだところで、前回感じられなかった、重たい空気を感じた。肌に纏わりつく生温く湿った空気だ。背中がゾクゾクする。

「おかしいな。森でこんな感覚を感じたことがない。」

と、ロイ義兄様が言った。私も変な感じがすることを伝える。

さらに進めば、いつもの森の雰囲気になる。拠点に着くまで、何か所かそのような場所があった。

拠点に着いた時には、私はぐったりしていた。嫌な感じが体力を奪ったかのように、その場所を通るたびに顔色が悪くなり、体が怠くなっていく。動けない私はロイ義兄様に抱えられて、屋敷に入っていった。他の人たちは荷物を運んだり、屋敷の掃除や馬の世話をしているのに、更にお荷物になって申し訳なかった。

二階の大きな部屋に入って、奥の寝室のベッドに寝かしてくれた。

「寝れば体力が戻る。起きたら、ご飯食べよう。それまでゆっくり寝ていなさい。」

頷いて目を閉じればすぐに寝てしまった。









白い霧であたり一面真っ白だ。どちらに行っていいかもわからず、動けないでいる。って、なんか来たことがあるような気がする。

どのくらい経ったかわからないが、どこからともなしに泣いている声が聞こえた。子供か大人か、男性か女性か判別がつかない泣き声だった。
そちらの方向に行ってみる。声が近づくにつれ、淡い緑の光る球体がいた。…球体だ。

「何を泣いているの?」

「あなたが来るのが遅いから、森が枯れ始めてきているの。」

「期限は聞いていなかったわ?」

「でも、すぐに戻ってくると思ったの。」

「ごめんなさい。私もこの世界がどんな世界か知りたくて、色々勉強していたの。」

「……私に魔力を流すのが、嫌じゃなくて?」

「そんなことないわ。私はあなたに会ったら、『ありがとう』って言いたかったんだもの。」

「本当?」

「ええ、本当よ。私を勝手にこっちに連れてきてありがとうって。」

私は多分ものすごく悪い顔をしているはず。

「あっ、あなたはこっちに連れてきたことを怒っているの?」

「怒らない人がいたら、教えて?今までの生活を一瞬にして全部壊したのよ。怒って当たり前でしょう?これは誘拐と一緒なのよ?」

「ご、ごめんなさい。でもそんなつもりなくて、」

「そんなつもりも何もあなたの都合で誘拐されました。もう二度と帰れません。しかも、目的も何もあなたが説明するのでなく、神様から聞かされるし。ねぇ、私のこの怒りは誰にぶつければいいの?あなたしかいないよねぇ?」

「は、はい、そのとおりです。」

「しかも来るのが遅いって何様?」

「え、ええと、」

「ああ、神樹様か。でも、魔法が使えない世界から来たんだから、それぐらい配慮があってしかるべきではないのかしら?」

「は、はい。すみません。」

「これこれ、あまりいじめるもんでないぞ。」

淡く光る銀色の球体がフヨフヨと来た。





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

処理中です...